鳥籠の中夢視る
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爆豪君の言葉の意味はなんだったのだろう。どれだけ考えても何もわからない。そんなことを思いながら黙々と食事を終え、他の人たちがいるであろうスタジアムへ行くと
「あっ綴ちゃん!1人でどこにいたの?」
私のことを見つけると、麗日さんが声を掛けてきた。他のみんなもいる。なぜかA組の女子生徒達だけ全員チアガールの格好をしている。
「ご飯、食べてた…。貴方たちはどうしてそんな格好しているの?」
あまりにも気になりすぎてつい聞いてしまった。すると
「聞かないで……」
全員げっそりしたように力なく声をそろえて言う。気になるけれどもこれ以上は聞かない方がいいのか。
「御伽もみんなと一緒に着ればいいんじゃね?絶対に似合うと思うぜ!」
上鳴君が笑顔で言ってきた。え…
「こんな珍妙な恰好、したくないのだけども」
そう言い返した瞬間、なぜかその場の温度が少し下がったような気がする。
◇
次の試合はトーナメント方式で進行していくらしい。そういえば毎年テレビで中継されている様子をあの人に言われて、死柄木と一緒に見せられたっけ。
……ヒーローを育てる学校が、体育祭を全国規模で生中継するのってどうなの。ヴィランに弱点を教えているようなものじゃないの。例えるのならば、マジシャンが種を明かしながら大勢の観客の目の前でマジックを披露しているようなものでしょ。そんなの、雄英にとっても生徒たちにとっても害しかないような気がする。
ヒーローになったらそんなこと言ってる場合じゃないのかもしれないけど、学生のうちから不特定多数の人たちに名前と顔、そして個性を晒すなんてリスクしかないでしょ。もう少しシステムを考え直した方がいいように思うのだけども。
雄英は……というか、この社会の人たちはヴィランのことを甘く見過ぎなような気がする。ヒーローも一般人もみんな、オールマイトがいればなんでもどうにかなるだろう、最後にはなんやかんやと解決してくれるだろう、と。そんな風にどこか他人事なんだろうか。
どうしてそんな風に思えるんだろう。オールマイトだって人間なのに。人間である以上、血の通った、生きた存在である以上、いつか絶対に限界だって来るし、命ある限り、必ず寿命が尽きる瞬間というものが来る。この世は理不尽なことが多いけれども、不平等なことばかりだけれども、時間や寿命などといったものは誰にでも平等にやってくる。それは本当に残酷なくらい、平等にやってくる。オールマイトだって、それは例外じゃない。
その日、その時、その瞬間が来たら、彼ら彼女らは、一体どうするつもりなんだろう。
「綴ちゃん?どうしたの、ぼーっとして」
トーナメント戦を眺めながら考え込んでいると、葉隠さんに声を掛けられた。
「具合でも悪い?」
と、心配げな声音で尋ねられて、大丈夫だと答えたら
「なら良かったぁー!」
そう嬉しそうに言われた。どうして嬉しそうなんだろう。
「御伽、開会式からずっとここでみんなの試合とか見てるから飽きちゃったんじゃない?」
私と葉隠さんの会話が聞こえたらしい耳郎さんが前の席から声を掛けてきた。
「別にそういうわけじゃ…」
確かにやることなくて退屈ではあるけど。とぼそっと付け足したら
「それ、飽きてるって言ってるようなもんじゃん…」
呆れたように言われた。そんなに呆れられるようなこと言っただろうか。
「あっデク君!お帰り~」
不意に麗日さんの声が聞こえてきた。普通科の生徒の、心操君という子との試合を終えた緑谷君が帰って来たようだ。
……緑谷君の個性、なんだろう…なんか、おかしい、というか、違和感がある……ような気がする。前に見た時も感じたけれども、さっきの試合を見たときに尚更感じた。心操君の個性は洗脳で、口を利いた相手を思うままに操ることだ出来るものだと言っていた。緑谷君は確かに彼の個性にかかっていた。けど、その個性を緑谷君自身の個性で解いていた。
強力な個性を使う相手のことを、より強力な個性を使って破った……そう考えるのは何も不思議じゃない。ここは雄英高校。沢山の、強力な個性を持った人たちが世界各地から集まってくる場所。そんな場所だから、洗脳してくる相手をいなすような個性を緑谷君が個性で破ったと、そう考えればいいだけ。だけれども、あの時の彼の動きや、彼の個性は、そういったものとは違ったように見えたし、そう簡単な話とは、違うような気がする。
「御伽ー!次、轟の試合だね!」
緑谷君の個性について考え込んでいたら、いつの間にか隣に着ていた芦戸さんに声を掛けられた。
「えっ。あぁ、そうね」
それがどうかしたの?と尋ねると
「反応薄ッ!!」
芦戸さんと、隣に座る葉隠さんに絶叫された。2人がなぜそんな反応をするのかわからなくて首を傾げると
「轟君だよ?!次の試合、轟君!!」
「なんでそんなどうでもよさそうな反応なの?!」
2人が詰め寄るような勢いで捲くし立ててくる。
「どうでもよさそうというか、どうでもいいんだけど…」
そういうと
「えーっっっ!!」
と、揃って声を上げた。
「2人ともどうして驚くの…というか、何に対して驚いているの…」
思わず尋ねてしまう。
「いやだって、綴ちゃんと轟君て仲良しじゃん!」
「そうだよ。だからめちゃくちゃ楽しみにしてると思ったのに!!」
私と轟君が仲良し…この子たちの目には一体何が見えているんだろう。
「だって、朝毎日学校一緒に来てるよね?それに教室でもよく話してるし!」
毎日一緒に来てるのは、あの子が毎朝迎えに来るからだし、教室でよく会話しているのも向こうが声を掛けてくるからだ。それに仲良くなくたって会話くらいはするものでしょ。私と死柄木みたいに。そんなことを考えていたら、轟君とその対戦相手である瀬呂君がスタジアムへと入場して来た。
「ま、いいや!御伽、轟のことしっかり応援してあげ…って、ひっ…?!」
芦戸さんが何か言おうとしたらしいが、言い終わる前に凄まじい轟音が鳴り響き、とてつもない冷気に襲われた。何事かとスタジアムの方に目を向けてみると、巨大な氷壁とそれに挟まれている瀬呂君、そして若干氷壁の被害をかぶっているミッドナイトさんの姿が目に入ってきた。
「…………瀬呂君………動ける?」
そう問い掛けるミッドナイトさんに向かって
「動けるハズないでしょ…痛えぇ……」
と、瀬呂君は消え入りそうな声で言い返した。
……轟君と瀬呂君の試合は、あっという間すらなく轟君の勝利となって幕を下ろした。会場のどこからともなく「どんまーい!」というコールが流れ始めた。そんなコールに背を向け、
「悪い……」
ぼそっと呟き瀬呂君の氷を炎…彼曰く、左側の、父親から譲り受けた個性で溶かしている彼の背中は、なぜかどこか悲し気に見えたような気がした。
「あっ綴ちゃん!1人でどこにいたの?」
私のことを見つけると、麗日さんが声を掛けてきた。他のみんなもいる。なぜかA組の女子生徒達だけ全員チアガールの格好をしている。
「ご飯、食べてた…。貴方たちはどうしてそんな格好しているの?」
あまりにも気になりすぎてつい聞いてしまった。すると
「聞かないで……」
全員げっそりしたように力なく声をそろえて言う。気になるけれどもこれ以上は聞かない方がいいのか。
「御伽もみんなと一緒に着ればいいんじゃね?絶対に似合うと思うぜ!」
上鳴君が笑顔で言ってきた。え…
「こんな珍妙な恰好、したくないのだけども」
そう言い返した瞬間、なぜかその場の温度が少し下がったような気がする。
◇
次の試合はトーナメント方式で進行していくらしい。そういえば毎年テレビで中継されている様子をあの人に言われて、死柄木と一緒に見せられたっけ。
……ヒーローを育てる学校が、体育祭を全国規模で生中継するのってどうなの。ヴィランに弱点を教えているようなものじゃないの。例えるのならば、マジシャンが種を明かしながら大勢の観客の目の前でマジックを披露しているようなものでしょ。そんなの、雄英にとっても生徒たちにとっても害しかないような気がする。
ヒーローになったらそんなこと言ってる場合じゃないのかもしれないけど、学生のうちから不特定多数の人たちに名前と顔、そして個性を晒すなんてリスクしかないでしょ。もう少しシステムを考え直した方がいいように思うのだけども。
雄英は……というか、この社会の人たちはヴィランのことを甘く見過ぎなような気がする。ヒーローも一般人もみんな、オールマイトがいればなんでもどうにかなるだろう、最後にはなんやかんやと解決してくれるだろう、と。そんな風にどこか他人事なんだろうか。
どうしてそんな風に思えるんだろう。オールマイトだって人間なのに。人間である以上、血の通った、生きた存在である以上、いつか絶対に限界だって来るし、命ある限り、必ず寿命が尽きる瞬間というものが来る。この世は理不尽なことが多いけれども、不平等なことばかりだけれども、時間や寿命などといったものは誰にでも平等にやってくる。それは本当に残酷なくらい、平等にやってくる。オールマイトだって、それは例外じゃない。
その日、その時、その瞬間が来たら、彼ら彼女らは、一体どうするつもりなんだろう。
「綴ちゃん?どうしたの、ぼーっとして」
トーナメント戦を眺めながら考え込んでいると、葉隠さんに声を掛けられた。
「具合でも悪い?」
と、心配げな声音で尋ねられて、大丈夫だと答えたら
「なら良かったぁー!」
そう嬉しそうに言われた。どうして嬉しそうなんだろう。
「御伽、開会式からずっとここでみんなの試合とか見てるから飽きちゃったんじゃない?」
私と葉隠さんの会話が聞こえたらしい耳郎さんが前の席から声を掛けてきた。
「別にそういうわけじゃ…」
確かにやることなくて退屈ではあるけど。とぼそっと付け足したら
「それ、飽きてるって言ってるようなもんじゃん…」
呆れたように言われた。そんなに呆れられるようなこと言っただろうか。
「あっデク君!お帰り~」
不意に麗日さんの声が聞こえてきた。普通科の生徒の、心操君という子との試合を終えた緑谷君が帰って来たようだ。
……緑谷君の個性、なんだろう…なんか、おかしい、というか、違和感がある……ような気がする。前に見た時も感じたけれども、さっきの試合を見たときに尚更感じた。心操君の個性は洗脳で、口を利いた相手を思うままに操ることだ出来るものだと言っていた。緑谷君は確かに彼の個性にかかっていた。けど、その個性を緑谷君自身の個性で解いていた。
強力な個性を使う相手のことを、より強力な個性を使って破った……そう考えるのは何も不思議じゃない。ここは雄英高校。沢山の、強力な個性を持った人たちが世界各地から集まってくる場所。そんな場所だから、洗脳してくる相手をいなすような個性を緑谷君が個性で破ったと、そう考えればいいだけ。だけれども、あの時の彼の動きや、彼の個性は、そういったものとは違ったように見えたし、そう簡単な話とは、違うような気がする。
「御伽ー!次、轟の試合だね!」
緑谷君の個性について考え込んでいたら、いつの間にか隣に着ていた芦戸さんに声を掛けられた。
「えっ。あぁ、そうね」
それがどうかしたの?と尋ねると
「反応薄ッ!!」
芦戸さんと、隣に座る葉隠さんに絶叫された。2人がなぜそんな反応をするのかわからなくて首を傾げると
「轟君だよ?!次の試合、轟君!!」
「なんでそんなどうでもよさそうな反応なの?!」
2人が詰め寄るような勢いで捲くし立ててくる。
「どうでもよさそうというか、どうでもいいんだけど…」
そういうと
「えーっっっ!!」
と、揃って声を上げた。
「2人ともどうして驚くの…というか、何に対して驚いているの…」
思わず尋ねてしまう。
「いやだって、綴ちゃんと轟君て仲良しじゃん!」
「そうだよ。だからめちゃくちゃ楽しみにしてると思ったのに!!」
私と轟君が仲良し…この子たちの目には一体何が見えているんだろう。
「だって、朝毎日学校一緒に来てるよね?それに教室でもよく話してるし!」
毎日一緒に来てるのは、あの子が毎朝迎えに来るからだし、教室でよく会話しているのも向こうが声を掛けてくるからだ。それに仲良くなくたって会話くらいはするものでしょ。私と死柄木みたいに。そんなことを考えていたら、轟君とその対戦相手である瀬呂君がスタジアムへと入場して来た。
「ま、いいや!御伽、轟のことしっかり応援してあげ…って、ひっ…?!」
芦戸さんが何か言おうとしたらしいが、言い終わる前に凄まじい轟音が鳴り響き、とてつもない冷気に襲われた。何事かとスタジアムの方に目を向けてみると、巨大な氷壁とそれに挟まれている瀬呂君、そして若干氷壁の被害をかぶっているミッドナイトさんの姿が目に入ってきた。
「…………瀬呂君………動ける?」
そう問い掛けるミッドナイトさんに向かって
「動けるハズないでしょ…痛えぇ……」
と、瀬呂君は消え入りそうな声で言い返した。
……轟君と瀬呂君の試合は、あっという間すらなく轟君の勝利となって幕を下ろした。会場のどこからともなく「どんまーい!」というコールが流れ始めた。そんなコールに背を向け、
「悪い……」
ぼそっと呟き瀬呂君の氷を炎…彼曰く、左側の、父親から譲り受けた個性で溶かしている彼の背中は、なぜかどこか悲し気に見えたような気がした。
