万有引力には逆らえない
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「すごいげっそりしてる。随分手痛くやられたみたいだね」
登校して来た私を見たカルパッチョ君の第一声である。今日も今日とて言葉の切れ味が鋭い。
「カルパッチョ君…私が何しでかしたか知ってるの?」
「アドラの奴らとレアンに乗り込んで格上相手に挑んだら殺されかけたんでしょ」
みんな噂してた、と。大体あってる。噂になんてされてしまっていたのか。
「マカロン先輩が珍しく怒ってた。それ以上に心配してたっぽい」
「…みたいね。さっそく呼び出されて諭されたわ」
マカロン先輩に「ルーナちゃん。私、貴女の母親思いなところ好きよ。でも。お母様のことを大切に思っているのだったら尚更。自分の行動に気をつけなさい」と。そう言われて改めて、昨日の自分の行動がどれほど愚かなことだったのか思い知った。
「母親のこと貶されたの?」
不意にカルパッチョ君に問い掛けられた。
「えっ…」
「格上相手に。それでブチギレて戦い仕掛けて返り討ちに合ったの?」
カルパッチョ君が再び尋ねて来る。
「なんでわかったの…?ひょっとしてそこも噂になってたの…?」
もしくはマカロン先輩に教えてもらったのかと聞くと聞いていないし噂にもなっていないとのこと。ならどうしてわかったのかと不思議に思って首を傾げていると
「…君はアホでなんでも魔法で押し通せばいいって脳筋よりな考えを持ってるとこはあるけどさ」
あ、アホで脳筋?!私そんな風に思われてたの?!というと「うん」と、さも当たり前の様に返された。
「けど。バカではないし、頭を使えないわけでも、自分の力量を計れないわけでもない。基本的に冷静だし。人と戦うことになったら大抵の奴のことはその冷静さを欠くことなく叩き潰せるし、僕やマカロン先輩みたいな格上だってわかってる相手に無闇矢鱈に絡んだりしない」
淡々と、言う。こ、これは褒められてるの…?
「な、何が言いたいの…?」
「君さ。知ってる?君自身の最大の弱点」
じっと、いつも通り何を考えているのかわからない表情と、光の宿らない目で見つめながら問い掛けられる。私自身の最大の弱点…?そんなの、わかりきっている。
「身長が低くて体格に恵まれてないから物理攻撃に弱い」
「違う」
自信満々で答えたら即座に否定された。
身長のことじゃないの…?それ以外の弱点なんて全くわからない。あっもしかして!
「料理がヘタク…」
「それ戦い関係ないだろ。そういうところがアホなんだよ」
確かに君の料理は見るからにヤバいけどさ、と付け足された。み、見るからにヤバい…?えっ私の料理、そこまで言われるほど酷いの…?そりゃまぁ少し苦手ではあるけどそこまで言う…?
「……やっぱ妾の娘ってダメだね。母親がまともじゃないから君もそんななんだ」
カルパッチョ君が呆れた様に言う。そう言われた瞬間、頭に血がのぼる様な感覚を覚えた。
「そんなことないわ!お母さんは!優しくて、美人で聡明で、手先が器用で、歌も料理も上手くて、裁縫だって出来てとても…!」
「それだよ」
声を荒げながら否定しようとしたら、遮られた。
「えっ…」
「君の最大の弱点はそれ。母親のことを少しでも悪く言われるとすぐカッとなる」
お母さんのことを言われると…?
「中等部の頃からずっと思ってた」
きょとんとしている私のことを無視してカルパッチョ君は続ける。
「自分のことは何言われても動じない。ごちゃごちゃ言ってくるやつのことは鼻で笑って相手にすらしない。そのくせ、母親のことを言われた時は普段のそんな態度が嘘みたいに冷静じゃなくなって怒り狂うやつだなって」
よく言ったら母親思い、悪く言ったらマザコンの考えなしなアホだなって、そう思ってたと、ずずっとお茶を飲みながら言われる。
「全然自覚ない…」
と呟くと、「だと思った」と言われた。
「…私、そんなにお母さんのこと悪く言われると冷静さを欠いてる…?」
「少なくとも僕にはそう見えてる」
振り返ってみたら?自分のこと、と言われ少し考えてみる。…どうしよう。思い当たる節沢山ある。
「カルパッチョ君て、意外と人のこと見てるのね…」
他人には興味ないと思ってたわ…というと、「他人に興味ないっていうか雑魚に興味ないだけ」とのこと。ということは、私は雑魚と思われていない、ということでいいのだろうか。
◇
「ルーナちゃん…具合とかもう大丈夫ですか…?」
昼食を採るため食堂へ行くと、マッシュ君達も来ていた。私に気付くとレモンちゃんとドット君(包帯でぐるぐる巻きで顔とか見えないけど多分)が心配そうに見つめながら尋ねて来る。
「うん、もう大丈夫。ごめんね、心配かけてしまって」
と、私が返答すると「良かったですほんと…」そうホッとしたような顔をしてニコッと笑った。そして
「なんで!なんで無茶したんですか!!こわかったんですよ?!ルーナちゃんが!!ルーナちゃんが死んじゃったらどうしようかと思いました!!!バカバカバカ!!!ルーナちゃんのバカァァァァァ!!!!!」
私の肩をガシッと掴み、ぐわんぐわんと揺らし、泣き喚きながら一息で捲し立てられた。レモンちゃんと一緒になってドット君も何か言っている。口元も包帯で巻かれているから何を言っているのかはわからないけれども。だけど怒っていることは伝わってくる。
て、ていうか気持ち悪くなって来た…。
「レ、レモンちゃん、ドット君落ち着いて!!気持ちはわからなくもないけど落ち着いて!!」
ルーナちゃん白目剥いてるからぁぁぁ!!と遠退きかけてる意識の中フィン君の声が聞こえてきた。ハッとしたらしく、突然肩を離された。あっヤバイ倒れる…!レモンちゃんの「あぁぁぁぁぁ、ごめんなさぁぁぁぁぁぁい!!!」という絶叫が響く。転んで頭打つのかな…痛いだろうなぁ…下手したら死ぬ?え、せっかく生還出来たのに?などと考えていると、ポスっという音と共に何かに支えらえれて転ぶのは回避することが出来た。誰かが支えてくれているのだろう。お礼を言わないとと振り返ると、背後にランス・クラウン。
「わっひ、きゃあぁぁぁ?!」
思わず訳の分からない悲鳴を上げてしまった。
「なんだよその奇声…」
つーかうるせぇ、耳壊れるわと文句を言われた。消え入りそうな声でごめんというと「気をつけろよ」と言って体勢を直してくれた。
「…もう大丈夫なんだな」
「えっう、うん…」
ランス君に尋ねられて肯定する。と、頭に手を置かれた。あ、頭?!な、撫で、撫でられてる…!か、顔が…!顔が熱い!今絶対真っ赤…って、あっ?!
「い、イタッ!イタッ、イタイイタイイタイ!!ランス君痛い!!」
頭を撫でられるのかと思いきや、みしみしっという音がしそうな勢いで鷲掴みにされた。
「お前、無茶するなって言っただろ」
「えっいや、言われてな…」
「口答えするな」
どれだけ心配したと思った、ふざけるなよ、死んでても可笑しくなかったんだぞなどなど、淡々と文句を言われる。言いながら頭を掴む手にじわじわと力を込めて来る。
ラ、ランス君も落ち着いてー!とフィン君が言うが、無視している。助けて…!と思いながらチラッとマッシュ君を見る。
「……ランス君」
するとマッシュ君がランス君の隣へ行き、彼の肩をぽんっと叩く。それに対してランス君が「あ?」と言い、私の頭から手を離した。た、助かっ…
「グェッ」
突然口に丸ごとシュークリームを突っ込まれた。ち、窒息する…!
「あぁぁぁぁぁッ!!!マッシュ君そんな、私というものがありながらぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」
「落ち着いてぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ルーナちゃん。僕も怒ってるよ」
絶叫するレモンちゃんとフィン君の様子を気にも留めずに言う。
「フェッ…」
「今回のこと。僕もすごく怒ってる」
マッシュ君がじっと、私のことを見つめながら言う。いつも通りの無表情で。
…すごく、責められているような気になってくる。真っ直ぐと見つめられて、とても怖い。だけど、
「うん。みんな、心配かけてしまって、本当に本当にごめんなさい。あと、ありがとう」
だけど、私は幸せ者だ。こんな風に心配してくれて、忠告してくれたり怒ったりしてくれる先輩や友人、自分では全く気が付くことが出来ていなかった弱点に気が付いてくれて指摘してくれる同級生に、こんなにも沢山囲まれているなんて。
今までの人生で、こんなに人間関係で恵まれていたことなんてあっただろうか。なかったように思う。
この幸せをしっかりと噛み締めて、そしてこの人達に見捨てられたりしないように、ちゃんと成長してみんなと一緒にいて恥ずかしくないような人間になろう。
登校して来た私を見たカルパッチョ君の第一声である。今日も今日とて言葉の切れ味が鋭い。
「カルパッチョ君…私が何しでかしたか知ってるの?」
「アドラの奴らとレアンに乗り込んで格上相手に挑んだら殺されかけたんでしょ」
みんな噂してた、と。大体あってる。噂になんてされてしまっていたのか。
「マカロン先輩が珍しく怒ってた。それ以上に心配してたっぽい」
「…みたいね。さっそく呼び出されて諭されたわ」
マカロン先輩に「ルーナちゃん。私、貴女の母親思いなところ好きよ。でも。お母様のことを大切に思っているのだったら尚更。自分の行動に気をつけなさい」と。そう言われて改めて、昨日の自分の行動がどれほど愚かなことだったのか思い知った。
「母親のこと貶されたの?」
不意にカルパッチョ君に問い掛けられた。
「えっ…」
「格上相手に。それでブチギレて戦い仕掛けて返り討ちに合ったの?」
カルパッチョ君が再び尋ねて来る。
「なんでわかったの…?ひょっとしてそこも噂になってたの…?」
もしくはマカロン先輩に教えてもらったのかと聞くと聞いていないし噂にもなっていないとのこと。ならどうしてわかったのかと不思議に思って首を傾げていると
「…君はアホでなんでも魔法で押し通せばいいって脳筋よりな考えを持ってるとこはあるけどさ」
あ、アホで脳筋?!私そんな風に思われてたの?!というと「うん」と、さも当たり前の様に返された。
「けど。バカではないし、頭を使えないわけでも、自分の力量を計れないわけでもない。基本的に冷静だし。人と戦うことになったら大抵の奴のことはその冷静さを欠くことなく叩き潰せるし、僕やマカロン先輩みたいな格上だってわかってる相手に無闇矢鱈に絡んだりしない」
淡々と、言う。こ、これは褒められてるの…?
「な、何が言いたいの…?」
「君さ。知ってる?君自身の最大の弱点」
じっと、いつも通り何を考えているのかわからない表情と、光の宿らない目で見つめながら問い掛けられる。私自身の最大の弱点…?そんなの、わかりきっている。
「身長が低くて体格に恵まれてないから物理攻撃に弱い」
「違う」
自信満々で答えたら即座に否定された。
身長のことじゃないの…?それ以外の弱点なんて全くわからない。あっもしかして!
「料理がヘタク…」
「それ戦い関係ないだろ。そういうところがアホなんだよ」
確かに君の料理は見るからにヤバいけどさ、と付け足された。み、見るからにヤバい…?えっ私の料理、そこまで言われるほど酷いの…?そりゃまぁ少し苦手ではあるけどそこまで言う…?
「……やっぱ妾の娘ってダメだね。母親がまともじゃないから君もそんななんだ」
カルパッチョ君が呆れた様に言う。そう言われた瞬間、頭に血がのぼる様な感覚を覚えた。
「そんなことないわ!お母さんは!優しくて、美人で聡明で、手先が器用で、歌も料理も上手くて、裁縫だって出来てとても…!」
「それだよ」
声を荒げながら否定しようとしたら、遮られた。
「えっ…」
「君の最大の弱点はそれ。母親のことを少しでも悪く言われるとすぐカッとなる」
お母さんのことを言われると…?
「中等部の頃からずっと思ってた」
きょとんとしている私のことを無視してカルパッチョ君は続ける。
「自分のことは何言われても動じない。ごちゃごちゃ言ってくるやつのことは鼻で笑って相手にすらしない。そのくせ、母親のことを言われた時は普段のそんな態度が嘘みたいに冷静じゃなくなって怒り狂うやつだなって」
よく言ったら母親思い、悪く言ったらマザコンの考えなしなアホだなって、そう思ってたと、ずずっとお茶を飲みながら言われる。
「全然自覚ない…」
と呟くと、「だと思った」と言われた。
「…私、そんなにお母さんのこと悪く言われると冷静さを欠いてる…?」
「少なくとも僕にはそう見えてる」
振り返ってみたら?自分のこと、と言われ少し考えてみる。…どうしよう。思い当たる節沢山ある。
「カルパッチョ君て、意外と人のこと見てるのね…」
他人には興味ないと思ってたわ…というと、「他人に興味ないっていうか雑魚に興味ないだけ」とのこと。ということは、私は雑魚と思われていない、ということでいいのだろうか。
◇
「ルーナちゃん…具合とかもう大丈夫ですか…?」
昼食を採るため食堂へ行くと、マッシュ君達も来ていた。私に気付くとレモンちゃんとドット君(包帯でぐるぐる巻きで顔とか見えないけど多分)が心配そうに見つめながら尋ねて来る。
「うん、もう大丈夫。ごめんね、心配かけてしまって」
と、私が返答すると「良かったですほんと…」そうホッとしたような顔をしてニコッと笑った。そして
「なんで!なんで無茶したんですか!!こわかったんですよ?!ルーナちゃんが!!ルーナちゃんが死んじゃったらどうしようかと思いました!!!バカバカバカ!!!ルーナちゃんのバカァァァァァ!!!!!」
私の肩をガシッと掴み、ぐわんぐわんと揺らし、泣き喚きながら一息で捲し立てられた。レモンちゃんと一緒になってドット君も何か言っている。口元も包帯で巻かれているから何を言っているのかはわからないけれども。だけど怒っていることは伝わってくる。
て、ていうか気持ち悪くなって来た…。
「レ、レモンちゃん、ドット君落ち着いて!!気持ちはわからなくもないけど落ち着いて!!」
ルーナちゃん白目剥いてるからぁぁぁ!!と遠退きかけてる意識の中フィン君の声が聞こえてきた。ハッとしたらしく、突然肩を離された。あっヤバイ倒れる…!レモンちゃんの「あぁぁぁぁぁ、ごめんなさぁぁぁぁぁぁい!!!」という絶叫が響く。転んで頭打つのかな…痛いだろうなぁ…下手したら死ぬ?え、せっかく生還出来たのに?などと考えていると、ポスっという音と共に何かに支えらえれて転ぶのは回避することが出来た。誰かが支えてくれているのだろう。お礼を言わないとと振り返ると、背後にランス・クラウン。
「わっひ、きゃあぁぁぁ?!」
思わず訳の分からない悲鳴を上げてしまった。
「なんだよその奇声…」
つーかうるせぇ、耳壊れるわと文句を言われた。消え入りそうな声でごめんというと「気をつけろよ」と言って体勢を直してくれた。
「…もう大丈夫なんだな」
「えっう、うん…」
ランス君に尋ねられて肯定する。と、頭に手を置かれた。あ、頭?!な、撫で、撫でられてる…!か、顔が…!顔が熱い!今絶対真っ赤…って、あっ?!
「い、イタッ!イタッ、イタイイタイイタイ!!ランス君痛い!!」
頭を撫でられるのかと思いきや、みしみしっという音がしそうな勢いで鷲掴みにされた。
「お前、無茶するなって言っただろ」
「えっいや、言われてな…」
「口答えするな」
どれだけ心配したと思った、ふざけるなよ、死んでても可笑しくなかったんだぞなどなど、淡々と文句を言われる。言いながら頭を掴む手にじわじわと力を込めて来る。
ラ、ランス君も落ち着いてー!とフィン君が言うが、無視している。助けて…!と思いながらチラッとマッシュ君を見る。
「……ランス君」
するとマッシュ君がランス君の隣へ行き、彼の肩をぽんっと叩く。それに対してランス君が「あ?」と言い、私の頭から手を離した。た、助かっ…
「グェッ」
突然口に丸ごとシュークリームを突っ込まれた。ち、窒息する…!
「あぁぁぁぁぁッ!!!マッシュ君そんな、私というものがありながらぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」
「落ち着いてぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ルーナちゃん。僕も怒ってるよ」
絶叫するレモンちゃんとフィン君の様子を気にも留めずに言う。
「フェッ…」
「今回のこと。僕もすごく怒ってる」
マッシュ君がじっと、私のことを見つめながら言う。いつも通りの無表情で。
…すごく、責められているような気になってくる。真っ直ぐと見つめられて、とても怖い。だけど、
「うん。みんな、心配かけてしまって、本当に本当にごめんなさい。あと、ありがとう」
だけど、私は幸せ者だ。こんな風に心配してくれて、忠告してくれたり怒ったりしてくれる先輩や友人、自分では全く気が付くことが出来ていなかった弱点に気が付いてくれて指摘してくれる同級生に、こんなにも沢山囲まれているなんて。
今までの人生で、こんなに人間関係で恵まれていたことなんてあっただろうか。なかったように思う。
この幸せをしっかりと噛み締めて、そしてこの人達に見捨てられたりしないように、ちゃんと成長してみんなと一緒にいて恥ずかしくないような人間になろう。