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その日もいつもと何も変わらない日であった。
いつもの様に学校へ行き、授業を受けて友達と話しをたりしていつも通りの何もない学生生活を送っていた。
授業を終えて、放課後を迎え、友達と別れてあとは家へ帰る。
何の変哲もない、いつも通りの日常が続く。ハズだった。
通学路の途中に、全く見慣れない高級車が止められていた。こんな所にあんな高級車が止まっているなんて、珍しいな。あんな車を乗り回すなんて、持ち主は余程のお金持ちなのだろうか。
…こんな人気のない道にどうして止まっているのだろう。なんとなく、近付きたくないな。
けれどもあの車が止まっている場所を通らないと家へ帰ることが出来ない。嫌だなと思って立ち止まっていても仕方がないので、なるべく足早に車の横を通ることにした。
不安とはよそに、すんなりと横を通過することが出来て安心した、その時だった。背後から車の開く音が聴こえた次の瞬間、私は捕まり、車中へと連れ込まれてしまった。
「っ?!」
驚いて声を上げようとしたがそれは叶わず、口元に何かを押し付けられ、意識を失ってしまった。
*****
『名前ちゃん気持ち悪い!』
ど、どうして…?わ、私はただ、怪我を治してあげたいと思っただけ…
『気持ちはうれしいけど、普通はこんな風に一瞬で怪我を治したりなんて出来ないよ。可笑しいよ。気持ち悪い…もう関わりたくない…』
あっ…待って、行かないで…!お願い、そんな酷いこと言わないで…。
*****
久しぶりに子供の頃の夢を見た。すごく、苦い嫌な思い出。最悪だ。どうしてこんな記憶呼び起さなくてはいけないんだ。憂鬱に思いながら目を開く。
すると目に入ってきたのは、真っ白な天井。可笑しい。私の部屋の天井は水色のはずだ。
焦りながら起き上がってみると、やはりそこは見覚えのない部屋だ。
広い部屋、大きな机やソファといった家具たち。
私の寝かされている寝台もとても大きく、フカフカだ。ここはどこかのお屋敷なのだろうか…?どうして私はこんな所にいるのだろう…?
そこまで考えて眠りに堕ちる前の出来事を思い出した。
まさか…誘拐?!早く助けを呼ばなければと思うが、どこにも携帯が見当たらない。それどころか、意識を失う前に持っていた荷物が何一つ見当たらない。犯人に全て奪われてしまったのだろうか。
「目ェ覚めたか?」
「ッ?!」
突然声を掛けられ、驚きながら声の方に視線を移すと、扉の前に帽子をかぶり、高級そうな服に身を包んだ橙の髪に青い瞳をした小柄な男性が立っていた。
「あ、あなたは、誰、ですか…?」
発せられた声は、自分でもわかる程に震えていた。
「あぁ、自己紹介がまだだったな。俺は中原中也。ポートマフィアの幹部だ」
ポートマフィア?!どうしてそんな人達が私みたいな女子高生を誘拐するんだ?こんなただの女子高生1人誘拐なんてして、何になるというのだ。目の前の男…中原中也は私の疑問を感じ取ったのか、
「手前、治癒系の異能力を持っているらしいな」
そう言いながら男は私に歩み寄ってくる。恐ろしくなり後退りをするがすぐに壁に当たってしまい逃げ場を失ってしまった。
「な、なんで…」
そのことを知っているんだ。友達に拒絶されたあの日以来、能力のことは周りのも誰にも、家族にも気が付かれないようにと細心の注意を払っていた筈だ。それなのにどうして…?
「ウチの首領が先日、瀕死の状態だった猫を治している手前を見掛けたらしくてな。その能力をご所望らしい。だから少々手荒な方法を取らせて貰ったが、俺たちのアジトへ来てもらったってことだ」
いつの間にか中原中也は私の目の前まで来ていた。床に座り込んでガタガタと震えている私と目を合わせるためか、男もしゃがみ込んで語り掛けてきた。
「そんな怖がるなよ。別に殺したりなんてしねぇよ。…もっとも、手前が大人しく言うことを聞くなら、だけどな」
「いうこと…?」
「あぁ。先刻も言った様に、首領は手前の能力を欲しがっている。手前のその力を、首領のため…ポートマフィアのために使え」
「それはつまり、私にポートマフィアに入れってこと、ですか……?」
「そういったつもりだが?」
さも当然であるとでも言いたげな様子で目の前の男は言う。
「……い……です……」
「あ?」
「いや、です…絶対に、ポートマフィアになんて入りません」
震える身体と声を必死に抑えながら答えた。男の目を見る。
真っ青で怖ろしいほど綺麗な瞳と目が合う。何を考えているのかわからない。見続けていると、吸い込まれてしまいそうだ。
長い沈黙が続く。お互い何も言わずに見つめ合う。
沈黙を破ったのは、彼の方だった。
「そうか…嫌か。そんなガタガタ震えながらも断るなんてなぁ。意外と度胸のある嬢ちゃんみたいだ」
そういって、中原中也は笑いながら私の頭をポンポンと2,3回撫でてきた。
「そんでもって、的確な判断の出来ねぇ、莫迦なガキみたいだ」
ぐしゃり。と、髪を掴まれた。
「いいか。手前に選択肢なんかありゃしねぇ。手前の答えははい、だけだ。それ以外の答えは存在しねぇんだよ。わかったか?」
髪を掴んでいない方の手で、顎を持ち上げられて中原中也から目を逸らすことが出来ない。男の顔は美しく、余計に恐怖心を煽ってくる。
だが、だからと言ってマフィアに入るなんて無理に決まっている。
私は目に涙を浮かべ震えながら嫌です、無理です、家に帰して、と、力なく懇願することしか出来ない。
「わからねぇガキだな。どんなに泣こうが喚こうが、無駄だ。お前にはポートマフィアに入るしか道はねぇんだよ。諦めろ」
「絶対に嫌!家に帰して!」
とうとう耐えられなくなり、私は泣き出してしまった。
どうして、こんな目に逢わなければいけないんだ。
私はただ、いつも通り普通に学校からの帰り道を歩いていただけなのに。こんな能力、欲しくて手に入れた訳ではないのに。
「……そんなに俺たちの手中に入るのが嫌なのか?」
泣き続ける私をじっと見つめながら彼は言う。こくりと頷くと、「そうか…なら、仕方ねぇな」と呟いた。
許してくれるのだろうか?家へ帰してくれるのだろうか?
そう思った次の瞬間だった。
ドゴン、凄まじい音と共に私は地面へと沈んだ。身体が重くなり、身動き一つ取れず、息苦しい。なんだ、これは…?
「っ…!」
「どういっても俺たちの所へ来ないっていうのなら、このまま潰してやるよ」
苦しくて、声を発することも出来ない。息を辛うじてするのでやっとだ。指一本動かすことすら出来ない私を、無表情で男は見下ろしてくる。
「ガキ。最後のチャンスだ、選べ。首領は手前の能力をご所望だ。俺達ポートマフィアの狗となり、首領のため組織のため働け。そうしたら殺したりはしない。寧ろ今までとは比べ物にならないくらい良い暮らしをさせてやることを約束するぜ?」
どうする…?そういって優しく問い掛けてくる。
その声は、今までの人生の中で一番優しげな声だ。そして一番、恐ろしい。
少しだけ、息苦しさがなくなった。身体も、指と首くらいは動かせるようになった。相変わらず、起き上がることは出来そうにないが。
「答えろ。何も言わねぇなら、今度は本当に潰すぞ」
そういうと同時に、また息苦しくなってきた。
「ッ!わ、わかった…わかり、ました…ポートマフィアに、入り、ます…!貴方達のために、働き、ます…!」
そう答えると、息苦しさは収まり身体も動かすことが出来るようになった。
「最初からそう言えばいいんだよ。強情な奴だな」
言いながら私の頭をガシガシと撫でた。優しい手つきと笑顔だが、そんなもの恐怖でしかない。
「ところで」
頭をなでる手をぴたりと止め、顎と腕を掴まれた。
「逃げようとしたり、裏切ろうとしたりしたら、わかってるよな…?」
逃げたら殺す。裏切っても殺す。お前はここで暮らせ。そう、目で語っているのが分かった。ガタガタと震えながら頷くと、彼は満足したようだ。
首領に報告してくるからここで待って居ろと言って部屋から出ていた。
扉の開閉する音はまるで、もう二度と帰ることは出来ない、諦めろ。そう宣告されているような気がして、私を絶望のどん底へと突き落とした。
いつもの様に学校へ行き、授業を受けて友達と話しをたりしていつも通りの何もない学生生活を送っていた。
授業を終えて、放課後を迎え、友達と別れてあとは家へ帰る。
何の変哲もない、いつも通りの日常が続く。ハズだった。
通学路の途中に、全く見慣れない高級車が止められていた。こんな所にあんな高級車が止まっているなんて、珍しいな。あんな車を乗り回すなんて、持ち主は余程のお金持ちなのだろうか。
…こんな人気のない道にどうして止まっているのだろう。なんとなく、近付きたくないな。
けれどもあの車が止まっている場所を通らないと家へ帰ることが出来ない。嫌だなと思って立ち止まっていても仕方がないので、なるべく足早に車の横を通ることにした。
不安とはよそに、すんなりと横を通過することが出来て安心した、その時だった。背後から車の開く音が聴こえた次の瞬間、私は捕まり、車中へと連れ込まれてしまった。
「っ?!」
驚いて声を上げようとしたがそれは叶わず、口元に何かを押し付けられ、意識を失ってしまった。
*****
『名前ちゃん気持ち悪い!』
ど、どうして…?わ、私はただ、怪我を治してあげたいと思っただけ…
『気持ちはうれしいけど、普通はこんな風に一瞬で怪我を治したりなんて出来ないよ。可笑しいよ。気持ち悪い…もう関わりたくない…』
あっ…待って、行かないで…!お願い、そんな酷いこと言わないで…。
*****
久しぶりに子供の頃の夢を見た。すごく、苦い嫌な思い出。最悪だ。どうしてこんな記憶呼び起さなくてはいけないんだ。憂鬱に思いながら目を開く。
すると目に入ってきたのは、真っ白な天井。可笑しい。私の部屋の天井は水色のはずだ。
焦りながら起き上がってみると、やはりそこは見覚えのない部屋だ。
広い部屋、大きな机やソファといった家具たち。
私の寝かされている寝台もとても大きく、フカフカだ。ここはどこかのお屋敷なのだろうか…?どうして私はこんな所にいるのだろう…?
そこまで考えて眠りに堕ちる前の出来事を思い出した。
まさか…誘拐?!早く助けを呼ばなければと思うが、どこにも携帯が見当たらない。それどころか、意識を失う前に持っていた荷物が何一つ見当たらない。犯人に全て奪われてしまったのだろうか。
「目ェ覚めたか?」
「ッ?!」
突然声を掛けられ、驚きながら声の方に視線を移すと、扉の前に帽子をかぶり、高級そうな服に身を包んだ橙の髪に青い瞳をした小柄な男性が立っていた。
「あ、あなたは、誰、ですか…?」
発せられた声は、自分でもわかる程に震えていた。
「あぁ、自己紹介がまだだったな。俺は中原中也。ポートマフィアの幹部だ」
ポートマフィア?!どうしてそんな人達が私みたいな女子高生を誘拐するんだ?こんなただの女子高生1人誘拐なんてして、何になるというのだ。目の前の男…中原中也は私の疑問を感じ取ったのか、
「手前、治癒系の異能力を持っているらしいな」
そう言いながら男は私に歩み寄ってくる。恐ろしくなり後退りをするがすぐに壁に当たってしまい逃げ場を失ってしまった。
「な、なんで…」
そのことを知っているんだ。友達に拒絶されたあの日以来、能力のことは周りのも誰にも、家族にも気が付かれないようにと細心の注意を払っていた筈だ。それなのにどうして…?
「ウチの首領が先日、瀕死の状態だった猫を治している手前を見掛けたらしくてな。その能力をご所望らしい。だから少々手荒な方法を取らせて貰ったが、俺たちのアジトへ来てもらったってことだ」
いつの間にか中原中也は私の目の前まで来ていた。床に座り込んでガタガタと震えている私と目を合わせるためか、男もしゃがみ込んで語り掛けてきた。
「そんな怖がるなよ。別に殺したりなんてしねぇよ。…もっとも、手前が大人しく言うことを聞くなら、だけどな」
「いうこと…?」
「あぁ。先刻も言った様に、首領は手前の能力を欲しがっている。手前のその力を、首領のため…ポートマフィアのために使え」
「それはつまり、私にポートマフィアに入れってこと、ですか……?」
「そういったつもりだが?」
さも当然であるとでも言いたげな様子で目の前の男は言う。
「……い……です……」
「あ?」
「いや、です…絶対に、ポートマフィアになんて入りません」
震える身体と声を必死に抑えながら答えた。男の目を見る。
真っ青で怖ろしいほど綺麗な瞳と目が合う。何を考えているのかわからない。見続けていると、吸い込まれてしまいそうだ。
長い沈黙が続く。お互い何も言わずに見つめ合う。
沈黙を破ったのは、彼の方だった。
「そうか…嫌か。そんなガタガタ震えながらも断るなんてなぁ。意外と度胸のある嬢ちゃんみたいだ」
そういって、中原中也は笑いながら私の頭をポンポンと2,3回撫でてきた。
「そんでもって、的確な判断の出来ねぇ、莫迦なガキみたいだ」
ぐしゃり。と、髪を掴まれた。
「いいか。手前に選択肢なんかありゃしねぇ。手前の答えははい、だけだ。それ以外の答えは存在しねぇんだよ。わかったか?」
髪を掴んでいない方の手で、顎を持ち上げられて中原中也から目を逸らすことが出来ない。男の顔は美しく、余計に恐怖心を煽ってくる。
だが、だからと言ってマフィアに入るなんて無理に決まっている。
私は目に涙を浮かべ震えながら嫌です、無理です、家に帰して、と、力なく懇願することしか出来ない。
「わからねぇガキだな。どんなに泣こうが喚こうが、無駄だ。お前にはポートマフィアに入るしか道はねぇんだよ。諦めろ」
「絶対に嫌!家に帰して!」
とうとう耐えられなくなり、私は泣き出してしまった。
どうして、こんな目に逢わなければいけないんだ。
私はただ、いつも通り普通に学校からの帰り道を歩いていただけなのに。こんな能力、欲しくて手に入れた訳ではないのに。
「……そんなに俺たちの手中に入るのが嫌なのか?」
泣き続ける私をじっと見つめながら彼は言う。こくりと頷くと、「そうか…なら、仕方ねぇな」と呟いた。
許してくれるのだろうか?家へ帰してくれるのだろうか?
そう思った次の瞬間だった。
ドゴン、凄まじい音と共に私は地面へと沈んだ。身体が重くなり、身動き一つ取れず、息苦しい。なんだ、これは…?
「っ…!」
「どういっても俺たちの所へ来ないっていうのなら、このまま潰してやるよ」
苦しくて、声を発することも出来ない。息を辛うじてするのでやっとだ。指一本動かすことすら出来ない私を、無表情で男は見下ろしてくる。
「ガキ。最後のチャンスだ、選べ。首領は手前の能力をご所望だ。俺達ポートマフィアの狗となり、首領のため組織のため働け。そうしたら殺したりはしない。寧ろ今までとは比べ物にならないくらい良い暮らしをさせてやることを約束するぜ?」
どうする…?そういって優しく問い掛けてくる。
その声は、今までの人生の中で一番優しげな声だ。そして一番、恐ろしい。
少しだけ、息苦しさがなくなった。身体も、指と首くらいは動かせるようになった。相変わらず、起き上がることは出来そうにないが。
「答えろ。何も言わねぇなら、今度は本当に潰すぞ」
そういうと同時に、また息苦しくなってきた。
「ッ!わ、わかった…わかり、ました…ポートマフィアに、入り、ます…!貴方達のために、働き、ます…!」
そう答えると、息苦しさは収まり身体も動かすことが出来るようになった。
「最初からそう言えばいいんだよ。強情な奴だな」
言いながら私の頭をガシガシと撫でた。優しい手つきと笑顔だが、そんなもの恐怖でしかない。
「ところで」
頭をなでる手をぴたりと止め、顎と腕を掴まれた。
「逃げようとしたり、裏切ろうとしたりしたら、わかってるよな…?」
逃げたら殺す。裏切っても殺す。お前はここで暮らせ。そう、目で語っているのが分かった。ガタガタと震えながら頷くと、彼は満足したようだ。
首領に報告してくるからここで待って居ろと言って部屋から出ていた。
扉の開閉する音はまるで、もう二度と帰ることは出来ない、諦めろ。そう宣告されているような気がして、私を絶望のどん底へと突き落とした。
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