鳥籠の中夢視る
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体育祭は着々と進み、あっという間に1回戦も最後の試合になった。さすがは雄英というべきなのか、強力な個性を持つ人が沢山いる。あの人が雄英に手を出そうとするのはオールマイトがいるから、彼への嫌がらせをしたいためだというのが大半だとは思うけれども、それと同じくらい、魅力的な個性に目をつけて手に入れようとでも目論んでいるのかな。あの人が目をつけるとしたら誰だろう。轟君とか爆豪君辺りか…それとももっと使いやすそうな人に目をつけるかな。…なんて、あの人の考えなんてどうせ私には理解なんて出来るわけがない。これ以上はやめておこう。時間の無駄だ。
それにしても…
「お茶子ちゃん、大丈夫かな…」
「相手が爆豪じゃ、心配だよね…」
いくらランダムに組まれるからって、とんでもない組み合わせの試合になったものだなと、向かい合っている爆豪君と麗日さんのことを見て思う。他の人たちが口々に麗日さんの身を案じる声が耳に入ってくる。葉隠さんと芦戸さんも例に漏れず心配している様子だ。だけども心配なんてしたところでなんにもならないとでも言うように、2人の試合が始まる。辺り一面に緊張が走ったような気がする。
◇
爆豪君と麗日さんの試合は、恐らくほとんどの人が予想していた通り、爆豪君が一方的に押していて、麗日さんではほとんど相手になっていない。だけれども
「おい、それでもヒーロー志望かよ!そんだけ実力差あるなら場外に放り出せよ!女の子いたぶって遊んでんじゃねーよ!」
そんな風に野次を飛ばすのは、育ちを疑われても文句は言えないんじゃないの。…まぁ、私も人のこと言えるような育ちしてないけど。なんならあの人達よりも育ちの悪い自覚はあるけども。
「ちょ、爆豪めっちゃブーイングされてる…」
「た、確かに爆豪君が酷く見えるのはわかるけど、ね…」
ブーイングしている人達の様子に、芦戸さんと葉隠さんが苦笑いをしている。2人ともブーイングしている人達に思うことがあるようだ。この子達だけじゃなく、他の子達もブーイングしている人達に不快そうな顔や、呆れたような顔、複雑そうな顔をしている。
……それにしても、学生や一般客はともかく。プロのヒーローでもわかっていない人がいるだなんて驚きだわ。などと思いながら眺めていたら
「今遊んでるっつったのプロか?何年目だ?」
微かに怒気を孕んだような声が響き渡った。相澤さんが声を上げたらしい。
「シラフで言ってんならもう見る意味ねぇから帰れ。帰って転職サイトでも見てろ」
相澤さんの声に、怒気が増したような気がする。
「爆豪はここまで上がって来た相手の力を認めているから警戒してるんだろう。本気で勝とうとしてるからこそ、手加減も油断も出来ねえんだろうが」
俺の生徒達のことを、侮辱するな。まるでそう続きそうな熱量で叫ぶ相澤さんの迫力に負けたとでも言うように、ブーイングしていた人達はみんな押し黙った。
「相澤先生、ちょーかっこいい!」
「ねっ!ちょっとときめいちゃった!見た目はミイラ男だけど」
得意げに笑いながら芦戸さんと葉隠さんが話している。2人とも凄く嬉しそうだ。
…大人である相澤さんどころか、子供である私や生徒達が分かっていたであろう爆豪君の真意を少しもわからない大人がいるなんてね。一体どんな人生を送ってきたらあんなに想像力の乏しい頭が出来上がるのだろうか。本でも読んでみればいいんじゃないかしら。そしたらその残念な出来の頭でも、多少は想像力がつくんじゃないの。というか、
「勝あアァアァつ!!」
プロヒーローのくせして、学生の…それも高校1年生の、自分達より遥かに年下の人間が考えた作戦を少しも見破れないなんて、恥ずかしくないのかしら。相澤さんの言う通り、今すぐに帰って転職を考えた方がいいんじゃないの。と、上空に浮いている無数のコンクリートの破片達が爆豪君に襲い掛かるさまを見つめながら呆れそうになる。
◇
麗日さんの秘策は、あっさりと爆豪君に破られてしまい、爆豪君の勝利となって幕を下ろした。
「綴ちゃん、ひょっとしてお茶子ちゃんの作戦、相澤先生が怒る前くらいから気づいてた?」
2人の試合が終わると、葉隠さんがそう問い掛けてきた。
「……どうしてそう思うの?」
「試合の途中で、モニターとかスタジアムじゃなくて爆豪君の上の方を見てたから。だからもしかして気づいてたのかなって思ったの!」
綴ちゃん、ブーイングしてた人のこと見て呆れてそうだったしと答えが返ってきた。この子、周りをよく見てるのね。
「なんとなくだけどね」
そう答えると
「へー!なんでわかったの?」
また質問が返ってきた。
「麗日さん、ずっと姿勢を低くして爆豪君に突進していたから」
「えっ…?どういうこと…?」
説明してぇ!と言われる。面倒くさいなと思うけれども、ここで無視して答えなかったら答えるまで追いかけられそうだし話すか…。
「低姿勢のまま爆豪君に突進していくのが、なんだか不自然だなって思ったの。何か事情があるのかって考えていたら細かく砕かれたコンクリートの破片が空中に浮くのが目に入ってきて、気になって空を見てみたら浮かんでたから気づいたの。あの姿勢は爆豪君の視線を下に集中させるため…絶え間ない突進と爆炎も、爆豪君の視野を狭めて作戦を悟らせないためだったんだって」
だからなんとなくわかっただけよと答えたら
「えーっ!すごい、それだけで分かったの?!」
芦戸さんが声を上げて褒めてきた。
「別に大したことしてないでしょ」
「してるって!私全然気づけなかった!爆豪が麗日に加減しなかった理由の方はわかったけど」
「そっちはわかるよね、当然」
なのにプロヒーロー達があんな大人数でブーイングするなんてあんまりだよと、2人はご立腹気味らしい。
やっぱり私には、この子達のことは理解できなさそうだ。どうして他人のために、こんなに怒ることが出来るんだろう。
爆豪君に立ち向かっていく麗日さんのことを見て、改めて思い知らされた。私はここの子達みたいに、強くなれる日は一生来ないだろう、ということを。
……あの人達のところにいたときに比べたら、今の方が比較的に自由なはずなのに、今の方がずっと不自由でしんどいと感じているのは、どうしてなんだろう。
……なんて。そんなことぐるぐると考えたって、答えはきっと一生出ないだろうし考えるのはもうやめよう。
それにしても…
「お茶子ちゃん、大丈夫かな…」
「相手が爆豪じゃ、心配だよね…」
いくらランダムに組まれるからって、とんでもない組み合わせの試合になったものだなと、向かい合っている爆豪君と麗日さんのことを見て思う。他の人たちが口々に麗日さんの身を案じる声が耳に入ってくる。葉隠さんと芦戸さんも例に漏れず心配している様子だ。だけども心配なんてしたところでなんにもならないとでも言うように、2人の試合が始まる。辺り一面に緊張が走ったような気がする。
◇
爆豪君と麗日さんの試合は、恐らくほとんどの人が予想していた通り、爆豪君が一方的に押していて、麗日さんではほとんど相手になっていない。だけれども
「おい、それでもヒーロー志望かよ!そんだけ実力差あるなら場外に放り出せよ!女の子いたぶって遊んでんじゃねーよ!」
そんな風に野次を飛ばすのは、育ちを疑われても文句は言えないんじゃないの。…まぁ、私も人のこと言えるような育ちしてないけど。なんならあの人達よりも育ちの悪い自覚はあるけども。
「ちょ、爆豪めっちゃブーイングされてる…」
「た、確かに爆豪君が酷く見えるのはわかるけど、ね…」
ブーイングしている人達の様子に、芦戸さんと葉隠さんが苦笑いをしている。2人ともブーイングしている人達に思うことがあるようだ。この子達だけじゃなく、他の子達もブーイングしている人達に不快そうな顔や、呆れたような顔、複雑そうな顔をしている。
……それにしても、学生や一般客はともかく。プロのヒーローでもわかっていない人がいるだなんて驚きだわ。などと思いながら眺めていたら
「今遊んでるっつったのプロか?何年目だ?」
微かに怒気を孕んだような声が響き渡った。相澤さんが声を上げたらしい。
「シラフで言ってんならもう見る意味ねぇから帰れ。帰って転職サイトでも見てろ」
相澤さんの声に、怒気が増したような気がする。
「爆豪はここまで上がって来た相手の力を認めているから警戒してるんだろう。本気で勝とうとしてるからこそ、手加減も油断も出来ねえんだろうが」
俺の生徒達のことを、侮辱するな。まるでそう続きそうな熱量で叫ぶ相澤さんの迫力に負けたとでも言うように、ブーイングしていた人達はみんな押し黙った。
「相澤先生、ちょーかっこいい!」
「ねっ!ちょっとときめいちゃった!見た目はミイラ男だけど」
得意げに笑いながら芦戸さんと葉隠さんが話している。2人とも凄く嬉しそうだ。
…大人である相澤さんどころか、子供である私や生徒達が分かっていたであろう爆豪君の真意を少しもわからない大人がいるなんてね。一体どんな人生を送ってきたらあんなに想像力の乏しい頭が出来上がるのだろうか。本でも読んでみればいいんじゃないかしら。そしたらその残念な出来の頭でも、多少は想像力がつくんじゃないの。というか、
「勝あアァアァつ!!」
プロヒーローのくせして、学生の…それも高校1年生の、自分達より遥かに年下の人間が考えた作戦を少しも見破れないなんて、恥ずかしくないのかしら。相澤さんの言う通り、今すぐに帰って転職を考えた方がいいんじゃないの。と、上空に浮いている無数のコンクリートの破片達が爆豪君に襲い掛かるさまを見つめながら呆れそうになる。
◇
麗日さんの秘策は、あっさりと爆豪君に破られてしまい、爆豪君の勝利となって幕を下ろした。
「綴ちゃん、ひょっとしてお茶子ちゃんの作戦、相澤先生が怒る前くらいから気づいてた?」
2人の試合が終わると、葉隠さんがそう問い掛けてきた。
「……どうしてそう思うの?」
「試合の途中で、モニターとかスタジアムじゃなくて爆豪君の上の方を見てたから。だからもしかして気づいてたのかなって思ったの!」
綴ちゃん、ブーイングしてた人のこと見て呆れてそうだったしと答えが返ってきた。この子、周りをよく見てるのね。
「なんとなくだけどね」
そう答えると
「へー!なんでわかったの?」
また質問が返ってきた。
「麗日さん、ずっと姿勢を低くして爆豪君に突進していたから」
「えっ…?どういうこと…?」
説明してぇ!と言われる。面倒くさいなと思うけれども、ここで無視して答えなかったら答えるまで追いかけられそうだし話すか…。
「低姿勢のまま爆豪君に突進していくのが、なんだか不自然だなって思ったの。何か事情があるのかって考えていたら細かく砕かれたコンクリートの破片が空中に浮くのが目に入ってきて、気になって空を見てみたら浮かんでたから気づいたの。あの姿勢は爆豪君の視線を下に集中させるため…絶え間ない突進と爆炎も、爆豪君の視野を狭めて作戦を悟らせないためだったんだって」
だからなんとなくわかっただけよと答えたら
「えーっ!すごい、それだけで分かったの?!」
芦戸さんが声を上げて褒めてきた。
「別に大したことしてないでしょ」
「してるって!私全然気づけなかった!爆豪が麗日に加減しなかった理由の方はわかったけど」
「そっちはわかるよね、当然」
なのにプロヒーロー達があんな大人数でブーイングするなんてあんまりだよと、2人はご立腹気味らしい。
やっぱり私には、この子達のことは理解できなさそうだ。どうして他人のために、こんなに怒ることが出来るんだろう。
爆豪君に立ち向かっていく麗日さんのことを見て、改めて思い知らされた。私はここの子達みたいに、強くなれる日は一生来ないだろう、ということを。
……あの人達のところにいたときに比べたら、今の方が比較的に自由なはずなのに、今の方がずっと不自由でしんどいと感じているのは、どうしてなんだろう。
……なんて。そんなことぐるぐると考えたって、答えはきっと一生出ないだろうし考えるのはもうやめよう。
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