万有引力には逆らえない
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マッシュ君の魔法不全が魔法省にバレてしまった。しかもマッシュ君があの無邪気な淵源に目を付けられたらしい。なんでそんな人にマッシュ君が…とか、マッシュ君はどうなってしまうんだろうとか、考えたいことは山ほどある。だけれども今は
「ルーナ!お前、魔法不全者と仲良くしているというのは本当か?!何を考えているんだ!」
どれだけシャルロット家の名誉を汚せば気が済むんだと怒鳴っているこの人の話をいつまで聞いていればいいんだろう。その考えに埋め尽くされそうだ。
マッシュ君の魔法不全の話は一般的にはまだバレていない。だけれども魔法省の人達がわざわざこの男にも連絡してきたらしい。余計なことをしてくれる。面倒くさい。思わず欠伸をしてしまった。
「なんだその態度は!お前はいつもいつも…」
そんな私の態度が気に食わなかったらしく、声を荒げながら説教してくる。鬱陶しい。
「お話はそれだけですか?私今日は大切な予定があるので失礼させていただきたいのですが」
と文句を言うと、更に怒鳴って来た。
「何度も言っているだろ。付き合う人間は家柄が素晴らしい者にしろと。なのに魔法不全者や貧乏人や落ちこぼれにとどうして碌でもないやつとばかり関わろうとするんだ!少しは私の立場というものを…」
「私の立場?自分の娘のお目付け役であった女性に手を出した挙句、子供まで産ませた禄でもないご当主様の立場とはなんですか」
怒鳴っている目の前の人の言葉を遮り言葉を発する。と、やっと押し黙った。
やっと静かになった。良かった。ちらりと時計を見やる。あぁ、大変だ。約束の時間に遅れてしまう。
「お話はもうよろしいですね。私はご当主様のくだらないお話に付き合っているほど暇ではないので失礼させていただきますわ」
御機嫌よう、お父様。と、嫌味たっぷりに伝えると顔を真っ赤にして怒鳴られたが無視して部屋を後にする。その際に使用人に引き留められたがそれも無視した。
何がシャルロット家の名誉だ。そんなくだらないもののことなんて知ったこっちゃないわクソジジイ。
◇
あぁ、もう本当に嫌になる。実家に帰るといっつもこれだ。最悪。あんな男と血が繋がっているだなんて考えたくもない。腹立たしい。家の名誉がどうだとか、私の立場がどうだのとか、付き合う人間はどうだのとか。いっつも同じことばかり。くだらない。夜会に行った時もそんなくだらない話ばかり聞こえて来るし、貴族って言うのはどこまでいってもくだらない。早く滅びればいいのに。
と、まぁ今日はこんなこと考えるのはやめよう。そんなことよりも今日は…
「おっ来たな、ルーナちゃぁぁぁぁぁん!!!」
今日はみんなと出かけるんだもの。待ち合わせ場所へ向かうと、私の姿を確認したらしいドット君の声が聞こえてきた。
「おまた…せ、えっ…」
おまたせ、と挨拶しようとして初めてドット君の方へ目を向けて思わず絶句する。目の前に広がっている光景が、あまりにもカオスすぎて。
今から戦にでも行くの?と聞いてしまいたくなるような甲冑に身を包んでいるドット君に、トレーニング着とトレーニング用のコロコロでトレーニングしながら「ルーナちゃんおはよー。今日は楽しもうねー」と言っているマッシュ君。一目みただけだと普通の恰好(かなりのイケメン。…本当にイケメンだな。なんなのこの人。腹立つ)だけどもインナーにドデカいアンナちゃんのプリントされたTシャツを着て「今日も可愛いな、妹よ!」と話しかけているランス君。…ナニコレ。えっ私、今からこの人達と出かけるの?いや…いやいやいやいやいや!!!無理無理無理無理無理!!帰る!!!と、踵を返そうとすると「ルーナちゃん…!お願い。僕を1人にしないで…!」いつの間にか背後まで来ていたフィン君にガシッと肩を掴まれて、悲痛な顔と声で懇願され、腹をくくってみんなと出かけることに決めた。
◇
「ルーナちゃんて町で遊んだことあるのか?」
貴族のお嬢様ってあんまこういうとこで遊んだりするイメージねぇんだけど、とドット君に聞かれた考えてみる。
「あまりないかも。貴族だからっていうか…そもそも私が単純に引きこもり気質だからっていう方が大きい気がするけど…」
休みの日は出かけるよりも部屋に籠って本を読んでいるか寝ているか藁人形を作ってるかのことが多いし…と答えると
「そっかー、本読んでるか寝てるか藁人形作ってるのか。なんかルーナちゃんっぽい…は?藁人形?」
「藁人形?!」
「わら…なんで」
ドット君とフィン君とマッシュ君につっこまれた。私何か変なこと言ったかしら。
「こいつ、昔からオカルトものが大好きなんだ。幽霊だとか妖怪だとか呪いだとかまじないだとか宇宙人だとか」
と、ランス君が3人に説明する。
「宇宙人は興味ないってば。何度も言ってるでしょ」
幽霊とか妖怪とかそういうのが好きなの。都市伝説とか!と弁明するが、「大差ないだろ」と一蹴される。大差あるってば。何度も言っているのに。
「そ、そなのか…。ま、まぁとりあえず今日は目一杯楽しもうな!俺が町を案内してやるよ。そうそう、マーチェット通りにはさ、有名な遊びがあんだよ」
ほらあれ!とドット君が屋台を指差しながら言う。指差す先にはコアラが台に座らせている出店だある。
「くしゃみコアラのダーツです。くしゃみコアラは鼻水が固形化するからこよりを使ってくしゃみさせて鼻水でダーツするんだ」
という説明で興味を持ったらしくマッシュ君がさっそく「やってみよう」とこよみでコアラの鼻を擽る。
「まぁ初心者には的に当てることすら難しいだろうけど」
と、ドヤ顔で言うドット君をそれフラグなんじゃ…と思いながら見ていた次の瞬間。ドット君の脳天に固形になった鼻水がずんっ!という鈍い音と共に刺さった。ドット君は口から血を吐いた。あーあ…
「ごめんドット君」
謝るマッシュ君に対し震える声で「まぁ…まぁ…初めてだしな」と言ってはいるが、その顔はすごく怒っている。
そして案の定。やり返すドット君と飛びつき腕十字をキメるマッシュ君。2人の喧嘩がスタートした。そんな2人の様子を見ると、ランス君が呆れた様に溜息を吐いて「行くぞ」と私とフィン君に声を掛けて歩き始めた。それに続いて私とフィン君も「…うん」と返事をして、2人を置き去りにして歩き出した。
◇
あの後私達は神覚者試験に向けて杖を新調したいというランス君の申し出で杖屋を見に行った。の、だが。結局買わなかった。とりあえず改めてマッシュ・バーンデッドという人間が、ヤバい人だっていうことはよくわかった。なんで1000年誰も持つことが出来なかったって言う杖をあっさり持ててしまうのよ。お店のお爺さんが杖の説明を始めた瞬間からもう嫌な予感はしていたけれども案の定の結果過ぎてどんな顔すればいいのかわからなかったわ。すごいとか通り越して最早怖い。これで魔法不全とか何かの間違いだと誰かに言って欲しいレベルだわ…。
「ルーナちゃんどうかしたんですか?なんだかすごくげっそりとしているように見えるんですけど…」
先程の杖屋での出来事を思い返していたらとても疲れているように見えたらしい。後から合流してきたレモンちゃんが心配そうに声を掛けてきた。
「大丈夫。少し考え事していただけよ」
そう答えるとレモンちゃんは「良かったー」と安心したように言う。
「ねぇルーナちゃん。このヘアアクセサリー、ルーナちゃんにとても似合うと思うんですけどどうですか?」
そういうレモンちゃんの手には、シルバーと紫と水色の使われたとても綺麗なヘアアクセサリーがある。それを私に見せて来る。
「わっ綺麗!でもこれ、私に似合うかな…?」
なんだか少し大人っぽすぎるような気がするのだけど…というと
「そんなことないですよ、似合いますよ!ルーナちゃん、可愛いけれども美人ですし。それに髪だって、艶があって色素が薄くてふわふわしていてすごくきれいだからきっとこのヘアアクセサリーがとても映えますよ」
と、なんだかべた褒めされて嬉しい半面かなり照れ臭い。小さい頃お母さんに『ルーナの髪はとても綺麗で指通りも触り心地も良くて素敵ね。お母さんルーナの髪だーい好き』と褒められて以来、髪の手入れには何よりも手間と時間をかけた甲斐があったというところだろうか。
…ヘアアクセサリーどうしようかなぁ。そういえば最近服とかヘアアクセサリーとか買ってないな。久しぶりに買ってしまうか?どうしよう…と言いながら迷っている私のことをレモンちゃんが微笑ましそうに眺めている。
「おい。そろそろ行くぞ。…それ買うのか」
全く動く気配のない私とレモンちゃんにしびれを切らしたのか、ランス君が声を掛けてきた。
「ちょっと迷ってて…」
「買っちゃいましょうよー。ルーナちゃんに絶対に似合いますよー。ねっ!ランス君もそう思うでしょ?」
と、レモンちゃんが私の手に合ったヘアアクセサリーをランス君に渡す。するとランス君はじっとヘアアクセサリーを黙って見つめる。
「欲しいのか」
と、私に問い掛けてきた。どうしようか迷っていると答えると「そうか…」と言った。そして
「すみません。これください」
と、レジへヘアアクセサリーを持っていき、店員さんに渡している。…。……って、えっ?!
「ラ、ランス君!!」
慌てて駆け寄って行き
「い、良いって悪いって。か、買うなら自分で…!」
「あ?もう買っちまったぞ。ほらよ」
自分で買うと言ったが時すでに遅し。ランス君は会計を終え、ヘアアクセサリーを私に渡してきた。
「いや、あの…!お、お金払う…」
「いらねぇ。それは俺がお前にあげたいと思ったから買ったんだ。黙って受け取れ」
さっさと行くぞ、と言い残してスタスタと先に店を出て行ってしまった。
「ルーナちゃん…!良かったですね!!」
レモンちゃんに思い切り抱きしめられた。顔が驚くほど熱い。これ絶対真っ赤になってる。鏡を見るまでもないほどわかりきっている。
◇
「学生を…満喫した…!!」
休日丸々1日、友達や先輩と遊んだなんて体験生まれて初めてだった。…こんなに楽しいだなんて考えたこともなかった。あと
「エマ先輩の妹だと聞いていたから良い奴だろうとは思っていたが君は俺の思っていた以上に良いやつだな!きっとそんな君やお姉さんに慕われている母上はとても素晴らしい方だったんだな」
と、初対面で笑いながらそう言ってくれたノエルズ先輩と知り合えたのも嬉しい。
ドゥエロの試合とかで見かけたり噂に聞いたりしていたし優しそうな人とは思ったりはしていた。その予想通り…いや。予想以上に優しい人だった。…バンブーとか、竹がどうのとか、ちょっとよくわからない事言ってたりするところも沢山あるけれども。
「楽しかった」
不意にマッシュ君が呟いた。みんな一斉にマッシュ君を見る。
「友達とこうやって遊ぶの初めてだからさ。またみんなでこようね」
と、いつも通りの無表情で言った。それを聞きみんなで笑いあって
「うん」
「当たり前だろ!!」
「きましょう!」
「次は妹も一緒だ」
「竹」
と、みんなで言い合った。
…私も、次来るときはエマも誘って来たいな。と、先程みんなで撮った写真を見つめながら思った。
「ルーナ!お前、魔法不全者と仲良くしているというのは本当か?!何を考えているんだ!」
どれだけシャルロット家の名誉を汚せば気が済むんだと怒鳴っているこの人の話をいつまで聞いていればいいんだろう。その考えに埋め尽くされそうだ。
マッシュ君の魔法不全の話は一般的にはまだバレていない。だけれども魔法省の人達がわざわざこの男にも連絡してきたらしい。余計なことをしてくれる。面倒くさい。思わず欠伸をしてしまった。
「なんだその態度は!お前はいつもいつも…」
そんな私の態度が気に食わなかったらしく、声を荒げながら説教してくる。鬱陶しい。
「お話はそれだけですか?私今日は大切な予定があるので失礼させていただきたいのですが」
と文句を言うと、更に怒鳴って来た。
「何度も言っているだろ。付き合う人間は家柄が素晴らしい者にしろと。なのに魔法不全者や貧乏人や落ちこぼれにとどうして碌でもないやつとばかり関わろうとするんだ!少しは私の立場というものを…」
「私の立場?自分の娘のお目付け役であった女性に手を出した挙句、子供まで産ませた禄でもないご当主様の立場とはなんですか」
怒鳴っている目の前の人の言葉を遮り言葉を発する。と、やっと押し黙った。
やっと静かになった。良かった。ちらりと時計を見やる。あぁ、大変だ。約束の時間に遅れてしまう。
「お話はもうよろしいですね。私はご当主様のくだらないお話に付き合っているほど暇ではないので失礼させていただきますわ」
御機嫌よう、お父様。と、嫌味たっぷりに伝えると顔を真っ赤にして怒鳴られたが無視して部屋を後にする。その際に使用人に引き留められたがそれも無視した。
何がシャルロット家の名誉だ。そんなくだらないもののことなんて知ったこっちゃないわクソジジイ。
◇
あぁ、もう本当に嫌になる。実家に帰るといっつもこれだ。最悪。あんな男と血が繋がっているだなんて考えたくもない。腹立たしい。家の名誉がどうだとか、私の立場がどうだのとか、付き合う人間はどうだのとか。いっつも同じことばかり。くだらない。夜会に行った時もそんなくだらない話ばかり聞こえて来るし、貴族って言うのはどこまでいってもくだらない。早く滅びればいいのに。
と、まぁ今日はこんなこと考えるのはやめよう。そんなことよりも今日は…
「おっ来たな、ルーナちゃぁぁぁぁぁん!!!」
今日はみんなと出かけるんだもの。待ち合わせ場所へ向かうと、私の姿を確認したらしいドット君の声が聞こえてきた。
「おまた…せ、えっ…」
おまたせ、と挨拶しようとして初めてドット君の方へ目を向けて思わず絶句する。目の前に広がっている光景が、あまりにもカオスすぎて。
今から戦にでも行くの?と聞いてしまいたくなるような甲冑に身を包んでいるドット君に、トレーニング着とトレーニング用のコロコロでトレーニングしながら「ルーナちゃんおはよー。今日は楽しもうねー」と言っているマッシュ君。一目みただけだと普通の恰好(かなりのイケメン。…本当にイケメンだな。なんなのこの人。腹立つ)だけどもインナーにドデカいアンナちゃんのプリントされたTシャツを着て「今日も可愛いな、妹よ!」と話しかけているランス君。…ナニコレ。えっ私、今からこの人達と出かけるの?いや…いやいやいやいやいや!!!無理無理無理無理無理!!帰る!!!と、踵を返そうとすると「ルーナちゃん…!お願い。僕を1人にしないで…!」いつの間にか背後まで来ていたフィン君にガシッと肩を掴まれて、悲痛な顔と声で懇願され、腹をくくってみんなと出かけることに決めた。
◇
「ルーナちゃんて町で遊んだことあるのか?」
貴族のお嬢様ってあんまこういうとこで遊んだりするイメージねぇんだけど、とドット君に聞かれた考えてみる。
「あまりないかも。貴族だからっていうか…そもそも私が単純に引きこもり気質だからっていう方が大きい気がするけど…」
休みの日は出かけるよりも部屋に籠って本を読んでいるか寝ているか藁人形を作ってるかのことが多いし…と答えると
「そっかー、本読んでるか寝てるか藁人形作ってるのか。なんかルーナちゃんっぽい…は?藁人形?」
「藁人形?!」
「わら…なんで」
ドット君とフィン君とマッシュ君につっこまれた。私何か変なこと言ったかしら。
「こいつ、昔からオカルトものが大好きなんだ。幽霊だとか妖怪だとか呪いだとかまじないだとか宇宙人だとか」
と、ランス君が3人に説明する。
「宇宙人は興味ないってば。何度も言ってるでしょ」
幽霊とか妖怪とかそういうのが好きなの。都市伝説とか!と弁明するが、「大差ないだろ」と一蹴される。大差あるってば。何度も言っているのに。
「そ、そなのか…。ま、まぁとりあえず今日は目一杯楽しもうな!俺が町を案内してやるよ。そうそう、マーチェット通りにはさ、有名な遊びがあんだよ」
ほらあれ!とドット君が屋台を指差しながら言う。指差す先にはコアラが台に座らせている出店だある。
「くしゃみコアラのダーツです。くしゃみコアラは鼻水が固形化するからこよりを使ってくしゃみさせて鼻水でダーツするんだ」
という説明で興味を持ったらしくマッシュ君がさっそく「やってみよう」とこよみでコアラの鼻を擽る。
「まぁ初心者には的に当てることすら難しいだろうけど」
と、ドヤ顔で言うドット君をそれフラグなんじゃ…と思いながら見ていた次の瞬間。ドット君の脳天に固形になった鼻水がずんっ!という鈍い音と共に刺さった。ドット君は口から血を吐いた。あーあ…
「ごめんドット君」
謝るマッシュ君に対し震える声で「まぁ…まぁ…初めてだしな」と言ってはいるが、その顔はすごく怒っている。
そして案の定。やり返すドット君と飛びつき腕十字をキメるマッシュ君。2人の喧嘩がスタートした。そんな2人の様子を見ると、ランス君が呆れた様に溜息を吐いて「行くぞ」と私とフィン君に声を掛けて歩き始めた。それに続いて私とフィン君も「…うん」と返事をして、2人を置き去りにして歩き出した。
◇
あの後私達は神覚者試験に向けて杖を新調したいというランス君の申し出で杖屋を見に行った。の、だが。結局買わなかった。とりあえず改めてマッシュ・バーンデッドという人間が、ヤバい人だっていうことはよくわかった。なんで1000年誰も持つことが出来なかったって言う杖をあっさり持ててしまうのよ。お店のお爺さんが杖の説明を始めた瞬間からもう嫌な予感はしていたけれども案の定の結果過ぎてどんな顔すればいいのかわからなかったわ。すごいとか通り越して最早怖い。これで魔法不全とか何かの間違いだと誰かに言って欲しいレベルだわ…。
「ルーナちゃんどうかしたんですか?なんだかすごくげっそりとしているように見えるんですけど…」
先程の杖屋での出来事を思い返していたらとても疲れているように見えたらしい。後から合流してきたレモンちゃんが心配そうに声を掛けてきた。
「大丈夫。少し考え事していただけよ」
そう答えるとレモンちゃんは「良かったー」と安心したように言う。
「ねぇルーナちゃん。このヘアアクセサリー、ルーナちゃんにとても似合うと思うんですけどどうですか?」
そういうレモンちゃんの手には、シルバーと紫と水色の使われたとても綺麗なヘアアクセサリーがある。それを私に見せて来る。
「わっ綺麗!でもこれ、私に似合うかな…?」
なんだか少し大人っぽすぎるような気がするのだけど…というと
「そんなことないですよ、似合いますよ!ルーナちゃん、可愛いけれども美人ですし。それに髪だって、艶があって色素が薄くてふわふわしていてすごくきれいだからきっとこのヘアアクセサリーがとても映えますよ」
と、なんだかべた褒めされて嬉しい半面かなり照れ臭い。小さい頃お母さんに『ルーナの髪はとても綺麗で指通りも触り心地も良くて素敵ね。お母さんルーナの髪だーい好き』と褒められて以来、髪の手入れには何よりも手間と時間をかけた甲斐があったというところだろうか。
…ヘアアクセサリーどうしようかなぁ。そういえば最近服とかヘアアクセサリーとか買ってないな。久しぶりに買ってしまうか?どうしよう…と言いながら迷っている私のことをレモンちゃんが微笑ましそうに眺めている。
「おい。そろそろ行くぞ。…それ買うのか」
全く動く気配のない私とレモンちゃんにしびれを切らしたのか、ランス君が声を掛けてきた。
「ちょっと迷ってて…」
「買っちゃいましょうよー。ルーナちゃんに絶対に似合いますよー。ねっ!ランス君もそう思うでしょ?」
と、レモンちゃんが私の手に合ったヘアアクセサリーをランス君に渡す。するとランス君はじっとヘアアクセサリーを黙って見つめる。
「欲しいのか」
と、私に問い掛けてきた。どうしようか迷っていると答えると「そうか…」と言った。そして
「すみません。これください」
と、レジへヘアアクセサリーを持っていき、店員さんに渡している。…。……って、えっ?!
「ラ、ランス君!!」
慌てて駆け寄って行き
「い、良いって悪いって。か、買うなら自分で…!」
「あ?もう買っちまったぞ。ほらよ」
自分で買うと言ったが時すでに遅し。ランス君は会計を終え、ヘアアクセサリーを私に渡してきた。
「いや、あの…!お、お金払う…」
「いらねぇ。それは俺がお前にあげたいと思ったから買ったんだ。黙って受け取れ」
さっさと行くぞ、と言い残してスタスタと先に店を出て行ってしまった。
「ルーナちゃん…!良かったですね!!」
レモンちゃんに思い切り抱きしめられた。顔が驚くほど熱い。これ絶対真っ赤になってる。鏡を見るまでもないほどわかりきっている。
◇
「学生を…満喫した…!!」
休日丸々1日、友達や先輩と遊んだなんて体験生まれて初めてだった。…こんなに楽しいだなんて考えたこともなかった。あと
「エマ先輩の妹だと聞いていたから良い奴だろうとは思っていたが君は俺の思っていた以上に良いやつだな!きっとそんな君やお姉さんに慕われている母上はとても素晴らしい方だったんだな」
と、初対面で笑いながらそう言ってくれたノエルズ先輩と知り合えたのも嬉しい。
ドゥエロの試合とかで見かけたり噂に聞いたりしていたし優しそうな人とは思ったりはしていた。その予想通り…いや。予想以上に優しい人だった。…バンブーとか、竹がどうのとか、ちょっとよくわからない事言ってたりするところも沢山あるけれども。
「楽しかった」
不意にマッシュ君が呟いた。みんな一斉にマッシュ君を見る。
「友達とこうやって遊ぶの初めてだからさ。またみんなでこようね」
と、いつも通りの無表情で言った。それを聞きみんなで笑いあって
「うん」
「当たり前だろ!!」
「きましょう!」
「次は妹も一緒だ」
「竹」
と、みんなで言い合った。
…私も、次来るときはエマも誘って来たいな。と、先程みんなで撮った写真を見つめながら思った。