短編集
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目を覚ますと視界に入ってきたのは見覚えの無い天井。ここはどこ?そう思って急いで起き上が…
「うっぐっ…!」
ろうとして、身体を何かに絞めあげられた。そこで目を覚ます前に自分の身に起きたことを思い出す。そうだ、私は死柄木弔に…!
「よぉ、名前ちゃん起きたかー?おはよぉー。いい夢見れたか?」
耳に入ってきた声が不快で眉間に皺が寄る。
「いい夢、なんて見れるわけないでしょッ!」
睨みつけながら言う私がお気に召したのか死柄木は「そりゃ残念だ。今日寝る時は楽しい夢見れるといいなー」と頭を撫でながら言って私を膝の上に座らせて来た。
「今日寝る時?ふざけないで、私を解放しなさいよ!」
と抗議すると解放?するわけねぇじゃんと笑いながら言われた。
なんなのこの男は。私を攫った意味も、行動原理も何も分からない。私の個性が目当て?いや、私の個性はヴィランに狙われるようなものじゃない。個性目当てで狙うなら林間合宿の時と同じように爆豪君とか常闇君とか、エンデヴァーの息子であり個性も強力な轟君とかを狙うだろう。
雄英を貶めるため?でもそれなら私が1人でいる時こっそり捕まえるよりも大勢の人の前で攫った方が都合がいいんじゃ…?林間合宿の時爆豪君をエンターテインメントの様に攫ったのだってきっとそういう理由があったと思うし。
「何アホ面でぼーっとしてんだ?そんな風にするくらいなら俺とお話しよーぜ?」
頬をフニフニと触りながら声をかけてきた。すごく不快。
「する訳ないでしょ、触んないでよ気色悪い!」
「ひっでぇなぁ、そこまでボロクソ言うことねぇだろ。つかさ、お前自分の立場が割と危険だって分かってんの?」
お前の命は俺が握ってるっつっても過言じゃねぇってこと忘れない方がいいぜ?とニヤつきながら言われる。言い返す言葉が浮かばずつい押し黙ってしまう。大人しくなった私を見て満足気な顔をして、
「やっと大人しくなったな。いい子だなぁー。最初からそうしときゃいいのに」
とまた頭を撫でられる。せめてもの抵抗と思い、触らせないように頭を動かしてみる。当然のように無駄な行動で終わる。
「……名前ちゃん可愛いなぁ。見てるだけで楽しい」
そう言ったかと思うと、ギューッと抱きしめられた。苦しくて逃れようとする。と、また縄にも締め上げられて余計苦しくなる。
「ハハハッすげぇまんま予想通りの反応!可愛いなぁ……ほんっと可愛いよ名前ちゃーん」
そんな私のことを見て、心底楽しそうに笑っている死柄木に殺意が芽生える。せめて…せめて縄だけでも解ければいいのにッ…!
「一緒にいるだけで退屈しねぇな。最高だよお前」
ほんと、手に入って良かった。と笑いながら言う死柄木に、心底ぞっとする。なんで…なんでそんなおぞましいことを、無邪気に…子どものような純粋な笑顔で言えてしまうの……?
「他のやつに取られねぇように大切にしまっとかねぇとなぁ……どこにしまうかな……」
またぎゅーっと抱きしめられて、苦しい。
「何が目的なの…!私を攫ってなんの意味があるって言うの…!」
耐えられなくなり、質問をぶつけてみる。すると彼は目的?意味?と首を傾げた。
「だからこの前も言ったろ。目的も意味も特になんもねぇよ。ただ、俺がお前と話したかった。だからずっと捕まえる機会を探してた。ただそれだけだ」
たかが数日前に言ったのにもう忘れちまったのか?とケラケラ笑いながらバカにしたように煽ってくる。……数日前?私が貴方に捕まったのは昨日じゃ……というと「あぁ、そうだ悪ぃ言うの忘れてた」と笑いながらスマホ画面を見せて来た。なんだと思いつつ覗き込むと、表示された日にちにぎょっとする。私が捕まってから3日が経過していた。
「ごめんなー、せいぜい10時間くらい寝かせるつもりだったんだけどさー、飲ませた薬の分量間違えちまったみたいで。3日眠らせちまった」
まぁでも安心しろ?命に関わるようなことはねぇからさ、と頭を撫でながら言われる。間違えたなんて絶対嘘だ。わざと多く飲ませたんだ。睨みつけると「怖い顔すんなよー。可愛い顔が台無しだぜ?」と愉快そうに笑い声を上げながら言われた。
「雄英とヒーローと警察。それからお前の家族が必死こいてお前を探してるみたいだぜ。愛されてるなー、名前ちゃんは。がんばれーって応援してやれば?」
見つかることは絶対無いから無駄なんだけどな、とケラケラ笑い声を上げ続ける。なんでこんなに自信満々何だこの人は。不気味だ。
「その自信どこから来るのよ。ヒーローが情報を突き止めて来るかもとか考えない訳?神野で爆豪君を攫った時痛い目見たのに忘れた?学習能力ないのは貴方も同じじゃない」
「ひでぇなぁ。そんなこと言うなんて傷ついちまうぜ。意地悪だなぁ」
と頬擦りしてくる。ゾワッと鳥肌が立つ。離れようと暴れて、また縄に締め上げられている私を「学習しねぇなお前」と笑いながら見ている。
「作戦がいくつかあるんだ。お前がヒーローに取られねぇようにするための作戦が。1つ目は、お前に協力してもらう方法」
私を膝の上に座らせ直しながら頭を撫でて言う。
「は?協力?する訳ないでしょバカじゃないの」
「そうか、残念。じゃ2つ目の作戦を実行するかな」
ちょっと待ってろよと、私をソファに座らせて死柄木がどこかへ行った。言われた通り待つことしか出来ない。
「悪いな、待たせちまって。やることなんもなくて退屈だったろ」
そう言いながら死柄木が何かを引き摺ってきた。引き摺られているものの正体に気づき、血の気が引く。
それは女の子だ。私と同じ年頃の女の子が、身体を縛られて口を塞がれて怯えた様子で涙を流しながら引き摺られている。
攫われて来たんだ。早く助けないと!そう思い近付こうとするがやはり縄が締め上げてきて身動き取れない。けどそんなこと言ってる場合じゃない。早く助けないと!そう思うのに、縄に締め上げられて思うように動けず地面に転がってしまう。
「どうしたんだよ突然焦って」
そんな動くと縄が寂しがって逃げないでくれーって言うぜ?と地面に転がりもがく私を楽しげに見ながら言う。
「あの子は…ッ何ッ…!」
なんとか言葉を発し問い詰める。すると穏やかに笑い「お前の身代わりにしようと思うんだ」と答えた。
「私の……身代わり……?」
震える声で問い掛けると、「あぁ」と笑いながら返事をし、語り出す。
「荼毘にな、こいつを燃やさせるんだ。身元が分からなくなるほど原型なくなるまで。そんでどっか適当なとこに捨てる。その近くにお前の生徒手帳とか財布とか鞄とか靴とか持ち物置いて。で、お前の着てる服を着させる。そしたらあっという間にお前……苗字名前の遺体が完成する。名前ちゃんはこの世からいない存在ってことになる。そのために態々お前と同じ年頃で、同じくらいの身長と体格の女の子探して来たんだ。そしたら思った以上に時間かかっちまって大変だったよ。けどなかなかいい作戦だろ?」
なぁ?と楽しそうに……まるで子どもが遊びを提案するようなノリでおぞましい作戦を無邪気に話す。
「そんなの上手くいくわけないでしょ!仮に私の遺体だと誤認させることが出来たとしても、この子の家族がこの子を探して大騒ぎになるわ!そしたらいずれバレるに決まってる!」
「その辺は大丈夫だ。こいつは孤児院育ちで家族も、居なくなったとこで探してくれるような人も誰も居ねぇ。だからなんの問題もねぇよ」
お前はなんも心配しなくていいんだよと、頬を撫でてくる。その姿があまりにも恐ろしくて。恐怖に震える。
でも、怖がってる場合じゃない。なんとかしてあの子を助けないと。死なせないように、無事に家へ帰らせてあげないと。
「というわけだから悪いな、ガキ。お前には死んでもらうけど恨まないでくれなー」
死柄木が女の子に近づき頭を撫でながら言う。女の子は泣きながら必死に首を横に振っている。口を塞がれてしまっているから声を発することが出来ていないけれども、必死に命乞いをしているのだろう。
「やめて!その子は関係ないでしょ、解放してあげて!!!」
縄に締め上げられながらも必死に2人の所へ這って行こうとする私の姿を嘲笑いながら「だって協力してくれねぇんだろ?だったらこのガキ殺して遺体をお前だって偽装する以外方法ねぇもん」などと抜かす。
「私が協力する!!協力するからその子は解放して!!!」
思わず絶叫する。すると死柄木が女の子から手を離し私の方へ靴音を鳴らし歩いて来た。それからニッと不気味に、嬉しそうに笑って
「ほんと?ありがとなァ……さっすがヒーロー。優しいねぇ……」
と言いながら私の頭を撫でる。そしてどこかへ行ったかと思うと、私の荷物を持ってきて授業で使っているノートと筆箱を取り出し目の前に転がして来た。
「これで遺書書いて。書いてくれたらお前の靴と他の荷物と一緒に適当なとこ置いてくる」
そしたらめでたくお前はこの世からいなくなったことになる、そう言いながら縄を解かれ、ローファーを脱がされた。……遺書なんて、書きたくない。自分の存在をこの世からないことになんて、したくない。躊躇っていると「書かねぇのか?じゃああのガキは死ぬことになるな」と笑いながらいう死柄木の言葉に慌てて書き始める。書き終わると「はい、よく書けましたー」と頭を撫でられた。
じゃあこの遺書置きに行くか。ついでにあのガキも返してくるとするよと言いながら女の子を連れて部屋から出て行った。
……部屋には私1人。拘束は外されている。今ならここから出られッ!出られるかもしれない。逃げないと。そう思った瞬間、縄が身体に絡みついて来た。何がなんだかわからないまま、抵抗しようとしたが気づくとまた身動きが取れないように縛られていた。バランスを崩し、床に倒れ込んでしまう。
「あっそうそうごめん言うの忘れてた。その縄さー、解くだけだと数分したらまたお前のこと縛るようになってんだー。……あぁ、もう縛られた後か。ごめんなぁー、注意すんの忘れちまってー」
ニヤニヤと笑いながら頭を撫でてくる顔に、涙が滲みそうになったが歯を食いしばり押し殺す。
「じゃ、お利口さんで留守番しててなァー」
と言いながらソファに寝転がされた。
◇
「あぁ、もう寝ちまったのか」
書かせた遺書と履いていたローファーを適当な場所へ置き、身代わりにしようと提案したガキを家へと帰し戻ると名前ちゃんは静かに寝息をたてて眠っていた。目元にうっすらと涙の跡がある。泣いてたのか。せっかくなら泣いているとこ見たかったなーと思いつつ、自分の膝に名前ちゃんの頭を乗せて頭を撫でる。
「あのガキ燃やさず帰して良かったのかよ」
いつの間にか部屋に入って来ていた荼毘に質問を投げかけられた。
「あっ?問題ねぇよ。あのガキは家族ぐるみで先生の支援者だからな」
家族全員先生に心酔しててな。その経緯で俺の命令もよく聞いてくれんだよ、そう答えると荼毘は「支援者ねぇ……じゃあこっち側の人間っつー事か」と嘲笑い、
「そうとも知らずに助けようとして自ら捕らわれること選んじまって、挙句この世にもう居ねぇことにされるなんて。そのガキも可哀想になー」
なんて言っている。
「なかなかいいシナリオだろ?ヴィランらしく悪趣味で」
そう笑うと、「悪趣味な自覚あんのかよ」と呆れたように笑い返された。
そんな俺達の会話を知ってか知らずか、名前ちゃんの目から一筋の涙が伝ったように見えた。
「うっぐっ…!」
ろうとして、身体を何かに絞めあげられた。そこで目を覚ます前に自分の身に起きたことを思い出す。そうだ、私は死柄木弔に…!
「よぉ、名前ちゃん起きたかー?おはよぉー。いい夢見れたか?」
耳に入ってきた声が不快で眉間に皺が寄る。
「いい夢、なんて見れるわけないでしょッ!」
睨みつけながら言う私がお気に召したのか死柄木は「そりゃ残念だ。今日寝る時は楽しい夢見れるといいなー」と頭を撫でながら言って私を膝の上に座らせて来た。
「今日寝る時?ふざけないで、私を解放しなさいよ!」
と抗議すると解放?するわけねぇじゃんと笑いながら言われた。
なんなのこの男は。私を攫った意味も、行動原理も何も分からない。私の個性が目当て?いや、私の個性はヴィランに狙われるようなものじゃない。個性目当てで狙うなら林間合宿の時と同じように爆豪君とか常闇君とか、エンデヴァーの息子であり個性も強力な轟君とかを狙うだろう。
雄英を貶めるため?でもそれなら私が1人でいる時こっそり捕まえるよりも大勢の人の前で攫った方が都合がいいんじゃ…?林間合宿の時爆豪君をエンターテインメントの様に攫ったのだってきっとそういう理由があったと思うし。
「何アホ面でぼーっとしてんだ?そんな風にするくらいなら俺とお話しよーぜ?」
頬をフニフニと触りながら声をかけてきた。すごく不快。
「する訳ないでしょ、触んないでよ気色悪い!」
「ひっでぇなぁ、そこまでボロクソ言うことねぇだろ。つかさ、お前自分の立場が割と危険だって分かってんの?」
お前の命は俺が握ってるっつっても過言じゃねぇってこと忘れない方がいいぜ?とニヤつきながら言われる。言い返す言葉が浮かばずつい押し黙ってしまう。大人しくなった私を見て満足気な顔をして、
「やっと大人しくなったな。いい子だなぁー。最初からそうしときゃいいのに」
とまた頭を撫でられる。せめてもの抵抗と思い、触らせないように頭を動かしてみる。当然のように無駄な行動で終わる。
「……名前ちゃん可愛いなぁ。見てるだけで楽しい」
そう言ったかと思うと、ギューッと抱きしめられた。苦しくて逃れようとする。と、また縄にも締め上げられて余計苦しくなる。
「ハハハッすげぇまんま予想通りの反応!可愛いなぁ……ほんっと可愛いよ名前ちゃーん」
そんな私のことを見て、心底楽しそうに笑っている死柄木に殺意が芽生える。せめて…せめて縄だけでも解ければいいのにッ…!
「一緒にいるだけで退屈しねぇな。最高だよお前」
ほんと、手に入って良かった。と笑いながら言う死柄木に、心底ぞっとする。なんで…なんでそんなおぞましいことを、無邪気に…子どものような純粋な笑顔で言えてしまうの……?
「他のやつに取られねぇように大切にしまっとかねぇとなぁ……どこにしまうかな……」
またぎゅーっと抱きしめられて、苦しい。
「何が目的なの…!私を攫ってなんの意味があるって言うの…!」
耐えられなくなり、質問をぶつけてみる。すると彼は目的?意味?と首を傾げた。
「だからこの前も言ったろ。目的も意味も特になんもねぇよ。ただ、俺がお前と話したかった。だからずっと捕まえる機会を探してた。ただそれだけだ」
たかが数日前に言ったのにもう忘れちまったのか?とケラケラ笑いながらバカにしたように煽ってくる。……数日前?私が貴方に捕まったのは昨日じゃ……というと「あぁ、そうだ悪ぃ言うの忘れてた」と笑いながらスマホ画面を見せて来た。なんだと思いつつ覗き込むと、表示された日にちにぎょっとする。私が捕まってから3日が経過していた。
「ごめんなー、せいぜい10時間くらい寝かせるつもりだったんだけどさー、飲ませた薬の分量間違えちまったみたいで。3日眠らせちまった」
まぁでも安心しろ?命に関わるようなことはねぇからさ、と頭を撫でながら言われる。間違えたなんて絶対嘘だ。わざと多く飲ませたんだ。睨みつけると「怖い顔すんなよー。可愛い顔が台無しだぜ?」と愉快そうに笑い声を上げながら言われた。
「雄英とヒーローと警察。それからお前の家族が必死こいてお前を探してるみたいだぜ。愛されてるなー、名前ちゃんは。がんばれーって応援してやれば?」
見つかることは絶対無いから無駄なんだけどな、とケラケラ笑い声を上げ続ける。なんでこんなに自信満々何だこの人は。不気味だ。
「その自信どこから来るのよ。ヒーローが情報を突き止めて来るかもとか考えない訳?神野で爆豪君を攫った時痛い目見たのに忘れた?学習能力ないのは貴方も同じじゃない」
「ひでぇなぁ。そんなこと言うなんて傷ついちまうぜ。意地悪だなぁ」
と頬擦りしてくる。ゾワッと鳥肌が立つ。離れようと暴れて、また縄に締め上げられている私を「学習しねぇなお前」と笑いながら見ている。
「作戦がいくつかあるんだ。お前がヒーローに取られねぇようにするための作戦が。1つ目は、お前に協力してもらう方法」
私を膝の上に座らせ直しながら頭を撫でて言う。
「は?協力?する訳ないでしょバカじゃないの」
「そうか、残念。じゃ2つ目の作戦を実行するかな」
ちょっと待ってろよと、私をソファに座らせて死柄木がどこかへ行った。言われた通り待つことしか出来ない。
「悪いな、待たせちまって。やることなんもなくて退屈だったろ」
そう言いながら死柄木が何かを引き摺ってきた。引き摺られているものの正体に気づき、血の気が引く。
それは女の子だ。私と同じ年頃の女の子が、身体を縛られて口を塞がれて怯えた様子で涙を流しながら引き摺られている。
攫われて来たんだ。早く助けないと!そう思い近付こうとするがやはり縄が締め上げてきて身動き取れない。けどそんなこと言ってる場合じゃない。早く助けないと!そう思うのに、縄に締め上げられて思うように動けず地面に転がってしまう。
「どうしたんだよ突然焦って」
そんな動くと縄が寂しがって逃げないでくれーって言うぜ?と地面に転がりもがく私を楽しげに見ながら言う。
「あの子は…ッ何ッ…!」
なんとか言葉を発し問い詰める。すると穏やかに笑い「お前の身代わりにしようと思うんだ」と答えた。
「私の……身代わり……?」
震える声で問い掛けると、「あぁ」と笑いながら返事をし、語り出す。
「荼毘にな、こいつを燃やさせるんだ。身元が分からなくなるほど原型なくなるまで。そんでどっか適当なとこに捨てる。その近くにお前の生徒手帳とか財布とか鞄とか靴とか持ち物置いて。で、お前の着てる服を着させる。そしたらあっという間にお前……苗字名前の遺体が完成する。名前ちゃんはこの世からいない存在ってことになる。そのために態々お前と同じ年頃で、同じくらいの身長と体格の女の子探して来たんだ。そしたら思った以上に時間かかっちまって大変だったよ。けどなかなかいい作戦だろ?」
なぁ?と楽しそうに……まるで子どもが遊びを提案するようなノリでおぞましい作戦を無邪気に話す。
「そんなの上手くいくわけないでしょ!仮に私の遺体だと誤認させることが出来たとしても、この子の家族がこの子を探して大騒ぎになるわ!そしたらいずれバレるに決まってる!」
「その辺は大丈夫だ。こいつは孤児院育ちで家族も、居なくなったとこで探してくれるような人も誰も居ねぇ。だからなんの問題もねぇよ」
お前はなんも心配しなくていいんだよと、頬を撫でてくる。その姿があまりにも恐ろしくて。恐怖に震える。
でも、怖がってる場合じゃない。なんとかしてあの子を助けないと。死なせないように、無事に家へ帰らせてあげないと。
「というわけだから悪いな、ガキ。お前には死んでもらうけど恨まないでくれなー」
死柄木が女の子に近づき頭を撫でながら言う。女の子は泣きながら必死に首を横に振っている。口を塞がれてしまっているから声を発することが出来ていないけれども、必死に命乞いをしているのだろう。
「やめて!その子は関係ないでしょ、解放してあげて!!!」
縄に締め上げられながらも必死に2人の所へ這って行こうとする私の姿を嘲笑いながら「だって協力してくれねぇんだろ?だったらこのガキ殺して遺体をお前だって偽装する以外方法ねぇもん」などと抜かす。
「私が協力する!!協力するからその子は解放して!!!」
思わず絶叫する。すると死柄木が女の子から手を離し私の方へ靴音を鳴らし歩いて来た。それからニッと不気味に、嬉しそうに笑って
「ほんと?ありがとなァ……さっすがヒーロー。優しいねぇ……」
と言いながら私の頭を撫でる。そしてどこかへ行ったかと思うと、私の荷物を持ってきて授業で使っているノートと筆箱を取り出し目の前に転がして来た。
「これで遺書書いて。書いてくれたらお前の靴と他の荷物と一緒に適当なとこ置いてくる」
そしたらめでたくお前はこの世からいなくなったことになる、そう言いながら縄を解かれ、ローファーを脱がされた。……遺書なんて、書きたくない。自分の存在をこの世からないことになんて、したくない。躊躇っていると「書かねぇのか?じゃああのガキは死ぬことになるな」と笑いながらいう死柄木の言葉に慌てて書き始める。書き終わると「はい、よく書けましたー」と頭を撫でられた。
じゃあこの遺書置きに行くか。ついでにあのガキも返してくるとするよと言いながら女の子を連れて部屋から出て行った。
……部屋には私1人。拘束は外されている。今ならここから出られッ!出られるかもしれない。逃げないと。そう思った瞬間、縄が身体に絡みついて来た。何がなんだかわからないまま、抵抗しようとしたが気づくとまた身動きが取れないように縛られていた。バランスを崩し、床に倒れ込んでしまう。
「あっそうそうごめん言うの忘れてた。その縄さー、解くだけだと数分したらまたお前のこと縛るようになってんだー。……あぁ、もう縛られた後か。ごめんなぁー、注意すんの忘れちまってー」
ニヤニヤと笑いながら頭を撫でてくる顔に、涙が滲みそうになったが歯を食いしばり押し殺す。
「じゃ、お利口さんで留守番しててなァー」
と言いながらソファに寝転がされた。
◇
「あぁ、もう寝ちまったのか」
書かせた遺書と履いていたローファーを適当な場所へ置き、身代わりにしようと提案したガキを家へと帰し戻ると名前ちゃんは静かに寝息をたてて眠っていた。目元にうっすらと涙の跡がある。泣いてたのか。せっかくなら泣いているとこ見たかったなーと思いつつ、自分の膝に名前ちゃんの頭を乗せて頭を撫でる。
「あのガキ燃やさず帰して良かったのかよ」
いつの間にか部屋に入って来ていた荼毘に質問を投げかけられた。
「あっ?問題ねぇよ。あのガキは家族ぐるみで先生の支援者だからな」
家族全員先生に心酔しててな。その経緯で俺の命令もよく聞いてくれんだよ、そう答えると荼毘は「支援者ねぇ……じゃあこっち側の人間っつー事か」と嘲笑い、
「そうとも知らずに助けようとして自ら捕らわれること選んじまって、挙句この世にもう居ねぇことにされるなんて。そのガキも可哀想になー」
なんて言っている。
「なかなかいいシナリオだろ?ヴィランらしく悪趣味で」
そう笑うと、「悪趣味な自覚あんのかよ」と呆れたように笑い返された。
そんな俺達の会話を知ってか知らずか、名前ちゃんの目から一筋の涙が伝ったように見えた。
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