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朝起きると、寮を出なくてはいけない時間だった。そのせいでメイクもヘアアレンジも朝ご飯を食べることも出来なかった。
ボサボサな髪とすっぴんのまま学校へ行くと、隣の席の爆豪君に「せめて髪くらい整えてから来いよ……」と呆れたように言われた。ほっといて。
1時間目のマイク先生の授業。いつもはちゃんとやるのに。今日は課題をやって来るのを忘れてしまった。しかもこういう日に限って先生に当てられてしまい課題を忘れたことがバレてしまった。先生と飯田君からのダブルでのお説教を受ける羽目に。ダブルはきついて。
お昼ご飯。大好きなクリームシチューを頼んでウッキウキで席を探してたら盛大に転びクリームシチューをひっくり返してしまった。一部始終を見てたB組の物間君に煽り散らかされた。恥ずかしい。
昼休み。中庭を散歩してたら可愛い猫がいたから嬉しくて嬉しくて。遊ぼうとしたらご機嫌ななめだったのか思い切り引っ掻かれた。C組の心操君にはめちゃくちゃ懐いてたのに。差別だ。
放課後。相澤先生に「エリちゃんが喜びそうな服を買ってきてくれ」とお使いを頼まれた。先生に頼ってもらえるなんて嬉しいな!エリちゃんの服を選べるのも嬉しい。とびきり可愛いのを選んであげなくちゃ。
いい事何も無い1日だと思ってたけど最後の最後にいいことがありそうで良かった。エリちゃんどんな服を喜んでくれるかな。猫……は、やめとこう。眼力猫ダメ絶対!
◇
「雄英ってほんと学習能力ねぇなァ。1度生徒誘拐されてるってのに生徒を1人で出歩かせるとか」
そう私を縛り上げ地面に座らせながら目の前の男の人━━死柄木弔は笑い言う。
「そのせいでまた、ヴィランに大事な可愛い生徒を誘拐されるなんて不祥事なんて言葉じゃ片付けれねぇなぁ」
と、私の頬を撫でる。触らないで!と言って振り払おうとするが、縛られているせいでそれは叶わない。思わず舌打ちをする。そんな私のことをニヤニヤと笑って「釣れねぇこと言うなよォ。傷つくなぁ」と頬をフニフニと触ってくる。気持ち悪い。
あぁもう情けない。考え事に夢中になってたら背後から近づいて来てた敵に気づかないでまんまと捕まってしまうなんて。情けなさすぎて相澤先生達に合わせる顔がない。呆気なく連れて来られた挙句にここがどこなのかも分からない。最悪すぎる。
「いやぁほんと、雄英が馬鹿で学習能力のない学校でラッキーだったよ。そのおかげでめでたくお前のことをとっ捕まえられた」
未だに私の頬を撫でながら笑い言う。雄英のことをバカにされたのが不快で、思わず眉間に皺がよる。そんな私のことを死柄木は相変わらず面白そうに眺めている。
なんとかして縄を解けないかと身体を動かしてみると「あんま動かねぇ方がいいぜ。その縄特殊だから」と忠告された。気にせず拘束から逃れようと身体を捻ると、縄がギリギリッと音を響かせながらまるで意志を持っているように私のことを締め上げてきた。苦しくて思わず呻き声を上げてしまう。
「ほら、言わんこっちゃねぇ。その縄はな、縛られてるやつが逃げようとしたりすると、逃げないでくれって締め上げるんだ」
まるで寂しがり屋な子どもみたいで可愛いだろ?とケラケラ笑い声を上げながら説明された。悪趣味…とボソッと呟くとそりゃどうもと返された。
「私を攫ったりして目的はなんなの」
「別に目的なんてねぇよ。ただお前が間抜け面引っ提げて街中でぼーっと突っ立ってたから暇潰しがてらとっ捕まえただけ」
仮にも一流の高校のヒーロー科通ってる生徒がこんなあっさり捕まるなんて思わなかったけどな。お前もう少し注意力とか磨くべきなんじゃねぇのと嘲笑いながら言われてぐぅの音も出ない。
「とりあえずさー。俺暇なんだよね。だから雑談にでも付き合ってくれよ、雄英生さーん」
「雑談に付き合え?ふざけないで。私は暇じゃないの。とっとと解放しなさいよ」
ていうか暇潰しがてらにとっ捕まえたって嘘でしょと言うと「なんだバレてたのか」とまた笑う。そりゃこんな場所やら縄やら準備されちゃ嫌でもわかるでしょ。
「USJの時からさ、ずっとお前のこと気になってたんだ。ゆっくり話してみてぇなって思ってた。だからいつか連れてこようと思ってた」
頭を撫でながら優しげに微笑みかけられた。背筋に寒気が走る。
「本当は林間合宿の時爆豪と一緒に連れて来させようと思ってたんだけどさ。けどアイツと一緒だとゆっくり話せそうにねぇからもう少し経ってからだなって思ったんだ。でも雄英が全寮制になっちまったからお前と接触出来るタイミングねぇなぁってすっげぇ困ってた。けどどうしても話してみたくてさ。なんとかならねぇかなぁって思いつつ雄英近くの街ふらついてたらたまたまお前見掛けたから思わず攫ってきちまった」
あ、俺を恨むなよ?恨むなら生徒を1人で出歩かせてるような警戒心も学習能力もねぇ雄英を恨めよなと、ニヤニヤ言ってくる顔をぶん殴ってやりたくなる。離れたいけれども、動いたらまた縄に締め上げられてしまう。どうにかしないと…。何とか解けないだろうか…。
「けど今日はもう遅せぇし残念だけど話は辞めとくか」
死柄木がスマホを見て呟く。時間を確認したのだろうか。話は辞めとく…?どういう…
「ッ!!?」
突然死柄木に何か錠剤のようなものを口に突っ込まれた。なんとか抵抗してみるが、まともな抵抗になんてならない。急いで吐き出そうとしたが「ダメだって、ちゃんと飲めよ」と無理矢理上を向かされて水を流し込まれてしまい、飲み込んでしまった。血の気が引くとは正しくこのことか。何を飲まされたんだ私は。なんて思っていると「ハハ、すげぇ顔色真っ青」と笑われる。そして優しく…不気味なほど、怖いほど優しく私の頭を撫でてまるで幼い子どもを安心させるような口振りで「大丈夫、ちょっと眠くなっちまうだけだから」そう言いながら膝枕され、頭と頬を撫でられる。するとそれを合図にするように、瞼が重くなって来た。ダメ…!眠っちゃダメ!!そう思いひたすら開こうとするのに、
「おやすみ。良い夢見ろよ、名前ちゃん」
という死柄木の言葉と共に、世界が真っ暗になった。
あぁ、今日という日はなんて不運な日なんだ。
◇
「ハハッ」
思わず笑い声を漏らす。やっと手に入れた。何年待っただろうかこの時を。思わず腕の中で眠る名前ちゃんを抱き締める。
「何笑ってんだよ気色悪ぃ…」
そんな俺に荼毘が冷ややかな目線を送りながら呟いてくる。
「うるせぇな、仕方ねぇだろ。ずっと前から手に入れたかったものがやっと手に入ったんだから」
笑わずにはいられるかよ、と名前ちゃんを抱きしめたまま言う。
「USJの時からっつってたじゃねぇか。別に大した年月経ってねぇだろ」
そう吐き捨ててくる荼毘に「ちげぇよ、10年前からだ」と反論する。
「10年前?弔君この子のことそんなに前から知っていたんですか?」
俺の腕の中ですやすやと寝息をたてて眠る名前ちゃんを見つめながらそう尋ねてくるトガに向かって「あぁ。残念ながらこっちは俺の事覚えてなかったみたいだったけどな」と返すと「あらら、悲しいですね」と返ってきたが無視した。
10年前出会って以来ずっと好きだった、初恋だった女の子と、偶然また出会えるなんて夢にも思ってなかった。
USJへ行った時、まさか名前ちゃんがそこにいるなんて夢にも思っていなかったからとても驚いた。それと同時に、すごく嬉しくなった。神様ってのなんざ信じちゃいねぇが、その時ばかりは信じたし心から礼を言った。
眠っている名前ちゃんの頭を撫でながら、思わずまた笑いが零れる。
あぁ、今日という日はなんて幸運な日なんだ。
ボサボサな髪とすっぴんのまま学校へ行くと、隣の席の爆豪君に「せめて髪くらい整えてから来いよ……」と呆れたように言われた。ほっといて。
1時間目のマイク先生の授業。いつもはちゃんとやるのに。今日は課題をやって来るのを忘れてしまった。しかもこういう日に限って先生に当てられてしまい課題を忘れたことがバレてしまった。先生と飯田君からのダブルでのお説教を受ける羽目に。ダブルはきついて。
お昼ご飯。大好きなクリームシチューを頼んでウッキウキで席を探してたら盛大に転びクリームシチューをひっくり返してしまった。一部始終を見てたB組の物間君に煽り散らかされた。恥ずかしい。
昼休み。中庭を散歩してたら可愛い猫がいたから嬉しくて嬉しくて。遊ぼうとしたらご機嫌ななめだったのか思い切り引っ掻かれた。C組の心操君にはめちゃくちゃ懐いてたのに。差別だ。
放課後。相澤先生に「エリちゃんが喜びそうな服を買ってきてくれ」とお使いを頼まれた。先生に頼ってもらえるなんて嬉しいな!エリちゃんの服を選べるのも嬉しい。とびきり可愛いのを選んであげなくちゃ。
いい事何も無い1日だと思ってたけど最後の最後にいいことがありそうで良かった。エリちゃんどんな服を喜んでくれるかな。猫……は、やめとこう。眼力猫ダメ絶対!
◇
「雄英ってほんと学習能力ねぇなァ。1度生徒誘拐されてるってのに生徒を1人で出歩かせるとか」
そう私を縛り上げ地面に座らせながら目の前の男の人━━死柄木弔は笑い言う。
「そのせいでまた、ヴィランに大事な可愛い生徒を誘拐されるなんて不祥事なんて言葉じゃ片付けれねぇなぁ」
と、私の頬を撫でる。触らないで!と言って振り払おうとするが、縛られているせいでそれは叶わない。思わず舌打ちをする。そんな私のことをニヤニヤと笑って「釣れねぇこと言うなよォ。傷つくなぁ」と頬をフニフニと触ってくる。気持ち悪い。
あぁもう情けない。考え事に夢中になってたら背後から近づいて来てた敵に気づかないでまんまと捕まってしまうなんて。情けなさすぎて相澤先生達に合わせる顔がない。呆気なく連れて来られた挙句にここがどこなのかも分からない。最悪すぎる。
「いやぁほんと、雄英が馬鹿で学習能力のない学校でラッキーだったよ。そのおかげでめでたくお前のことをとっ捕まえられた」
未だに私の頬を撫でながら笑い言う。雄英のことをバカにされたのが不快で、思わず眉間に皺がよる。そんな私のことを死柄木は相変わらず面白そうに眺めている。
なんとかして縄を解けないかと身体を動かしてみると「あんま動かねぇ方がいいぜ。その縄特殊だから」と忠告された。気にせず拘束から逃れようと身体を捻ると、縄がギリギリッと音を響かせながらまるで意志を持っているように私のことを締め上げてきた。苦しくて思わず呻き声を上げてしまう。
「ほら、言わんこっちゃねぇ。その縄はな、縛られてるやつが逃げようとしたりすると、逃げないでくれって締め上げるんだ」
まるで寂しがり屋な子どもみたいで可愛いだろ?とケラケラ笑い声を上げながら説明された。悪趣味…とボソッと呟くとそりゃどうもと返された。
「私を攫ったりして目的はなんなの」
「別に目的なんてねぇよ。ただお前が間抜け面引っ提げて街中でぼーっと突っ立ってたから暇潰しがてらとっ捕まえただけ」
仮にも一流の高校のヒーロー科通ってる生徒がこんなあっさり捕まるなんて思わなかったけどな。お前もう少し注意力とか磨くべきなんじゃねぇのと嘲笑いながら言われてぐぅの音も出ない。
「とりあえずさー。俺暇なんだよね。だから雑談にでも付き合ってくれよ、雄英生さーん」
「雑談に付き合え?ふざけないで。私は暇じゃないの。とっとと解放しなさいよ」
ていうか暇潰しがてらにとっ捕まえたって嘘でしょと言うと「なんだバレてたのか」とまた笑う。そりゃこんな場所やら縄やら準備されちゃ嫌でもわかるでしょ。
「USJの時からさ、ずっとお前のこと気になってたんだ。ゆっくり話してみてぇなって思ってた。だからいつか連れてこようと思ってた」
頭を撫でながら優しげに微笑みかけられた。背筋に寒気が走る。
「本当は林間合宿の時爆豪と一緒に連れて来させようと思ってたんだけどさ。けどアイツと一緒だとゆっくり話せそうにねぇからもう少し経ってからだなって思ったんだ。でも雄英が全寮制になっちまったからお前と接触出来るタイミングねぇなぁってすっげぇ困ってた。けどどうしても話してみたくてさ。なんとかならねぇかなぁって思いつつ雄英近くの街ふらついてたらたまたまお前見掛けたから思わず攫ってきちまった」
あ、俺を恨むなよ?恨むなら生徒を1人で出歩かせてるような警戒心も学習能力もねぇ雄英を恨めよなと、ニヤニヤ言ってくる顔をぶん殴ってやりたくなる。離れたいけれども、動いたらまた縄に締め上げられてしまう。どうにかしないと…。何とか解けないだろうか…。
「けど今日はもう遅せぇし残念だけど話は辞めとくか」
死柄木がスマホを見て呟く。時間を確認したのだろうか。話は辞めとく…?どういう…
「ッ!!?」
突然死柄木に何か錠剤のようなものを口に突っ込まれた。なんとか抵抗してみるが、まともな抵抗になんてならない。急いで吐き出そうとしたが「ダメだって、ちゃんと飲めよ」と無理矢理上を向かされて水を流し込まれてしまい、飲み込んでしまった。血の気が引くとは正しくこのことか。何を飲まされたんだ私は。なんて思っていると「ハハ、すげぇ顔色真っ青」と笑われる。そして優しく…不気味なほど、怖いほど優しく私の頭を撫でてまるで幼い子どもを安心させるような口振りで「大丈夫、ちょっと眠くなっちまうだけだから」そう言いながら膝枕され、頭と頬を撫でられる。するとそれを合図にするように、瞼が重くなって来た。ダメ…!眠っちゃダメ!!そう思いひたすら開こうとするのに、
「おやすみ。良い夢見ろよ、名前ちゃん」
という死柄木の言葉と共に、世界が真っ暗になった。
あぁ、今日という日はなんて不運な日なんだ。
◇
「ハハッ」
思わず笑い声を漏らす。やっと手に入れた。何年待っただろうかこの時を。思わず腕の中で眠る名前ちゃんを抱き締める。
「何笑ってんだよ気色悪ぃ…」
そんな俺に荼毘が冷ややかな目線を送りながら呟いてくる。
「うるせぇな、仕方ねぇだろ。ずっと前から手に入れたかったものがやっと手に入ったんだから」
笑わずにはいられるかよ、と名前ちゃんを抱きしめたまま言う。
「USJの時からっつってたじゃねぇか。別に大した年月経ってねぇだろ」
そう吐き捨ててくる荼毘に「ちげぇよ、10年前からだ」と反論する。
「10年前?弔君この子のことそんなに前から知っていたんですか?」
俺の腕の中ですやすやと寝息をたてて眠る名前ちゃんを見つめながらそう尋ねてくるトガに向かって「あぁ。残念ながらこっちは俺の事覚えてなかったみたいだったけどな」と返すと「あらら、悲しいですね」と返ってきたが無視した。
10年前出会って以来ずっと好きだった、初恋だった女の子と、偶然また出会えるなんて夢にも思ってなかった。
USJへ行った時、まさか名前ちゃんがそこにいるなんて夢にも思っていなかったからとても驚いた。それと同時に、すごく嬉しくなった。神様ってのなんざ信じちゃいねぇが、その時ばかりは信じたし心から礼を言った。
眠っている名前ちゃんの頭を撫でながら、思わずまた笑いが零れる。
あぁ、今日という日はなんて幸運な日なんだ。