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「あ?チョコ?ンなもん貰っても嬉しかねぇよ」
隣の席から聞こえてきたその言葉は、私が1日かけてした覚悟を一瞬にして砕いた。
*****
「苗字ー。爆豪にチョコあげないのー?」
昼食を食べているとふと、三奈ちゃんが私に聞いてきた。
「んー?あげないよー。なんで?」
「いや寧ろなんで?!この前頑張って作るって言ってたじゃん!砂藤に作り方教わったりしてたし、友達以上恋人未満の関係から脱出するんだって張り切ってたじゃん!」
驚いたような様子で尋ねてくる三奈ちゃん。その後すぐに「なんかあったの?大丈夫?」と聞いてきた。なんだかとても心配かけてしまったようだ。
「いや…朝ね、爆豪がチョコなんて貰ったって嬉しくないって上鳴達に言ってたんだよ…。そんで思い出したの。そういえば爆豪、甘いもの好きじゃないって言ってたなーって。好きじゃないのに貰ったりしても嬉しくないだろうしさ。だからあげないことにしたの」
「えー…ほんとにそれでいいの?」
三奈ちゃんが私の顔を覗き込んでくる。
「…そりゃ渡せるもんなら渡したいけどさ、でも、好きじゃないのに甘いものあげても迷惑なだけでしょ。だからあげなくていいよ。好きじゃないものあげたりしたら、好感度あげるどころか逆に嫌われちゃうかもしれないし」
という私の言葉を聞くと三奈ちゃんは「あー…うん、まぁそれは確かに…でもなー…」と、納得出来たような出来ないようなという風な、曖昧な返事をした。
「何言ってんだよ、苗字があげたら例え甘いもの嫌いな爆豪でも絶対喜ぶって。寧ろあげない方が嫌われちまうんじゃね?」
不意に聞こえてきた声に驚き、声のした方を見てみると
「か、上鳴!吃驚した…」
クラスメイトでもあり、私の決意を壊した原因の1つでもある上鳴電気がいた。
「わりぃわりぃ。驚かして。面白そうな話してるのが聞こえてきたからつい割り込んじまった。割り込みついでに言わせてもらうぜ。爆豪さ、確かにチョコいらないっていうのも本音だと思うよ。けど、苗字から貰えるならすげー喜ぶと思うんだ。つか寧ろ、貰えるの待ってると思う。だからさ、渡してやれよ。な?」
「えー、いや、でも…」
「上鳴の言う通りだよ!あげないときっと後悔するよ?1カ月以上前から頑張ってたじゃん。チョコの作り方とか、ラッピングの仕方とか沢山調べたりしてさ。渡さなかったらその頑張り全部無駄になっちゃうんだよ?悔しくないの?」
あの頑張りが、全部無駄になる…確かにそうだ。この1カ月以上、本当によく頑張ったと自分でも思う。その頑張りが、全部無駄になるなんてそんなの…
「そんなの、嫌…!」
そういう私を見て、三奈ちゃんは「じゃあ頑張ろう!」と言った。その言葉に頷き、私は爆豪にチョコをあげることを再び決意した。
*****
『夜遅くにごめん。まだ起きてる?ちょっと用があるんだけど今から部屋行ってもいい?』
そうメッセージを送ると、既読はついたが返信は来ない。まさかの既読無視の様だ。普通にショックなんだけど泣きたい。なんかまたあげる気が失せてしまった。せっかく応援して貰ったのに無理そうだよごめんね三奈ちゃん…。ショックに打ちのめされていると、部屋をノックする音が聞こえてきた。誰だよ人が感傷に浸っている時に…。居留守使ってやろう。そう思って無視しているとまだドアを叩いている音がする。しつこいなー…。
「おいコラ苗字テメェ!用事があるっつーからわざわざ来てやったのに何で出てきやがらねぇんだ!」
ドアを激しくたたく音と、たった今メッセージを既読無視しやがった人物、爆豪の怒鳴り声が聞こえてきた。
「は?爆豪?!なんで?!」
声の主の正体に気がつき、急いでドアを開けた。
「テメェ、ノックしてんだからとっとと開けろよな」
ドアを開けると外には不機嫌な様子を隠そうともしないでいる爆豪が立っていた。
「ご、ごめん。って、な、なんで私の部屋来たの?!」
「あ?テメェがなんか用があるっつーからわざわざ来てやったんだろうが」
眉間に皺を寄せながら言う爆豪。「つか入らせてもらうぞ」と言いながら私の部屋にづかづかと入り込んできたかと思うと、ドカッとクッションの上に座り込んだ。人の部屋とは思えないような偉そうな態度だ。
「ちょっ…女子の部屋によくそんな遠慮もなしに入り込めるねアンタ!」
「あ?今更何言ってんだ。テメェの部屋なんざもう何度も来てんだろうが。今更遠慮することとかお互いねぇだろ」
そう言われれば確かにそうだが…。
「で?なんだよ用事って」
ドアを閉めたことを確認すると爆豪はすぐに聞いてきた。心の準備をしたいのだが、そんなヒマも与えてくれないみたいだ。どうしよう、まだ覚悟できてないよ。爆豪の部屋に行くまでの道のりの間に覚悟しようと思ってたのに。
「おい、苗字?」
何も言わない私を爆豪は怪訝な顔で見ている。あぁ…腹を括らないといけないのか…。
「あの、さ…その、今日ってさ、何月何日か分かる…?」
「あ?2月14日だろ」
そんなこともわからねぇのかよこの馬鹿は。とでも言いたげな顔で私のことを見てくる爆豪の視線がとても痛い。2月14日と聞いても何も思わないのだろうか…。
「それがどうかしたのかよ」
いつまでも用件を言わない私にシビレを切らしたのか、少し強めの口調で聞いてきた。
「えっ…あ、あの、だから、その…!」
ヤバイ。早く言わないと。爆豪ブチギレるよ。早く渡さなきゃ。
「あの!今日2月14日でしょ?だからコレ!バレンタインのプレゼント…!」
冷蔵庫にしまっていたチョコを取り出して、爆豪に渡した。そのチョコを爆豪は目をパチパチとさせながら見つめている。
「あ?なんでわざわざ」
「えっあの、その...バレンタインだし、せっかくだから普段のお礼というか、なんというかその.....」
「だからなんだよ。ハッキリしねぇな」
先程よりもさらに眉間に皺を寄せる爆豪に焦る。
「ちょっと待ってよ、今頭の中整理してるんだからあんま急かさないでよ...!」
余計言いたいことがまとまらなくなってしまう。
「は?お前、用あるとか言っときながら話すことなんなのか分かってねぇのか?」
「いや違くて!私は今からアンタに好きだって告白しようとしてんの!けどどう言っていいか分からないしキンチョーしちゃって頭ぐちゃぐちゃになっちゃってどうしたらいいかわかんなくなってんの!だから少し待ってよ急かさないで!」
「俺に告ろうとしてたのか?」
「そうだよ。だからちょっと頭の中を整理...えっなんでその事知ってるの?!」
「今テメェが自分で丸々言っただろうが」
そう言われて、先程自分が口にした言葉を思い出した。思い出して、めちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。顔中に熱が集まるのを感じる。どうしよう、すごく熱い。うわ、めっちゃ恥ずかしい。爆豪の顔を見ることが出来ない。どうしよう、誰か助けて恥ずかしすぎて死ぬ。顔を真っ赤に染めながら俯いていると、肩にぽん、と手を置かれた。顔を上げてみると
「苗字、その告り方はねぇだろ…!」
肩をガタガタと震わせながら笑いを堪えている爆豪がいた。そんな笑いを堪えるほど面白い事あったか?!確かに自分でもアホなことしたなとは思うけれども。
「そ、そんな笑わないでよ、コレでも頑張ったのに…!」
「ムリ、だわ…!ヤベ、ツボった…!」
とうとう耐えきれなくなったのか、爆豪は声を上げて笑い出した。女の子の告白を爆笑するなんていくらなんでも酷くない?!私なんでこんなやつ好きなんだろ…我ながら男の趣味悪すぎる…!
*****
「あー…笑いすぎて腹いて―…」
思う存分笑い終えたのか、ゼェゼェ言いながら息を整えている爆豪。あぁ、やっぱりバレンタインにチョコをあげる決意を決めたりなんてするんじゃなかった。
「笑いすぎでしょ…!普通告白してきた女の子の事爆笑したりする?!ほんっとデリカシーの欠片もないんだから!」
「そのデリカシーの欠片もない男に惚れてるのはどこのどいつだよ」
イタイところを付かれて何も言えずにいると、ハッと勝ち誇ったように笑われた。悔しい。
「えぇえぇそうですよ、そのデリカシーの欠片もない奴に惚れてるのは私ですよ!悪かったですね!!」
「何逆ギレしてんだよ」
そう叫ぶ私を爆豪は相変わらず面白そうに見ている。コイツ私の事完全に玩具だと思ってる。あぁ、本当に腹立つ。
拗ねている私を笑っていた爆豪がふと真面目な顔をして
「つかよぉ苗字、テメェ何告って来てんだよ」
と言ってきた。
「え…」
それって、告白して迷惑だってこと…?確かに私じゃ爆豪とは釣り合わないかもしれないけど、こんな言い方されるなんて…。それなりに仲は良い方だと思ってたから、こんなに拒絶されるなんて流石にショックだ…。
「あ、ご、ごめん迷惑だよね、急に告白なんてしても…!」
「あぁ、迷惑だ。ったく、こっちだって告るタイミングとかシチュエーションとか考えてたのに全部台無しじゃねぇか。どうしてくれんだよ」
といって深々と溜息を吐く爆豪を不思議に思って
「告るタイミング…?」
と聞いてみると
「あぁ、そうだよ。俺はな、テメェに…苗字に惚れてる。だからいつか告ろうと思ってた。そん時のシチュエーションとかも綿密に考えてな。なのに全部無駄になっちまったじゃねぇかよどうしてくれるんだこのバカ女」
そう言って私の頭を軽く小突いてくる爆豪から目が離せない。
「だからよぉ、苗字。責任とれ」
「せ、責任?」
「あぁ。責任とって俺と付き合え」
付き合え…?
「買い物かなんかに?」
「あ?んな訳ねぇだろアホかテメェは」
私のことを呆れきったような顔で見ている。
「だ、だってさ!責任とって俺と付き合えなんて言われたらさ、買い物かなんかだと思うでしょ.....」
「いや今の話の流れでそうはなかなかならねぇだろ。アホだアホだとは思ってたが予想以上にアホだったんだな」
深々と溜息を吐きながら言われた。ムカつく。
「ったく、ここまではっきりいってもわかんねぇとかどんだけだよテメェは。この前舐めプ野郎のこと鈍感だなんだ言ってたがテメェもアイツのこと言えねぇぞ」
と、轟のこと言えない?!
「さすがにあそこまで鈍感じゃない!!」
「いや、どっこいどっこいだ。ま、あの野郎みてぇにテメェはうざくねぇけどな。ったく、俺もやきが回ったもんだ。なんでこんなのに惚れちまったんだか。まさかこんなに女の趣味が悪いなんて自分でも信じられねぇ」
先程よりも更に大きくハァッ.......と溜息を吐く爆豪。
「苗字。もう二度と言わねぇからよく聞け。俺はテメェのことが好きだ。俺と付き合え」
そう命令口調で言ってくる爆豪が眩しい。すごく輝いて見える。この人はいつもそうだ。
いつも自信満々で堂々としていて、カッコイイ。目付き悪いしすぐ怒鳴るし自分勝手なとこもあるけど、意外と繊細で負けず嫌いでストイックで実は努力家で...そんなこの人だから、自分には無いものを沢山持っているこの人だから、好きになったんだ。
「.....あ?お、おいテメェ何泣いてんだよ?!」
「へ?」
指摘されて、初めて自分がないていることに気がついた。
「あ、やっその、ご、ごめん...!なんかわかんないけどなんか涙出てきた...!」
「は?な、なんで...」
「なんか、信じらんなくて.....」
絶対、片思いだと思ってた。爆豪、恋愛とか頭になさそうだし...という私にハンカチを差し出しながら、「そうかよ」と困ったような顔をしている。けども直ぐに
「で?返事は?」
と聞かれたので私は泣きながら
「私も、爆豪のことが好き...!」
そう答えると爆豪は得意げに笑った。
「じゃあ俺と付き合え」
という爆豪の言葉に私は大きくうなづいた。
隣の席から聞こえてきたその言葉は、私が1日かけてした覚悟を一瞬にして砕いた。
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「苗字ー。爆豪にチョコあげないのー?」
昼食を食べているとふと、三奈ちゃんが私に聞いてきた。
「んー?あげないよー。なんで?」
「いや寧ろなんで?!この前頑張って作るって言ってたじゃん!砂藤に作り方教わったりしてたし、友達以上恋人未満の関係から脱出するんだって張り切ってたじゃん!」
驚いたような様子で尋ねてくる三奈ちゃん。その後すぐに「なんかあったの?大丈夫?」と聞いてきた。なんだかとても心配かけてしまったようだ。
「いや…朝ね、爆豪がチョコなんて貰ったって嬉しくないって上鳴達に言ってたんだよ…。そんで思い出したの。そういえば爆豪、甘いもの好きじゃないって言ってたなーって。好きじゃないのに貰ったりしても嬉しくないだろうしさ。だからあげないことにしたの」
「えー…ほんとにそれでいいの?」
三奈ちゃんが私の顔を覗き込んでくる。
「…そりゃ渡せるもんなら渡したいけどさ、でも、好きじゃないのに甘いものあげても迷惑なだけでしょ。だからあげなくていいよ。好きじゃないものあげたりしたら、好感度あげるどころか逆に嫌われちゃうかもしれないし」
という私の言葉を聞くと三奈ちゃんは「あー…うん、まぁそれは確かに…でもなー…」と、納得出来たような出来ないようなという風な、曖昧な返事をした。
「何言ってんだよ、苗字があげたら例え甘いもの嫌いな爆豪でも絶対喜ぶって。寧ろあげない方が嫌われちまうんじゃね?」
不意に聞こえてきた声に驚き、声のした方を見てみると
「か、上鳴!吃驚した…」
クラスメイトでもあり、私の決意を壊した原因の1つでもある上鳴電気がいた。
「わりぃわりぃ。驚かして。面白そうな話してるのが聞こえてきたからつい割り込んじまった。割り込みついでに言わせてもらうぜ。爆豪さ、確かにチョコいらないっていうのも本音だと思うよ。けど、苗字から貰えるならすげー喜ぶと思うんだ。つか寧ろ、貰えるの待ってると思う。だからさ、渡してやれよ。な?」
「えー、いや、でも…」
「上鳴の言う通りだよ!あげないときっと後悔するよ?1カ月以上前から頑張ってたじゃん。チョコの作り方とか、ラッピングの仕方とか沢山調べたりしてさ。渡さなかったらその頑張り全部無駄になっちゃうんだよ?悔しくないの?」
あの頑張りが、全部無駄になる…確かにそうだ。この1カ月以上、本当によく頑張ったと自分でも思う。その頑張りが、全部無駄になるなんてそんなの…
「そんなの、嫌…!」
そういう私を見て、三奈ちゃんは「じゃあ頑張ろう!」と言った。その言葉に頷き、私は爆豪にチョコをあげることを再び決意した。
*****
『夜遅くにごめん。まだ起きてる?ちょっと用があるんだけど今から部屋行ってもいい?』
そうメッセージを送ると、既読はついたが返信は来ない。まさかの既読無視の様だ。普通にショックなんだけど泣きたい。なんかまたあげる気が失せてしまった。せっかく応援して貰ったのに無理そうだよごめんね三奈ちゃん…。ショックに打ちのめされていると、部屋をノックする音が聞こえてきた。誰だよ人が感傷に浸っている時に…。居留守使ってやろう。そう思って無視しているとまだドアを叩いている音がする。しつこいなー…。
「おいコラ苗字テメェ!用事があるっつーからわざわざ来てやったのに何で出てきやがらねぇんだ!」
ドアを激しくたたく音と、たった今メッセージを既読無視しやがった人物、爆豪の怒鳴り声が聞こえてきた。
「は?爆豪?!なんで?!」
声の主の正体に気がつき、急いでドアを開けた。
「テメェ、ノックしてんだからとっとと開けろよな」
ドアを開けると外には不機嫌な様子を隠そうともしないでいる爆豪が立っていた。
「ご、ごめん。って、な、なんで私の部屋来たの?!」
「あ?テメェがなんか用があるっつーからわざわざ来てやったんだろうが」
眉間に皺を寄せながら言う爆豪。「つか入らせてもらうぞ」と言いながら私の部屋にづかづかと入り込んできたかと思うと、ドカッとクッションの上に座り込んだ。人の部屋とは思えないような偉そうな態度だ。
「ちょっ…女子の部屋によくそんな遠慮もなしに入り込めるねアンタ!」
「あ?今更何言ってんだ。テメェの部屋なんざもう何度も来てんだろうが。今更遠慮することとかお互いねぇだろ」
そう言われれば確かにそうだが…。
「で?なんだよ用事って」
ドアを閉めたことを確認すると爆豪はすぐに聞いてきた。心の準備をしたいのだが、そんなヒマも与えてくれないみたいだ。どうしよう、まだ覚悟できてないよ。爆豪の部屋に行くまでの道のりの間に覚悟しようと思ってたのに。
「おい、苗字?」
何も言わない私を爆豪は怪訝な顔で見ている。あぁ…腹を括らないといけないのか…。
「あの、さ…その、今日ってさ、何月何日か分かる…?」
「あ?2月14日だろ」
そんなこともわからねぇのかよこの馬鹿は。とでも言いたげな顔で私のことを見てくる爆豪の視線がとても痛い。2月14日と聞いても何も思わないのだろうか…。
「それがどうかしたのかよ」
いつまでも用件を言わない私にシビレを切らしたのか、少し強めの口調で聞いてきた。
「えっ…あ、あの、だから、その…!」
ヤバイ。早く言わないと。爆豪ブチギレるよ。早く渡さなきゃ。
「あの!今日2月14日でしょ?だからコレ!バレンタインのプレゼント…!」
冷蔵庫にしまっていたチョコを取り出して、爆豪に渡した。そのチョコを爆豪は目をパチパチとさせながら見つめている。
「あ?なんでわざわざ」
「えっあの、その...バレンタインだし、せっかくだから普段のお礼というか、なんというかその.....」
「だからなんだよ。ハッキリしねぇな」
先程よりもさらに眉間に皺を寄せる爆豪に焦る。
「ちょっと待ってよ、今頭の中整理してるんだからあんま急かさないでよ...!」
余計言いたいことがまとまらなくなってしまう。
「は?お前、用あるとか言っときながら話すことなんなのか分かってねぇのか?」
「いや違くて!私は今からアンタに好きだって告白しようとしてんの!けどどう言っていいか分からないしキンチョーしちゃって頭ぐちゃぐちゃになっちゃってどうしたらいいかわかんなくなってんの!だから少し待ってよ急かさないで!」
「俺に告ろうとしてたのか?」
「そうだよ。だからちょっと頭の中を整理...えっなんでその事知ってるの?!」
「今テメェが自分で丸々言っただろうが」
そう言われて、先程自分が口にした言葉を思い出した。思い出して、めちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。顔中に熱が集まるのを感じる。どうしよう、すごく熱い。うわ、めっちゃ恥ずかしい。爆豪の顔を見ることが出来ない。どうしよう、誰か助けて恥ずかしすぎて死ぬ。顔を真っ赤に染めながら俯いていると、肩にぽん、と手を置かれた。顔を上げてみると
「苗字、その告り方はねぇだろ…!」
肩をガタガタと震わせながら笑いを堪えている爆豪がいた。そんな笑いを堪えるほど面白い事あったか?!確かに自分でもアホなことしたなとは思うけれども。
「そ、そんな笑わないでよ、コレでも頑張ったのに…!」
「ムリ、だわ…!ヤベ、ツボった…!」
とうとう耐えきれなくなったのか、爆豪は声を上げて笑い出した。女の子の告白を爆笑するなんていくらなんでも酷くない?!私なんでこんなやつ好きなんだろ…我ながら男の趣味悪すぎる…!
*****
「あー…笑いすぎて腹いて―…」
思う存分笑い終えたのか、ゼェゼェ言いながら息を整えている爆豪。あぁ、やっぱりバレンタインにチョコをあげる決意を決めたりなんてするんじゃなかった。
「笑いすぎでしょ…!普通告白してきた女の子の事爆笑したりする?!ほんっとデリカシーの欠片もないんだから!」
「そのデリカシーの欠片もない男に惚れてるのはどこのどいつだよ」
イタイところを付かれて何も言えずにいると、ハッと勝ち誇ったように笑われた。悔しい。
「えぇえぇそうですよ、そのデリカシーの欠片もない奴に惚れてるのは私ですよ!悪かったですね!!」
「何逆ギレしてんだよ」
そう叫ぶ私を爆豪は相変わらず面白そうに見ている。コイツ私の事完全に玩具だと思ってる。あぁ、本当に腹立つ。
拗ねている私を笑っていた爆豪がふと真面目な顔をして
「つかよぉ苗字、テメェ何告って来てんだよ」
と言ってきた。
「え…」
それって、告白して迷惑だってこと…?確かに私じゃ爆豪とは釣り合わないかもしれないけど、こんな言い方されるなんて…。それなりに仲は良い方だと思ってたから、こんなに拒絶されるなんて流石にショックだ…。
「あ、ご、ごめん迷惑だよね、急に告白なんてしても…!」
「あぁ、迷惑だ。ったく、こっちだって告るタイミングとかシチュエーションとか考えてたのに全部台無しじゃねぇか。どうしてくれんだよ」
といって深々と溜息を吐く爆豪を不思議に思って
「告るタイミング…?」
と聞いてみると
「あぁ、そうだよ。俺はな、テメェに…苗字に惚れてる。だからいつか告ろうと思ってた。そん時のシチュエーションとかも綿密に考えてな。なのに全部無駄になっちまったじゃねぇかよどうしてくれるんだこのバカ女」
そう言って私の頭を軽く小突いてくる爆豪から目が離せない。
「だからよぉ、苗字。責任とれ」
「せ、責任?」
「あぁ。責任とって俺と付き合え」
付き合え…?
「買い物かなんかに?」
「あ?んな訳ねぇだろアホかテメェは」
私のことを呆れきったような顔で見ている。
「だ、だってさ!責任とって俺と付き合えなんて言われたらさ、買い物かなんかだと思うでしょ.....」
「いや今の話の流れでそうはなかなかならねぇだろ。アホだアホだとは思ってたが予想以上にアホだったんだな」
深々と溜息を吐きながら言われた。ムカつく。
「ったく、ここまではっきりいってもわかんねぇとかどんだけだよテメェは。この前舐めプ野郎のこと鈍感だなんだ言ってたがテメェもアイツのこと言えねぇぞ」
と、轟のこと言えない?!
「さすがにあそこまで鈍感じゃない!!」
「いや、どっこいどっこいだ。ま、あの野郎みてぇにテメェはうざくねぇけどな。ったく、俺もやきが回ったもんだ。なんでこんなのに惚れちまったんだか。まさかこんなに女の趣味が悪いなんて自分でも信じられねぇ」
先程よりも更に大きくハァッ.......と溜息を吐く爆豪。
「苗字。もう二度と言わねぇからよく聞け。俺はテメェのことが好きだ。俺と付き合え」
そう命令口調で言ってくる爆豪が眩しい。すごく輝いて見える。この人はいつもそうだ。
いつも自信満々で堂々としていて、カッコイイ。目付き悪いしすぐ怒鳴るし自分勝手なとこもあるけど、意外と繊細で負けず嫌いでストイックで実は努力家で...そんなこの人だから、自分には無いものを沢山持っているこの人だから、好きになったんだ。
「.....あ?お、おいテメェ何泣いてんだよ?!」
「へ?」
指摘されて、初めて自分がないていることに気がついた。
「あ、やっその、ご、ごめん...!なんかわかんないけどなんか涙出てきた...!」
「は?な、なんで...」
「なんか、信じらんなくて.....」
絶対、片思いだと思ってた。爆豪、恋愛とか頭になさそうだし...という私にハンカチを差し出しながら、「そうかよ」と困ったような顔をしている。けども直ぐに
「で?返事は?」
と聞かれたので私は泣きながら
「私も、爆豪のことが好き...!」
そう答えると爆豪は得意げに笑った。
「じゃあ俺と付き合え」
という爆豪の言葉に私は大きくうなづいた。