ターコイズに恋焦がれ〜初めてのクリスマス〜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
もうすぐで期末試験だ。赤点取る…なんてことは絶対にしないって自信を持って言えるけど、勉強するに越したことはないししておくか。教室だと煩くて集中出来なさそうだし、自室だと他のことしちゃって勉強にならなくなっちゃいそうだし、図書館にでも行くか。なんて考えて、教科書とノートと筆記用具を持って図書館を目指していると
「あ、ティアナだー。どっか行くのー?」
なんて話し掛けられる。
「フロイドちゃん!うん、期末テストの勉強しようと思ってさ」
「図書館行くの?ちょうど俺も今から行くとこだったんだー」
せっかくだし一緒に行こーと言いながら、背中に覆いかぶされる。重いんだけどと文句言うと「がんばー」と軽く流される。がんばじゃないのよがんばじゃ。この人に文句を言ったところで無駄だから諦めるけど。
「フロイドちゃんは図書館に何しに行くの?」
そっちも勉強?と尋ねると
「ん-ん-。俺は本返しに行くの」
とのこと。本借りるなんて珍しいな。普段はあんまり読まないのに。
「なんて本借りたの?」
「えっとねー…『世界の蟻図鑑』って本」
「はっ?蟻?」
なんでそんな本借りたの、と尋ねたらその時はこれが読みたい気分だったんじゃない?と答えられた。なんだそりゃ。フロイドちゃんの思考回路はやっぱりよくわからない。
ま、いっかそんなことは。
「あっそうだフロイドちゃん。さっきね、お菓子作ったの。だから後で味見してくれない?」
今日のも自信作なの!というと
「へー。いいよぉ、期待しないで楽しみにしとく~」
と笑いながら私の頭をぽん、と撫でる。期待してよ!と頬を膨らませながら言うが、また笑って流される。
「いいもん、フロイドちゃんにはあげないもん。アズールとジェイドちゃんとユウちゃんとグリムちゃんにあげるもん」
そう言ったら
「は?アズールとジェイドはともかく、小エビちゃん達にはあげんなし」
めちゃくちゃ不機嫌そうだ。
「やだー。私が作ったもの誰にあげようが私の勝手でしょー」
「勝手じゃねぇし。ティアナのものは俺のものと同義だし」
んな訳ねぇだろ。どんな横暴よ。全くもう。そんな風に不機嫌になるくらいなら最初から素直に食べるって言えばいいのに。
◇
図書館へ行くと
「俺様、やっぱちまちま勉強するのは嫌なんだゾー!」
という聞き覚えがありすぎる声が響いてきた。この声は誰がどう考えても…
「2人で1人なんだから、ユウが頑張ればいいんだゾ」
グリムちゃん以外ありえないよなーと思ってたら案の定、グリムちゃんが飛んで来た。そしたら
「ふなっ!」
「あ?ボールが転がって来たと思ったらアザラシちゃんじゃん。あんまちょろちょろしてっと、本物のボールみたいに蹴っ飛ばしちゃうよ?」
フロイドちゃんが軽く(と、信じたい)踏み、グリムちゃんの動きを封じた。これ、絵面完全に動物虐待なんじゃ。なんて思いながらグリムちゃんのことをいたぶっているフロイドちゃんを眺めていると
「あっフロイド先輩にティアナ!」
エースちゃんに声を掛けられた。なんとエースちゃんだけではなくデュースちゃんとユウちゃんとオルトちゃんにケイト先輩とカリム先輩、リリア先輩とシルバー先輩とルーク先輩がいる。大集合だ。
みんなも勉強していたらしい。このメンバーではどうにもならなそうな気がするんだけど。てかグリムちゃんが逃げたあたり、なってないんだろうなぁ。
「2人も勉強に?」
「俺は本返しに来た。借りたままだから返せって連絡来てさー。めんどくさくてずっと無視してたけど、あんまりにもしつこいから返しに来たところ」
返却期間過ぎてたんかい。面倒臭がるな、無視するな。
「なんの本を借りたんだ?」
と尋ねるカリム先輩に「『世界の蟻図鑑』ってやつ」と答えるフロイドちゃんに、みんななんでそんな本借りたのかと聞いてるが、本人も忘れているので答えは出ない。迷宮入りだねこりゃ。
「図書館って本を借りる気分の時はいいんだけど、返すのがだるいんだよなぁ……」
じゃ借りずにその場で読めばいいじゃん。まぁそれをしないからこそ、フロイド・リーチがフロイド・リーチたる所以なんだろうけど。
「それなら、俺が代わりに返却してあげよっか?」
不意にまた1つ、声が増える。
「同級生のよしみで、格安で引き受けるッスよ!シシシッ」
「ラギー先輩!これ以上面倒くせぇことを請け負うのやめてください」
ラギー先輩とジャックちゃんだ。この2人が図書館に来てるのなんか珍しいななんて思っていたら、同じようなことを思ったらしいフロイドちゃんとグリムちゃんにもいじられている。
「うっせ。図書館に似合わねぇなんてグリムにだけは言われたくねぇ」
それはごもっとも。
「〝これ″を図書館の資料室に片付けろって学園長に言われたんだよ。俺は断ったのに……」
ああ、確かに2人何か運んでるな。ウンザリな様子のジャックちゃんとは対照的に、ラギー先輩はお駄賃もらったからね~と、ご機嫌なご様子。面倒だと思うならラギー先輩に全部押し付けて帰っちゃえばいいのに。律儀というかなんというか。
「何を運ぶように頼まれたの?」
「これだ。ここの前から階段に飾られてる肖像画を片せってな」
肖像画?ああ、確かツイステッドワンダーランド中にハロウィーンを広めたって言う、
「スカリーなんだゾ!コイツは何百年も前に学園を卒業したんだゾ」
グリムちゃんが得意げに説明する。古本市から帰って来た日に学園長に教えて貰って以来ずっとこの調子だ。それにしてもやっぱこの人……
「やっぱりこの人、知ってる気がするな……」
不意に隣からそんな声がぼそっと聞こえた。え……
「ユウちゃんも?私も!なんでかこの人のこと、初めて見た時からずっと、なぜか知ってる気がするの」
そう言うとユウちゃんは驚いたように目を見開き
「ティアナも?なんで、なんだろうね……。肖像画を見るまで、絶対にこの人のことを知らなかったはずなのに、なぜか、会ったことがある気がしてるんだ……」
何百年も前に生きていた人に、会ったことがあるわけなんてないのにね、というユウちゃんの言葉に頷く。
どんなに記憶を辿っても、スカリー・J・グレイブスなんて人のことは絶対に知らなかった。魔法史は得意だ。本だってそれなりによく読む。だけど、今まで読んだ本の中に1度だってスカリー・J・グレイブスという名前を見たことなんてなかった。なのになんで、知っているような気がしているんだろう。謎は深まるばかりだ。
◇
勉強とか本の返却とか肖像画の片付けとか、やらないといけないことは沢山あるハズなのに
「この本見てくれ。薔薇の王国じゃ聞いたこともない行事が沢山書いてある」
「こちらもだ。知らない行事が世の中にはあるんだな」
なのになんで珍しい休日探しになってるんだ。
「もう……勉強しに来たのに、結局おしゃべりで盛り上がっちゃってるよ」
オルトちゃんが溜息を吐きながらぼやく。
「みんな完全に目的のこと忘れちゃってるね」
苦笑しながら言うと「ねぇー!」と同調される。
「くふふ。みんな元気じゃのう」
なんて笑うリリア先輩はみんなの保護者って感じだ。
「リリアさん、面白がってるけど……悪い点取って、部活動を制限されても知らないんだから」
オルトちゃんちょっと拗ねてる?なんか可愛い。こんな可愛い弟だったら、イデア先輩があんな過保護になっちゃうのも仕方ないのかも。……オルトちゃん、過保護になる必要なんてないとは思うけど。
「おっ。確かにそれはいかん。みなのもの!楽しくおしゃべりもいいが、あまり勉強をサボっていると『欲望の王』がやって来るかもしれんぞ~」
リリア先輩がまるで小さい子供を怖がらせるような口調で言う。欲望の王?なんだろそれ。知らないや。どうやらそれは他のみんなも同じらしい。みんな首を傾げる。
「もしや全員知らぬのか!?」
リリア先輩がすごく驚いたように声を上げると
「そうですね。聞いたこともないです」
ジャックちゃんが私達を代表するように言う。
「なんと……これがジェネレーションギャップ……!?」
とんでもなくショック。とでも言いたげな顔だ。
「昔、話してくれましたね。かつて欲望の王と呼ばれる、非常に恐ろしい妖精がいたと」
シルバー先輩が口を開くと、リリア先輩は嬉しそうに
「おお、よく覚えておったのう」
と声を弾ませる。
「それが、どこから来たのかはわからぬ。それが、いつからいたのかもわからぬ。本当の名も、何の妖精なのかも、どうやって誕生したのかも、誰も知らぬ。その者はある日突然人々の前に現れ……気に入ったものは全て自分のものにし、気に入らないものは全て破壊したそうじゃ。己の欲望のままに振る舞う。その横暴さゆえにやつは欲望の王と呼ばれた。そやつは、それはそれは強力だ魔力を持っておってのう。人間も妖精も何もかも、ツイステッドワンダーランド中のあらゆる種族を困らせたと言われておる。数多の追っ手を退け、長らくツイステッドワンダーランド中に災いを振り撒き続けたという。まさに災厄の妖精よ……」
災厄の妖精……
「そ、そんなヤベーヤツがいたのか……!?」
グリムちゃんはかなり怖がっているご様子だ。てか、私もちょっと怖いかも。そんな妖精がいたのか……。
「……なーんてな!」
そう思いかけた瞬間、リリア先輩の少しからかうような声が響いた。え……
「またそのようなご冗談を。そんなに脅かすのはおやめください」
シルバー先輩が溜息を吐きながら言う。
「……は?もしかして嘘なのか!?」
「嘘ではない。そういう昔話じゃ」
昔は言うことを聞かぬ子供に、『欲望の王が来るぞ~!』と言ってよく脅かしたものよと、笑うリリア先輩。そ、それを世間的には嘘というのでは。
「お主らが知らぬということは、いつの間にか廃れてしまったんじゃのう」
そういうリリア先輩はなんだか遠くを見ている様に見える。
「なんだ……子供のための作り話っすか。本当にそんな奴がいたのかと思いましたよ」
「欲望の王なんてのが実在したらたまったもんじゃないッスよ。相手が誰であろうと、俺のものは俺のもん。ぜーったいに渡さないッス!」
なんともラギー先輩らしい回答。ルーク先輩も「ラギー君らしいね」と笑っている。
「そんなヤベーヤツがいたら、楽しそうじゃね?昔話じゃなく本当にいたら良かったのに」
こっちもこっちでらしいこと言う。
「フロイドちゃんでも負けちゃうんじゃない?そんな怖い人相手したら」
なんて笑うと「んなわけねぇだろ」と軽く頬を抓られる。痛いんだけど!と文句を言っても無視される。
「さあ、もっと祝日探しをしようではないか!」
えっちょ、リリア先輩?勉強は??なんて聞いたところで、きっと誰も聞いてくれなさそうだ。もういいや、私も勉強は今度にしてみんなと祝日探しをしよう。とりあえずこの本から読んでみよう。
「……ん?この本は誰が持って来たんだ?」
デュースちゃんが一冊の本を手に持ちながら問い掛ける。その手には、なんだか不思議な雰囲気の本がある。どうやら誰も見覚えがないらしい。私もない。…はず、なんだけどなんでだか、どこかで見たことがある、ような…?でも、こんな本1度見たら忘れないと思うんだけどな。
中には何が書いてあるんだろうと話題になると
「確かめてみるんだゾ!」
そう言ってグリムちゃんが本を開こうとすると先輩達もなんだなんだと集まってくる。
「変な本があったんで中を確認しようかと……」
先輩達にジャックちゃんが説明しようとすると突然、辺りが眩しくなった。な、何コレ!?他のみんなもなんだと焦っている。な、なんだかとんでもないことに巻き込まれかけてる!?は、早く逃げ…
「うわあああああ~~~~~~~~!!!」
ようと思ったところで時すでに遅し。光が強くなって、目を開けてられなくなってしまい目を閉じると、吸い込まれるような感覚に襲われた。一体、私の身に何が起こっているっていうの!?
「あ、ティアナだー。どっか行くのー?」
なんて話し掛けられる。
「フロイドちゃん!うん、期末テストの勉強しようと思ってさ」
「図書館行くの?ちょうど俺も今から行くとこだったんだー」
せっかくだし一緒に行こーと言いながら、背中に覆いかぶされる。重いんだけどと文句言うと「がんばー」と軽く流される。がんばじゃないのよがんばじゃ。この人に文句を言ったところで無駄だから諦めるけど。
「フロイドちゃんは図書館に何しに行くの?」
そっちも勉強?と尋ねると
「ん-ん-。俺は本返しに行くの」
とのこと。本借りるなんて珍しいな。普段はあんまり読まないのに。
「なんて本借りたの?」
「えっとねー…『世界の蟻図鑑』って本」
「はっ?蟻?」
なんでそんな本借りたの、と尋ねたらその時はこれが読みたい気分だったんじゃない?と答えられた。なんだそりゃ。フロイドちゃんの思考回路はやっぱりよくわからない。
ま、いっかそんなことは。
「あっそうだフロイドちゃん。さっきね、お菓子作ったの。だから後で味見してくれない?」
今日のも自信作なの!というと
「へー。いいよぉ、期待しないで楽しみにしとく~」
と笑いながら私の頭をぽん、と撫でる。期待してよ!と頬を膨らませながら言うが、また笑って流される。
「いいもん、フロイドちゃんにはあげないもん。アズールとジェイドちゃんとユウちゃんとグリムちゃんにあげるもん」
そう言ったら
「は?アズールとジェイドはともかく、小エビちゃん達にはあげんなし」
めちゃくちゃ不機嫌そうだ。
「やだー。私が作ったもの誰にあげようが私の勝手でしょー」
「勝手じゃねぇし。ティアナのものは俺のものと同義だし」
んな訳ねぇだろ。どんな横暴よ。全くもう。そんな風に不機嫌になるくらいなら最初から素直に食べるって言えばいいのに。
◇
図書館へ行くと
「俺様、やっぱちまちま勉強するのは嫌なんだゾー!」
という聞き覚えがありすぎる声が響いてきた。この声は誰がどう考えても…
「2人で1人なんだから、ユウが頑張ればいいんだゾ」
グリムちゃん以外ありえないよなーと思ってたら案の定、グリムちゃんが飛んで来た。そしたら
「ふなっ!」
「あ?ボールが転がって来たと思ったらアザラシちゃんじゃん。あんまちょろちょろしてっと、本物のボールみたいに蹴っ飛ばしちゃうよ?」
フロイドちゃんが軽く(と、信じたい)踏み、グリムちゃんの動きを封じた。これ、絵面完全に動物虐待なんじゃ。なんて思いながらグリムちゃんのことをいたぶっているフロイドちゃんを眺めていると
「あっフロイド先輩にティアナ!」
エースちゃんに声を掛けられた。なんとエースちゃんだけではなくデュースちゃんとユウちゃんとオルトちゃんにケイト先輩とカリム先輩、リリア先輩とシルバー先輩とルーク先輩がいる。大集合だ。
みんなも勉強していたらしい。このメンバーではどうにもならなそうな気がするんだけど。てかグリムちゃんが逃げたあたり、なってないんだろうなぁ。
「2人も勉強に?」
「俺は本返しに来た。借りたままだから返せって連絡来てさー。めんどくさくてずっと無視してたけど、あんまりにもしつこいから返しに来たところ」
返却期間過ぎてたんかい。面倒臭がるな、無視するな。
「なんの本を借りたんだ?」
と尋ねるカリム先輩に「『世界の蟻図鑑』ってやつ」と答えるフロイドちゃんに、みんななんでそんな本借りたのかと聞いてるが、本人も忘れているので答えは出ない。迷宮入りだねこりゃ。
「図書館って本を借りる気分の時はいいんだけど、返すのがだるいんだよなぁ……」
じゃ借りずにその場で読めばいいじゃん。まぁそれをしないからこそ、フロイド・リーチがフロイド・リーチたる所以なんだろうけど。
「それなら、俺が代わりに返却してあげよっか?」
不意にまた1つ、声が増える。
「同級生のよしみで、格安で引き受けるッスよ!シシシッ」
「ラギー先輩!これ以上面倒くせぇことを請け負うのやめてください」
ラギー先輩とジャックちゃんだ。この2人が図書館に来てるのなんか珍しいななんて思っていたら、同じようなことを思ったらしいフロイドちゃんとグリムちゃんにもいじられている。
「うっせ。図書館に似合わねぇなんてグリムにだけは言われたくねぇ」
それはごもっとも。
「〝これ″を図書館の資料室に片付けろって学園長に言われたんだよ。俺は断ったのに……」
ああ、確かに2人何か運んでるな。ウンザリな様子のジャックちゃんとは対照的に、ラギー先輩はお駄賃もらったからね~と、ご機嫌なご様子。面倒だと思うならラギー先輩に全部押し付けて帰っちゃえばいいのに。律儀というかなんというか。
「何を運ぶように頼まれたの?」
「これだ。ここの前から階段に飾られてる肖像画を片せってな」
肖像画?ああ、確かツイステッドワンダーランド中にハロウィーンを広めたって言う、
「スカリーなんだゾ!コイツは何百年も前に学園を卒業したんだゾ」
グリムちゃんが得意げに説明する。古本市から帰って来た日に学園長に教えて貰って以来ずっとこの調子だ。それにしてもやっぱこの人……
「やっぱりこの人、知ってる気がするな……」
不意に隣からそんな声がぼそっと聞こえた。え……
「ユウちゃんも?私も!なんでかこの人のこと、初めて見た時からずっと、なぜか知ってる気がするの」
そう言うとユウちゃんは驚いたように目を見開き
「ティアナも?なんで、なんだろうね……。肖像画を見るまで、絶対にこの人のことを知らなかったはずなのに、なぜか、会ったことがある気がしてるんだ……」
何百年も前に生きていた人に、会ったことがあるわけなんてないのにね、というユウちゃんの言葉に頷く。
どんなに記憶を辿っても、スカリー・J・グレイブスなんて人のことは絶対に知らなかった。魔法史は得意だ。本だってそれなりによく読む。だけど、今まで読んだ本の中に1度だってスカリー・J・グレイブスという名前を見たことなんてなかった。なのになんで、知っているような気がしているんだろう。謎は深まるばかりだ。
◇
勉強とか本の返却とか肖像画の片付けとか、やらないといけないことは沢山あるハズなのに
「この本見てくれ。薔薇の王国じゃ聞いたこともない行事が沢山書いてある」
「こちらもだ。知らない行事が世の中にはあるんだな」
なのになんで珍しい休日探しになってるんだ。
「もう……勉強しに来たのに、結局おしゃべりで盛り上がっちゃってるよ」
オルトちゃんが溜息を吐きながらぼやく。
「みんな完全に目的のこと忘れちゃってるね」
苦笑しながら言うと「ねぇー!」と同調される。
「くふふ。みんな元気じゃのう」
なんて笑うリリア先輩はみんなの保護者って感じだ。
「リリアさん、面白がってるけど……悪い点取って、部活動を制限されても知らないんだから」
オルトちゃんちょっと拗ねてる?なんか可愛い。こんな可愛い弟だったら、イデア先輩があんな過保護になっちゃうのも仕方ないのかも。……オルトちゃん、過保護になる必要なんてないとは思うけど。
「おっ。確かにそれはいかん。みなのもの!楽しくおしゃべりもいいが、あまり勉強をサボっていると『欲望の王』がやって来るかもしれんぞ~」
リリア先輩がまるで小さい子供を怖がらせるような口調で言う。欲望の王?なんだろそれ。知らないや。どうやらそれは他のみんなも同じらしい。みんな首を傾げる。
「もしや全員知らぬのか!?」
リリア先輩がすごく驚いたように声を上げると
「そうですね。聞いたこともないです」
ジャックちゃんが私達を代表するように言う。
「なんと……これがジェネレーションギャップ……!?」
とんでもなくショック。とでも言いたげな顔だ。
「昔、話してくれましたね。かつて欲望の王と呼ばれる、非常に恐ろしい妖精がいたと」
シルバー先輩が口を開くと、リリア先輩は嬉しそうに
「おお、よく覚えておったのう」
と声を弾ませる。
「それが、どこから来たのかはわからぬ。それが、いつからいたのかもわからぬ。本当の名も、何の妖精なのかも、どうやって誕生したのかも、誰も知らぬ。その者はある日突然人々の前に現れ……気に入ったものは全て自分のものにし、気に入らないものは全て破壊したそうじゃ。己の欲望のままに振る舞う。その横暴さゆえにやつは欲望の王と呼ばれた。そやつは、それはそれは強力だ魔力を持っておってのう。人間も妖精も何もかも、ツイステッドワンダーランド中のあらゆる種族を困らせたと言われておる。数多の追っ手を退け、長らくツイステッドワンダーランド中に災いを振り撒き続けたという。まさに災厄の妖精よ……」
災厄の妖精……
「そ、そんなヤベーヤツがいたのか……!?」
グリムちゃんはかなり怖がっているご様子だ。てか、私もちょっと怖いかも。そんな妖精がいたのか……。
「……なーんてな!」
そう思いかけた瞬間、リリア先輩の少しからかうような声が響いた。え……
「またそのようなご冗談を。そんなに脅かすのはおやめください」
シルバー先輩が溜息を吐きながら言う。
「……は?もしかして嘘なのか!?」
「嘘ではない。そういう昔話じゃ」
昔は言うことを聞かぬ子供に、『欲望の王が来るぞ~!』と言ってよく脅かしたものよと、笑うリリア先輩。そ、それを世間的には嘘というのでは。
「お主らが知らぬということは、いつの間にか廃れてしまったんじゃのう」
そういうリリア先輩はなんだか遠くを見ている様に見える。
「なんだ……子供のための作り話っすか。本当にそんな奴がいたのかと思いましたよ」
「欲望の王なんてのが実在したらたまったもんじゃないッスよ。相手が誰であろうと、俺のものは俺のもん。ぜーったいに渡さないッス!」
なんともラギー先輩らしい回答。ルーク先輩も「ラギー君らしいね」と笑っている。
「そんなヤベーヤツがいたら、楽しそうじゃね?昔話じゃなく本当にいたら良かったのに」
こっちもこっちでらしいこと言う。
「フロイドちゃんでも負けちゃうんじゃない?そんな怖い人相手したら」
なんて笑うと「んなわけねぇだろ」と軽く頬を抓られる。痛いんだけど!と文句を言っても無視される。
「さあ、もっと祝日探しをしようではないか!」
えっちょ、リリア先輩?勉強は??なんて聞いたところで、きっと誰も聞いてくれなさそうだ。もういいや、私も勉強は今度にしてみんなと祝日探しをしよう。とりあえずこの本から読んでみよう。
「……ん?この本は誰が持って来たんだ?」
デュースちゃんが一冊の本を手に持ちながら問い掛ける。その手には、なんだか不思議な雰囲気の本がある。どうやら誰も見覚えがないらしい。私もない。…はず、なんだけどなんでだか、どこかで見たことがある、ような…?でも、こんな本1度見たら忘れないと思うんだけどな。
中には何が書いてあるんだろうと話題になると
「確かめてみるんだゾ!」
そう言ってグリムちゃんが本を開こうとすると先輩達もなんだなんだと集まってくる。
「変な本があったんで中を確認しようかと……」
先輩達にジャックちゃんが説明しようとすると突然、辺りが眩しくなった。な、何コレ!?他のみんなもなんだと焦っている。な、なんだかとんでもないことに巻き込まれかけてる!?は、早く逃げ…
「うわあああああ~~~~~~~~!!!」
ようと思ったところで時すでに遅し。光が強くなって、目を開けてられなくなってしまい目を閉じると、吸い込まれるような感覚に襲われた。一体、私の身に何が起こっているっていうの!?
