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分厚くて動かすことすら出来ない扉と、足を動かす度にガシャガシャと音を立てて揺れる、重い足枷。見ているだけで、大声を上げて泣き喚きたくなる。
ここに連れてこられて、閉じ込められるようになってから一体どれだけの時間が経ったのだろう。
どんなに月日が経っても、あの辺り一面が血の海になっていた景色が、人間が人間ではない生き物へと変えられていったあの光景が、返り血で真っ赤に染めあがったあの男が、ニコニコと笑いながら近寄ってきたあの姿が、『君は利用価値がありそうだからね。特別に生かしておいてあげる。だからせいぜい役に立ってね。虎杖悠仁の魂を折る道具として』という冷たい声が、私の腕を掴む大きくて冷え切った手が。全て記憶の中にこびりついて、消えない。
「ただいまー名前ー。いい子にしてたー?」
あの男の声が聴こえてきた。それだけで私の体は強張り、身構える。そんな私を見て、私をこの空間に閉じ込めている呪霊…真人は心底楽しそうだ。
「なーに、ガタガタ震えて。そんなに俺が怖い?」
ニタッと笑いながら私を抱き締め、頭を撫でてくる真人に吐き気がする。そんな私の気持ちなんて、きっとこの男にはお見通しなのだろう。せめてもの抵抗と思い、離れようとするがこの体格差だ。抵抗になんてならない。
「名前可愛いねー。暴れたって逃げられる訳ないのに無駄な抵抗しちゃってさ。疲れない?諦めた方が楽になれるよ?」
耳元で囁かれ、ぞくりとする。私の反応が余程お気に召したのか、上機嫌な様子で真人は喜々としながら話を続ける。
「あ、そうそう。今日、虎杖悠仁のとこに行ってきたよー」
その名前に思わず反応してしまった。そんな私のことをこの男が見逃すわけなどなく。より一層ニタリと凶悪な笑みを浮かべる。
「面白かったよー。俺の顔見るなりいきなり襲いかかってきて、苗字を返せーってさ。大切にされてたんだねー。もし、君のことを殺してその死体を見せたりしたら、どんな反応するんだろうね」
「...っ!」
真人が私の首を撫でながらいう。あまりの恐怖に、震えと全身からの汗が止まらない。
「かーわい。そんな反応されたら本当に殺したくなっちゃうじゃん。でもまぁとりあえず安心しなよ。俺、君のこと結構気に入ってるからさ。そう簡単に殺したりしないから」
ね?と、手を首から移して頭を撫でてくる。その手はぞっとするほど優しくて、怖い。
「それにしても惜しいことしたなー。攫っただけであんなに怒り狂うんだったら、どうせなら名前のこと1人でいる時じゃなくて虎杖悠仁の目の前で捕まえればよかったなー。そしたらもーっと面白い反応してくれたんだろうなー。あーあ、残念。そうしてたらさ、名前だって、だーい好きな虎杖君に最後に1度は会えたのにね。俺ってばもう少し考えて行動すべきだったなー」
私を自分の膝の上に寝転ばせて、髪を撫でながらゲラゲラと笑っている真人。見ているだけで腹が立つ。だけれども、私に真人を黙らせる術なんて何も無い。大人しく彼の嘲笑を聞いていることしか出来ない。
ここに連れてこられてから、自分がどれだけ無力なのか嫌という程思い知らされた。
小さい頃から呪霊を見る力はあったが、祓う力は一切ない。
とんでもない役立たずだ。五条先生や虎杖君をはじめとした高専の人達に迷惑を掛けてはいけない。気をつけよう。そう思って注意していたつもりだった。なのにこんな状況になってしまうなんて、自分が情けない。
「名前ー?どうしたのー?あっもしかして自分のこと情けないって思ってる?でも仕方ないよ。君、呪霊のことが見えるってだけでそれ以外はなーんの力もないただの普通の女の子なんだから。俺と出会って対処出来るわけないんだからさ。寧ろこうやって生きてるだけでも凄いことだよ」
だから、自分を恥じることなんてないよ。自信持ちな。ね?そう残酷な程優しい声で言う。そういう彼の目は、一切光もなく、笑ってもいない。怖い。怯える私を真人はとても楽しそうに見ている。彼は私の怯える姿をいつも楽しそうに見ている。怖がれば怖がる程、怯えれば怯える程この男の思う壷だということはよく分かっている。分かってはいるのに、いつも怯えしまう。もう嫌だ。なんなんだ私は。
誰よりも迷惑を掛けたくなかった虎杖君に、1番迷惑を掛けてしまうなんて。虎杖君だけじゃない。五条先生や七海さんにも、伏黒君と釘崎さん、先輩方にまで迷惑をかけてしまっているかもしれない。こんなどうしようもない奴のために、沢山の人の手を煩わせてしまっているかもしれないだなんて...。自分が嫌いになりそうだ。
こんな私なんて、いっそ死んでしまった方が良いのではないか。
そうだ、いっそ死んでしまおう。そしたら真人からも逃げられる。これ以上、虎杖君の負担にもならないで済む。
「...もし名前が自殺なんてしたらアイツ...虎杖はどんな反応するだろうね。泣いちゃうかな?後追い自殺したりして!まぁそれはないか。でもなんにしても、アイツは一生後悔することになるだろうね。あの時、自分が君から離れたりしなかったら、そしたら君が俺に攫われることも、死ぬこともなかったのにって」
私の考えは全てお見通しだとでもいうように真人は私の見出しかけた逃げ道をいとも簡単に閉ざした。
「名前、お前は籠の中の鳥だ。どんなに足掻いてもここからは...俺からは逃げられない。だから大人しく、俺に飼い殺しにされてなよ。そしたらずっと大切にしてあげる。守ってあげる。幸せにしてあげるよ」
そういいながら真人は私を自身の腕の中に閉じ込める。
その腕は足に付けられた枷よりも、動かすことも出来ない扉よりも強く頑丈に、私を縛り付けているようだ。
ここに連れてこられて、閉じ込められるようになってから一体どれだけの時間が経ったのだろう。
どんなに月日が経っても、あの辺り一面が血の海になっていた景色が、人間が人間ではない生き物へと変えられていったあの光景が、返り血で真っ赤に染めあがったあの男が、ニコニコと笑いながら近寄ってきたあの姿が、『君は利用価値がありそうだからね。特別に生かしておいてあげる。だからせいぜい役に立ってね。虎杖悠仁の魂を折る道具として』という冷たい声が、私の腕を掴む大きくて冷え切った手が。全て記憶の中にこびりついて、消えない。
「ただいまー名前ー。いい子にしてたー?」
あの男の声が聴こえてきた。それだけで私の体は強張り、身構える。そんな私を見て、私をこの空間に閉じ込めている呪霊…真人は心底楽しそうだ。
「なーに、ガタガタ震えて。そんなに俺が怖い?」
ニタッと笑いながら私を抱き締め、頭を撫でてくる真人に吐き気がする。そんな私の気持ちなんて、きっとこの男にはお見通しなのだろう。せめてもの抵抗と思い、離れようとするがこの体格差だ。抵抗になんてならない。
「名前可愛いねー。暴れたって逃げられる訳ないのに無駄な抵抗しちゃってさ。疲れない?諦めた方が楽になれるよ?」
耳元で囁かれ、ぞくりとする。私の反応が余程お気に召したのか、上機嫌な様子で真人は喜々としながら話を続ける。
「あ、そうそう。今日、虎杖悠仁のとこに行ってきたよー」
その名前に思わず反応してしまった。そんな私のことをこの男が見逃すわけなどなく。より一層ニタリと凶悪な笑みを浮かべる。
「面白かったよー。俺の顔見るなりいきなり襲いかかってきて、苗字を返せーってさ。大切にされてたんだねー。もし、君のことを殺してその死体を見せたりしたら、どんな反応するんだろうね」
「...っ!」
真人が私の首を撫でながらいう。あまりの恐怖に、震えと全身からの汗が止まらない。
「かーわい。そんな反応されたら本当に殺したくなっちゃうじゃん。でもまぁとりあえず安心しなよ。俺、君のこと結構気に入ってるからさ。そう簡単に殺したりしないから」
ね?と、手を首から移して頭を撫でてくる。その手はぞっとするほど優しくて、怖い。
「それにしても惜しいことしたなー。攫っただけであんなに怒り狂うんだったら、どうせなら名前のこと1人でいる時じゃなくて虎杖悠仁の目の前で捕まえればよかったなー。そしたらもーっと面白い反応してくれたんだろうなー。あーあ、残念。そうしてたらさ、名前だって、だーい好きな虎杖君に最後に1度は会えたのにね。俺ってばもう少し考えて行動すべきだったなー」
私を自分の膝の上に寝転ばせて、髪を撫でながらゲラゲラと笑っている真人。見ているだけで腹が立つ。だけれども、私に真人を黙らせる術なんて何も無い。大人しく彼の嘲笑を聞いていることしか出来ない。
ここに連れてこられてから、自分がどれだけ無力なのか嫌という程思い知らされた。
小さい頃から呪霊を見る力はあったが、祓う力は一切ない。
とんでもない役立たずだ。五条先生や虎杖君をはじめとした高専の人達に迷惑を掛けてはいけない。気をつけよう。そう思って注意していたつもりだった。なのにこんな状況になってしまうなんて、自分が情けない。
「名前ー?どうしたのー?あっもしかして自分のこと情けないって思ってる?でも仕方ないよ。君、呪霊のことが見えるってだけでそれ以外はなーんの力もないただの普通の女の子なんだから。俺と出会って対処出来るわけないんだからさ。寧ろこうやって生きてるだけでも凄いことだよ」
だから、自分を恥じることなんてないよ。自信持ちな。ね?そう残酷な程優しい声で言う。そういう彼の目は、一切光もなく、笑ってもいない。怖い。怯える私を真人はとても楽しそうに見ている。彼は私の怯える姿をいつも楽しそうに見ている。怖がれば怖がる程、怯えれば怯える程この男の思う壷だということはよく分かっている。分かってはいるのに、いつも怯えしまう。もう嫌だ。なんなんだ私は。
誰よりも迷惑を掛けたくなかった虎杖君に、1番迷惑を掛けてしまうなんて。虎杖君だけじゃない。五条先生や七海さんにも、伏黒君と釘崎さん、先輩方にまで迷惑をかけてしまっているかもしれない。こんなどうしようもない奴のために、沢山の人の手を煩わせてしまっているかもしれないだなんて...。自分が嫌いになりそうだ。
こんな私なんて、いっそ死んでしまった方が良いのではないか。
そうだ、いっそ死んでしまおう。そしたら真人からも逃げられる。これ以上、虎杖君の負担にもならないで済む。
「...もし名前が自殺なんてしたらアイツ...虎杖はどんな反応するだろうね。泣いちゃうかな?後追い自殺したりして!まぁそれはないか。でもなんにしても、アイツは一生後悔することになるだろうね。あの時、自分が君から離れたりしなかったら、そしたら君が俺に攫われることも、死ぬこともなかったのにって」
私の考えは全てお見通しだとでもいうように真人は私の見出しかけた逃げ道をいとも簡単に閉ざした。
「名前、お前は籠の中の鳥だ。どんなに足掻いてもここからは...俺からは逃げられない。だから大人しく、俺に飼い殺しにされてなよ。そしたらずっと大切にしてあげる。守ってあげる。幸せにしてあげるよ」
そういいながら真人は私を自身の腕の中に閉じ込める。
その腕は足に付けられた枷よりも、動かすことも出来ない扉よりも強く頑丈に、私を縛り付けているようだ。