ターコイズに恋焦がれ〜初めてのクリスマス〜
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小さい頃、ママに読んでもらった絵本で女の子が白いウサギを追いかけていたら大きな穴に落ちちゃって、そのまま下へ下へと向かって行き、そしたらヘンテコな国へ辿り着いたっていうお話があったな。その時は私もそんな風な体験してみたい!なんて思ってたけど
「こんな猛スピードで落ちるとか勘弁して髪乱れるー!てか変な国とか行きたくないーーー!!!」
そんな風に思えてたのはあれがおとぎ話で尚且つ他人事だったから言えたんだなと思い知った。そして絶叫してたらどうやら底まで到着したらしい。遊園地の絶叫マシンとかは普通に楽しめるタイプだけれども、この落下は苦手だ。
「ティアナなっさけねえ。何今の叫び声!」
アズールとジェイドにも聞かせてやりたかった〜なんて笑いながらフロイドちゃんが馬鹿にしてくる。
「うるっさいなー…。フロイドちゃんが急に私のこと担ぎながら落ちるからでしょ!てか、アズールとジェイドちゃんの方が私より情けない反応するでしょ」
「それはそうだな」
あの2人いたらもっと面白いもん見れたろうなーなんてケラケラ笑うフロイドちゃんの様子に溜息が出る。それにしても……
「辺り一面すごい雪……」
真っ白で綺麗!と感想を漏らしていると
「そうだな!俺、こんな積もってるとこ初めて見たぜ」
ジャミルや他の兄弟達にも見せてやりたかったぜーと、同調する声が聞こえてきた。横を見るといつも通りニコニコとしているカリム先輩が立っていた。どうやら他のみんなも着いたらしい。
「みんな、怪我はないか?」
そう確認してくるシルバー先輩に大丈夫だと伝える。
「デュース達はいないみたいだな…」
エースちゃんがキョロキョロと見渡しながら呟くと
「先に進んで行ったのかもしれないよ。ほら、あそこに複数人の足跡があるし、山の下の方に町が見えるよ」
オルトちゃんがそう言いながら指差しながらいう。足跡は人と思われる跡が4つと、猫みたいな足跡が1つあるのでほぼ確定で先に落ちて行ったメンバーのものだろう。
「行ってみるか」
というシルバー先輩の言葉を合図に、私達は足跡を頼りに歩き出した。フロイドちゃんが
「面白そー!俺1番ノリー!」
なんていって走ってはしゃいでいる。ユウちゃん達がいるんだから1番ではないのでは……?なんてツッコミは心の奥にしまっておこう。面倒臭いことになるだろうし。それにしても……
「わっ…とっ…」
ヒール歩きにくい…!他のみんなは歩きやすそうな靴なのにどうして私だけこんな靴なんだろ…って
「あっわっ!」
「あっぶねっ大丈夫か!?」
転ぶ…!と身体がよろけた瞬間、寸前のところでカリム先輩が支えてくれてなんとか転ばずに済んだ。
「はい…ありがとうございます、先輩」
「礼言うようなことじゃねえって、気にすんな。にしてもそのブーツ、すげえ歩きにくそうだな」
私の履いているブーツを眺めながらカリム先輩は言う。
「そうですね…しかもヒールも高いし…」
思わず苦笑してしまう。そんな私をカリム先輩を何か考え事をしている様子。どうしたんだろうなんて思っていると
「よしっティアナ、俺と手繋ごうぜ!」
満面の爽やかな笑顔で言われる。えっ
「えっいやいやいやっ!!なんでですか!?」
「なんでって…その方が転ばないだろ?転びそうになったら俺が支えてやれるし!」
なっ!だから繋ごうぜ、なんてあっけらかんと言われると断れなくて「はい……」と言われるがまま繋いだ。……カリム先輩、小柄だけどもやっぱり男の人なんだな。私の手よりもごつごつしてるし大きい。
あと、あったかい。手を繋いでいるだけなのに、身体全体がなんだかぽかぽかしてきた気がする。人間の身体って、手を温かくすると全身が温まったりもするのかな……?
◇
しばらく歩くと、デュースちゃん達の後ろ姿が見えてきた。良かった、無事合流出来て……。
「カリム先輩、もう大丈夫です。ありがとうございました」
とお礼を言うと
「おう。また転びそうになったら無理すんなよー」
そう言いながら頭をわしゃわしゃと撫でられる。この人、私のことエレメンタリースクール生かなんかだと思ってない?
「みんな!」
「俺達を追い駆けて来たんッスね」
デュースちゃん達が私達に気が付いたらしい。
「はい。ここまで続いてた足跡と……それに人が滑り落ちた跡があったからわかりやすかったです」
ニヤニヤと笑いながらデュースちゃんを見つめるエースちゃん。案の定、言い合いになる。ったく、ガキなんだから……。それにしてもこの町……
「ここって何?見たことないもんばっかで超面白そう~」
フロイドちゃんが言うように、見たことないものが沢山広がっている町がある。イルミネーションがすごく綺麗だ。何かお祭りでもしてるのかな?他のみんなも綺麗だなとか言っている。なんか目に入るもの全てが新鮮な気がする。
「あっ看板に名前が書いてあるよ」
オルトちゃんが指差しながら言う。ほんとだ。町の名前…みたいなのが書いてある。えっと……
「『クリスマス・タウン』?クリスマス?って、なんだろう」
オルトちゃんが今度は首を傾げている。えっ
「オルトちゃんにもわからないの?」
まさかそんなものが存在するなんてと驚いて、思わず尋ねてしまった。
「うん…。聞いたこともないや……」
そう呟く姿は、少し悔しそうだ。この子も結構負けず嫌いだからな。自分ですら知らないことがあるなんて悔しいのかもしれない。
「今ちょうどユウ君に、クリスマスって何か聞いてたとこなんッスよ。ユウ君の世界にもある、なんかいい日らしいッス」
なんかいい日…?すごく漠然とした情報だな。てかユウちゃんの世界にはあるんだ。クリスマスっていうやつ。ユウちゃんの世界の話ってあんまり聞かないから結構気になる。
「そうだ。オルトなら……クリスマスってもんがツイステッドワンダーランドにもあるのか、今すぐ調べられるんじゃねえのか」
ジャックちゃんがそう尋ねるとオルトちゃんは
「それが……ここに来てからインターネットに接続出来なくなっちゃったんだ。だからいつもみたいなネット検索は出来なくって……搭載済みのベーシック辞書の中にはない言葉だね」
声を落として言う。あれ、ちょっと悲しそう?ひょっとして落ち込んで……
「そんな日があるなんて初めて知ったよ。面白い情報だ」
なんてことは全くなかったか。さすがポジティブだ。
「オルトちゃんてタフだよね」
思わずそう呟くと
「ティアナさんの図々しさには負けるよ」
にこやかに毒づかれた。なんなのこの子。さっきから私への当たりきつくない?
「オルトちゃん、ひょっとして私のこと嫌い?」
思わずそんな質問をぶつけてしまう。
「やだなー。好きだからこんな風にからかってるんじゃないか」
君ほどイジってて楽しい人は中々いないしね、と相変わらずニコニコしてる。ちくしょう、めちゃくちゃ可愛いなこの子。
「オルトちゃんて自分の使い方よくわかってるよね」
尊敬するよ、なんて嫌味を言うと
「ありがとー。僕も、ティアナさんの意外と真面目なところ尊敬してるよ」
と、更なる嫌味が返ってきた。相変わらずよく回るお口だこと。イデア先輩とそっくり。兄弟揃ってレスバ強すぎでしょ。
「なあ、早く中に入ってみようぜ」
どうやらフロイドちゃんは会話に飽きてしまったらしい。フラフラと町の中に1人先へ入ろうとしている。
「ちょっと待てよ。3年の先輩達を置いて行く気か?」
ジャックちゃんが少し怒ったように言うと
「待っててももう来ないんじゃね?」
「そうだね。今頃3人共ハロウィン・タウンの冷たい地面に転がってるかも……」
とんでもなく縁起でもないことをフロイドちゃんとオルトちゃんが言い放った。
「さらっと恐ろしいことを言うんじゃねえ」
ジャックちゃんが2人にツッコミを入れると
「ホントそれ!」
同調する声が聞こえて来た。この声の方を見てみると
「勝手に地面に転がさないでくれる~?」
ケイト先輩とルーク先輩とリリア先輩が、ジャックさんとゼロちゃんを連れて来ていた。
「ダイヤモンド先輩!よかった……みんなも無事だったんですね」
デュースちゃんが心底安心したように言う。そりゃそうだよね。ほんと、なんとか合流できて良かった。
「3人の戦う姿と言ったら、とても勇ましかったよ!魔法ってすごいんだね」
「ワンワン!」
ジャックさんとゼロちゃんはどこか楽しそうだ。マイペースというかなんというか。
「無事でよかった。しかし……かなりお疲れのようですね」
「ああ……スウィングめ、赤子のようにわしらをあしらいおった」
「向こうはまだまだぜーんぜん本気じゃなかったってカンジ。リリアちゃんの魔法で向こうの攻撃を防いでもらいながら、俺のユニーク魔法で意表をついて……あとはルーク君の誘導のおかげでここまで逃げてくることが出来たんだ」
リリア先輩とケイト先輩とルーク先輩でそんな感じだったの…?やっぱスウィングさんの強さって異次元みたいなんだ……。ルーク先輩のユニーク魔法がなかったら、再会出来てなかったのかもしれない。
「へえ~。オニオコゼ君を撒いて逃げたってこと?やるじゃん」
フロイドちゃん、さっそくスウィングさんにあだ名つけたのね。
「撒いたって言うか……それが、すごく不気味だったんだよね。俺達のこと追い駆けようと思えばそう出来たはずなのに……突然コインを弾き飛ばしてキャッチしたと思ったら、その後はただ立ってるだけだったんだ」
えっ…何それ怖…
「ウギー・ブギーはジャック・スケリントンにえらく執着して追い駆けようとしておったがのう」
ブギーのあの様子を思い出すと確かに、ジャックさんにかなり執着してた気がする。スカリーちゃん…スカリーさんとは、また違った感じの執着だったな。
「スウィングは追い駆けようとするウギー・ブギーを止めて……『今はそっちじゃない』とかなんとか言っておった。あの男が何を考えているかとんとわからぬ」
「そうだね。ただ1つわかることは……スウィングさんは自分の欲望にとても忠実な人物のようだ。やりたいことをやり、欲しいものは何がなんでも奪おうとする……彼はまさに『欲望の王(ロア・ドゥ・デジール)』と呼べるだろう」
欲望の王……その名前に嘘も偽りもなく、大袈裟でもなんでもないってことか。
「ふな~……」
グリムちゃんの不安そうな声が聞こえて来た。
「あれ、グリちゃん怖いの?大丈夫だよ。ここにいることはバレてないはずだから」
「ああ。こうしてまた無事に全員揃った。今はそのことを祝おうじゃないか!」
ケイト先輩とルーク先輩がグリムちゃんを落ち着かせるように言う。グリムちゃんはまだ少し不安そうだけども。……私も、怖いけども。チラッと目が合った時にされたあの不気味に笑った顔を思い出すと恐怖に襲われて震えそうだ。
「ところで、みんなはどうしてこの場所に来たんだい?」
ルーク先輩が空気を変えるような調子で問い掛けてきた。
「とりあえずスウィングさんの目を誤魔化すために、森の中の扉のどれかに入ろうってことになって……それで、ここに逃げ込んだんです」
「なるほど、素晴らしい選択だ。クリスマス・タウンにやって来るなんてね!」
デュースちゃんの話を聞いたジャックさんが、なんだかテンション高く言う。口ぶり的に、ジャックさんはこの町のことを知っているみたいだ。
「ジャックはここを知ってるのか?」
グリムちゃんに聞かれるとより一層テンション高く
「もちろん!このクリスマス・タウンはクリスマスの町なんだ。クリスマスはハロウィンと同じくらい、それはそれは楽しいホリデーだよ」
と、身振り手振りで説明を始める。
「町中に楽しい声があふれていて…………あれ?おかしいな。いつもなら遠くにいても笑い声が聞こえるぐらいなのに」
笑い声が?それどころか話し声や物音とかも、私達が発するもの以外何も聞こえて来ない気がするんだけど。ジャックさんの態度からして、これは異常事態ってこと?
「こんなに静かなクリスマス・タウン、初めてだ……」
ジャックさんが寂しそうに呟くと、同じくゼロちゃんも
「クゥン……」
と、寂しそうに鳴き声を上げる。きっと2人共、この町のことやここの人々がハロウィン・タウンの人達と同じくらい好きなんだろうな。……好きな人とか、大切な人が、安否不明だなんてそりゃ、不安に決まってるよね。
ゼロちゃんの頭をそっと撫でると、少し元気になってくれたのか「ワン!」と吠えて、擦り寄ってきた。可愛い。
「きっとこの町にもなにかあったんだ」
ジャックさんが神妙な面持ちで(骸骨だから表情の変化よくわからないけど)町をじっと見つめながら言う。そして
「みんなで行ってみよう!」
そう言って1人、どんどん先へ行ってしまう。えっ…行くの…?ものすごーく、嫌な予感するから行きたくないんだけど…なんて言うタイミングは
「おもしろそー!早く行こうぜ、ティアナ」
というフロイドちゃんの声と共に肩に担がれたので、永遠に来ることはなかった。
「こんな猛スピードで落ちるとか勘弁して髪乱れるー!てか変な国とか行きたくないーーー!!!」
そんな風に思えてたのはあれがおとぎ話で尚且つ他人事だったから言えたんだなと思い知った。そして絶叫してたらどうやら底まで到着したらしい。遊園地の絶叫マシンとかは普通に楽しめるタイプだけれども、この落下は苦手だ。
「ティアナなっさけねえ。何今の叫び声!」
アズールとジェイドにも聞かせてやりたかった〜なんて笑いながらフロイドちゃんが馬鹿にしてくる。
「うるっさいなー…。フロイドちゃんが急に私のこと担ぎながら落ちるからでしょ!てか、アズールとジェイドちゃんの方が私より情けない反応するでしょ」
「それはそうだな」
あの2人いたらもっと面白いもん見れたろうなーなんてケラケラ笑うフロイドちゃんの様子に溜息が出る。それにしても……
「辺り一面すごい雪……」
真っ白で綺麗!と感想を漏らしていると
「そうだな!俺、こんな積もってるとこ初めて見たぜ」
ジャミルや他の兄弟達にも見せてやりたかったぜーと、同調する声が聞こえてきた。横を見るといつも通りニコニコとしているカリム先輩が立っていた。どうやら他のみんなも着いたらしい。
「みんな、怪我はないか?」
そう確認してくるシルバー先輩に大丈夫だと伝える。
「デュース達はいないみたいだな…」
エースちゃんがキョロキョロと見渡しながら呟くと
「先に進んで行ったのかもしれないよ。ほら、あそこに複数人の足跡があるし、山の下の方に町が見えるよ」
オルトちゃんがそう言いながら指差しながらいう。足跡は人と思われる跡が4つと、猫みたいな足跡が1つあるのでほぼ確定で先に落ちて行ったメンバーのものだろう。
「行ってみるか」
というシルバー先輩の言葉を合図に、私達は足跡を頼りに歩き出した。フロイドちゃんが
「面白そー!俺1番ノリー!」
なんていって走ってはしゃいでいる。ユウちゃん達がいるんだから1番ではないのでは……?なんてツッコミは心の奥にしまっておこう。面倒臭いことになるだろうし。それにしても……
「わっ…とっ…」
ヒール歩きにくい…!他のみんなは歩きやすそうな靴なのにどうして私だけこんな靴なんだろ…って
「あっわっ!」
「あっぶねっ大丈夫か!?」
転ぶ…!と身体がよろけた瞬間、寸前のところでカリム先輩が支えてくれてなんとか転ばずに済んだ。
「はい…ありがとうございます、先輩」
「礼言うようなことじゃねえって、気にすんな。にしてもそのブーツ、すげえ歩きにくそうだな」
私の履いているブーツを眺めながらカリム先輩は言う。
「そうですね…しかもヒールも高いし…」
思わず苦笑してしまう。そんな私をカリム先輩を何か考え事をしている様子。どうしたんだろうなんて思っていると
「よしっティアナ、俺と手繋ごうぜ!」
満面の爽やかな笑顔で言われる。えっ
「えっいやいやいやっ!!なんでですか!?」
「なんでって…その方が転ばないだろ?転びそうになったら俺が支えてやれるし!」
なっ!だから繋ごうぜ、なんてあっけらかんと言われると断れなくて「はい……」と言われるがまま繋いだ。……カリム先輩、小柄だけどもやっぱり男の人なんだな。私の手よりもごつごつしてるし大きい。
あと、あったかい。手を繋いでいるだけなのに、身体全体がなんだかぽかぽかしてきた気がする。人間の身体って、手を温かくすると全身が温まったりもするのかな……?
◇
しばらく歩くと、デュースちゃん達の後ろ姿が見えてきた。良かった、無事合流出来て……。
「カリム先輩、もう大丈夫です。ありがとうございました」
とお礼を言うと
「おう。また転びそうになったら無理すんなよー」
そう言いながら頭をわしゃわしゃと撫でられる。この人、私のことエレメンタリースクール生かなんかだと思ってない?
「みんな!」
「俺達を追い駆けて来たんッスね」
デュースちゃん達が私達に気が付いたらしい。
「はい。ここまで続いてた足跡と……それに人が滑り落ちた跡があったからわかりやすかったです」
ニヤニヤと笑いながらデュースちゃんを見つめるエースちゃん。案の定、言い合いになる。ったく、ガキなんだから……。それにしてもこの町……
「ここって何?見たことないもんばっかで超面白そう~」
フロイドちゃんが言うように、見たことないものが沢山広がっている町がある。イルミネーションがすごく綺麗だ。何かお祭りでもしてるのかな?他のみんなも綺麗だなとか言っている。なんか目に入るもの全てが新鮮な気がする。
「あっ看板に名前が書いてあるよ」
オルトちゃんが指差しながら言う。ほんとだ。町の名前…みたいなのが書いてある。えっと……
「『クリスマス・タウン』?クリスマス?って、なんだろう」
オルトちゃんが今度は首を傾げている。えっ
「オルトちゃんにもわからないの?」
まさかそんなものが存在するなんてと驚いて、思わず尋ねてしまった。
「うん…。聞いたこともないや……」
そう呟く姿は、少し悔しそうだ。この子も結構負けず嫌いだからな。自分ですら知らないことがあるなんて悔しいのかもしれない。
「今ちょうどユウ君に、クリスマスって何か聞いてたとこなんッスよ。ユウ君の世界にもある、なんかいい日らしいッス」
なんかいい日…?すごく漠然とした情報だな。てかユウちゃんの世界にはあるんだ。クリスマスっていうやつ。ユウちゃんの世界の話ってあんまり聞かないから結構気になる。
「そうだ。オルトなら……クリスマスってもんがツイステッドワンダーランドにもあるのか、今すぐ調べられるんじゃねえのか」
ジャックちゃんがそう尋ねるとオルトちゃんは
「それが……ここに来てからインターネットに接続出来なくなっちゃったんだ。だからいつもみたいなネット検索は出来なくって……搭載済みのベーシック辞書の中にはない言葉だね」
声を落として言う。あれ、ちょっと悲しそう?ひょっとして落ち込んで……
「そんな日があるなんて初めて知ったよ。面白い情報だ」
なんてことは全くなかったか。さすがポジティブだ。
「オルトちゃんてタフだよね」
思わずそう呟くと
「ティアナさんの図々しさには負けるよ」
にこやかに毒づかれた。なんなのこの子。さっきから私への当たりきつくない?
「オルトちゃん、ひょっとして私のこと嫌い?」
思わずそんな質問をぶつけてしまう。
「やだなー。好きだからこんな風にからかってるんじゃないか」
君ほどイジってて楽しい人は中々いないしね、と相変わらずニコニコしてる。ちくしょう、めちゃくちゃ可愛いなこの子。
「オルトちゃんて自分の使い方よくわかってるよね」
尊敬するよ、なんて嫌味を言うと
「ありがとー。僕も、ティアナさんの意外と真面目なところ尊敬してるよ」
と、更なる嫌味が返ってきた。相変わらずよく回るお口だこと。イデア先輩とそっくり。兄弟揃ってレスバ強すぎでしょ。
「なあ、早く中に入ってみようぜ」
どうやらフロイドちゃんは会話に飽きてしまったらしい。フラフラと町の中に1人先へ入ろうとしている。
「ちょっと待てよ。3年の先輩達を置いて行く気か?」
ジャックちゃんが少し怒ったように言うと
「待っててももう来ないんじゃね?」
「そうだね。今頃3人共ハロウィン・タウンの冷たい地面に転がってるかも……」
とんでもなく縁起でもないことをフロイドちゃんとオルトちゃんが言い放った。
「さらっと恐ろしいことを言うんじゃねえ」
ジャックちゃんが2人にツッコミを入れると
「ホントそれ!」
同調する声が聞こえて来た。この声の方を見てみると
「勝手に地面に転がさないでくれる~?」
ケイト先輩とルーク先輩とリリア先輩が、ジャックさんとゼロちゃんを連れて来ていた。
「ダイヤモンド先輩!よかった……みんなも無事だったんですね」
デュースちゃんが心底安心したように言う。そりゃそうだよね。ほんと、なんとか合流できて良かった。
「3人の戦う姿と言ったら、とても勇ましかったよ!魔法ってすごいんだね」
「ワンワン!」
ジャックさんとゼロちゃんはどこか楽しそうだ。マイペースというかなんというか。
「無事でよかった。しかし……かなりお疲れのようですね」
「ああ……スウィングめ、赤子のようにわしらをあしらいおった」
「向こうはまだまだぜーんぜん本気じゃなかったってカンジ。リリアちゃんの魔法で向こうの攻撃を防いでもらいながら、俺のユニーク魔法で意表をついて……あとはルーク君の誘導のおかげでここまで逃げてくることが出来たんだ」
リリア先輩とケイト先輩とルーク先輩でそんな感じだったの…?やっぱスウィングさんの強さって異次元みたいなんだ……。ルーク先輩のユニーク魔法がなかったら、再会出来てなかったのかもしれない。
「へえ~。オニオコゼ君を撒いて逃げたってこと?やるじゃん」
フロイドちゃん、さっそくスウィングさんにあだ名つけたのね。
「撒いたって言うか……それが、すごく不気味だったんだよね。俺達のこと追い駆けようと思えばそう出来たはずなのに……突然コインを弾き飛ばしてキャッチしたと思ったら、その後はただ立ってるだけだったんだ」
えっ…何それ怖…
「ウギー・ブギーはジャック・スケリントンにえらく執着して追い駆けようとしておったがのう」
ブギーのあの様子を思い出すと確かに、ジャックさんにかなり執着してた気がする。スカリーちゃん…スカリーさんとは、また違った感じの執着だったな。
「スウィングは追い駆けようとするウギー・ブギーを止めて……『今はそっちじゃない』とかなんとか言っておった。あの男が何を考えているかとんとわからぬ」
「そうだね。ただ1つわかることは……スウィングさんは自分の欲望にとても忠実な人物のようだ。やりたいことをやり、欲しいものは何がなんでも奪おうとする……彼はまさに『欲望の王(ロア・ドゥ・デジール)』と呼べるだろう」
欲望の王……その名前に嘘も偽りもなく、大袈裟でもなんでもないってことか。
「ふな~……」
グリムちゃんの不安そうな声が聞こえて来た。
「あれ、グリちゃん怖いの?大丈夫だよ。ここにいることはバレてないはずだから」
「ああ。こうしてまた無事に全員揃った。今はそのことを祝おうじゃないか!」
ケイト先輩とルーク先輩がグリムちゃんを落ち着かせるように言う。グリムちゃんはまだ少し不安そうだけども。……私も、怖いけども。チラッと目が合った時にされたあの不気味に笑った顔を思い出すと恐怖に襲われて震えそうだ。
「ところで、みんなはどうしてこの場所に来たんだい?」
ルーク先輩が空気を変えるような調子で問い掛けてきた。
「とりあえずスウィングさんの目を誤魔化すために、森の中の扉のどれかに入ろうってことになって……それで、ここに逃げ込んだんです」
「なるほど、素晴らしい選択だ。クリスマス・タウンにやって来るなんてね!」
デュースちゃんの話を聞いたジャックさんが、なんだかテンション高く言う。口ぶり的に、ジャックさんはこの町のことを知っているみたいだ。
「ジャックはここを知ってるのか?」
グリムちゃんに聞かれるとより一層テンション高く
「もちろん!このクリスマス・タウンはクリスマスの町なんだ。クリスマスはハロウィンと同じくらい、それはそれは楽しいホリデーだよ」
と、身振り手振りで説明を始める。
「町中に楽しい声があふれていて…………あれ?おかしいな。いつもなら遠くにいても笑い声が聞こえるぐらいなのに」
笑い声が?それどころか話し声や物音とかも、私達が発するもの以外何も聞こえて来ない気がするんだけど。ジャックさんの態度からして、これは異常事態ってこと?
「こんなに静かなクリスマス・タウン、初めてだ……」
ジャックさんが寂しそうに呟くと、同じくゼロちゃんも
「クゥン……」
と、寂しそうに鳴き声を上げる。きっと2人共、この町のことやここの人々がハロウィン・タウンの人達と同じくらい好きなんだろうな。……好きな人とか、大切な人が、安否不明だなんてそりゃ、不安に決まってるよね。
ゼロちゃんの頭をそっと撫でると、少し元気になってくれたのか「ワン!」と吠えて、擦り寄ってきた。可愛い。
「きっとこの町にもなにかあったんだ」
ジャックさんが神妙な面持ちで(骸骨だから表情の変化よくわからないけど)町をじっと見つめながら言う。そして
「みんなで行ってみよう!」
そう言って1人、どんどん先へ行ってしまう。えっ…行くの…?ものすごーく、嫌な予感するから行きたくないんだけど…なんて言うタイミングは
「おもしろそー!早く行こうぜ、ティアナ」
というフロイドちゃんの声と共に肩に担がれたので、永遠に来ることはなかった。
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