鳥籠の中夢視る
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本を読むのが、好きだった。難しい文字や、知らない言葉を知ることができるから。沢山の言葉や文字を覚えると、
『綴また新しい言葉を覚えたのか?すごいなー!綴は頭が良くて可愛くて、兄ちゃんの自慢の妹だ!』
そう言って優しく笑いながら頭を撫でて抱きしめて褒めてくれる、そんな兄がいたから。
だけど———
『綴。沢山本を読み、漢字を覚え、言葉を知るんだ。早く僕の役にたてるようになるんだよ。僕のために働くんだよ』
いつの間にか、本を読むのは好きだから……ではなく。生きる術を得るための手段に変わってしまった。
◇
「御伽」
授業が終了してからすぐに個性を使って帰り支度を済ませ、即座に教室から出たが個性の効力が時間切れになってしまったのか、昇降口で声を掛けられた。声の主に気づいて溜息が出そうになりつつも振り返り、
「何、轟君」
そう返事をする。走ってきたのだろうか。少し息が上がっている。
「一緒に帰ろうと思ったんだ。お前の住んでる寮、駅の方通るから帰り道途中まで一緒だろ」
……1人で帰りたい。けど、そう言ったところで、聞き入れてくれないだろう。
「勝手にすれば……」
と言うと
「あぁ。じゃあ行こう」
微かに嬉しそうな顔をして、腕を引かれた。勝手にすればとは言ったけれども、どうして腕を引かれているんだ。
「…………離して」
文句を言ってみるが
「勝手にすればって言ったのはお前だろ。絶対に離さねぇ」
腕を掴んでいる力が、少し強くなった。怒ってる…?でも、表情や雰囲気はそんな風に見えない。寧ろ、普段よりも表情が柔らかいような気さえしてくる。
「どうして……」
「えっ?」
思わずそんな声を漏らすと、轟君が不思議そうな顔をする。
「どうして轟君は、私のことをそんなに気に掛けるの」
問い掛けるつもりなんてなかったけれども、きっと誤魔化すことは出来ないだろう。そう思い、初めてUSJで会ったあの日からずっと疑問だったことを問い掛けてみることにした。
「正直、貴方が私を気に掛ける意味が分からない。貴方だけじゃない。この学校の人達全員、意味が分からない。私は死柄木……貴方達を襲ったヴィランと一緒にいたのよ。何故そんな人間のことを、気に掛けるの。どうして関わろうとしてくるの」
そんな立場の人間、同じ空間にいるだけで不愉快じゃないの。
そういう私の問い掛けを、轟君は黙って聞いている。じっと見つめてくる、左右で色の違う目が、私の姿を映している。
「……他の奴らがどう思ってるのかはわかんねぇ。けど、俺は綴ちゃ……御伽のことを不愉快だなんて思わねぇし、本気でお前と仲良くなりてぇって思ってるし、救いたいとも思ってる」
一切の迷いもなく、力強く言う。
「救いたい……っていうのが分からないって言ってるの。私は、貴方に…というか誰かに助けてほしいなんて思ってない。救われたいなんて、考えたこともない。だから、その考えはお門違いよ。…………救いたいとか、助けたいとか、そういう言葉は本気で必要としている人に言ってあげなよ」
どうせ私に、救いなんて来ないんだから。どこに行こうが何をしようが、私の行きつく先はあの人の掌の上に戻るだけ。助けてもらえるかも、もしかしたら光のある方へ行けるかも……なんて夢を見たところで、それは触れようとした瞬間に跡形もなく溶けて消えてしまう幻だ。そんなものに縋ったところで、虚しくなるだけ。悲しくなるだけ。苦しくなるだけ。だったら最初から触れずに見なかったことにすればいい。そうした方が、幾分か楽だもの。
「……勝手にすればって言ったけれどもごめんなさい。やっぱり1人で帰るわ」
そう言って轟君の手を振りほどき、逃げるようにして彼に背を向け、1人で足早に黙々と歩きだした。
……傷つけてしまっただろうか。なんて柄にもないことを少し考えたけれども、ここまで言ったらきっともう私に声を掛けてきたり気に掛けてきたりすることもなくなるかな。そう考えるとなんだか心が軽くなったような気がする。
『綴また新しい言葉を覚えたのか?すごいなー!綴は頭が良くて可愛くて、兄ちゃんの自慢の妹だ!』
そう言って優しく笑いながら頭を撫でて抱きしめて褒めてくれる、そんな兄がいたから。
だけど———
『綴。沢山本を読み、漢字を覚え、言葉を知るんだ。早く僕の役にたてるようになるんだよ。僕のために働くんだよ』
いつの間にか、本を読むのは好きだから……ではなく。生きる術を得るための手段に変わってしまった。
◇
「御伽」
授業が終了してからすぐに個性を使って帰り支度を済ませ、即座に教室から出たが個性の効力が時間切れになってしまったのか、昇降口で声を掛けられた。声の主に気づいて溜息が出そうになりつつも振り返り、
「何、轟君」
そう返事をする。走ってきたのだろうか。少し息が上がっている。
「一緒に帰ろうと思ったんだ。お前の住んでる寮、駅の方通るから帰り道途中まで一緒だろ」
……1人で帰りたい。けど、そう言ったところで、聞き入れてくれないだろう。
「勝手にすれば……」
と言うと
「あぁ。じゃあ行こう」
微かに嬉しそうな顔をして、腕を引かれた。勝手にすればとは言ったけれども、どうして腕を引かれているんだ。
「…………離して」
文句を言ってみるが
「勝手にすればって言ったのはお前だろ。絶対に離さねぇ」
腕を掴んでいる力が、少し強くなった。怒ってる…?でも、表情や雰囲気はそんな風に見えない。寧ろ、普段よりも表情が柔らかいような気さえしてくる。
「どうして……」
「えっ?」
思わずそんな声を漏らすと、轟君が不思議そうな顔をする。
「どうして轟君は、私のことをそんなに気に掛けるの」
問い掛けるつもりなんてなかったけれども、きっと誤魔化すことは出来ないだろう。そう思い、初めてUSJで会ったあの日からずっと疑問だったことを問い掛けてみることにした。
「正直、貴方が私を気に掛ける意味が分からない。貴方だけじゃない。この学校の人達全員、意味が分からない。私は死柄木……貴方達を襲ったヴィランと一緒にいたのよ。何故そんな人間のことを、気に掛けるの。どうして関わろうとしてくるの」
そんな立場の人間、同じ空間にいるだけで不愉快じゃないの。
そういう私の問い掛けを、轟君は黙って聞いている。じっと見つめてくる、左右で色の違う目が、私の姿を映している。
「……他の奴らがどう思ってるのかはわかんねぇ。けど、俺は綴ちゃ……御伽のことを不愉快だなんて思わねぇし、本気でお前と仲良くなりてぇって思ってるし、救いたいとも思ってる」
一切の迷いもなく、力強く言う。
「救いたい……っていうのが分からないって言ってるの。私は、貴方に…というか誰かに助けてほしいなんて思ってない。救われたいなんて、考えたこともない。だから、その考えはお門違いよ。…………救いたいとか、助けたいとか、そういう言葉は本気で必要としている人に言ってあげなよ」
どうせ私に、救いなんて来ないんだから。どこに行こうが何をしようが、私の行きつく先はあの人の掌の上に戻るだけ。助けてもらえるかも、もしかしたら光のある方へ行けるかも……なんて夢を見たところで、それは触れようとした瞬間に跡形もなく溶けて消えてしまう幻だ。そんなものに縋ったところで、虚しくなるだけ。悲しくなるだけ。苦しくなるだけ。だったら最初から触れずに見なかったことにすればいい。そうした方が、幾分か楽だもの。
「……勝手にすればって言ったけれどもごめんなさい。やっぱり1人で帰るわ」
そう言って轟君の手を振りほどき、逃げるようにして彼に背を向け、1人で足早に黙々と歩きだした。
……傷つけてしまっただろうか。なんて柄にもないことを少し考えたけれども、ここまで言ったらきっともう私に声を掛けてきたり気に掛けてきたりすることもなくなるかな。そう考えるとなんだか心が軽くなったような気がする。
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