ターコイズに恋焦がれ

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「ヤバイ…お腹空いた…死ぬ…」

 不良先輩のせいで見事に昼食を食べ損ねた私は、空腹で死にかけていた。お腹がめっちゃ鳴ってる。そんな私のことを

「ヤッベェ音。それが女子の鳴らす音かよ」

 ゲラゲラと笑いながらエースちゃんが煽り散らかしてくる。

「うるっさい、黙ってよ!」
「やだね。朝のお返しだ」

 あぁ、むかつくわコイツ…。お腹空いててただでさえイライラしてるってのに…!

「ってかさ、4人共酷くない?私がトイレ行ってる間に置いて行っちゃうなんて」

 そのせいで変な先輩に絡まれたりして最悪だったんだけどと文句を言ったら「おめぇ待ってたら俺様が飯食い損ねちまってたんだぞ。だから待つわけねぇんだゾ」とグリムちゃんが笑いながら言う。モンスターって焼いたり煮たりしたら食べれるかな?と言ったら「ヒィィッ」と絶叫しながらユウちゃんの後ろに隠れた。そんな本気で怖がらなくても。食べるわけないじゃんモンスターなんて。お腹壊したら嫌だもの。

「変な先輩ってどんな奴に絡まれたんだ?」

 そう質問してきたのはデュースちゃんだ。

「それがさー…意味わかんないの。なんか私がぶつかったせいでオムライスに描いてあった絵がズレたじゃねぇかって言われたの」
「オムライスの絵…?そんなことで…?」

 ガキかよ…とエースちゃんが呟く。

「でしょー?思わずは?って言っちゃってさー。そしたらブチギレられちゃってそのまま食堂から連れ出されちゃって延々と怒鳴り散らされて最悪だったー」
「それは災難だったな…。にしてもこの学校、変な不良が多いな。監督生とグリムも、カルボナーラの温玉がどうのこうのって絡まれていたよな…」

 カルボナーラの温玉?ナイトレイブンカレッジって卵に並々ならぬ拘りを持ってる人が多いの?意味わからん。

「ほんと、いろんな人がいるね…。ていうかティアナよく抜け出せたね。どうやってその先輩から逃げたんだ?」

 ユウちゃんが不思議そうな顔で尋ねてくる。

「んー?リドル先輩が、颯爽と現れて不良先輩にエースちゃんと同じ首輪つけて撃退して助けてくれた」

 と説明すると4人共「えぇぇぇぇーーー!!!???」と、驚き絶叫した。

「あの血も涙もないウチの寮長が!?ありえねぇ!!」

 そうエースちゃんが絶叫する。血も涙もないって…。そこまでいうか?

 ◇

 最悪だ。アズールに買い出しを押し付けられた。あいつやっぱ私のことをパシリにするためにこの学校に入れやがったなクソが…!てかこの学校の治安で普通妹を1人で出歩かせるか?どんな神経してんだあいつ。リドル先輩とは大違いだ。アズールは私が不良に絡まれたりなんてしたって助けてなんてくれない。…いや、アズールだけじゃない。ジェイドちゃんもフロイドちゃんも絶対助けてくれない。むしろ3人揃って爆笑するまである。思い浮かべたらムカついてきた。エースちゃんはリドル先輩のことを血も涙もないとか言ってたけどウチの3人より絶対優しいし人の心あるって。
 それにしてもお腹空いたなぁ…。アズールに買ってこいと言われたもの買うついでになんか食べ物も買うか。ってかエースちゃんとデュースちゃんにポテトとか奢らせてない!!明日は絶対に奢らせないと。あと、ユウちゃんとグリムちゃんにもなんか奢らせよう。あの2人がマドル持ってるかはわかんないけど。と、そんな目論みを立てながら購買部へ入ると

ティアナ?」

 ユウちゃんに声を掛けられた。

「あれ、ユウちゃんとグリムちゃんとデュースちゃんだー。3人も買い物ー?」

 そう返すと「あぁ、ケーキの材料の買い出しにな」とデュースちゃん。あぁ、そういえば4人で先輩と一緒に作るとか言ってたっけ。

「なんのケーキ作るの?」
「マロンタルトなんだゾ。栗をたっくさん拾ったからたっぷり使うんだゾ」

 と元気いっぱいなグリムちゃん。マロンタルトいいなぁ…と言ったら「じゃあティアナも来るか?昨日のお詫びもしないといけないしな」と、デュースちゃん。うわめっちゃ行きたい。けど、ラウンジの仕事がなぁ…。

「少し遅くなるかもだけど行ってもいい?ハーツラビュルの寮行けば貰える?」
「あぁ、大丈夫だと思うぞ」

 と言ってくれるデュースちゃんにお礼を言う。そして買い物を済まし、購買部を後にした。

 ◇

 みなさん、何度目でしょうかこのお話をするのは。ナイトレイブンカレッジは、一般人だけではなくてスーパー俳優やらスーパーセレブやら王族やらが通う、超名門校です。なん、ですけども…

「笑ってんじゃねぇっつってんだよ!!アぁ!?」

 なぁんでこんな使い古されてカビでも生えてそうな不良が多いのでしょうか。誰か知っている方もしくは有力な考察がある方おりましたら教えてください。

「ね、ねぇティアナ…。デュース、キャラ変わってない…?」

 ユウちゃんがキレ散らかすデュースちゃんを見ながらコソコソと私に耳打ちしてくる。

「う、うん…なんか違うよね…?不良そのものというかなんていうか…」

 まぁ昨日からちょいちょいそんな片鱗はあったけど。

「めっちゃガラ悪いんだゾ…」

 グリムちゃんも引き気味に言う。
 どうしてこんなことになったんだっけ。そして私はなんで誰かに語り掛ける風にして話始めたんだ。

「この卵はなぁ…ヒヨコにはなれなかった代わりに美味しいマロンタルトになる予定だったんだよ!!」

 あっ思い出した。購買部で買い出し終わって帰ろうとしてたら先輩にぶつかっちゃって、そのせいで卵が割れてしかもその先輩が昼間もユウちゃん達と揉めたって人達で、なんかそんで気付いてたらこうなってたんだった。デュースちゃんの剣幕に先輩達は怯えている。それでもデュースちゃんの怒りは収まらないらしく

「ヒヨコに謝れやァ!!5発ぶん殴ってやらァ!!」

 などと怒鳴りながら殴りかかりに行った。ナニ、コノジョウキョウ。てか…

「ねぇ、ユウちゃん。デュースちゃんひょっとして、あの卵からヒヨコが生まれて来る…って思ってんのかな…?」
「みたい…だね。でもさ、あの卵、無精卵だよね…?」

 それともツイステッドワンダーランドの卵は無精卵じゃないの…?と聞いて来るユウちゃんにいや、無精卵だよ基本…と言ったら「だ、だよねー…」と言い返される。
そんな私達の様子には気づきもせず、デュースちゃんは「ヒヨコの仇!!」とか「ヒヨコの無念を思い知れ!!!」とか怒鳴りながら先輩達を殴っている。ご、5発って言っておきながら6発行ったよあの人…。
先輩達は「ヒヨコさん、ごめんなさいーーー!!!」と絶叫しながら逃げて行ったが、それでもデュースちゃんの怒りが収まる様子はなく、未だにキレ散らかしている。その様子を、私とユウちゃんとグリムちゃんはただただドン引きしながら見ることしか出来ないでいた。

 

その後なんとか落ち着いたデュースちゃんはあの卵からヒヨコが生まれることはないという真実を知り、ショックに打ちひしがれていた。こうやって人は大人になって行くんだねぇー、勉強になるぅーと言ったら、少しムッとした様な顔をされた。
 それにしてもデュースちゃんが元ヤン…それもヤンキー漫画のヤンキーもビックリレベルのコッテコテのベッタベタなヤンキーだったなんて。人は見かけによらないって本当なんだなぁ。お母さんのことを思って不良の世界から足を洗って優等生になるため努力してるっていうのもなんか漫画の登場人物そのものみたい。でも、自分の今までの行いを顧みて正しい道へと戻ろうとするって言うのはすごいな。口先だけで俺は変わるんだーとか、足は洗うんだーって言ってなんにも直そうとしないでいる人が多いであろう中、ずるずると先延ばしにせずしっかりと行動に移そうとするなんてそれだけで十分すごい。少しだけ…ほんっとうに少しだけだけれども、デュース・スペードという人のことを尊敬するなと思ったのはここだけの話だ。

 そんな風に感動していたところで『遅い!!買い出し1つに一体どれだけの時間がかかるんだお前は!!給料減らされたいのか?」というアズールからの脅しと怒りのメッセージが入ったことでこんな所で油を売っている場合ではなかったという現実に気付いたのであった。
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