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美しく咲き誇る桜を、一緒に見たかった。あの子と一緒に。
でももう、その願いは永遠に叶わない。
『あ、あああ、ありがとよ、いつも、その、せ、世話してくれて……!』
最後に会った時のあの子の緊張しきって震えていた声と、照れて真っ赤に染まった顔のことを思い出す。大柄で怖い顔とは裏腹に、照れ屋さんなあの子らしい姿に、思わず笑ってしまった。
「見事なもんだな、満開に咲くとこんなに綺麗なのか」
ふと横から聞こえてきた声に、驚いて見てみると
「よう、元気か?」
「風柱様…」
風柱様が私の隣に立って桜を見上げていた。
「すみません、全く気がつかなくて…」
そういうと気にするなと言ってくださった。
「今日は何かご用ですか?すみません、今カナヲ達は炭治朗君たちの所へ行っていて留守にしてまして…」
「あぁ、大丈夫だ。今日はお前に用があって来たんだ」
「私にですか?」
聞き返す私に対して風柱様は「おう」と言いながら着物から何やら可愛らしい包みを取り出して渡してきた。首を傾げていると、
「これ、弟の…玄弥の遺品を整理してたら出てきたんだ。多分、お前に渡そうとしてたんだろうと思ってな」
弟…あぁ、そういえば2人は兄弟で鬼狩りをしていたんだったな。お兄さんのお話を嬉しそうに…けれども悲しそうにしていたことを思い出す。
風柱様から包みを受け取って開けてみると
「これ…桜の簪…?」
「誰に渡そうとしていたのか、俺には見当もつかなくてな。だから竈門に聞いてみたんだ。誰か心当たりないかって。そしたら恐らくお前に渡そうとしてたんじゃないかって言われてな」
「私に…?」
「あぁ。……お前、弟と仲良くしてくれてたんだってな。蝶屋敷に運ばれてくるたび、必ず世話妬いてくれてたって教えてくれたよ。だからきっと、それはお前に渡そうとしてたんだと思う」
胡蝶が言ってたしな、お前は桜の花が好きだって。と続ける風柱様。…桜が好きって言ったこと、覚えていてくれてたんだ。
「でも、いいんですか?玄弥君…弟さんの形見なのに、私が貰っても…」
「だから持ってて欲しいんだよ。俺が持ってるより、お前に持っててもらえる方がアイツも嬉しいだろうからよ。受け取ってくれ。迷惑だったら、捨ててもいいからよ」
そういいながら風柱様は苦笑した。そんな風に言われたら、受け取らないわけにはいかない。
「ありがとう、ございます。一生大切にします」
そういうと、風柱様は嬉しそうに笑って「ありがとう」といった。
その笑顔を見たら、いつの日かのあの子のことを思い出した。やっぱり、兄弟なんだなぁ。笑った顔が、そっくりだ。
*****
『な、なぁ…あんた、なんか好きなものとかって、あるか…?』
『好きなもの?どうしてそんなことを聞くの?』
『べ、別にいいだろなんでも!…で、どうなんだよ。なんかねぇのか?好きなもの…』
『うーん、そうだなー…桜が好きかな』
『桜?』
『うん、桜。蝶屋敷にもあるでしょ?桜の花の木。春になると満開に咲いて、とても綺麗なの。花弁の舞い散る姿を見るのが、大好きなの』
『そうなのか…俺も、見てみたい…かも…』
『じゃあいつか2人で一緒に見よう!』
「あぁ!約束だ、一緒に満開の桜見ような!』
――そう言って笑ってくれたあの子の顔を、私は生涯忘れることはないだろう。
*****
「苗字?どうした?俺、何か悪い事言ったか?!」
「え………?」
気がつくと私は、泣いていた様だ。目の前の風柱様が酷く焦っている。大丈夫です、ごめんなさい、気にしないで下さい。そう言いたいのに、涙が止まることはなくて、私は大声を上げて、泣いた。
―――玄弥君、玄弥君。私ね、きっと貴方のことが好きだったの。
だから、貴方に生きていて欲しかった。貴方と、生きて行きたかった。一緒に桜を見たかった。だけども貴方は、もういない。
一緒に桜を見ることも、一緒に生きていくことも、もう出来ない。
もしも、もしも来世というものが本当にあるのならば、もしもまた、人間に生まれることが出来たのなら、もしもまた、貴方と出会うことが出来たのなら、貴方と一緒に生きていきたいです。
いつの日か、いつの日か貴方と一緒に、咲き誇った桜を見たいです。
それが私の、たった1つの、願いです。
でももう、その願いは永遠に叶わない。
『あ、あああ、ありがとよ、いつも、その、せ、世話してくれて……!』
最後に会った時のあの子の緊張しきって震えていた声と、照れて真っ赤に染まった顔のことを思い出す。大柄で怖い顔とは裏腹に、照れ屋さんなあの子らしい姿に、思わず笑ってしまった。
「見事なもんだな、満開に咲くとこんなに綺麗なのか」
ふと横から聞こえてきた声に、驚いて見てみると
「よう、元気か?」
「風柱様…」
風柱様が私の隣に立って桜を見上げていた。
「すみません、全く気がつかなくて…」
そういうと気にするなと言ってくださった。
「今日は何かご用ですか?すみません、今カナヲ達は炭治朗君たちの所へ行っていて留守にしてまして…」
「あぁ、大丈夫だ。今日はお前に用があって来たんだ」
「私にですか?」
聞き返す私に対して風柱様は「おう」と言いながら着物から何やら可愛らしい包みを取り出して渡してきた。首を傾げていると、
「これ、弟の…玄弥の遺品を整理してたら出てきたんだ。多分、お前に渡そうとしてたんだろうと思ってな」
弟…あぁ、そういえば2人は兄弟で鬼狩りをしていたんだったな。お兄さんのお話を嬉しそうに…けれども悲しそうにしていたことを思い出す。
風柱様から包みを受け取って開けてみると
「これ…桜の簪…?」
「誰に渡そうとしていたのか、俺には見当もつかなくてな。だから竈門に聞いてみたんだ。誰か心当たりないかって。そしたら恐らくお前に渡そうとしてたんじゃないかって言われてな」
「私に…?」
「あぁ。……お前、弟と仲良くしてくれてたんだってな。蝶屋敷に運ばれてくるたび、必ず世話妬いてくれてたって教えてくれたよ。だからきっと、それはお前に渡そうとしてたんだと思う」
胡蝶が言ってたしな、お前は桜の花が好きだって。と続ける風柱様。…桜が好きって言ったこと、覚えていてくれてたんだ。
「でも、いいんですか?玄弥君…弟さんの形見なのに、私が貰っても…」
「だから持ってて欲しいんだよ。俺が持ってるより、お前に持っててもらえる方がアイツも嬉しいだろうからよ。受け取ってくれ。迷惑だったら、捨ててもいいからよ」
そういいながら風柱様は苦笑した。そんな風に言われたら、受け取らないわけにはいかない。
「ありがとう、ございます。一生大切にします」
そういうと、風柱様は嬉しそうに笑って「ありがとう」といった。
その笑顔を見たら、いつの日かのあの子のことを思い出した。やっぱり、兄弟なんだなぁ。笑った顔が、そっくりだ。
*****
『な、なぁ…あんた、なんか好きなものとかって、あるか…?』
『好きなもの?どうしてそんなことを聞くの?』
『べ、別にいいだろなんでも!…で、どうなんだよ。なんかねぇのか?好きなもの…』
『うーん、そうだなー…桜が好きかな』
『桜?』
『うん、桜。蝶屋敷にもあるでしょ?桜の花の木。春になると満開に咲いて、とても綺麗なの。花弁の舞い散る姿を見るのが、大好きなの』
『そうなのか…俺も、見てみたい…かも…』
『じゃあいつか2人で一緒に見よう!』
「あぁ!約束だ、一緒に満開の桜見ような!』
――そう言って笑ってくれたあの子の顔を、私は生涯忘れることはないだろう。
*****
「苗字?どうした?俺、何か悪い事言ったか?!」
「え………?」
気がつくと私は、泣いていた様だ。目の前の風柱様が酷く焦っている。大丈夫です、ごめんなさい、気にしないで下さい。そう言いたいのに、涙が止まることはなくて、私は大声を上げて、泣いた。
―――玄弥君、玄弥君。私ね、きっと貴方のことが好きだったの。
だから、貴方に生きていて欲しかった。貴方と、生きて行きたかった。一緒に桜を見たかった。だけども貴方は、もういない。
一緒に桜を見ることも、一緒に生きていくことも、もう出来ない。
もしも、もしも来世というものが本当にあるのならば、もしもまた、人間に生まれることが出来たのなら、もしもまた、貴方と出会うことが出来たのなら、貴方と一緒に生きていきたいです。
いつの日か、いつの日か貴方と一緒に、咲き誇った桜を見たいです。
それが私の、たった1つの、願いです。