君の隣
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帝光中学のキセキの世代には、1つ奇妙な噂があった。
キセキの世代と呼ばれる5人が一目置いていたという、試合記録も何も残っていない幻のシックスマンと呼ばれた6人目がいた、という都市伝説の様な噂が。
そんなのただの噂で、本当にいる訳ないだろうと思っていた。
だから、すごく驚いた。その噂の6人目が本当に存在していてしかも、黛がその6人目と同じポテンシャルを持っていて、それに代わる存在になることが出来るかもしれないと知ったときは。
*****
「ラノベの主人公にでもなった気分だ」
いつも通り屋上でラノベを読みながら黛はぽつりと呟いた。
何でかと聞くと、ここ最近の出来事すべてが原因だと答えられた。
ここ最近の黛の生活を振り返ってみると、あぁなるほどと納得した。
ついこの間まで3軍にいてしかも1度辞めた人が、突然現れた魔王様みたいなチート級の1年生主将の導きによって1軍レギュラーとなり、これまたチート級な後輩3人と一緒のチームで戦い、本人は都市伝説の様なものへと成り代わる……ほんと、ラノベのあらすじを聞いているみたいだ。
「人生何があるかわからないね」
と、苦笑しながら言うと「全くだ」と返ってきた。
「1軍の練習にはもう慣れた?」
そう聞くと、休み時間にまで部活の話は勘弁してくれよとでも言いたげな顔をされてしまったが
「まだあいつらについていくのでやっとだが、最初の頃よりはマシになったんじゃねーの」
と、渋々答えてくれた。
確かに、最初の頃は赤司くん達のペースについて行くことすら出来てなかったけれども最近は練習後へばってはいるものの他のみんなのペースについて行くことは出来てるし、更には赤司くんの出す特別メニューだって熟しているようだ。
やっぱりすごくバスケ好きなんじゃないか。好きでもなければ、そんな風には出来ないだろうに。
「おっ、黛さんに小鳩ちゃん先輩じゃん!」
聞き覚えのある声に顔を上げると、屋上の扉を開けて葉山くんが歩いてきていたので手を振ると、嬉しそうに振り返してくれた。
「……なんか用か?」
と、ラノベを読みながら言う黛に対して「別に、あんたに用はないよっ」と、キョロキョロと辺りを見渡している。心なしか、黛がイラついているように見える。
「ねぇ、永ちゃん知らなーい?」
一通り辺りを見渡した後、私達2人に尋ねる葉山くん。
「根武谷に用なのか」
「そ。赤司から伝言あってさー。ここにいるかと思ったんだけど、ハズレかー」
そう言いながら唇を尖らす葉山くんに相変わらずラノベを読みながら話す黛。そんな2人のやりとりを意外に思いながら見ていると
「2人は読書―?て、小鳩ちゃん先輩は違うか。黛さんは何読んでるのー?」
「言っても、お前が興味持ちそうにない話だ」
「うっわ、ばっさり切ったよ、この人っ」
黛の返しに腹が立ったのか、葉山くんはくるりと体を反射させて「そりゃ、オレは本読まないけどさっ」と文句を言いつつ屋上を出て行こうとするのでその背中にまた放課後部活でねーと話しかけると「んー」と、後ろ手で手を振りながら出て行った。
「葉山くん元気だねー」
「喧しいだけだろ」
*****
「あら本当に2人でここに来ていたのね」
葉山くんが出て行って暫くしてから今度は違う声が聞こえてきた。
「何か用か、実渕」
ラノベから目を離さずに言う黛。
「貴方達がいつもここで読書してるって征ちゃんから聞いたから。どんな所かと思って来てみたの」
その為だけにわざわざここまで来たんだ。というかなんで赤司くんそんなこと知ってるの。
「実渕くんも座れば?2年の教室からここ結構離れてるから疲れたんじゃない?」
そう言ったら黛が凄い顔して私の方を見た。うわぁ、めちゃくちゃいやそうな顔してる。
「いいえ、やめておくわ。2人がほぼ毎日ここへきてるって聞いたから良い所なんだと思って来たのだけど…」
「本、読むつもりだったのか?」
黛の視線が実渕くんの持つ本に移っていた。
「そのつもりだったのだけどもやめておくわ。ここ、もっと良い所だと思っていたのだけどもなんてことのないただの屋上なのね。景色が綺麗な訳でもないし。それにここ、日差しが強くて嫌だわ。小鳩ちゃん、日焼け対策はちゃんとしてある?」
あっ日焼け止め塗り忘れた…というと「ダメじゃない!ほら、私の貸してあげるから塗っておきなさい」と、日焼け止めを貸してくれたのでありがたく塗らせてもらうことにした。……女子力負けてるなぁ。
「じゃ、私はそろそろ戻るわね」
そう言って実渕くんは出て行こうとして「あ、そうそう」と立ち止まって、軽く黛のことを睨みながら続けた。
「読書もいいけれど、貴方はもう少し体力つけた方がいいわよ。スタミナが圧倒的に足りなすぎ。あれじゃ、試合で足を引っ張るわ」
本なんて読んでいる場合ではないだろう、とでも言いたそうな顔で実渕くんが言う。黛も頑張っているんだからそこまで言わなくてもいいんじゃないかとは思うが、マネージャーである私が選手同士の問題に口出しするのも違うだろうし、黙っておこう。庇ったりなんてしたら黛にも失礼だし。
「今日の放課後、少し練習に付き合ってもらうわよ。ミスディレクションに慣れておきたいの。よろしくね」
実渕くんは黛の返事も聞かずに「じゃあね、小鳩ちゃん」と挨拶をして帰っていった。
「へぇ、アイツが練習をお願いするなんて、珍しいな」
ふいに上から声が聞こえてきた。屋上出口の屋根の上で人影がむくりと起き上がった。
「赤司から伝言があるらしいぞ」
黛がラノベに視線を戻しながら声を掛けると人影の正体、根武谷くんが「らしいな」と言って笑い、屋根から飛び降りた。
「にしても意外だったぜ。八島はともかく、アンタまで小太郎にオレの事黙ってるとはな。絶対教えるだろうと思ったぜ」
やっぱり根武谷くんも私と同じこと思ったんだ。
「別に。あそこでお前がここにいることを葉山にいえば、余計うるさくなると思っただけだ」
「ははっ、ちげーねぇなぁ。まぁ一応礼言っとくわ。おかげで腹ごなしの時間は取れた」
そういうと、豪快にげっぷをした。実渕くんがいたらきっと怒るだろうなぁ……。
「もうお腹は大丈夫なの?」
昼休みが終わってすぐに食べ過ぎたと言ってぽっこりとお腹を膨らませながらやってきたことを思い出す。
「おう、お影さんでな!」
と、豪快に笑う根武谷くんを見て思う。代謝良すぎる……。
「しっかし、まさか小太郎がここを探しにくるとはな。赤司から、穴場だって聞いたのによ」
「……赤司が?」
「あぁ。ここは昼休みになるとあんたらしかいなくて静かだって言ってたんだよ」
赤司くんみんなに私達がここに来てるってこと教えたんだ。何のためにそんなことをしたんだろう。というか、本当になんでそんなこと知ってるんだろう。赤司くんに話したことあったっけ…?
「赤司の伝言、聞きに行かなくていいのか?」
ラノベから顔を上げて、黛は根武谷くんを見た。
「あんたに言われなくてもわーってるよ。これから聞いてくる。つか、小太郎のやつどこ行ったかな」
「食堂だ」
「はぁ?」
「食堂?」
「さっきの様子と、時間経過を考えると、そろそろ探すのに飽きて、喉が渇いてるはずだ。食堂で一息ついてるんじゃないか」
「飲み物を買うなら、自販機もあるぜ?」
「葉山にはお前を探すという目的がある。とりあえず食堂へ行き、探すついでに飲み物を買うだろうな」
淡々と推測する黛を根武谷くんが面白そうに目を細めた。
「あんたの人間観察も板についてきたな」
いやもう人間観察の域を出てる気がするんだけど。
「もし当たってたら、今度昼飯おごるよ」
「いらん」
即答する黛に対して根武谷くんは笑い声を上げ、屋上から出て行った。
「探偵みたい…」
「何が」
「黛が。あそこまで葉山くんの行動予測するなんてすごいなーって思って。高校生探偵でも目指せば?」
「嫌だわ。死神言われるじゃねーか」
でも確実に生き残れるよ!と言ったら面倒だと思ったのかスルーされた。
*****
扉が開く音が聞こえると
「赤司か」
ラノベから一切目を離さずに黛が尋ねた。
「よくわかったね」
と、特に驚いた様子もなく赤司くんは肯定した。
赤司くんが近付いてくるのを察したらしく、黛はラノベに栞を挟み閉じてから顔を上げた。
部活の事で重大な話かな。私がいると邪魔してしまうかもしれないと思い、先に教室へ戻ると知らせてその場を後にした。
*****
赤司くんは、黛を利用するために1軍へ導いたのだろう。そして恐らく、黛もそのことに気が付いていると思う。何かと鋭い彼のことだ。私でも気が付いたのだから、黛が気付かないわけがない。
それでも最近、黛は楽しそうだ。本人は否定するだろうけど。今まで以上に、バスケをしている時は活き活きとしている。……活き活き、なんて言葉黛には似合わない気もするけど。
なんやかんや、彼はバスケと自分のことが大好きだから、大好きなバスケを出来てしかも、大好きな自分が活躍出来るのだから、楽しくない訳がない。
だから、例え利用するためだとしても、ただの道具としてしか思っていないとしても、黛をレギュラーにしてくれた赤司くんには感謝してもしきれない。……少しだけ、悔しいけれども。
私は?私は、黛のために、何か出来ているのだろうか?
出来ることは、あるのだろうか?
キセキの世代と呼ばれる5人が一目置いていたという、試合記録も何も残っていない幻のシックスマンと呼ばれた6人目がいた、という都市伝説の様な噂が。
そんなのただの噂で、本当にいる訳ないだろうと思っていた。
だから、すごく驚いた。その噂の6人目が本当に存在していてしかも、黛がその6人目と同じポテンシャルを持っていて、それに代わる存在になることが出来るかもしれないと知ったときは。
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「ラノベの主人公にでもなった気分だ」
いつも通り屋上でラノベを読みながら黛はぽつりと呟いた。
何でかと聞くと、ここ最近の出来事すべてが原因だと答えられた。
ここ最近の黛の生活を振り返ってみると、あぁなるほどと納得した。
ついこの間まで3軍にいてしかも1度辞めた人が、突然現れた魔王様みたいなチート級の1年生主将の導きによって1軍レギュラーとなり、これまたチート級な後輩3人と一緒のチームで戦い、本人は都市伝説の様なものへと成り代わる……ほんと、ラノベのあらすじを聞いているみたいだ。
「人生何があるかわからないね」
と、苦笑しながら言うと「全くだ」と返ってきた。
「1軍の練習にはもう慣れた?」
そう聞くと、休み時間にまで部活の話は勘弁してくれよとでも言いたげな顔をされてしまったが
「まだあいつらについていくのでやっとだが、最初の頃よりはマシになったんじゃねーの」
と、渋々答えてくれた。
確かに、最初の頃は赤司くん達のペースについて行くことすら出来てなかったけれども最近は練習後へばってはいるものの他のみんなのペースについて行くことは出来てるし、更には赤司くんの出す特別メニューだって熟しているようだ。
やっぱりすごくバスケ好きなんじゃないか。好きでもなければ、そんな風には出来ないだろうに。
「おっ、黛さんに小鳩ちゃん先輩じゃん!」
聞き覚えのある声に顔を上げると、屋上の扉を開けて葉山くんが歩いてきていたので手を振ると、嬉しそうに振り返してくれた。
「……なんか用か?」
と、ラノベを読みながら言う黛に対して「別に、あんたに用はないよっ」と、キョロキョロと辺りを見渡している。心なしか、黛がイラついているように見える。
「ねぇ、永ちゃん知らなーい?」
一通り辺りを見渡した後、私達2人に尋ねる葉山くん。
「根武谷に用なのか」
「そ。赤司から伝言あってさー。ここにいるかと思ったんだけど、ハズレかー」
そう言いながら唇を尖らす葉山くんに相変わらずラノベを読みながら話す黛。そんな2人のやりとりを意外に思いながら見ていると
「2人は読書―?て、小鳩ちゃん先輩は違うか。黛さんは何読んでるのー?」
「言っても、お前が興味持ちそうにない話だ」
「うっわ、ばっさり切ったよ、この人っ」
黛の返しに腹が立ったのか、葉山くんはくるりと体を反射させて「そりゃ、オレは本読まないけどさっ」と文句を言いつつ屋上を出て行こうとするのでその背中にまた放課後部活でねーと話しかけると「んー」と、後ろ手で手を振りながら出て行った。
「葉山くん元気だねー」
「喧しいだけだろ」
*****
「あら本当に2人でここに来ていたのね」
葉山くんが出て行って暫くしてから今度は違う声が聞こえてきた。
「何か用か、実渕」
ラノベから目を離さずに言う黛。
「貴方達がいつもここで読書してるって征ちゃんから聞いたから。どんな所かと思って来てみたの」
その為だけにわざわざここまで来たんだ。というかなんで赤司くんそんなこと知ってるの。
「実渕くんも座れば?2年の教室からここ結構離れてるから疲れたんじゃない?」
そう言ったら黛が凄い顔して私の方を見た。うわぁ、めちゃくちゃいやそうな顔してる。
「いいえ、やめておくわ。2人がほぼ毎日ここへきてるって聞いたから良い所なんだと思って来たのだけど…」
「本、読むつもりだったのか?」
黛の視線が実渕くんの持つ本に移っていた。
「そのつもりだったのだけどもやめておくわ。ここ、もっと良い所だと思っていたのだけどもなんてことのないただの屋上なのね。景色が綺麗な訳でもないし。それにここ、日差しが強くて嫌だわ。小鳩ちゃん、日焼け対策はちゃんとしてある?」
あっ日焼け止め塗り忘れた…というと「ダメじゃない!ほら、私の貸してあげるから塗っておきなさい」と、日焼け止めを貸してくれたのでありがたく塗らせてもらうことにした。……女子力負けてるなぁ。
「じゃ、私はそろそろ戻るわね」
そう言って実渕くんは出て行こうとして「あ、そうそう」と立ち止まって、軽く黛のことを睨みながら続けた。
「読書もいいけれど、貴方はもう少し体力つけた方がいいわよ。スタミナが圧倒的に足りなすぎ。あれじゃ、試合で足を引っ張るわ」
本なんて読んでいる場合ではないだろう、とでも言いたそうな顔で実渕くんが言う。黛も頑張っているんだからそこまで言わなくてもいいんじゃないかとは思うが、マネージャーである私が選手同士の問題に口出しするのも違うだろうし、黙っておこう。庇ったりなんてしたら黛にも失礼だし。
「今日の放課後、少し練習に付き合ってもらうわよ。ミスディレクションに慣れておきたいの。よろしくね」
実渕くんは黛の返事も聞かずに「じゃあね、小鳩ちゃん」と挨拶をして帰っていった。
「へぇ、アイツが練習をお願いするなんて、珍しいな」
ふいに上から声が聞こえてきた。屋上出口の屋根の上で人影がむくりと起き上がった。
「赤司から伝言があるらしいぞ」
黛がラノベに視線を戻しながら声を掛けると人影の正体、根武谷くんが「らしいな」と言って笑い、屋根から飛び降りた。
「にしても意外だったぜ。八島はともかく、アンタまで小太郎にオレの事黙ってるとはな。絶対教えるだろうと思ったぜ」
やっぱり根武谷くんも私と同じこと思ったんだ。
「別に。あそこでお前がここにいることを葉山にいえば、余計うるさくなると思っただけだ」
「ははっ、ちげーねぇなぁ。まぁ一応礼言っとくわ。おかげで腹ごなしの時間は取れた」
そういうと、豪快にげっぷをした。実渕くんがいたらきっと怒るだろうなぁ……。
「もうお腹は大丈夫なの?」
昼休みが終わってすぐに食べ過ぎたと言ってぽっこりとお腹を膨らませながらやってきたことを思い出す。
「おう、お影さんでな!」
と、豪快に笑う根武谷くんを見て思う。代謝良すぎる……。
「しっかし、まさか小太郎がここを探しにくるとはな。赤司から、穴場だって聞いたのによ」
「……赤司が?」
「あぁ。ここは昼休みになるとあんたらしかいなくて静かだって言ってたんだよ」
赤司くんみんなに私達がここに来てるってこと教えたんだ。何のためにそんなことをしたんだろう。というか、本当になんでそんなこと知ってるんだろう。赤司くんに話したことあったっけ…?
「赤司の伝言、聞きに行かなくていいのか?」
ラノベから顔を上げて、黛は根武谷くんを見た。
「あんたに言われなくてもわーってるよ。これから聞いてくる。つか、小太郎のやつどこ行ったかな」
「食堂だ」
「はぁ?」
「食堂?」
「さっきの様子と、時間経過を考えると、そろそろ探すのに飽きて、喉が渇いてるはずだ。食堂で一息ついてるんじゃないか」
「飲み物を買うなら、自販機もあるぜ?」
「葉山にはお前を探すという目的がある。とりあえず食堂へ行き、探すついでに飲み物を買うだろうな」
淡々と推測する黛を根武谷くんが面白そうに目を細めた。
「あんたの人間観察も板についてきたな」
いやもう人間観察の域を出てる気がするんだけど。
「もし当たってたら、今度昼飯おごるよ」
「いらん」
即答する黛に対して根武谷くんは笑い声を上げ、屋上から出て行った。
「探偵みたい…」
「何が」
「黛が。あそこまで葉山くんの行動予測するなんてすごいなーって思って。高校生探偵でも目指せば?」
「嫌だわ。死神言われるじゃねーか」
でも確実に生き残れるよ!と言ったら面倒だと思ったのかスルーされた。
*****
扉が開く音が聞こえると
「赤司か」
ラノベから一切目を離さずに黛が尋ねた。
「よくわかったね」
と、特に驚いた様子もなく赤司くんは肯定した。
赤司くんが近付いてくるのを察したらしく、黛はラノベに栞を挟み閉じてから顔を上げた。
部活の事で重大な話かな。私がいると邪魔してしまうかもしれないと思い、先に教室へ戻ると知らせてその場を後にした。
*****
赤司くんは、黛を利用するために1軍へ導いたのだろう。そして恐らく、黛もそのことに気が付いていると思う。何かと鋭い彼のことだ。私でも気が付いたのだから、黛が気付かないわけがない。
それでも最近、黛は楽しそうだ。本人は否定するだろうけど。今まで以上に、バスケをしている時は活き活きとしている。……活き活き、なんて言葉黛には似合わない気もするけど。
なんやかんや、彼はバスケと自分のことが大好きだから、大好きなバスケを出来てしかも、大好きな自分が活躍出来るのだから、楽しくない訳がない。
だから、例え利用するためだとしても、ただの道具としてしか思っていないとしても、黛をレギュラーにしてくれた赤司くんには感謝してもしきれない。……少しだけ、悔しいけれども。
私は?私は、黛のために、何か出来ているのだろうか?
出来ることは、あるのだろうか?