万有引力には逆らえない
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エマとの戦いに随分と時間を掛けてしまった。レモンちゃんは無事だろうか。マッシュ君達はアベルって人のところへ辿り着けているかな。どっちにしても早くみんなと合流しないと。と、そんなことを考えながら歩いていたら目の前によく見知った人物の後ろ姿が目に入ってきた。
「ランス…くん…?」
名前を呟くと私の声が聞こえたらしく振り返り、
「あぁ、お前もアベルのところへ行くのか」
と声を掛けてきた。その顔は間違いなく、私のよく知るランス・クラウンそのものだ。でも、
「…本当にランス君?」
なんだか違和感を感じる。
「なんでそんなこと聞くんだ。見ればわかるだろ」
喋れば喋るほど、違和感が大きくなる。
「違う…。貴方はランス君じゃないわ。誰なの貴方」
杖を構えながら言うと「…なんでバレたのかなぁ」とニヤッと不気味に笑い、目の前の人の姿が変わった。とてつもない圧を感じる。思わず震えそうになる。
「せっかくここの学生の顔に変えたのに」
どうしてわかった、小娘とニヤニヤと笑いながら問い掛けてくる。
「本物のランス君はもっとかっこいいわ」
怯えていることを悟られないように、務めて冷静に受け応える。
「なんだその言い方。まるで僕がカッコよくないみたいな言い草じゃないか。傷ついてしまうよ」
男がそう言ったかと思った瞬間、気がつくと私は吹っ飛び、後ろの壁にめり込まされていた。身体中に形容し難い痛みが走る。あまりの痛みに、声が出ない。
「生意気なガキだなぁ。そんなやつには、しっかりと罰を与えてやらなくてはな」
そう言いながら私へとにじり寄って来る。逃げようとするが、身体が思うように動かない。
「どうしてやろうか…。お前のその、可愛らしいお顔に消えないような傷をつける…なんてどうだ?」
私の頬を撫でながら言う。なんとかしないと。そう思いながら必死に踠く私のことを、目の前の男はニヤニヤと笑って楽しそうに見ている。とてつもなく不愉快だ。
「アイ、シクルス…!」
力を振り絞り、手を動かしてやっとの思いで魔法を使ってめり込まされている壁から氷壁を出現させて自分を押し出す。これで身動きは取れる…!足を少し擦りむいてしまったがそんなのは些細な問題だ。
「氷魔法かぁ。ということはお前、シャルロット家のガキだな」
目の前の男は未だに楽しそうな顔で私のことを見つめている。
「あー…でも氷魔法を受け継いだのは妾の娘の方だって聞いたなぁ…。ということはお前が噂の売女の娘か!」
そう言われた瞬間、頭が真っ白になった。
「売女…?何を言っているの…?」
「有名な話じゃないか。お前の母親が、シャルロット家の頭首を誑かしたのだろう。そしてその結果生まれたのがお前だってな」
売女の娘であるお前も売女だな!薄汚いガキめ、と、目の前の男はお母さんのことを罵りながらわらう。笑う。嗤う。
「ふざけるな!あいつが!あの碌でもないクソ男が!!あいつがお母さんに言い寄ったんだ!!!お母さんは売女じゃない!!売女なんかじゃない!!!!!今すぐその言葉取り消せ!!!!!!!」
怒鳴る私のことを男はやはり汚い顔で嗤う。殺してやる…!
「アイシクルス セコッ…!」
セコンズを放とうとした瞬間、突然息が出来なくなる。
「悪いな。僕はこれ以上お前のような薄汚い売女の娘の相手をしている時間はないんだ。だから今すぐ死んでくれ。あの世へ逝き母親と再会出来ることを祈ってやるよ」
じゃあな、と言っている男は今までで1番楽しそうな顔で嗤っていた。
必死に抵抗しようとしてみるが、無駄みたいだ。気が遠くなってきた。死を覚悟し、沈み行く意識の中、男と私の間に何か光輝く大きな剣のようなものが見えた気がした。
◇
目を覚ますと、見覚えのある保健室の天井。それから…
「わぁぁぁ、ルーナちゃん起きたぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
涙でグシャグシャに汚れた、レモンちゃんの泣き顔。驚いて起き上がると、思い切り抱きしめられた。おろおろしていると
「目覚まして良かったぁぁぁ…!あのまま目を覚さなかったらどうしようかと思ったよ!」
「全くだ…!ルーナちゃん、あんま無茶すんじゃねぇよ」
「怪我も大したことないみたいだしほんとに良かったね。あっお目覚めにシュークリームでも食べる?」
「起き抜けにシュークリームはキツイだろ…。ったく。ルーナ、お前マジで危ないとこだったんだぞ。もう少し慎重になるってことを覚えろ」
フィン君とドット君、マッシュ君とランス君の4人に話し掛けられた。事態が呑み込めず、困惑する。
「私、生きてる…?」
確かにあの時、あの男に殺されたと思ったのに…。
「ギリギリのところ、レイン・エイムズがお前を助けたそうだ」
ランス君が言う。レイン・エイムズ…?あのフィン君のお兄さんで神覚者の…?
「なんで…」
「ジジイから頼まれごとをされていてあの場へ行っていたんだ。そしたらお前が、あの男に殺されかけていた」
不意にもう1つ、私達以外の声が聞こえてきた。声の方に顔を向けてみるとそこには、レイン・エイムズの姿があった。
フィン君が少し、びくりと肩を揺らしている。が、エイムズ先輩はそんな彼には目も向けずにコツコツと靴音を鳴らしながら私の方へと向かってきた。
「悪いがこいつと少し2人で話したい。お前達は一旦席を外してくれ」
そう言って、ランス君達に退席するように促した。みんな少し不満気だったが、言われた通り保健室から出て行った。
そして静寂が訪れる。エイムズ先輩は私のことをじっと、睨みつけている。その視線が、すごく怖い。
「あ、あの…お話って…」
「お前、死んだらどうするつもりだったんだ」
お話ってなんですかと聞こうとすると、遮られてそう問い掛けられた。えっ…というと
「死んだらどうするつもりだったんだ」
先程よりも少しキツイ口調で、再び問い掛けられた。何も答えられずにいると「考えなかったのか」と、またキツイ口調で聞かれた。恐る恐る頷くと、より一層睨みつけられた。
「優秀な魔法使いだと聞いていたが、どうやらその噂は間違いだったみたいだな。お前はどうしようもないバカだ」
深いため息を吐きながら言われた。なっ…
「そんなこと…!」
「ないって言うのか?後先考えず、自分の力量も計れず、怒りに任せて無闇矢鱈に突っ込んでいき殺されかけていたお前が」
射抜くような目で、私をじっと見つめながら言う。その目は怒りに満ち溢れている。
「考えなかったのか。お前があの男に殺されてしまったら、エマやあいつらがどんな思いをするのか」
エマやみんなが…?
「考えなかったのか。お前が、自分を貶されたことによって怒り、格上相手に挑み死んでしまったんだと知ったら、お前の愛した母親がどんな思いをするのか」
お母さんが…どんな思いをするのか…。
「全く、考えませんでした…」
あの時、お母さんを売女と罵られた瞬間、何も考えられなくなって。私の中にはただ、怒りだけしか無くて。
「気がついた時には、あの人に向かって杖を構えてて、攻撃しようとしてました…」
あぁ、本当だ。私はエイムズ先輩の言う通り、どうしようもないバカだ。
「母親を大切に思う気持ちは良い。敵に向かって行く度胸も大切だ。それ自体は否定しない。だがな、命を粗末にするような真似はするな」
冷静さを欠くのもダメだ、それを常に念頭に置いておけと、苦言を呈された。小さな声で「はい…」と返事をすると、涙が溢れてきた。
「エイムズ先輩、ありがとうございました」
助けてくれて、怒ってくれて。そうお礼を言うと、エイムズ先輩は微かに笑い「あぁ」と言った。
「ちょっと。私が言おうとしてたこと先に全部言うのやめてくれない?」
突然エマの声が響き渡った。
「悪いな。神覚者としてはどうしても言っておきたくて」
エイムズ先輩がそういうと、エマは私達のところへ来て
「あら、随分とお仕事熱心なのね。恐れ入りますわ、神覚者様」
芝居がかったような表情と口調で言う。それに対してエイムズ先輩は眉間に皺を寄せながら「なんなんだその言い方」と言っている。労ってやってるんだからお礼くらい言えば?とエマは返す。棘のある言い方とは裏腹に、口振りはなんだか穏やかだ。ひょっとしてエマ、エイムズ先輩と仲良いの…?
「まぁ冗談は置いておくとして。レイン、ルーナを助けてくれてありがとう。この子の姉として、私からもお礼を言わせてもらうわ」
深々とエマが頭を下げる。そんなエマの様子に、私もエイムズ先輩も驚いて目を見開く。そんな私達に対し、「何よその反応」と不機嫌そうに言う。
「いや…お前にそんな深々と頭を下げられる日が来るなんて思わなくて…」
今から大雨でも降るのか?と言っているエイムズ先輩に「どう言う意味よ失礼ね!」と怒ったように声を上げている。やっぱり、エマとエイムズ先輩は仲が良いのだろうか。と、軽口を叩き合っている2人を見ていて思う。ふと、エマと目が合った。
「…ルーナ。レインも言ってたけど、わかったわね。これからはもっと、後先考えて行動しなさいよ」
今回はたまたま、運良くレインが居たから助かっただけってことを忘れるんじゃないわよ。そう説教してくるエマの言葉に「うん…心配かけてごめん…」と、小声で言うことしか出来ない。
「反省してるなら今回だけは許してあげる。ただし、お父様の耳にはもう入っているみたいだから、怒られても文句言ったりするんじゃないわよ」
あの人の耳にも…当然か。わかった…と言うとエマは「じゃあ私は寮へ戻るわよ」と、保健室のドアの方へと歩いて行った。
「あぁ、そうそう。1つ伝言」
と、急にエマが足を止め、私の方に向き直った。そして
「今回の件で、マカロンが話したいことが沢山あるそうよ。明日、登校前に来なさいって言っていたわ」
と、処刑宣告のような言葉を投げ掛けて
「じゃあ伝えたからね。ちゃんと行くのよ」
そう言い残して、今度こそ保健室を後にした。マ、マカロン先輩ひょっとしてめちゃくちゃ怒ってる…?!こ、怖っ…!明日なんて来なければ良いのに…!恐れ慄いている私のことを見て、エイムズ先輩の肩が微かに震えていたような気がするのは気のせいだろうか。
「ランス…くん…?」
名前を呟くと私の声が聞こえたらしく振り返り、
「あぁ、お前もアベルのところへ行くのか」
と声を掛けてきた。その顔は間違いなく、私のよく知るランス・クラウンそのものだ。でも、
「…本当にランス君?」
なんだか違和感を感じる。
「なんでそんなこと聞くんだ。見ればわかるだろ」
喋れば喋るほど、違和感が大きくなる。
「違う…。貴方はランス君じゃないわ。誰なの貴方」
杖を構えながら言うと「…なんでバレたのかなぁ」とニヤッと不気味に笑い、目の前の人の姿が変わった。とてつもない圧を感じる。思わず震えそうになる。
「せっかくここの学生の顔に変えたのに」
どうしてわかった、小娘とニヤニヤと笑いながら問い掛けてくる。
「本物のランス君はもっとかっこいいわ」
怯えていることを悟られないように、務めて冷静に受け応える。
「なんだその言い方。まるで僕がカッコよくないみたいな言い草じゃないか。傷ついてしまうよ」
男がそう言ったかと思った瞬間、気がつくと私は吹っ飛び、後ろの壁にめり込まされていた。身体中に形容し難い痛みが走る。あまりの痛みに、声が出ない。
「生意気なガキだなぁ。そんなやつには、しっかりと罰を与えてやらなくてはな」
そう言いながら私へとにじり寄って来る。逃げようとするが、身体が思うように動かない。
「どうしてやろうか…。お前のその、可愛らしいお顔に消えないような傷をつける…なんてどうだ?」
私の頬を撫でながら言う。なんとかしないと。そう思いながら必死に踠く私のことを、目の前の男はニヤニヤと笑って楽しそうに見ている。とてつもなく不愉快だ。
「アイ、シクルス…!」
力を振り絞り、手を動かしてやっとの思いで魔法を使ってめり込まされている壁から氷壁を出現させて自分を押し出す。これで身動きは取れる…!足を少し擦りむいてしまったがそんなのは些細な問題だ。
「氷魔法かぁ。ということはお前、シャルロット家のガキだな」
目の前の男は未だに楽しそうな顔で私のことを見つめている。
「あー…でも氷魔法を受け継いだのは妾の娘の方だって聞いたなぁ…。ということはお前が噂の売女の娘か!」
そう言われた瞬間、頭が真っ白になった。
「売女…?何を言っているの…?」
「有名な話じゃないか。お前の母親が、シャルロット家の頭首を誑かしたのだろう。そしてその結果生まれたのがお前だってな」
売女の娘であるお前も売女だな!薄汚いガキめ、と、目の前の男はお母さんのことを罵りながらわらう。笑う。嗤う。
「ふざけるな!あいつが!あの碌でもないクソ男が!!あいつがお母さんに言い寄ったんだ!!!お母さんは売女じゃない!!売女なんかじゃない!!!!!今すぐその言葉取り消せ!!!!!!!」
怒鳴る私のことを男はやはり汚い顔で嗤う。殺してやる…!
「アイシクルス セコッ…!」
セコンズを放とうとした瞬間、突然息が出来なくなる。
「悪いな。僕はこれ以上お前のような薄汚い売女の娘の相手をしている時間はないんだ。だから今すぐ死んでくれ。あの世へ逝き母親と再会出来ることを祈ってやるよ」
じゃあな、と言っている男は今までで1番楽しそうな顔で嗤っていた。
必死に抵抗しようとしてみるが、無駄みたいだ。気が遠くなってきた。死を覚悟し、沈み行く意識の中、男と私の間に何か光輝く大きな剣のようなものが見えた気がした。
◇
目を覚ますと、見覚えのある保健室の天井。それから…
「わぁぁぁ、ルーナちゃん起きたぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
涙でグシャグシャに汚れた、レモンちゃんの泣き顔。驚いて起き上がると、思い切り抱きしめられた。おろおろしていると
「目覚まして良かったぁぁぁ…!あのまま目を覚さなかったらどうしようかと思ったよ!」
「全くだ…!ルーナちゃん、あんま無茶すんじゃねぇよ」
「怪我も大したことないみたいだしほんとに良かったね。あっお目覚めにシュークリームでも食べる?」
「起き抜けにシュークリームはキツイだろ…。ったく。ルーナ、お前マジで危ないとこだったんだぞ。もう少し慎重になるってことを覚えろ」
フィン君とドット君、マッシュ君とランス君の4人に話し掛けられた。事態が呑み込めず、困惑する。
「私、生きてる…?」
確かにあの時、あの男に殺されたと思ったのに…。
「ギリギリのところ、レイン・エイムズがお前を助けたそうだ」
ランス君が言う。レイン・エイムズ…?あのフィン君のお兄さんで神覚者の…?
「なんで…」
「ジジイから頼まれごとをされていてあの場へ行っていたんだ。そしたらお前が、あの男に殺されかけていた」
不意にもう1つ、私達以外の声が聞こえてきた。声の方に顔を向けてみるとそこには、レイン・エイムズの姿があった。
フィン君が少し、びくりと肩を揺らしている。が、エイムズ先輩はそんな彼には目も向けずにコツコツと靴音を鳴らしながら私の方へと向かってきた。
「悪いがこいつと少し2人で話したい。お前達は一旦席を外してくれ」
そう言って、ランス君達に退席するように促した。みんな少し不満気だったが、言われた通り保健室から出て行った。
そして静寂が訪れる。エイムズ先輩は私のことをじっと、睨みつけている。その視線が、すごく怖い。
「あ、あの…お話って…」
「お前、死んだらどうするつもりだったんだ」
お話ってなんですかと聞こうとすると、遮られてそう問い掛けられた。えっ…というと
「死んだらどうするつもりだったんだ」
先程よりも少しキツイ口調で、再び問い掛けられた。何も答えられずにいると「考えなかったのか」と、またキツイ口調で聞かれた。恐る恐る頷くと、より一層睨みつけられた。
「優秀な魔法使いだと聞いていたが、どうやらその噂は間違いだったみたいだな。お前はどうしようもないバカだ」
深いため息を吐きながら言われた。なっ…
「そんなこと…!」
「ないって言うのか?後先考えず、自分の力量も計れず、怒りに任せて無闇矢鱈に突っ込んでいき殺されかけていたお前が」
射抜くような目で、私をじっと見つめながら言う。その目は怒りに満ち溢れている。
「考えなかったのか。お前があの男に殺されてしまったら、エマやあいつらがどんな思いをするのか」
エマやみんなが…?
「考えなかったのか。お前が、自分を貶されたことによって怒り、格上相手に挑み死んでしまったんだと知ったら、お前の愛した母親がどんな思いをするのか」
お母さんが…どんな思いをするのか…。
「全く、考えませんでした…」
あの時、お母さんを売女と罵られた瞬間、何も考えられなくなって。私の中にはただ、怒りだけしか無くて。
「気がついた時には、あの人に向かって杖を構えてて、攻撃しようとしてました…」
あぁ、本当だ。私はエイムズ先輩の言う通り、どうしようもないバカだ。
「母親を大切に思う気持ちは良い。敵に向かって行く度胸も大切だ。それ自体は否定しない。だがな、命を粗末にするような真似はするな」
冷静さを欠くのもダメだ、それを常に念頭に置いておけと、苦言を呈された。小さな声で「はい…」と返事をすると、涙が溢れてきた。
「エイムズ先輩、ありがとうございました」
助けてくれて、怒ってくれて。そうお礼を言うと、エイムズ先輩は微かに笑い「あぁ」と言った。
「ちょっと。私が言おうとしてたこと先に全部言うのやめてくれない?」
突然エマの声が響き渡った。
「悪いな。神覚者としてはどうしても言っておきたくて」
エイムズ先輩がそういうと、エマは私達のところへ来て
「あら、随分とお仕事熱心なのね。恐れ入りますわ、神覚者様」
芝居がかったような表情と口調で言う。それに対してエイムズ先輩は眉間に皺を寄せながら「なんなんだその言い方」と言っている。労ってやってるんだからお礼くらい言えば?とエマは返す。棘のある言い方とは裏腹に、口振りはなんだか穏やかだ。ひょっとしてエマ、エイムズ先輩と仲良いの…?
「まぁ冗談は置いておくとして。レイン、ルーナを助けてくれてありがとう。この子の姉として、私からもお礼を言わせてもらうわ」
深々とエマが頭を下げる。そんなエマの様子に、私もエイムズ先輩も驚いて目を見開く。そんな私達に対し、「何よその反応」と不機嫌そうに言う。
「いや…お前にそんな深々と頭を下げられる日が来るなんて思わなくて…」
今から大雨でも降るのか?と言っているエイムズ先輩に「どう言う意味よ失礼ね!」と怒ったように声を上げている。やっぱり、エマとエイムズ先輩は仲が良いのだろうか。と、軽口を叩き合っている2人を見ていて思う。ふと、エマと目が合った。
「…ルーナ。レインも言ってたけど、わかったわね。これからはもっと、後先考えて行動しなさいよ」
今回はたまたま、運良くレインが居たから助かっただけってことを忘れるんじゃないわよ。そう説教してくるエマの言葉に「うん…心配かけてごめん…」と、小声で言うことしか出来ない。
「反省してるなら今回だけは許してあげる。ただし、お父様の耳にはもう入っているみたいだから、怒られても文句言ったりするんじゃないわよ」
あの人の耳にも…当然か。わかった…と言うとエマは「じゃあ私は寮へ戻るわよ」と、保健室のドアの方へと歩いて行った。
「あぁ、そうそう。1つ伝言」
と、急にエマが足を止め、私の方に向き直った。そして
「今回の件で、マカロンが話したいことが沢山あるそうよ。明日、登校前に来なさいって言っていたわ」
と、処刑宣告のような言葉を投げ掛けて
「じゃあ伝えたからね。ちゃんと行くのよ」
そう言い残して、今度こそ保健室を後にした。マ、マカロン先輩ひょっとしてめちゃくちゃ怒ってる…?!こ、怖っ…!明日なんて来なければ良いのに…!恐れ慄いている私のことを見て、エイムズ先輩の肩が微かに震えていたような気がするのは気のせいだろうか。