万有引力には逆らえない
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次の試験の内容はトーナメント戦みたいになるらしい。1回戦はいきなりマッシュ君とマカロン先輩の試合だ。マッシュ君の応援をするつもりではあるけれども、自寮の監督生であるマカロン先輩の応援もしたいという気持ちもある。……何よりも
「ルーナちゃん?どうかしたんですか?」
競技場に出ているマッシュ君とマカロン先輩のことをじっと見つめていたら、不思議そうな顔をしたレモンちゃんに話しかけられた。
「ちょっと、マッシュ君とマカロン先輩のどっちを応援するべきか迷っちゃって」
というと
「あっそうですよね。相手の方はオルカ寮の監督生なんですもんね。どっちにも負けてほしくないですよね…」
そう返されて
「うん…」
と相槌を打つ。
どっちにも負けてほしくない……それもある。けれどそれ以上に、マッシュ君が心配、という方が正しい。あのマカロン先輩が、誰かに負けるところを想像することができない。中等部の頃から何度も聞いた。マカロン先輩の噂を。そして実際に何度も見た。マカロン先輩がどれほど強い人なのかも。しかも、何度も見ているのに、あの人の本気は恐らく1度も見たことがない。実力の半分…どころか3分の1も見ていないと思う。それなのに、あの強さを持っている……そんなあの人が負ける姿なんて、どれだけイメージしても出来ない。
もちろん、マッシュ君の強さも何度も見てきた。彼が確かな実力者だということは理解してる。だけども、どうしてもマカロン先輩に及ぶとは考えられない。実力差があるから…というよりも、魔法が使えないマッシュ君が、マカロン先輩とまともにやりあえるビジョンが見えてこない。マカロン先輩は、魔法なしで勝てるほど甘くない……。マッシュ君、大丈夫かな……なんていう私の心配など知らないとでも言うように試合は始まってしまった。
◇
魔法を使うことができないマッシュ君は、マカロン先輩とまともにやりあえないかもしれない…なんていうのは
「フフ…魔法も使わずにたいしたもんだ。……惚れたわ。私の負けよ」
どうやら私の杞憂だったらしいということを、穏やかに、満足そうな笑顔を浮かべて地面に倒れ伏しているマカロン先輩を見て思い知ることになった。
「ルーナちゃん…!マッシュ君、勝った…!」
レモンちゃんが目にいっぱいの涙をためつつも、嬉しそうな声で話しかけてきた。
「…うん。すごかった。よかったね、マッシュ君勝って」
そう返事をすると、
「はい…!」
と、とうとう我慢できなくなってしまったらしく泣き出してしまった。思わず苦笑してしまう。
「レモンちゃん、はい。ハンカチ使って。マッシュ君が戻ってくるまでに泣き止んで、飛び切りの笑顔でおめでとうって言ってあげようね」
ハンカチを渡しながらなるべく優しい声色で言うと
「うん……!」
と、抱きつかれた。
やっぱりレモンちゃんも、マッシュ君が勝つと信じつつも心配だったのかな。なんて思いつつも、レモンちゃんを抱きしめ返して背中を撫でる。本当、優しい子だな。今頃フィン君たちも泣いて……ッ?!
「なんだこの音と揺れはッ!!!」
凄まじい轟音が辺り一面に鳴り響いて地面が揺れ出した。何が起こっているんだと、みんな大騒ぎしている。
「ルーナちゃん…!」
レモンちゃんが不安げに私の名前を呼んでくる。どうしよう、安心させてあげたいけれども、私もどうすればいいのかわからない。
「おい、見ろ!なんだあの亀裂は!!」
どこからかそんな叫び声が聞こえてきた。亀裂?なんだと思いながら叫び声をあげたらしい人の視線の先を見ようとした瞬間、突然記憶が途切れた。
◇
一体何が起きたのかとか、どうして不自然に記憶が途切れているのかとか、いつの間にか現れていた明らかに只者じゃないであろうあの人たちはなんなんだとか、その人たちの中に憎きあの男…セル・ウォーがいるのはなぜかとか、いろいろとわからないことだらけだ。だけども
「細かい説明はあとじゃ」
という、ウォールバーグ校長の言葉で今やるべきことがなんなのかということは理解できた。
「動けるものは魔人共の相手をせよ。イノセント・ゼロの相手はワシがする。生徒たちは任せたぞ」
そういったと同時にウォールバーグ校長と数人が消えた。私たちを巻き込まないために特に厄介そうな人たちを引き受ける。だから、あとは任せたぞ。そういう意味だろう。校長先生、私たちを信用してくれたのね。なら、その期待にきっちりと応えないと、ね。
そう考えたのは私以外のみんなも同じだったらしい。ウォールバーグ校長の言葉を合図に、ランス君とマッシュ君とドット君、マカロン先輩と神覚者のカルド・ゲベルさんと私は客席から一斉に飛び出し、一斉に魔人たちへと攻撃を開始した。
◇
「アイシクルス!!」
目の前まで迫ってくる魔人はあまり強くない。だから倒すこと自体は簡単だ。だけども
「ッまた出てきた…キリがない…」
倒しても倒しても、魔人たちが次から次へと出現し、襲い掛かってくる。地味に魔力が削られる。というかこのままじゃ、私の体力が限界を迎えてしまいそうだ。こんなの相手にしている場合じゃないのに…。1人、セル・ウォーの相手をしているマッシュ君に加勢したいのに…!
「あーもう!カルパッチョ君がいてくれたらもう少し楽だったかもしれないのに!」
思わずそんなことをボヤいてしまう。
「ルーナちゃん、そんなことボヤいている暇があるのならば、目の前の敵を倒すことだけに集中しなさい」
サウンズを魔人に放ちながら、マカロン先輩が私に苦言を呈してくる。
「すみません!でも思いませんか?彼がいたらかなり強力な戦力になったって」
そう言い返しつつ魔人をフローズンアイシクルスで氷漬けにする。ブッサイクな氷像を爆誕させてしまった。
「まぁそうね。この状況にあの天才・カルパッチョ・ローヤンがいたら相当な戦力になっていたでしょうね。けど、彼が今ここにいない原因はあなたのお友達よ」
魔人を蹴散らしつつ溜息を吐きながらマカロン先輩は言う。
「お友達…あー…マッシュ君に頭カチ割られたんでしたっけ」
そりゃ、無理か……と顔が引きつる。
「そういうことよ。わかったのならば、たらればはおしまいよ」
しっかり働くわよ、と言われる。
「はい、頑張ります」
そう返事をすると
「期待してるわよ、ルーナちゃん」
ウインクしながら鼓舞された。そこまで言われたんだ。死ぬ気でやろう。体力の限界なんて、知ったことか。気合を入れ直すような思いで、杖を握る手に力を込める。
「バブー!」
えっバブー?何、赤ちゃん?いや、なんでこんなところに赤ちゃんがいるの。というか、この声どこかで……なんて思いながら不審な声の方へ目を向けてみると
「バブー!!バブブブブー!!!」
「はっ?!ドット君?!何その姿!!」
ドット君が赤ちゃんの姿になってハイハイで必死に逃げ回っている。あの様子、しゃべったり歩いたり魔法を使ったりできないのだろうか?敵の攻撃がドット君へ向かっている。大変…!
「アイシクルス!!!!!」
「バブッ」
ドット君と敵の間に大氷壁を出し、なんとか守ることができた。その隙に急いで走り寄って
「ドット君大丈夫?!」
呼びかけながら抱き上げて、怪我がないか確認する。
「バブーーーーー?!バブ、バブブブブ!!!」
どうしよう、何言ってるのか全ッ然わかんないッ…!でも怪我とかはしてなさそう。とりあえず良かった。
「バブブー!!バブ、バブバブバーーー!!!」
「わっちょっ…!ドット君危ないよ、暴れないで!」
なぜかドット君が私の腕の中で暴れ出して落としそうになってしまう。どうしちゃったのこの子…!てか、顔赤いし身体も熱いような…風邪ひいてる……?
「ドットく…」
「ベビィズ」
「えっ」
し、しまった油断した!敵の魔法を思い切り食らってしまった…!は、反撃……て、あ、あれ…?な、なんだか違和感が…あれ、競技場、急に大きくなった?さっきまでここまで広大じゃなかったと思うんだけど…って、んっ……?!
「バブブ、バブブブブバッブブ??!!」
私、赤ちゃんになってる??!!そう言葉を紡ごうとしたが、出来なかった。
「ルーナちゃん?どうかしたんですか?」
競技場に出ているマッシュ君とマカロン先輩のことをじっと見つめていたら、不思議そうな顔をしたレモンちゃんに話しかけられた。
「ちょっと、マッシュ君とマカロン先輩のどっちを応援するべきか迷っちゃって」
というと
「あっそうですよね。相手の方はオルカ寮の監督生なんですもんね。どっちにも負けてほしくないですよね…」
そう返されて
「うん…」
と相槌を打つ。
どっちにも負けてほしくない……それもある。けれどそれ以上に、マッシュ君が心配、という方が正しい。あのマカロン先輩が、誰かに負けるところを想像することができない。中等部の頃から何度も聞いた。マカロン先輩の噂を。そして実際に何度も見た。マカロン先輩がどれほど強い人なのかも。しかも、何度も見ているのに、あの人の本気は恐らく1度も見たことがない。実力の半分…どころか3分の1も見ていないと思う。それなのに、あの強さを持っている……そんなあの人が負ける姿なんて、どれだけイメージしても出来ない。
もちろん、マッシュ君の強さも何度も見てきた。彼が確かな実力者だということは理解してる。だけども、どうしてもマカロン先輩に及ぶとは考えられない。実力差があるから…というよりも、魔法が使えないマッシュ君が、マカロン先輩とまともにやりあえるビジョンが見えてこない。マカロン先輩は、魔法なしで勝てるほど甘くない……。マッシュ君、大丈夫かな……なんていう私の心配など知らないとでも言うように試合は始まってしまった。
◇
魔法を使うことができないマッシュ君は、マカロン先輩とまともにやりあえないかもしれない…なんていうのは
「フフ…魔法も使わずにたいしたもんだ。……惚れたわ。私の負けよ」
どうやら私の杞憂だったらしいということを、穏やかに、満足そうな笑顔を浮かべて地面に倒れ伏しているマカロン先輩を見て思い知ることになった。
「ルーナちゃん…!マッシュ君、勝った…!」
レモンちゃんが目にいっぱいの涙をためつつも、嬉しそうな声で話しかけてきた。
「…うん。すごかった。よかったね、マッシュ君勝って」
そう返事をすると、
「はい…!」
と、とうとう我慢できなくなってしまったらしく泣き出してしまった。思わず苦笑してしまう。
「レモンちゃん、はい。ハンカチ使って。マッシュ君が戻ってくるまでに泣き止んで、飛び切りの笑顔でおめでとうって言ってあげようね」
ハンカチを渡しながらなるべく優しい声色で言うと
「うん……!」
と、抱きつかれた。
やっぱりレモンちゃんも、マッシュ君が勝つと信じつつも心配だったのかな。なんて思いつつも、レモンちゃんを抱きしめ返して背中を撫でる。本当、優しい子だな。今頃フィン君たちも泣いて……ッ?!
「なんだこの音と揺れはッ!!!」
凄まじい轟音が辺り一面に鳴り響いて地面が揺れ出した。何が起こっているんだと、みんな大騒ぎしている。
「ルーナちゃん…!」
レモンちゃんが不安げに私の名前を呼んでくる。どうしよう、安心させてあげたいけれども、私もどうすればいいのかわからない。
「おい、見ろ!なんだあの亀裂は!!」
どこからかそんな叫び声が聞こえてきた。亀裂?なんだと思いながら叫び声をあげたらしい人の視線の先を見ようとした瞬間、突然記憶が途切れた。
◇
一体何が起きたのかとか、どうして不自然に記憶が途切れているのかとか、いつの間にか現れていた明らかに只者じゃないであろうあの人たちはなんなんだとか、その人たちの中に憎きあの男…セル・ウォーがいるのはなぜかとか、いろいろとわからないことだらけだ。だけども
「細かい説明はあとじゃ」
という、ウォールバーグ校長の言葉で今やるべきことがなんなのかということは理解できた。
「動けるものは魔人共の相手をせよ。イノセント・ゼロの相手はワシがする。生徒たちは任せたぞ」
そういったと同時にウォールバーグ校長と数人が消えた。私たちを巻き込まないために特に厄介そうな人たちを引き受ける。だから、あとは任せたぞ。そういう意味だろう。校長先生、私たちを信用してくれたのね。なら、その期待にきっちりと応えないと、ね。
そう考えたのは私以外のみんなも同じだったらしい。ウォールバーグ校長の言葉を合図に、ランス君とマッシュ君とドット君、マカロン先輩と神覚者のカルド・ゲベルさんと私は客席から一斉に飛び出し、一斉に魔人たちへと攻撃を開始した。
◇
「アイシクルス!!」
目の前まで迫ってくる魔人はあまり強くない。だから倒すこと自体は簡単だ。だけども
「ッまた出てきた…キリがない…」
倒しても倒しても、魔人たちが次から次へと出現し、襲い掛かってくる。地味に魔力が削られる。というかこのままじゃ、私の体力が限界を迎えてしまいそうだ。こんなの相手にしている場合じゃないのに…。1人、セル・ウォーの相手をしているマッシュ君に加勢したいのに…!
「あーもう!カルパッチョ君がいてくれたらもう少し楽だったかもしれないのに!」
思わずそんなことをボヤいてしまう。
「ルーナちゃん、そんなことボヤいている暇があるのならば、目の前の敵を倒すことだけに集中しなさい」
サウンズを魔人に放ちながら、マカロン先輩が私に苦言を呈してくる。
「すみません!でも思いませんか?彼がいたらかなり強力な戦力になったって」
そう言い返しつつ魔人をフローズンアイシクルスで氷漬けにする。ブッサイクな氷像を爆誕させてしまった。
「まぁそうね。この状況にあの天才・カルパッチョ・ローヤンがいたら相当な戦力になっていたでしょうね。けど、彼が今ここにいない原因はあなたのお友達よ」
魔人を蹴散らしつつ溜息を吐きながらマカロン先輩は言う。
「お友達…あー…マッシュ君に頭カチ割られたんでしたっけ」
そりゃ、無理か……と顔が引きつる。
「そういうことよ。わかったのならば、たらればはおしまいよ」
しっかり働くわよ、と言われる。
「はい、頑張ります」
そう返事をすると
「期待してるわよ、ルーナちゃん」
ウインクしながら鼓舞された。そこまで言われたんだ。死ぬ気でやろう。体力の限界なんて、知ったことか。気合を入れ直すような思いで、杖を握る手に力を込める。
「バブー!」
えっバブー?何、赤ちゃん?いや、なんでこんなところに赤ちゃんがいるの。というか、この声どこかで……なんて思いながら不審な声の方へ目を向けてみると
「バブー!!バブブブブー!!!」
「はっ?!ドット君?!何その姿!!」
ドット君が赤ちゃんの姿になってハイハイで必死に逃げ回っている。あの様子、しゃべったり歩いたり魔法を使ったりできないのだろうか?敵の攻撃がドット君へ向かっている。大変…!
「アイシクルス!!!!!」
「バブッ」
ドット君と敵の間に大氷壁を出し、なんとか守ることができた。その隙に急いで走り寄って
「ドット君大丈夫?!」
呼びかけながら抱き上げて、怪我がないか確認する。
「バブーーーーー?!バブ、バブブブブ!!!」
どうしよう、何言ってるのか全ッ然わかんないッ…!でも怪我とかはしてなさそう。とりあえず良かった。
「バブブー!!バブ、バブバブバーーー!!!」
「わっちょっ…!ドット君危ないよ、暴れないで!」
なぜかドット君が私の腕の中で暴れ出して落としそうになってしまう。どうしちゃったのこの子…!てか、顔赤いし身体も熱いような…風邪ひいてる……?
「ドットく…」
「ベビィズ」
「えっ」
し、しまった油断した!敵の魔法を思い切り食らってしまった…!は、反撃……て、あ、あれ…?な、なんだか違和感が…あれ、競技場、急に大きくなった?さっきまでここまで広大じゃなかったと思うんだけど…って、んっ……?!
「バブブ、バブブブブバッブブ??!!」
私、赤ちゃんになってる??!!そう言葉を紡ごうとしたが、出来なかった。
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