短編集
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
クラスメイトの轟君は、とんでもないほどイケメンだ。おまけに頭も良くて、周りをよく見てて、優しくて、強くて、お父さんはあのNo.1ヒーローのエンデヴァー。もうほんと、非の打ち所のない人...なの、だが.....
「あ、あの、わ、私、轟君のことが、す、す、す...好き...!」
「そうなのか、ありがとう。俺も苗字のこと好きだ。いつも仲良くしてくれるからな。これからも友達でいてくれ」
とんでもなく鈍感でド天然だ。
*****
「えっ好きだってハッキリと言ったのに告白したって気がついて貰えなかったの?!」
「うん、俺も好きだ、これからも友達でいてくれって.....」
「ある意味さすがね、轟ちゃん.......」
私の部屋で女子会をしながら本日の告白の結果を、クラスメイトで仲良しのお茶子ちゃんと梅雨ちゃんに報告すると2人共ずっこけた。
「私の伝え方が悪かったのかな...」
「でもちゃんと手紙を書いてから校舎裏に呼び出して好きだと伝えたのでしょう?」
「うん...封筒にハートのシール貼った手紙を出した.....それから好きですって...」
「そこまでやられて気づかないとはなかなかね...」
「轟君てほんと、鈍感やね.....」
考えれば考えるほど、どうして気づいて貰えないのか分からなくなって3人揃って溜息を吐いた。
「本当は気づいたけどわざとはぐらかしたとかそういう可能性はあるんかな?」
「あの轟ちゃんにそんなこと出来るとは思えないわ」
お茶子ちゃんと梅雨ちゃんが冷や汗をかきながら話す。
「そういえば名前ちゃんてどうして轟君のこと好きになったん?」
頭を抱えていたお茶子ちゃんがふと顔を上げて、思い出したかのように聞いてきた。
「あれ、話したこと無かったっけ?」
お茶子ちゃんが「ないよー」というのに対して梅雨ちゃんも
「そういえば私も轟ちゃんのことが好きなのだけれどもどうしたらいいのかって相談はされたけれどもどうして好きになったのかは聞いたことないわね」
と、お茶子ちゃんに同意した。そうなのか、2人に理由まだ話したこと無かったのか...すっかり話した気になっていた。
「1学期の初め頃にね」
*****
1学期初めの学校帰りのある日、私は木に登っていた。どうしてそんなことをしていたのかと言うと、小学生の子供達がバドミントンをしていたら羽が木に引っかかってしまい取れなくなったと泣いていた。その様子を見ていたらほっとけなくなり、ついとってあげると言ってしまった。言ったまでは良かったけれども、その日は訓練で個性を使いすぎてしまっていて体力が残っていなかったため、使えなかった。だから仕方なく木に登ることにした。
「お、お姉ちゃん大丈夫?!」
木登りしてる私に下で待っている小学生達が声をかけてきた。
「だ、大丈夫だよ!心配しないで、すぐに取ってあげるからね!」
嘘。本当は全然大丈夫じゃない。私高所恐怖症なんだ。なのに何馬鹿なことしてるんだろ。大人を呼んでくるべきだった。でも今更遅い。早く取って終わりにしよう。
「もう、少し...!」
羽に手が届きそうなところまで来た。精一杯手を伸ばす。
「届いた!って、あっ、うわぁぁぁ!!!」
羽を取る事に成功してつい油断してしまい、バランスを崩してしまった。小学生達の叫び声が聞こえる。人間、命の危機を感じると感覚がスローモーションになるって本当なんだなって言うことを学んだ。だがそんなこと学んだってなんにもならない。痛いの嫌だなー...そう思いながら来るであろう衝撃を覚悟し、目を固く閉じた。
「.......あ、れ?痛く、ない.....?」
「大丈夫か?」
「へ.....?」
目を開けてみると、確かに木の下にいた。落ちたのはやはり確かなようだ。なのに全く痛くない。なんだか地面の感触、柔らかい.....?不思議に思いながら下を見てみると
「?!と、轟君??!」
「おう。...降りてもらってもいいか?」
轟君が私の下にいた。どうやら私が木から落ちているのを見かけて、クッションになってくれたらしい。
「あ.....。ご、ごごご、ごめんなさい!!!」
急いで轟君の上からどくと「気にするな」と言って立ち上がり、
「お前、確かクラスメイトの苗字...だったよな。怪我とかしてないか?」
と、聞かれた。心配かけてしまっているようだ。慌てて大丈夫だと答えると、轟君は「そうか、なら良かった」と微かに笑った。
*****
「その笑顔がね、凄く優しくて...思わずときめいちゃったの。ほら、あの頃の轟君てさ、なんかちょっとピリピリしててとっつきにくかったじゃん?だから、笑うイメージとかなかったから、ギャップにやられて、ついコロッと...好きに、なっちゃいましたって...そんな感じ、かな...」
私の話を聞くと2人共はしゃぎ出した。
「轟君男前だねー!木登りして子供助けようとした名前ちゃんもすごいなって思うけど、咄嗟に自分がクッションになって女の子庇う轟君もさすがだねー」
「そうね。しかも必要以上に喋らないところもまた、彼らしいわねー」
2人共口々に轟君を褒め称えた。
「ね!かっこいいよね!そんなことされたらさ、私じゃなくても女の子ならみんな惚れるよね!!」
そういう私に2人も激しく同意してくれた。
「そういえば名前ちゃん、轟ちゃんに手作りのお菓子を渡していたことがあったわね。ひょっとしてあれは、その時のお礼だったのかしら」
「み、見てたの?!その通りだけど...よく覚えてたね」
「えぇ。轟ちゃんが誰かと話したりしているの、あの頃はなんだか珍しい気がしてね。だからとても印象に残っていたの」
「1学期初め頃の轟君て、一匹狼って感じだったもんねー」
一匹狼.....そうそう、そんな感じだった。いつもひとりでいて、なんだか他人を寄せ付けない感じだった。爆豪君とはまたちょっと違う意味で近寄りがたかった。
「最初はね、苦手なタイプだろうなーって思ってたんだ。だけどその日以来、少しずつお話するようになっていって、関わるようになっていって、そしたらどんどん轟君の人となりが見えてきてそれで、少しずつ好きになっていって、気がついたら、大好きになってた.....」
私の話を2人はとても微笑ましそうに聞いている。
「名前ちゃん、恋する乙女やね。可愛い!」
お茶子ちゃんがニコニコとしながら言う。私よりもそんなお茶子ちゃんが可愛い。
「でも私、やっぱただのクラスメイトとしか思われてないのかな...普段から自分なりに沢山アピールしてるつもりなんだけど全く気づいて貰えないし.....」
しょぼん、と下を向いていると梅雨ちゃんが頭を撫でながら
「そんなことないわ。轟ちゃんって多分だけれども、恋愛自体に興味が無いのだと思うの。だから名前ちゃんに好きと言われた時も、それが恋愛の意味での好きということだってピンと来なかったのじゃないかしら」
と言って、励ましてくれた。それに対してお茶子ちゃんも
「確かにそんな感じかも。轟君、好きって言葉に恋愛感情が入ってるってこと考えてなさそうだよね。なんか名前ちゃんに限らず、女の子からの好意を理解してなさそうって言うのかな」
同意して、自分の考えを話した。それってつまり、
「轟君への告白は、一筋縄じゃいかないんだね.....」
なんだか気が遠くなってきた。2人共苦笑いしている。
「まさか轟君があそこまで鈍感だとは思わなかったよ...。轟君以外にはクラスメイトにも、ついでに相澤先生やオールマイトにも気づかれてるのに!」
「飯田君すら気づいてるもんね...あの子そういうこと鈍そうなのに」
「そうね、私も飯田ちゃんよりは轟ちゃんの方が先に気がつくと思っていたわ.....」
3人揃って、本日何度目かのため息をついた。
「苗字。ちょっといいか?」
部屋の外からドアを叩く音と同時に、轟君の声が聞こえてきた。
「えつ?!あっ、と、轟君?!はっ、はいっちょっと待ってね!」
突然話題の渦中である轟君の登場に驚きを隠せずにいるとお茶子ちゃんと梅雨ちゃんが「頑張れ!」と言ってくれたので、深呼吸してから勇気を出し、ドアを開けた。
「こんな時間に悪いな。今日手紙くれただろ?その事話したらクラスの奴らに...って、あ。悪ぃ、麗日と蛙吹来てたのか」
ドアを開けたら話し出した轟君が部屋の中にいる2人に気づくと申し訳なさそうな顔をした。
「いいえ、大丈夫よ。ちょうど私達そろそろお暇しようと思っていたの。ね、お茶子ちゃん」
「そうそう!だから2人でゆっくりお話しなよー!」
そう言いながら2人はまた明日ね!と言って帰って行った。去り際2人にエールを送られた。.....つくづく思う。私は友達に恵まれている。
*****
轟君が、私の部屋にいる。そして私の部屋でお茶を飲んでいる。なんだかとても幸せな夢を見ている気分だ。
「悪いなこんな時間に突然来て」
「う、ううん、ぜんっぜん!全然大丈夫だよ気にしないで!!」
「そうか、ありがとな」と、微かに笑う轟君の顔に心臓が止まりそうだ。何度見ても心臓に悪い。前にインタビューの練習授業をした時にMt.レディが轟君に笑顔を向けられた女性はイチコロだって言ってたけど正しくその通りだ。って、そんなこと思ってる場合じゃないよバカ。早く用件を聞かないと。こんな時間に来るって、大切な用事かもしれない。
「えっと...なんの用か聞いてもいい?」
「ん?あぁ。今日放課後苗字に呼び出されたって言ったら緑谷達になんの話したんだって聞かれてな。だから好きって言われたから俺も好きだからこれからも友達でいてくれって言ったって話したら上鳴と瀬呂に怒られてもっとちゃんと苗字と話して来いって言われたんだ。だからこんな時間に迷惑かもと思ったんだが来た。.....やっぱり迷惑だったか?」
よ、呼び出して告白したこと色んな人達にバレたーー.......!!!!うわぁぁどうしよう、これ完全に明日にはクラス中に広まってるよ!てかもうきっとほとんどの人達に伝わってるよ!!明日みんなに弄り倒されるよ!!いや、元々轟君以外のクラスメイトと相澤先生やオールマイトとかにはとっくに私が轟君のこと好きだってバレてるけど.....。アピールしてるのに全然気づいて貰えないことをあの爆豪君や青山君、峰田君にすら同情されたし...。あの3人に同情される日が来るなんて夢にも思わなかった.....。あー、なんかまた虚しくなってきた。
「?苗字?どうした?」
何も言わずに頭を抱えている私に対して轟君が首をコテン、と傾げて見ている。可愛い。
「いや、あの...えっと.....」
ヤバい。心臓の音がうるさい。鼓動が異様に早い。顔が熱い。今絶対真っ赤になってる。あぁ、もうこうなったら覚悟決めよう。せっかくお茶子ちゃんと梅雨ちゃんが応援してくれたんだ。せっかく上鳴君と瀬呂君がチャンスをくれたんだ。それを無駄にする訳には行かない。当たって砕けろ。名前、頑張って。私なら絶対に出来る。自分を信じて。
「轟君。私、轟君のことが好き。友達とか、クラスメイトとかそういうのじゃなくて、恋愛対象として、1人の男の子として好きです。轟君の、お嫁さんになりたいっていう、そういう意味で貴方のことが大好きです.....!」
言った。言い切った。言い切ってしまった。勢いに任せてかなり恥ずかしいことを口走った気がする。心臓が、さっきまでとは比べ物にならないくらいうるさい。
轟君が今、どんな顔をしてるのか気になるけども、怖くて見れない。
「...........苗字」
長い沈黙の後、轟君が私の名前を呼ぶ。
「.....はい」
返事をして、静かに轟君の返答を待つ。緊張しすぎて死にそうだ。
「俺達高校生だからまだ結婚は出来ないぞ」
「.......................................は?」
「?いやだから、俺の嫁になりたいって言ってたけど俺達まだ高校生だし結婚出来ないだろ?」
あ、忘れてた轟君ド天然だった。
思わずずっこけた私は絶対悪くない。
「おい、大丈夫か?」
「う、うん、なんか気抜けたけど...」
ほんと、轟君の天然っぷりには驚かされてばっかりだ。
「そうか、なら良かった。.....話し戻すな。今はまだ結婚は出来ない。けど、恋人には、なれる」
「...えっ」
「だから、俺と恋人になってくれたら、嬉しい。...恋愛対象として好きだって言って貰えて嬉しかった。ありがとな。俺も、苗字のことクラスメイトとかじゃなくて恋愛対象として、好きだ」
これは、夢?轟君が今、私のことを好きだと言ってくれた。恋人になってくれたら嬉しいって言ってくれた。驚きすぎて、頭が追いつかない。頬を思い切り抓ってみる。とても痛い。あぁ、これは現実だ。気がつくと私は、轟君に抱きついていた。轟君は驚いた様に目を見開いていたけど、それでもしっかりと抱き留めてくれた。
「.....ごめんな、俺、なんかクラスのヤツら曰く鈍いらしくて...。お前のこと気づかないうちにすげえ傷つけてたかもしれない。だけどそんな俺の事を、ずっと好きでいてくれたんだな。ありがとう」
そう言いながら、私を抱き締めて優しく背中を撫でてくれる轟君。幸せすぎて、嬉しすぎて、信じられない。頭がおかしくなりそうだ。
「これからよろしくな、名前」
「うん、こちらこそよろしくね、焦凍君!」
私苗字名前はきっと今、世界一幸せな女子高生です。
「あ、あの、わ、私、轟君のことが、す、す、す...好き...!」
「そうなのか、ありがとう。俺も苗字のこと好きだ。いつも仲良くしてくれるからな。これからも友達でいてくれ」
とんでもなく鈍感でド天然だ。
*****
「えっ好きだってハッキリと言ったのに告白したって気がついて貰えなかったの?!」
「うん、俺も好きだ、これからも友達でいてくれって.....」
「ある意味さすがね、轟ちゃん.......」
私の部屋で女子会をしながら本日の告白の結果を、クラスメイトで仲良しのお茶子ちゃんと梅雨ちゃんに報告すると2人共ずっこけた。
「私の伝え方が悪かったのかな...」
「でもちゃんと手紙を書いてから校舎裏に呼び出して好きだと伝えたのでしょう?」
「うん...封筒にハートのシール貼った手紙を出した.....それから好きですって...」
「そこまでやられて気づかないとはなかなかね...」
「轟君てほんと、鈍感やね.....」
考えれば考えるほど、どうして気づいて貰えないのか分からなくなって3人揃って溜息を吐いた。
「本当は気づいたけどわざとはぐらかしたとかそういう可能性はあるんかな?」
「あの轟ちゃんにそんなこと出来るとは思えないわ」
お茶子ちゃんと梅雨ちゃんが冷や汗をかきながら話す。
「そういえば名前ちゃんてどうして轟君のこと好きになったん?」
頭を抱えていたお茶子ちゃんがふと顔を上げて、思い出したかのように聞いてきた。
「あれ、話したこと無かったっけ?」
お茶子ちゃんが「ないよー」というのに対して梅雨ちゃんも
「そういえば私も轟ちゃんのことが好きなのだけれどもどうしたらいいのかって相談はされたけれどもどうして好きになったのかは聞いたことないわね」
と、お茶子ちゃんに同意した。そうなのか、2人に理由まだ話したこと無かったのか...すっかり話した気になっていた。
「1学期の初め頃にね」
*****
1学期初めの学校帰りのある日、私は木に登っていた。どうしてそんなことをしていたのかと言うと、小学生の子供達がバドミントンをしていたら羽が木に引っかかってしまい取れなくなったと泣いていた。その様子を見ていたらほっとけなくなり、ついとってあげると言ってしまった。言ったまでは良かったけれども、その日は訓練で個性を使いすぎてしまっていて体力が残っていなかったため、使えなかった。だから仕方なく木に登ることにした。
「お、お姉ちゃん大丈夫?!」
木登りしてる私に下で待っている小学生達が声をかけてきた。
「だ、大丈夫だよ!心配しないで、すぐに取ってあげるからね!」
嘘。本当は全然大丈夫じゃない。私高所恐怖症なんだ。なのに何馬鹿なことしてるんだろ。大人を呼んでくるべきだった。でも今更遅い。早く取って終わりにしよう。
「もう、少し...!」
羽に手が届きそうなところまで来た。精一杯手を伸ばす。
「届いた!って、あっ、うわぁぁぁ!!!」
羽を取る事に成功してつい油断してしまい、バランスを崩してしまった。小学生達の叫び声が聞こえる。人間、命の危機を感じると感覚がスローモーションになるって本当なんだなって言うことを学んだ。だがそんなこと学んだってなんにもならない。痛いの嫌だなー...そう思いながら来るであろう衝撃を覚悟し、目を固く閉じた。
「.......あ、れ?痛く、ない.....?」
「大丈夫か?」
「へ.....?」
目を開けてみると、確かに木の下にいた。落ちたのはやはり確かなようだ。なのに全く痛くない。なんだか地面の感触、柔らかい.....?不思議に思いながら下を見てみると
「?!と、轟君??!」
「おう。...降りてもらってもいいか?」
轟君が私の下にいた。どうやら私が木から落ちているのを見かけて、クッションになってくれたらしい。
「あ.....。ご、ごごご、ごめんなさい!!!」
急いで轟君の上からどくと「気にするな」と言って立ち上がり、
「お前、確かクラスメイトの苗字...だったよな。怪我とかしてないか?」
と、聞かれた。心配かけてしまっているようだ。慌てて大丈夫だと答えると、轟君は「そうか、なら良かった」と微かに笑った。
*****
「その笑顔がね、凄く優しくて...思わずときめいちゃったの。ほら、あの頃の轟君てさ、なんかちょっとピリピリしててとっつきにくかったじゃん?だから、笑うイメージとかなかったから、ギャップにやられて、ついコロッと...好きに、なっちゃいましたって...そんな感じ、かな...」
私の話を聞くと2人共はしゃぎ出した。
「轟君男前だねー!木登りして子供助けようとした名前ちゃんもすごいなって思うけど、咄嗟に自分がクッションになって女の子庇う轟君もさすがだねー」
「そうね。しかも必要以上に喋らないところもまた、彼らしいわねー」
2人共口々に轟君を褒め称えた。
「ね!かっこいいよね!そんなことされたらさ、私じゃなくても女の子ならみんな惚れるよね!!」
そういう私に2人も激しく同意してくれた。
「そういえば名前ちゃん、轟ちゃんに手作りのお菓子を渡していたことがあったわね。ひょっとしてあれは、その時のお礼だったのかしら」
「み、見てたの?!その通りだけど...よく覚えてたね」
「えぇ。轟ちゃんが誰かと話したりしているの、あの頃はなんだか珍しい気がしてね。だからとても印象に残っていたの」
「1学期初め頃の轟君て、一匹狼って感じだったもんねー」
一匹狼.....そうそう、そんな感じだった。いつもひとりでいて、なんだか他人を寄せ付けない感じだった。爆豪君とはまたちょっと違う意味で近寄りがたかった。
「最初はね、苦手なタイプだろうなーって思ってたんだ。だけどその日以来、少しずつお話するようになっていって、関わるようになっていって、そしたらどんどん轟君の人となりが見えてきてそれで、少しずつ好きになっていって、気がついたら、大好きになってた.....」
私の話を2人はとても微笑ましそうに聞いている。
「名前ちゃん、恋する乙女やね。可愛い!」
お茶子ちゃんがニコニコとしながら言う。私よりもそんなお茶子ちゃんが可愛い。
「でも私、やっぱただのクラスメイトとしか思われてないのかな...普段から自分なりに沢山アピールしてるつもりなんだけど全く気づいて貰えないし.....」
しょぼん、と下を向いていると梅雨ちゃんが頭を撫でながら
「そんなことないわ。轟ちゃんって多分だけれども、恋愛自体に興味が無いのだと思うの。だから名前ちゃんに好きと言われた時も、それが恋愛の意味での好きということだってピンと来なかったのじゃないかしら」
と言って、励ましてくれた。それに対してお茶子ちゃんも
「確かにそんな感じかも。轟君、好きって言葉に恋愛感情が入ってるってこと考えてなさそうだよね。なんか名前ちゃんに限らず、女の子からの好意を理解してなさそうって言うのかな」
同意して、自分の考えを話した。それってつまり、
「轟君への告白は、一筋縄じゃいかないんだね.....」
なんだか気が遠くなってきた。2人共苦笑いしている。
「まさか轟君があそこまで鈍感だとは思わなかったよ...。轟君以外にはクラスメイトにも、ついでに相澤先生やオールマイトにも気づかれてるのに!」
「飯田君すら気づいてるもんね...あの子そういうこと鈍そうなのに」
「そうね、私も飯田ちゃんよりは轟ちゃんの方が先に気がつくと思っていたわ.....」
3人揃って、本日何度目かのため息をついた。
「苗字。ちょっといいか?」
部屋の外からドアを叩く音と同時に、轟君の声が聞こえてきた。
「えつ?!あっ、と、轟君?!はっ、はいっちょっと待ってね!」
突然話題の渦中である轟君の登場に驚きを隠せずにいるとお茶子ちゃんと梅雨ちゃんが「頑張れ!」と言ってくれたので、深呼吸してから勇気を出し、ドアを開けた。
「こんな時間に悪いな。今日手紙くれただろ?その事話したらクラスの奴らに...って、あ。悪ぃ、麗日と蛙吹来てたのか」
ドアを開けたら話し出した轟君が部屋の中にいる2人に気づくと申し訳なさそうな顔をした。
「いいえ、大丈夫よ。ちょうど私達そろそろお暇しようと思っていたの。ね、お茶子ちゃん」
「そうそう!だから2人でゆっくりお話しなよー!」
そう言いながら2人はまた明日ね!と言って帰って行った。去り際2人にエールを送られた。.....つくづく思う。私は友達に恵まれている。
*****
轟君が、私の部屋にいる。そして私の部屋でお茶を飲んでいる。なんだかとても幸せな夢を見ている気分だ。
「悪いなこんな時間に突然来て」
「う、ううん、ぜんっぜん!全然大丈夫だよ気にしないで!!」
「そうか、ありがとな」と、微かに笑う轟君の顔に心臓が止まりそうだ。何度見ても心臓に悪い。前にインタビューの練習授業をした時にMt.レディが轟君に笑顔を向けられた女性はイチコロだって言ってたけど正しくその通りだ。って、そんなこと思ってる場合じゃないよバカ。早く用件を聞かないと。こんな時間に来るって、大切な用事かもしれない。
「えっと...なんの用か聞いてもいい?」
「ん?あぁ。今日放課後苗字に呼び出されたって言ったら緑谷達になんの話したんだって聞かれてな。だから好きって言われたから俺も好きだからこれからも友達でいてくれって言ったって話したら上鳴と瀬呂に怒られてもっとちゃんと苗字と話して来いって言われたんだ。だからこんな時間に迷惑かもと思ったんだが来た。.....やっぱり迷惑だったか?」
よ、呼び出して告白したこと色んな人達にバレたーー.......!!!!うわぁぁどうしよう、これ完全に明日にはクラス中に広まってるよ!てかもうきっとほとんどの人達に伝わってるよ!!明日みんなに弄り倒されるよ!!いや、元々轟君以外のクラスメイトと相澤先生やオールマイトとかにはとっくに私が轟君のこと好きだってバレてるけど.....。アピールしてるのに全然気づいて貰えないことをあの爆豪君や青山君、峰田君にすら同情されたし...。あの3人に同情される日が来るなんて夢にも思わなかった.....。あー、なんかまた虚しくなってきた。
「?苗字?どうした?」
何も言わずに頭を抱えている私に対して轟君が首をコテン、と傾げて見ている。可愛い。
「いや、あの...えっと.....」
ヤバい。心臓の音がうるさい。鼓動が異様に早い。顔が熱い。今絶対真っ赤になってる。あぁ、もうこうなったら覚悟決めよう。せっかくお茶子ちゃんと梅雨ちゃんが応援してくれたんだ。せっかく上鳴君と瀬呂君がチャンスをくれたんだ。それを無駄にする訳には行かない。当たって砕けろ。名前、頑張って。私なら絶対に出来る。自分を信じて。
「轟君。私、轟君のことが好き。友達とか、クラスメイトとかそういうのじゃなくて、恋愛対象として、1人の男の子として好きです。轟君の、お嫁さんになりたいっていう、そういう意味で貴方のことが大好きです.....!」
言った。言い切った。言い切ってしまった。勢いに任せてかなり恥ずかしいことを口走った気がする。心臓が、さっきまでとは比べ物にならないくらいうるさい。
轟君が今、どんな顔をしてるのか気になるけども、怖くて見れない。
「...........苗字」
長い沈黙の後、轟君が私の名前を呼ぶ。
「.....はい」
返事をして、静かに轟君の返答を待つ。緊張しすぎて死にそうだ。
「俺達高校生だからまだ結婚は出来ないぞ」
「.......................................は?」
「?いやだから、俺の嫁になりたいって言ってたけど俺達まだ高校生だし結婚出来ないだろ?」
あ、忘れてた轟君ド天然だった。
思わずずっこけた私は絶対悪くない。
「おい、大丈夫か?」
「う、うん、なんか気抜けたけど...」
ほんと、轟君の天然っぷりには驚かされてばっかりだ。
「そうか、なら良かった。.....話し戻すな。今はまだ結婚は出来ない。けど、恋人には、なれる」
「...えっ」
「だから、俺と恋人になってくれたら、嬉しい。...恋愛対象として好きだって言って貰えて嬉しかった。ありがとな。俺も、苗字のことクラスメイトとかじゃなくて恋愛対象として、好きだ」
これは、夢?轟君が今、私のことを好きだと言ってくれた。恋人になってくれたら嬉しいって言ってくれた。驚きすぎて、頭が追いつかない。頬を思い切り抓ってみる。とても痛い。あぁ、これは現実だ。気がつくと私は、轟君に抱きついていた。轟君は驚いた様に目を見開いていたけど、それでもしっかりと抱き留めてくれた。
「.....ごめんな、俺、なんかクラスのヤツら曰く鈍いらしくて...。お前のこと気づかないうちにすげえ傷つけてたかもしれない。だけどそんな俺の事を、ずっと好きでいてくれたんだな。ありがとう」
そう言いながら、私を抱き締めて優しく背中を撫でてくれる轟君。幸せすぎて、嬉しすぎて、信じられない。頭がおかしくなりそうだ。
「これからよろしくな、名前」
「うん、こちらこそよろしくね、焦凍君!」
私苗字名前はきっと今、世界一幸せな女子高生です。