鳥籠の中夢視る
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オールマイトが来たりなんてしたら、もう勝ち目なんてないだろう。そもそも私が戦える訳なんてないのだから先に帰らせて貰いたい。本が吹き飛ばされてしまったじゃないか。
「待ったよヒーロー。社会のゴミめ」
本を拾っていると、死柄木の嬉しそうな声が聞こえてきた。他の人達はざわざわとしている。オールマイトの存在に気圧されているみたい。…そんな反応するのなら来なければ良いのに。馬鹿な人達。あっという間に制圧されている。どれだけ自分を過大評価していたのだか。いい歳こいた大人が呆れる。…この場にいるということはオールマイトや雄英にとって私もその中の1人ということになるのか。溜息を吐きたくなる。そんなことを考えていると、いつの間にかオールマイトが目の前に———来たかと思った次の瞬間、強烈な痛みが走った。殴られたらしい。そう気が付いた時にはオールマイトが先程脳無に殺されかけていた人のことを救出していた。殴られたであろう場所が痛い。今日は最悪な日だ。
眉間に皺が寄っているであろう私とは対照的に、死柄木は楽しそうだ。まるで子供みたい。元々子供みたいな人だけども。こうなっては本当にオールマイトを殺すまで帰れなさそうだ。
『オールマイトは今とても弱っているんだ。だから今が狙い目だ。綴、弔に協力してあげてくれ』
あの人の言葉を思い出し、本日何度目かの溜息を吐きそうになる。何が弱っているよ。弱っていてこんなに強いなんて冗談じゃない。
死柄木はというと、相変わらず楽しそうに、そして得意げになりながら脳無の説明をしている。…あんな悍ましいもののことをどうしてそんな調子で話せるのだか。師匠が師匠なら弟子も弟子、と言ったところだろうか。あの人と仲間だと思われてしまうなんて心外だ。
…黒霧にもっと強く文句言って強引にでも帰ればよかった。お腹が痛い。どれだけ馬鹿力なの、オールマイトって人は。No.1ヒーローは伊達じゃないっていうことか。早く帰りたい。黒霧…に頼みたいけれども無理そうだ。今は脳無と一緒になってオールマイトを追い詰めているところだった。いつの間に追い詰めたのだろう。
黒霧が私の中に臓物だらけになるのは嫌だがなどと言っている。勘弁してよ。通るたびにオールマイトの臓物があるかもと考えてしまうじゃないか。溜息を吐きながら脳無と黒霧がオールマイトを嬲り殺そうとしている場面を見つめていると、さっきの緑の男の子が脳無へと向かって行っていた。一応協力した方が良いだろうかと思いノートとペンを取り出して応戦…しようとしたが
「どけやクソガキ!!」
という暴言と共に飛んでやって来た男の子に突き飛ばされ、その拍子にノートとペンを落としてしまった。なんなんだ今日は。
立ち上がりながら服についてしまった埃を掃い、ノートとペンを拾おうとすると、
「!!」
足が氷漬けにされ、身動きを取れなくされた。その拍子にノートとペンを離れた場所に落としてしまった。この氷は…
「手荒な真似しちまって悪いな。また逃げられたらたまらねぇから少しそのまま待ってろ。アイツらどうにかしたら溶かしてやるから」
という言葉とともに、先程保護がどうのとか言っていた男の子が私の視界に入ってきた。足を無理矢理動かそうとしてみるも、全く動かせない。なんとか動かせないかと暴れてみるも、ビクともしない。そんなことしている間に、黒霧は私のことを突き飛ばして来た子に取り押さえられ、脳無はあの男の子に氷漬けにされている。そのためオールマイトが自由に動けるようになってしまった。どう考えても窮地だというのに、死柄木は未だに楽しそうだ。意味の分からない人。わかりたくもないけれど。
こっちに視線を向けてきた死柄木と目が合った。凍らされ、動けずにいる私を見ると呆れたような顔をして
「何してんだよ。役に立たねぇな」
そう言いながら氷に触れ、崩壊の個性で壊した。その様子を見た男の子が苦々しげな顔をしてこちらへ向かって来ようとしたが、オールマイトに止められていた。
「見ろよ。面白くなってきたな。あのガキ共みんなお前と同い年だよな?すげぇな、どいつもこいつも。恥ずかしくなってくるぜ、敵連合」
笑いながらそういう彼は、あの子達のことを凄いだなんて全く思っていないのだろう。適当に言っているだけというのが嫌という程伝わって来る。
黒霧は1人に個性を見破られてしまい動きを封じられ、脳無はあの子に凍らされている状態だ。この状況でどうして笑っていられるのだろう。
「黒霧と脳無、助けないの?」
「必要ない。アイツらは自力でなんとかするだろ。……つかなんだ。あのガキ、さっきからやけにお前のこと見てるな」
死柄木の視線の先に目をやると、あの男の子があの氷のような冷たい目で睨みつけて来ていた。
「やけに熱のこもった視線向けてくるな。恋でもされたか?罪な女だねー、お前」
嘲笑うようにしながら死柄木は言う。嫌な人。思わず眉間に皺が寄る。
突然首元に圧迫感が襲ってきた。
「なんだよ、その目」
言いたいことあるなら言えば、そう言いながら私につけている首輪を引っ張っている。私の反応が気に食わなかったらしい。不機嫌な様子を隠そうともしない。
「おい。なんか言え」
ギリッ…と、首輪を引っ張りながら睨みつけられた。何か言え?言ったところで更に機嫌を損ねて痛い目に合わせてくるだけじゃない。
「っな、なん、でも、ない……!」
首を圧迫されたまま、途切れ途切れになりながらやっとの思いで言葉を発した。
首輪から手を離され息が出来る様になったと同時に、背中に痛みが走った。投げ捨てられた拍子に背後にあった壁にぶつかった様だ。
「ほんっと可愛くねぇガキだよな、お前」
そう言いながら咳き込む私のことを冷たい目で見下ろす。ゴミを見る様な、虫ケラでも見るみたいな目。
ゲホゲホと噎せる私を見飽きたのか、すぐにオールマイトの方へと歩みを進めた。
ふと、視線を感じた。視線の方を見てみると、オールマイトの近くにいる4人がじっと私のことを見ていた。3人は訝しんでいるような顔で、あの子は眉間に皺を寄せ、心底不快だとでも言いたそうな顔で睨みつけてきている。どうしてあんな顔をするのかしら。……まぁ、どうでもいいか。どう思われていようが、私には関係ない。4人の視線から逃れるような思いで、死柄木の方に目を移した。
「脳無」
死柄木に呼ばれると、脳無はいとも容易く氷を破壊した。オールマイトが生徒達に下がるように指示を飛ばす。
身体が割れても動いている脳無に対し驚くオールマイト達に死柄木は高性能のサンドバッグ人間だなどと説明している。……本当、悪趣味な人達。
「まずは出入口の奪還だ。行け、脳無」
そう命令されると、脳無が黒霧を取り押さえている男の子へと襲い掛かる。
「かっちゃん!!!!!」
緑頭の子の声が響き渡る。かっちゃん…あの子のあだ名かしら。そんな風に呼ぶということはきっと親しい関係なんでしょうね。そんな仲の人を目の前で失うなんて気の毒に思いつつもこれで黒霧を取り返し帰れるなどと考えていたが、脳無に襲われた子はいつの間にか緑頭の子の隣にいた。躱したの……?どうやら違うみたい。ギリギリのところでオールマイトが助け出した様子だ。この場にいる誰1人、見えなかったらしい。
「加減を知らんのか…」
オールマイトが息を切らしながら言う。そんな彼に死柄木は楽しそうに
「仲間を助けるためさ。仕方ないだろ」
語りかける。
「さっきだってその…地味な奴。アイツが俺に殴り掛かろうとしたぜ。それからそこの2人。爆発の個性使ってた奴はコイツを突き飛ばしてた。紅白頭の方は足を氷漬けにしてた」
そう言いながら私の頭を乱暴に掴んで引き摺りながら言う。
「ひっでぇよな、女の子だぜ、コイツ。どういう神経してんだよ」
ニヤニヤと笑い、私の頭を乱暴に撫でながら続ける。痛いったらありゃしない。どういう神経してるんだよなんて、貴方にだけは言われたくないだろうに。離れ様としてみるが、力でこの人に敵うわけもなくされるがままになる。
「誰がために振るわれる暴力は美談になるんだろ、ヒーロー」
そういうと死柄木は私の頭から手を離し、大袈裟に身振り手振りしながら語り始める。
「俺はな、オールマイト!怒ってるんだ!!同じ暴力がヒーローとヴィランでカテゴライズされ、善し悪しが決まるこの世の中に!何が平和の象徴だ!!所詮抑圧のための暴力装置だお前は!暴力は暴力しか生まないのだと、お前を殺すことで世にしらしめるのさ!」
何をそれっぽいこと言っているのだか。貴方はただ自分の気に食わないものを気の済むまで破壊し続けたいだけじゃない。どこまでも幼稚で子供っぽい、癇癪持ちの嫌な人。大嫌い。
「めちゃくちゃだな。そういう思想犯の目は静かに燃ゆるもの。自分が楽しみたいだけだろ、嘘つきめ」
オールマイトの言葉に対し死柄木は「バレるの早…」と愉快そうに笑いながら呟く様子にまたしても溜息が出そうになる。
「3対5だ」
紅白頭のあの子が死柄木に向かって言う。
「あ?4対5だろ。個性強いだけでこんな簡単な計算も出来ねぇくらい馬鹿で頭空なのか、ガキ」
それに対し死柄木がそう返すと
「そいつは…御伽綴は保護対象だ」
私のことを見つめながらハッキリと言う。どうして私の名前……?
「あ?保護対象?」
「御伽綴…」
「御伽……?」
私が疑問に思うと同時に、死柄木と爆発の個性の子、緑頭の子が各々反応を示した。そして
「どういうことだ綴。お前、あのガキになんか吹き込まれたか」
首に冷たく細い指が掛けられ、ギリギリッと音がするような勢いで絞め上げられ、問い詰められる。そんな様子を見てオールマイト達が一斉にこちらへ向かって来ようとしたが、「脳無、黒霧。片付けろ」そう命令を下し、誰も私達の所へは来れない。
「応えろ。あのガキ、お前のことを保護対象だと言ったぞ。あのガキに逃がしてくれとでも、助けてくれとでも頼んだか?」
徐々に首を絞める力を強めながら、問い掛けてくる。
「ち、がう…!そん、なつも、り、ない……!」
必死に否定するが
「じゃあなんで保護対象だっつってんだよ。なんであのガキ、お前の名前知ってんだよっ?!」
逆鱗に触れてしまった様で、絞め上げられながら怒鳴られる。
「知ら、なっ…!わからなっ……!」
必死に否定しようとするが、喋ろうとすればするほど首を絞められて、まともに声を発することが出来ない。
「ふざけんじゃねぇぞクソガキ。逃げれるとでも思ってんのか?少しでも逃げようとしたらどうなるか。分かってねぇのか?ガキの頃さんざっぱら教えてやったつもりだがまだ分かってなかったんだな」
仮に発することが出来たとしても、死柄木の耳には届かないだろうけど。
殺される━━…そう過ぎった瞬間、背後から凄まじい音が聞こえた。驚いた様に死柄木が私の首から手を離し、振り返る。一気に酸素が肺の中に入り込んで来る。ひたすら咳き込み、息を整える。噎せ続けながら死柄木と同じ方に目を向けると
「ヒーローは常にピンチをぶち壊して行くもの!!ヴィランよ!!こんな言葉を知っているか!?Plus ultra!!」
そう高らかに宣言し、脳無に強烈な一撃をお見舞いし、空の遥か彼方へと葬り去っているオールマイトの姿があった。
「待ったよヒーロー。社会のゴミめ」
本を拾っていると、死柄木の嬉しそうな声が聞こえてきた。他の人達はざわざわとしている。オールマイトの存在に気圧されているみたい。…そんな反応するのなら来なければ良いのに。馬鹿な人達。あっという間に制圧されている。どれだけ自分を過大評価していたのだか。いい歳こいた大人が呆れる。…この場にいるということはオールマイトや雄英にとって私もその中の1人ということになるのか。溜息を吐きたくなる。そんなことを考えていると、いつの間にかオールマイトが目の前に———来たかと思った次の瞬間、強烈な痛みが走った。殴られたらしい。そう気が付いた時にはオールマイトが先程脳無に殺されかけていた人のことを救出していた。殴られたであろう場所が痛い。今日は最悪な日だ。
眉間に皺が寄っているであろう私とは対照的に、死柄木は楽しそうだ。まるで子供みたい。元々子供みたいな人だけども。こうなっては本当にオールマイトを殺すまで帰れなさそうだ。
『オールマイトは今とても弱っているんだ。だから今が狙い目だ。綴、弔に協力してあげてくれ』
あの人の言葉を思い出し、本日何度目かの溜息を吐きそうになる。何が弱っているよ。弱っていてこんなに強いなんて冗談じゃない。
死柄木はというと、相変わらず楽しそうに、そして得意げになりながら脳無の説明をしている。…あんな悍ましいもののことをどうしてそんな調子で話せるのだか。師匠が師匠なら弟子も弟子、と言ったところだろうか。あの人と仲間だと思われてしまうなんて心外だ。
…黒霧にもっと強く文句言って強引にでも帰ればよかった。お腹が痛い。どれだけ馬鹿力なの、オールマイトって人は。No.1ヒーローは伊達じゃないっていうことか。早く帰りたい。黒霧…に頼みたいけれども無理そうだ。今は脳無と一緒になってオールマイトを追い詰めているところだった。いつの間に追い詰めたのだろう。
黒霧が私の中に臓物だらけになるのは嫌だがなどと言っている。勘弁してよ。通るたびにオールマイトの臓物があるかもと考えてしまうじゃないか。溜息を吐きながら脳無と黒霧がオールマイトを嬲り殺そうとしている場面を見つめていると、さっきの緑の男の子が脳無へと向かって行っていた。一応協力した方が良いだろうかと思いノートとペンを取り出して応戦…しようとしたが
「どけやクソガキ!!」
という暴言と共に飛んでやって来た男の子に突き飛ばされ、その拍子にノートとペンを落としてしまった。なんなんだ今日は。
立ち上がりながら服についてしまった埃を掃い、ノートとペンを拾おうとすると、
「!!」
足が氷漬けにされ、身動きを取れなくされた。その拍子にノートとペンを離れた場所に落としてしまった。この氷は…
「手荒な真似しちまって悪いな。また逃げられたらたまらねぇから少しそのまま待ってろ。アイツらどうにかしたら溶かしてやるから」
という言葉とともに、先程保護がどうのとか言っていた男の子が私の視界に入ってきた。足を無理矢理動かそうとしてみるも、全く動かせない。なんとか動かせないかと暴れてみるも、ビクともしない。そんなことしている間に、黒霧は私のことを突き飛ばして来た子に取り押さえられ、脳無はあの男の子に氷漬けにされている。そのためオールマイトが自由に動けるようになってしまった。どう考えても窮地だというのに、死柄木は未だに楽しそうだ。意味の分からない人。わかりたくもないけれど。
こっちに視線を向けてきた死柄木と目が合った。凍らされ、動けずにいる私を見ると呆れたような顔をして
「何してんだよ。役に立たねぇな」
そう言いながら氷に触れ、崩壊の個性で壊した。その様子を見た男の子が苦々しげな顔をしてこちらへ向かって来ようとしたが、オールマイトに止められていた。
「見ろよ。面白くなってきたな。あのガキ共みんなお前と同い年だよな?すげぇな、どいつもこいつも。恥ずかしくなってくるぜ、敵連合」
笑いながらそういう彼は、あの子達のことを凄いだなんて全く思っていないのだろう。適当に言っているだけというのが嫌という程伝わって来る。
黒霧は1人に個性を見破られてしまい動きを封じられ、脳無はあの子に凍らされている状態だ。この状況でどうして笑っていられるのだろう。
「黒霧と脳無、助けないの?」
「必要ない。アイツらは自力でなんとかするだろ。……つかなんだ。あのガキ、さっきからやけにお前のこと見てるな」
死柄木の視線の先に目をやると、あの男の子があの氷のような冷たい目で睨みつけて来ていた。
「やけに熱のこもった視線向けてくるな。恋でもされたか?罪な女だねー、お前」
嘲笑うようにしながら死柄木は言う。嫌な人。思わず眉間に皺が寄る。
突然首元に圧迫感が襲ってきた。
「なんだよ、その目」
言いたいことあるなら言えば、そう言いながら私につけている首輪を引っ張っている。私の反応が気に食わなかったらしい。不機嫌な様子を隠そうともしない。
「おい。なんか言え」
ギリッ…と、首輪を引っ張りながら睨みつけられた。何か言え?言ったところで更に機嫌を損ねて痛い目に合わせてくるだけじゃない。
「っな、なん、でも、ない……!」
首を圧迫されたまま、途切れ途切れになりながらやっとの思いで言葉を発した。
首輪から手を離され息が出来る様になったと同時に、背中に痛みが走った。投げ捨てられた拍子に背後にあった壁にぶつかった様だ。
「ほんっと可愛くねぇガキだよな、お前」
そう言いながら咳き込む私のことを冷たい目で見下ろす。ゴミを見る様な、虫ケラでも見るみたいな目。
ゲホゲホと噎せる私を見飽きたのか、すぐにオールマイトの方へと歩みを進めた。
ふと、視線を感じた。視線の方を見てみると、オールマイトの近くにいる4人がじっと私のことを見ていた。3人は訝しんでいるような顔で、あの子は眉間に皺を寄せ、心底不快だとでも言いたそうな顔で睨みつけてきている。どうしてあんな顔をするのかしら。……まぁ、どうでもいいか。どう思われていようが、私には関係ない。4人の視線から逃れるような思いで、死柄木の方に目を移した。
「脳無」
死柄木に呼ばれると、脳無はいとも容易く氷を破壊した。オールマイトが生徒達に下がるように指示を飛ばす。
身体が割れても動いている脳無に対し驚くオールマイト達に死柄木は高性能のサンドバッグ人間だなどと説明している。……本当、悪趣味な人達。
「まずは出入口の奪還だ。行け、脳無」
そう命令されると、脳無が黒霧を取り押さえている男の子へと襲い掛かる。
「かっちゃん!!!!!」
緑頭の子の声が響き渡る。かっちゃん…あの子のあだ名かしら。そんな風に呼ぶということはきっと親しい関係なんでしょうね。そんな仲の人を目の前で失うなんて気の毒に思いつつもこれで黒霧を取り返し帰れるなどと考えていたが、脳無に襲われた子はいつの間にか緑頭の子の隣にいた。躱したの……?どうやら違うみたい。ギリギリのところでオールマイトが助け出した様子だ。この場にいる誰1人、見えなかったらしい。
「加減を知らんのか…」
オールマイトが息を切らしながら言う。そんな彼に死柄木は楽しそうに
「仲間を助けるためさ。仕方ないだろ」
語りかける。
「さっきだってその…地味な奴。アイツが俺に殴り掛かろうとしたぜ。それからそこの2人。爆発の個性使ってた奴はコイツを突き飛ばしてた。紅白頭の方は足を氷漬けにしてた」
そう言いながら私の頭を乱暴に掴んで引き摺りながら言う。
「ひっでぇよな、女の子だぜ、コイツ。どういう神経してんだよ」
ニヤニヤと笑い、私の頭を乱暴に撫でながら続ける。痛いったらありゃしない。どういう神経してるんだよなんて、貴方にだけは言われたくないだろうに。離れ様としてみるが、力でこの人に敵うわけもなくされるがままになる。
「誰がために振るわれる暴力は美談になるんだろ、ヒーロー」
そういうと死柄木は私の頭から手を離し、大袈裟に身振り手振りしながら語り始める。
「俺はな、オールマイト!怒ってるんだ!!同じ暴力がヒーローとヴィランでカテゴライズされ、善し悪しが決まるこの世の中に!何が平和の象徴だ!!所詮抑圧のための暴力装置だお前は!暴力は暴力しか生まないのだと、お前を殺すことで世にしらしめるのさ!」
何をそれっぽいこと言っているのだか。貴方はただ自分の気に食わないものを気の済むまで破壊し続けたいだけじゃない。どこまでも幼稚で子供っぽい、癇癪持ちの嫌な人。大嫌い。
「めちゃくちゃだな。そういう思想犯の目は静かに燃ゆるもの。自分が楽しみたいだけだろ、嘘つきめ」
オールマイトの言葉に対し死柄木は「バレるの早…」と愉快そうに笑いながら呟く様子にまたしても溜息が出そうになる。
「3対5だ」
紅白頭のあの子が死柄木に向かって言う。
「あ?4対5だろ。個性強いだけでこんな簡単な計算も出来ねぇくらい馬鹿で頭空なのか、ガキ」
それに対し死柄木がそう返すと
「そいつは…御伽綴は保護対象だ」
私のことを見つめながらハッキリと言う。どうして私の名前……?
「あ?保護対象?」
「御伽綴…」
「御伽……?」
私が疑問に思うと同時に、死柄木と爆発の個性の子、緑頭の子が各々反応を示した。そして
「どういうことだ綴。お前、あのガキになんか吹き込まれたか」
首に冷たく細い指が掛けられ、ギリギリッと音がするような勢いで絞め上げられ、問い詰められる。そんな様子を見てオールマイト達が一斉にこちらへ向かって来ようとしたが、「脳無、黒霧。片付けろ」そう命令を下し、誰も私達の所へは来れない。
「応えろ。あのガキ、お前のことを保護対象だと言ったぞ。あのガキに逃がしてくれとでも、助けてくれとでも頼んだか?」
徐々に首を絞める力を強めながら、問い掛けてくる。
「ち、がう…!そん、なつも、り、ない……!」
必死に否定するが
「じゃあなんで保護対象だっつってんだよ。なんであのガキ、お前の名前知ってんだよっ?!」
逆鱗に触れてしまった様で、絞め上げられながら怒鳴られる。
「知ら、なっ…!わからなっ……!」
必死に否定しようとするが、喋ろうとすればするほど首を絞められて、まともに声を発することが出来ない。
「ふざけんじゃねぇぞクソガキ。逃げれるとでも思ってんのか?少しでも逃げようとしたらどうなるか。分かってねぇのか?ガキの頃さんざっぱら教えてやったつもりだがまだ分かってなかったんだな」
仮に発することが出来たとしても、死柄木の耳には届かないだろうけど。
殺される━━…そう過ぎった瞬間、背後から凄まじい音が聞こえた。驚いた様に死柄木が私の首から手を離し、振り返る。一気に酸素が肺の中に入り込んで来る。ひたすら咳き込み、息を整える。噎せ続けながら死柄木と同じ方に目を向けると
「ヒーローは常にピンチをぶち壊して行くもの!!ヴィランよ!!こんな言葉を知っているか!?Plus ultra!!」
そう高らかに宣言し、脳無に強烈な一撃をお見舞いし、空の遥か彼方へと葬り去っているオールマイトの姿があった。