ターコイズに恋焦がれ〜初めてのクリスマス〜
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無我夢中で走り続けて、ツイステッドワンダーランドへと繋がっていたお墓のある場所まで辿り着くことが出来た。
「なんなんだ、あのスウィングって野郎は!欲望の王?どっから来たんだ?何がしたいんだ?なんなんだゾー!」
グリムちゃんの嘆きが響き渡る。
「俺らが知るわけないでしょ!ハロウィン・タウンに来るのも何もかも初めてなんスから」
ラギー先輩が呆れたようにそして少しイラついたように言う。
「あいつは……スウィングは、グリム君達がツイステッドワンダーランドに帰った後に突然現れたんだ。ハロウィン・タウンの友達を次々さらって、ついに町で残ったのは僕とゼロだけ。それで見つからないように、静かに隠れていたってわけさ」
ジャックさんがのんびりと説明してくる。って、そ、そんな重大なこと今説明する!?
「そういう大事なことはもっと早く言って欲しかったッスね~!」
そう。本当にそれ。
「……足音は聞こえねえ。スウィングは追って来てないみたいだ。みんな疲れてる。俺らも無理せず、一旦ここに隠れて休みましょう」
ジャックちゃんが耳を澄ましながら言ったのを聞いて
「はあ~」
と全員深々溜息を吐く。
「フロイドちゃん、ありがとう」
もう大丈夫、というと「ん」と返事をし、肩から下ろされた。
「スウィングかあ。あれがリリア先輩の話してた欲望の王なら……アイツもスカリー・J・グレイブスと同じように過去から来たってことッスよね」
エースちゃんが先輩達に確認するように尋ねるとリリア先輩が「ああ……」と神妙な面持ちで答える。
「茨の谷のこと、茨の国って言ってましたね」
だから少なくとも、100年以上昔の妖精ってことですよねと言ったら
「えっどうしてそれだけで100年以上前の妖精だって断言出来るんだ?」
デュースちゃんに驚いたように聞かれた。
「だって茨の谷が国って呼ばれてたのが今から100年以上前のことじゃん」
そう言い返すと
「そうなのか!?ティアナ、物知りだな……」
さすが得意科目魔法史なだけある……と尊敬したように言われる。物知りって……
「普通に教科書に載ってるぞ……」
ジャックちゃんが呆れたようにツッコむ。
「えっそ、そうなのか……?」
「なんなら昨日トレインの授業で習っただろ……」
「仕方ないよ、デュースもグリムも授業開始5分で爆睡してたし……」
教科書に載ってると言われ驚くデュースちゃんとグリムちゃんに対してエースちゃんとユウちゃんも少し呆れ気味だ。
「デュースちゃん、グリちゃん、またみんなで勉強会しようね。……それにしても、よりにもよってなんであんなヤバヤバなやつが……どうせならもっと優しい偉人に会いたかったよ」
トホホ…とでも言いたげな顔でケイト先輩が呟く。
「全部あの本の仕業なのか?」
あの本はなんなんだよ、とジャックちゃん。
「わからぬ。全て悪夢としか言いようがないのう……」
悪夢なんて言葉で片付けたくないよ。
「あやつの力は真のものじゃ。欲望の王……子供騙しの噂ではなかったらしい」
恐らくここにいる中で1番強いのはリリア先輩だ。そのリリア先輩が敵わないだなんて一体どうすればいいんだろう……。
「おお、そうじゃデュースよ。さっき打ち付けたところを見せてみろ。手当てをしてやろう」
先ほどまでの険しい顔から一転して、いつも通りの柔らかい笑顔でリリア先輩が言う。
「……見たところ大事はないようです。良かったな」
「はい!ダイヤモンド先輩が魔法で受けてくれましたから。それに、ティアナもハンカチ貸してくれたんで。あっそうだティアナ。ハンカチありがとうな。ツイステッドワンダーランドへ帰ったら洗って返すよ」
そうお礼を言って来るデュースちゃんに
「別に洗わなくてもいいよ」
と言ったが
「いや、洗って返す!」
と譲らない様子。別に気にしなくてもいいのに。
「でもあいつに……スウィングに、全然敵いませんでした。魔法でも、拳でも……」
デュースちゃん…大分ショックを受けているみたいだ。他のみんなも、それぞれ考え込むような顔をしている。……ハロウィン・タウンの人達、無事なのかな。スウィングさんのあの雰囲気を思い出すと、不安が募ってくる。
「……よし!とっとと、とんずらキメよう。ツイステッドワンダーランドに帰るッス!」
えっ……
「えっ。でもさらわれたっていうスケリントンさんの仲間は……」
「助けてやる義理がないでしょ。人助けして身を滅ぼすなんて馬鹿のやることッス」
ラギー先輩…確かにその通り、かもしれないけどそこまではっきり言わなくても……。
「そこをなんとか頼めないかなあ。グリム君からも言ってくれよ」
ジャックさんが縋るようにしてグリムちゃんに頼む。グリムちゃんにそんなこと言っても…
「ラギーの言う通りだ!命が1番大切なんだゾ!」
ほらやっぱり……。ゼロちゃんもジャックさんも驚いている。
「ちょっと前まで仲良さそうにしてたのに!」
「なんて薄情なヤツ」
オルトちゃんとエースちゃんがツッコむと
「あんな怖いヤツと戦うなんてごめんなんだゾ!俺様もう少しで鼻がなくなるとこだったんだからな!」
そう言い返す。まあ、そうだよね…。サリーさん達が心配ではあるし、助けたいという思いも少しはある。けど、思いがあったってなんの役にも立たない。リリア先輩が敵わなかった相手を、このメンバーでなんとか出来るとは到底思えない。せめてここに、アズールとかジャミル先輩とかレオナ先輩みたいな作戦を立案するのが得意な人がいたら別かもしれない。けど、この場にいるメンバーでそれが出来る人がいるからと聞かれたら、いない。だったら私達に出来ることなんてあるわけがない。無闇矢鱈に首を突っ込んで面倒なことになるなんて絶対に嫌。
……何よりも、もうあのスウィングさんと関わり合いになんてなりたくない。デュースちゃんはジャックさん達に協力したい気持ちが少しだけあるみたいだけども、他のみんなは私やグリムちゃん、ラギー先輩と似た意見のようで少しほっとする。
「おーい、グリム。どうよ。帰りの扉は見つかったか?」
帰りの扉を捜してくると言って走って行ったグリムちゃんにエースちゃんが呼びかける。にしても帰りの扉捜しに行っただけの割にグリムちゃん帰り遅いな。ここからあの扉まで近かったと思うんだけどな。まさか迷子にでもなったのかななんて考えていたらグリムちゃんがすごい勢いで走って来て
「こ、こ……」
血相を変えながら『こ』と言ってる。何、どうしちゃったのこの子。
「こ?」
なんだよ、なんかあったのか?そうジャックさんに問い掛けられると
「壊れてる~~~~!ツイステッドワンダーランドに繋がる墓が、崩れてるんだゾ!」
私達全員のことを地獄へと叩きつけるような告知をしてきた。
◇
扉のところへ行くと、グリムちゃんの言う通り……
「うわ、ほんとだ。ボロッボロに崩れてんね」
そう、正しくその言い方がぴったり。見るも無残にボロボロだ。
「ジャックさん、他に帰り道は!?」
そうケイト先輩が問い掛けると
「うーん、あいにく思いつかないな」
またしても私達を絶望させる答えが返ってくる。
「ど、どうしよう。俺様達ツイステッドワンダーランドに帰れなくなっちまった!」
帰れないのもそうだけど、これってつまりはスウィングさんから逃げられない…ってことでもあるんじゃ……。
「困ったなあ。崩れちまったなんて、そんなに古い墓だったのか?」
と、珍しくカリム先輩が表情を曇らせる。……このお墓、自然に崩れたのかな…?それにしてはなんか…
「いいや。これは、自然に崩れたものではない。破片を見ろ。地面に倒れてからも何度も粉々に砕かれている。誰かが意図的に壊したようだ」
ああ、やっぱりか。道理でどこか不自然だと思った。シルバー先輩ってこういうところ鋭いよな。普段は天然で鈍いのに。誰が壊したのか……なんて考えるまでもないか。
「もしかしてスウィングの仕業か?」
「そうかもね……あの人、ツイステッドワンダーランドに未練とかないみたいだし」
ジャックちゃんとラギー先輩も私と同じ考えらしい。というかそれ以外ないよね。
「いいや……こんなことをしそうな奴が、もう1人いるぞ」
ジャックさんがその考えを否定してきた。スウィングさん以外にもこんなことをしそうな人がいるの?
「もしやスウィングに仲間がおるのか?」
「ああ。奴ら手を組んだらしい」
スウィングさん1人でもあれだけ厄介なのに仲間までいるの!?
「そいつはスウィングに負けず劣らずの悪党だ。ハロウィン・タウン1の厄介ものさ。子分の悪ガキトリオよりも抜け目なく、ズルく、悪質」
悪ガキトリオ……。あの可愛げの欠片もない3人組か。
ハロウィンの時、ジャミル先輩に向かって大量の虫を撒き散らしてきた時は心臓が止まるかと思った。白目をむきながら聞いたことないような声で絶叫し、マジカルペンを構えてたジャミル先輩の姿はオーバーブロットした時くらい……いや下手したらそれ以上に怖かったな。あの人いったい何があったらあそこまでの虫嫌いになるんだろ……。あの瞬間、本気で自分の人生の終了とハロウィン・タウンの終焉を本気で予感したっけ…。そんなあの子達の親玉、か。かなりヤバそうだな。
「その親玉のろくでなしの名前は……」
「おいおいおい。俺の噂か。わあぉ!怖いなあ、もう」
ジャックさんの言葉を遮り、また1つ声が増えた。
「出たな……。ウギー・ブギー!」
ジャックさんの視線の先を見るとそこには、まるで緑のズタ袋みたいなものを被ったバケモノがいた。
「そう。おいらはウギー・ブギー。気をつけな!」
ウギー・ブギー…?初めて聞く名前だ。前に来た時は合わなかったけど、ジャックさんの口ぶり的に前から知ってるみたいだ。
「ウギー・ブギー。やっぱりお前の仕業だったんだな」
ジャックさんがウギー・ブギーのことを睨みつけている。
「おおっと、そんな顔で責めないでくれよ。俺はあの男の話に乗っただけさ」
あの男…それって…
「そうさ!」
どこからか突然、スウィングさんが現れた。思わず小さく悲鳴を上げ、フロイドちゃんの後ろに隠れた。
「気配なんて全然なかったのに……どうやって現れた!?」
ジャックちゃんが気配を感じなかった!?
「チッチッチ。スウィングさんを舐めてもらっちゃあ困るな」
驚く私達のことをニヤニヤと眺めている。余裕綽々って感じが不気味すぎる。
「よう、兄弟!」
スウィングさんとブギーが肩を組み合っている。
「なあジャック。コイツは本当に面白いやつだぜ」
「ああ。スウィングさんはこのウギー・ブギーさんと、すっかり意気投合しちまったンだ」
意気投合……?本当に……?ブギーの方はわからないけど、スウィングさんの方はなんだか裏がありそう。
「裏がありそう?酷いなお嬢ちゃん。スウィングさんは本気でこのウギー・ブギーさんのことを気に入って、本気で彼と手を組んでるのに」
ヤ、ヤバッ。口に出してた。また悲鳴を上げてフロイドちゃんの服を掴む。
「迂闊すぎ」
と軽く頭を小突かれた。
「手を組んだって、一体目的はなんなんだよ」
ジャックちゃんがスウィングさんのことを睨みつけながら尋ねる。
「よくぞ聞いてくれたね。スウィングさんはこのウギー・ブギーさんと決めたのさ……。2人で、全てのホリデーを乗っ取ってやろうってな!」
スウィングさんとブギーは相変わらず肩を組み楽しそうにしている。
「ホリデーを、乗っ取る……?ソ、ソレってどういう意味だ?」
「言葉の通りさ。俺のことを認めないハロウィン・タウンの連中も、目障りな骸骨男も、みーんないなくなっちまえば……全部俺の思い通り!このブギー様の作り出すハロウィンに誰も逆らえなくなる。このハロウィン・タウンの王となり、恐怖のハロウィンでみんなを支配してやるんだ!」
声高々に意気揚々と宣言するブギー。これを見たら、スカリーちゃん怒り狂いそうだな。
「いいね!その意気だ!スウィングさんもちょうど、ツイステッドワンダーランドの祝日には飽き飽きしてたンだよ。みンなが笑顔で楽しめる?そンな甘っちょろい子供騙しの祝日じゃ物足りない……。もっと残酷で、もっと刺激的で、もっと恐怖に満ちたスウィングさん好みの日になってもらわなきゃな」
「己の欲望通りに祝日を作り替えると?そのようなことが出来ると、本気で思うておるのか」
スウィングさんの野望を聞き、リリア先輩の表情がまた険しくなった。
「おや。どうやら坊やたちはこのホリデーワールドのことを、なあンにも知らないらしい。祝日を作り替えることが出来るかって……?」
ゲラゲラと笑う声が、嫌に耳に響いてくる。
「答えはイエスだ。もちろン出来る!ここは全ての祝日がややってくる場所。言うなれば、全ての祝日に影響を及ぼす起源。ハロウィンだけじゃない。ここでスウィングさんは全てのホリデーを手に入れる。そして全部の祝日を、スウィングさんの望むままに作り替えるンだ!」
まるで子供が誕生日プレゼントをもらって喜んでいるみたいな調子で話すスウィングさんに、また鳥肌が立ちそうになる。
「『スウィングさん』の?」
ブギーがスウィングさんのことを睨みながら不満そうな顔をする。
「ン?……ああ、ごめンごめン。ウギー・ブギーさんとスウィングさんの、ね。誰も我慢なンてしない。欲望が欲望を食らう。力ある者が望みを叶える世界……。な?楽しそうだろう?」
楽しそう…?そんなの、喧嘩になるだけで何も楽しくないでしょ。ハロウィンはやっぱり、学園でやったものやスカリーちゃ……スカリーさんと一緒にやった楽しいハロウィンの方が良い。どうやらそれは他のみんなも同じ考えらしく、スウィングさんとブギーの野望を全否定した。
「何ぃ!?生意気な奴らめ」
ブギーの怒鳴り声が響き渡った。
「ふん。ホリデーを乗っ取る?そんな勝手、黙って見てられるかよ!」
「へえ。それじゃあお前の許しを貰って始めるとするかな?」
スウィングさんがそう言った瞬間
「ッ!ぶ、ねッ…!」
ジャックちゃん目掛けて、魔法が放たれた。ギリギリ交わしてたからケガはしてなさそうだけれども、少し前まで彼が立っていた地面が抉れている。
「全員構えろ!!!!!」
リリア先輩の鬼気迫る声が、辺り一面に響き渡る。手足が震えそうになるのを必死に抑えて、マジカルペンを力一杯握りしめて、スウィングさんへと向けた。
「なんなんだ、あのスウィングって野郎は!欲望の王?どっから来たんだ?何がしたいんだ?なんなんだゾー!」
グリムちゃんの嘆きが響き渡る。
「俺らが知るわけないでしょ!ハロウィン・タウンに来るのも何もかも初めてなんスから」
ラギー先輩が呆れたようにそして少しイラついたように言う。
「あいつは……スウィングは、グリム君達がツイステッドワンダーランドに帰った後に突然現れたんだ。ハロウィン・タウンの友達を次々さらって、ついに町で残ったのは僕とゼロだけ。それで見つからないように、静かに隠れていたってわけさ」
ジャックさんがのんびりと説明してくる。って、そ、そんな重大なこと今説明する!?
「そういう大事なことはもっと早く言って欲しかったッスね~!」
そう。本当にそれ。
「……足音は聞こえねえ。スウィングは追って来てないみたいだ。みんな疲れてる。俺らも無理せず、一旦ここに隠れて休みましょう」
ジャックちゃんが耳を澄ましながら言ったのを聞いて
「はあ~」
と全員深々溜息を吐く。
「フロイドちゃん、ありがとう」
もう大丈夫、というと「ん」と返事をし、肩から下ろされた。
「スウィングかあ。あれがリリア先輩の話してた欲望の王なら……アイツもスカリー・J・グレイブスと同じように過去から来たってことッスよね」
エースちゃんが先輩達に確認するように尋ねるとリリア先輩が「ああ……」と神妙な面持ちで答える。
「茨の谷のこと、茨の国って言ってましたね」
だから少なくとも、100年以上昔の妖精ってことですよねと言ったら
「えっどうしてそれだけで100年以上前の妖精だって断言出来るんだ?」
デュースちゃんに驚いたように聞かれた。
「だって茨の谷が国って呼ばれてたのが今から100年以上前のことじゃん」
そう言い返すと
「そうなのか!?ティアナ、物知りだな……」
さすが得意科目魔法史なだけある……と尊敬したように言われる。物知りって……
「普通に教科書に載ってるぞ……」
ジャックちゃんが呆れたようにツッコむ。
「えっそ、そうなのか……?」
「なんなら昨日トレインの授業で習っただろ……」
「仕方ないよ、デュースもグリムも授業開始5分で爆睡してたし……」
教科書に載ってると言われ驚くデュースちゃんとグリムちゃんに対してエースちゃんとユウちゃんも少し呆れ気味だ。
「デュースちゃん、グリちゃん、またみんなで勉強会しようね。……それにしても、よりにもよってなんであんなヤバヤバなやつが……どうせならもっと優しい偉人に会いたかったよ」
トホホ…とでも言いたげな顔でケイト先輩が呟く。
「全部あの本の仕業なのか?」
あの本はなんなんだよ、とジャックちゃん。
「わからぬ。全て悪夢としか言いようがないのう……」
悪夢なんて言葉で片付けたくないよ。
「あやつの力は真のものじゃ。欲望の王……子供騙しの噂ではなかったらしい」
恐らくここにいる中で1番強いのはリリア先輩だ。そのリリア先輩が敵わないだなんて一体どうすればいいんだろう……。
「おお、そうじゃデュースよ。さっき打ち付けたところを見せてみろ。手当てをしてやろう」
先ほどまでの険しい顔から一転して、いつも通りの柔らかい笑顔でリリア先輩が言う。
「……見たところ大事はないようです。良かったな」
「はい!ダイヤモンド先輩が魔法で受けてくれましたから。それに、ティアナもハンカチ貸してくれたんで。あっそうだティアナ。ハンカチありがとうな。ツイステッドワンダーランドへ帰ったら洗って返すよ」
そうお礼を言って来るデュースちゃんに
「別に洗わなくてもいいよ」
と言ったが
「いや、洗って返す!」
と譲らない様子。別に気にしなくてもいいのに。
「でもあいつに……スウィングに、全然敵いませんでした。魔法でも、拳でも……」
デュースちゃん…大分ショックを受けているみたいだ。他のみんなも、それぞれ考え込むような顔をしている。……ハロウィン・タウンの人達、無事なのかな。スウィングさんのあの雰囲気を思い出すと、不安が募ってくる。
「……よし!とっとと、とんずらキメよう。ツイステッドワンダーランドに帰るッス!」
えっ……
「えっ。でもさらわれたっていうスケリントンさんの仲間は……」
「助けてやる義理がないでしょ。人助けして身を滅ぼすなんて馬鹿のやることッス」
ラギー先輩…確かにその通り、かもしれないけどそこまではっきり言わなくても……。
「そこをなんとか頼めないかなあ。グリム君からも言ってくれよ」
ジャックさんが縋るようにしてグリムちゃんに頼む。グリムちゃんにそんなこと言っても…
「ラギーの言う通りだ!命が1番大切なんだゾ!」
ほらやっぱり……。ゼロちゃんもジャックさんも驚いている。
「ちょっと前まで仲良さそうにしてたのに!」
「なんて薄情なヤツ」
オルトちゃんとエースちゃんがツッコむと
「あんな怖いヤツと戦うなんてごめんなんだゾ!俺様もう少しで鼻がなくなるとこだったんだからな!」
そう言い返す。まあ、そうだよね…。サリーさん達が心配ではあるし、助けたいという思いも少しはある。けど、思いがあったってなんの役にも立たない。リリア先輩が敵わなかった相手を、このメンバーでなんとか出来るとは到底思えない。せめてここに、アズールとかジャミル先輩とかレオナ先輩みたいな作戦を立案するのが得意な人がいたら別かもしれない。けど、この場にいるメンバーでそれが出来る人がいるからと聞かれたら、いない。だったら私達に出来ることなんてあるわけがない。無闇矢鱈に首を突っ込んで面倒なことになるなんて絶対に嫌。
……何よりも、もうあのスウィングさんと関わり合いになんてなりたくない。デュースちゃんはジャックさん達に協力したい気持ちが少しだけあるみたいだけども、他のみんなは私やグリムちゃん、ラギー先輩と似た意見のようで少しほっとする。
「おーい、グリム。どうよ。帰りの扉は見つかったか?」
帰りの扉を捜してくると言って走って行ったグリムちゃんにエースちゃんが呼びかける。にしても帰りの扉捜しに行っただけの割にグリムちゃん帰り遅いな。ここからあの扉まで近かったと思うんだけどな。まさか迷子にでもなったのかななんて考えていたらグリムちゃんがすごい勢いで走って来て
「こ、こ……」
血相を変えながら『こ』と言ってる。何、どうしちゃったのこの子。
「こ?」
なんだよ、なんかあったのか?そうジャックさんに問い掛けられると
「壊れてる~~~~!ツイステッドワンダーランドに繋がる墓が、崩れてるんだゾ!」
私達全員のことを地獄へと叩きつけるような告知をしてきた。
◇
扉のところへ行くと、グリムちゃんの言う通り……
「うわ、ほんとだ。ボロッボロに崩れてんね」
そう、正しくその言い方がぴったり。見るも無残にボロボロだ。
「ジャックさん、他に帰り道は!?」
そうケイト先輩が問い掛けると
「うーん、あいにく思いつかないな」
またしても私達を絶望させる答えが返ってくる。
「ど、どうしよう。俺様達ツイステッドワンダーランドに帰れなくなっちまった!」
帰れないのもそうだけど、これってつまりはスウィングさんから逃げられない…ってことでもあるんじゃ……。
「困ったなあ。崩れちまったなんて、そんなに古い墓だったのか?」
と、珍しくカリム先輩が表情を曇らせる。……このお墓、自然に崩れたのかな…?それにしてはなんか…
「いいや。これは、自然に崩れたものではない。破片を見ろ。地面に倒れてからも何度も粉々に砕かれている。誰かが意図的に壊したようだ」
ああ、やっぱりか。道理でどこか不自然だと思った。シルバー先輩ってこういうところ鋭いよな。普段は天然で鈍いのに。誰が壊したのか……なんて考えるまでもないか。
「もしかしてスウィングの仕業か?」
「そうかもね……あの人、ツイステッドワンダーランドに未練とかないみたいだし」
ジャックちゃんとラギー先輩も私と同じ考えらしい。というかそれ以外ないよね。
「いいや……こんなことをしそうな奴が、もう1人いるぞ」
ジャックさんがその考えを否定してきた。スウィングさん以外にもこんなことをしそうな人がいるの?
「もしやスウィングに仲間がおるのか?」
「ああ。奴ら手を組んだらしい」
スウィングさん1人でもあれだけ厄介なのに仲間までいるの!?
「そいつはスウィングに負けず劣らずの悪党だ。ハロウィン・タウン1の厄介ものさ。子分の悪ガキトリオよりも抜け目なく、ズルく、悪質」
悪ガキトリオ……。あの可愛げの欠片もない3人組か。
ハロウィンの時、ジャミル先輩に向かって大量の虫を撒き散らしてきた時は心臓が止まるかと思った。白目をむきながら聞いたことないような声で絶叫し、マジカルペンを構えてたジャミル先輩の姿はオーバーブロットした時くらい……いや下手したらそれ以上に怖かったな。あの人いったい何があったらあそこまでの虫嫌いになるんだろ……。あの瞬間、本気で自分の人生の終了とハロウィン・タウンの終焉を本気で予感したっけ…。そんなあの子達の親玉、か。かなりヤバそうだな。
「その親玉のろくでなしの名前は……」
「おいおいおい。俺の噂か。わあぉ!怖いなあ、もう」
ジャックさんの言葉を遮り、また1つ声が増えた。
「出たな……。ウギー・ブギー!」
ジャックさんの視線の先を見るとそこには、まるで緑のズタ袋みたいなものを被ったバケモノがいた。
「そう。おいらはウギー・ブギー。気をつけな!」
ウギー・ブギー…?初めて聞く名前だ。前に来た時は合わなかったけど、ジャックさんの口ぶり的に前から知ってるみたいだ。
「ウギー・ブギー。やっぱりお前の仕業だったんだな」
ジャックさんがウギー・ブギーのことを睨みつけている。
「おおっと、そんな顔で責めないでくれよ。俺はあの男の話に乗っただけさ」
あの男…それって…
「そうさ!」
どこからか突然、スウィングさんが現れた。思わず小さく悲鳴を上げ、フロイドちゃんの後ろに隠れた。
「気配なんて全然なかったのに……どうやって現れた!?」
ジャックちゃんが気配を感じなかった!?
「チッチッチ。スウィングさんを舐めてもらっちゃあ困るな」
驚く私達のことをニヤニヤと眺めている。余裕綽々って感じが不気味すぎる。
「よう、兄弟!」
スウィングさんとブギーが肩を組み合っている。
「なあジャック。コイツは本当に面白いやつだぜ」
「ああ。スウィングさんはこのウギー・ブギーさんと、すっかり意気投合しちまったンだ」
意気投合……?本当に……?ブギーの方はわからないけど、スウィングさんの方はなんだか裏がありそう。
「裏がありそう?酷いなお嬢ちゃん。スウィングさんは本気でこのウギー・ブギーさんのことを気に入って、本気で彼と手を組んでるのに」
ヤ、ヤバッ。口に出してた。また悲鳴を上げてフロイドちゃんの服を掴む。
「迂闊すぎ」
と軽く頭を小突かれた。
「手を組んだって、一体目的はなんなんだよ」
ジャックちゃんがスウィングさんのことを睨みつけながら尋ねる。
「よくぞ聞いてくれたね。スウィングさんはこのウギー・ブギーさんと決めたのさ……。2人で、全てのホリデーを乗っ取ってやろうってな!」
スウィングさんとブギーは相変わらず肩を組み楽しそうにしている。
「ホリデーを、乗っ取る……?ソ、ソレってどういう意味だ?」
「言葉の通りさ。俺のことを認めないハロウィン・タウンの連中も、目障りな骸骨男も、みーんないなくなっちまえば……全部俺の思い通り!このブギー様の作り出すハロウィンに誰も逆らえなくなる。このハロウィン・タウンの王となり、恐怖のハロウィンでみんなを支配してやるんだ!」
声高々に意気揚々と宣言するブギー。これを見たら、スカリーちゃん怒り狂いそうだな。
「いいね!その意気だ!スウィングさんもちょうど、ツイステッドワンダーランドの祝日には飽き飽きしてたンだよ。みンなが笑顔で楽しめる?そンな甘っちょろい子供騙しの祝日じゃ物足りない……。もっと残酷で、もっと刺激的で、もっと恐怖に満ちたスウィングさん好みの日になってもらわなきゃな」
「己の欲望通りに祝日を作り替えると?そのようなことが出来ると、本気で思うておるのか」
スウィングさんの野望を聞き、リリア先輩の表情がまた険しくなった。
「おや。どうやら坊やたちはこのホリデーワールドのことを、なあンにも知らないらしい。祝日を作り替えることが出来るかって……?」
ゲラゲラと笑う声が、嫌に耳に響いてくる。
「答えはイエスだ。もちろン出来る!ここは全ての祝日がややってくる場所。言うなれば、全ての祝日に影響を及ぼす起源。ハロウィンだけじゃない。ここでスウィングさんは全てのホリデーを手に入れる。そして全部の祝日を、スウィングさんの望むままに作り替えるンだ!」
まるで子供が誕生日プレゼントをもらって喜んでいるみたいな調子で話すスウィングさんに、また鳥肌が立ちそうになる。
「『スウィングさん』の?」
ブギーがスウィングさんのことを睨みながら不満そうな顔をする。
「ン?……ああ、ごめンごめン。ウギー・ブギーさんとスウィングさんの、ね。誰も我慢なンてしない。欲望が欲望を食らう。力ある者が望みを叶える世界……。な?楽しそうだろう?」
楽しそう…?そんなの、喧嘩になるだけで何も楽しくないでしょ。ハロウィンはやっぱり、学園でやったものやスカリーちゃ……スカリーさんと一緒にやった楽しいハロウィンの方が良い。どうやらそれは他のみんなも同じ考えらしく、スウィングさんとブギーの野望を全否定した。
「何ぃ!?生意気な奴らめ」
ブギーの怒鳴り声が響き渡った。
「ふん。ホリデーを乗っ取る?そんな勝手、黙って見てられるかよ!」
「へえ。それじゃあお前の許しを貰って始めるとするかな?」
スウィングさんがそう言った瞬間
「ッ!ぶ、ねッ…!」
ジャックちゃん目掛けて、魔法が放たれた。ギリギリ交わしてたからケガはしてなさそうだけれども、少し前まで彼が立っていた地面が抉れている。
「全員構えろ!!!!!」
リリア先輩の鬼気迫る声が、辺り一面に響き渡る。手足が震えそうになるのを必死に抑えて、マジカルペンを力一杯握りしめて、スウィングさんへと向けた。
