鳥籠の中夢視る
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ご飯を食べるのは苦手だ。
『おい。いつまでもちんたら食ってんじゃねぇよ』
食べるのが遅いと殴られるから。
食べきれなかったら
『綴、また残したのかい?お前は本当にダメな子だね』
ずっとずっと、なじられるから。なのに
『そんなに沢山食べるのかい?意地汚い子だ』
少しでも多く食べると、溜息を吐きながら文句を言われるから。
小さい頃からずっと、ずーっとそう。私にとって、食事は何ひとついい記憶がない。だからなるべくしたくない。別に少しくらい食べなくたって死ぬわけじゃない。1日2日なにも食べなくたって、生きることが出来るんだ。だから死なないように最低限食べればいい。そう思うんだけども
「綴ちゃんスープだけ?!ダメだよちゃんと食べんと!倒れちゃうよ?!」
どうやら私の思考はここでは許されないらしい。
「食欲ないから」
そう言っても
「いやでも……」
麗日さんが何か言いたげな顔をしつつもうーん……と言いながら考え込む素振りをする。
「食欲はないと言っても、麗日君の言うようにスープだけなのは身体にも悪いし、次の授業にも響いてしまうぞ。何か…お粥とかなら食べられないか?」
麗日さんの隣で聞いていた飯田君がそう提案してきた。
「確かにお粥だったら沢山食べなくてもお腹も膨らむと思うし、いいんじゃないかな」
ね、と緑谷君も言う。
「私、食べるの遅いから…」
「休み時間内までに食べれば問題ないからゆっくり食べて大丈夫だよ!」
麗日さんが食い気味に言ってくる。
「……食べきれないから」
「そりゃ残さないのが1番だろうが、どうしても食べきれない場合は残してもいいと思うぞ。それよりも君の場合は少しでも食事を摂るべきじゃないか」
飯田君が即座に反論してきた。
「……沢山食べると意地汚いって思われるから」
「そんな!お粥1つで誰もそんなこと思わないよ。というか、御伽さんの場合はそう思われるくらい食べた方がいいんじゃないかな」
緑谷君が、優しく穏やかな口調でトドメを刺してきた。
食事をなんとか摂らないで済むように言い訳を探してみるが、無駄らしい。3人共息ピッタリ……。なにがなんでも私に食事を摂らせるという圧を感じる。少し怖い。何か食べるまで3人共絶対に引かなそう。どうして……。
「お粥、食べる……」
消え入りそうな声で呟くと、3人はとてもうれしそうな顔で笑う。なぜか負けたような気持ちになった。
◇
「あっ私食べ終わったから食器片してくるね」
「俺も片づけてくるとしよう。緑谷君と御伽君は気にせずゆっくり食べててくれ」
そう言い残し、麗日さんと飯田君は食器を持って席を立った。そのため、緑谷君と2人きりになった。なんだか緑谷君、そわそわしているように見える。……どうしたんだろう。
「あ、あの、御伽さん……」
ふと、遠慮がちに声をかけられた。
「何?」
そう尋ねると緑谷君は
「あの、その、えーっとだからうーんと……」
挙動不審になった。目がすごく泳いでいる。
「何」
ともう1度問い掛けてみると
「あ、あの…クラスメイトとして知り合ったばっかりなのに、こんな踏み込んだこと聞いたら嫌な思いさせちゃうかもしれないからちょっと申し訳ないんだけども、どうしても気になるから、聞くね」
緑谷君が覚悟を決めた、とでも言うような表情で真っ直ぐと私のことを見つめながら
「御伽さんて、お兄さんいる?」
そう尋ねてきた緑谷君の目は、先ほどまでの迷っていた様子が嘘みたいにしっかりとした、強い目をしていた。じっと、まるで私の心を全て見据えようとしているみたいだ。
「……なんで……」
知っているの……?思わず消え入りそうな声で聞き返してしまった。
「あっ!ご、ごごご、ごめんねこんなこと聞いちゃって!!ど、どうしても気になってて、それで……。気分悪くさせちゃったらほんっとうにごめん!!!」
焦ったように身振り手振りを交えて何度も謝って来る。……そんなに謝って来るくらいなら、聞かなければいいのに。
「あの…!」
「あーっ!緑谷、御伽と一緒にご飯食べてる!!」
緑谷君がまた何か言おうとしたのを、大きな明るい声が遮った。びくっとしつつも声の方へ視線を向けてみると、芦戸さんと葉隠さんがいた。
「何々、2人っきりでご飯?!」
「えっ!ち、ちが、違うってそんなんじゃなくって…!というかあの、ふ、2人っきりじゃなくて…!」
なぜか楽しそうな様子の2人の乱入により、緑谷君との会話は強制終了となってしまった。
どうして私に兄がいたということを知っているのか……その理由は気になったけれども、答えを聞かずに済んで少しほっとした。これ以上なにか聞かれるのは嫌だったので、3人が騒いでいる隙にそっと席を立って1人で食堂を後にした。
『おい。いつまでもちんたら食ってんじゃねぇよ』
食べるのが遅いと殴られるから。
食べきれなかったら
『綴、また残したのかい?お前は本当にダメな子だね』
ずっとずっと、なじられるから。なのに
『そんなに沢山食べるのかい?意地汚い子だ』
少しでも多く食べると、溜息を吐きながら文句を言われるから。
小さい頃からずっと、ずーっとそう。私にとって、食事は何ひとついい記憶がない。だからなるべくしたくない。別に少しくらい食べなくたって死ぬわけじゃない。1日2日なにも食べなくたって、生きることが出来るんだ。だから死なないように最低限食べればいい。そう思うんだけども
「綴ちゃんスープだけ?!ダメだよちゃんと食べんと!倒れちゃうよ?!」
どうやら私の思考はここでは許されないらしい。
「食欲ないから」
そう言っても
「いやでも……」
麗日さんが何か言いたげな顔をしつつもうーん……と言いながら考え込む素振りをする。
「食欲はないと言っても、麗日君の言うようにスープだけなのは身体にも悪いし、次の授業にも響いてしまうぞ。何か…お粥とかなら食べられないか?」
麗日さんの隣で聞いていた飯田君がそう提案してきた。
「確かにお粥だったら沢山食べなくてもお腹も膨らむと思うし、いいんじゃないかな」
ね、と緑谷君も言う。
「私、食べるの遅いから…」
「休み時間内までに食べれば問題ないからゆっくり食べて大丈夫だよ!」
麗日さんが食い気味に言ってくる。
「……食べきれないから」
「そりゃ残さないのが1番だろうが、どうしても食べきれない場合は残してもいいと思うぞ。それよりも君の場合は少しでも食事を摂るべきじゃないか」
飯田君が即座に反論してきた。
「……沢山食べると意地汚いって思われるから」
「そんな!お粥1つで誰もそんなこと思わないよ。というか、御伽さんの場合はそう思われるくらい食べた方がいいんじゃないかな」
緑谷君が、優しく穏やかな口調でトドメを刺してきた。
食事をなんとか摂らないで済むように言い訳を探してみるが、無駄らしい。3人共息ピッタリ……。なにがなんでも私に食事を摂らせるという圧を感じる。少し怖い。何か食べるまで3人共絶対に引かなそう。どうして……。
「お粥、食べる……」
消え入りそうな声で呟くと、3人はとてもうれしそうな顔で笑う。なぜか負けたような気持ちになった。
◇
「あっ私食べ終わったから食器片してくるね」
「俺も片づけてくるとしよう。緑谷君と御伽君は気にせずゆっくり食べててくれ」
そう言い残し、麗日さんと飯田君は食器を持って席を立った。そのため、緑谷君と2人きりになった。なんだか緑谷君、そわそわしているように見える。……どうしたんだろう。
「あ、あの、御伽さん……」
ふと、遠慮がちに声をかけられた。
「何?」
そう尋ねると緑谷君は
「あの、その、えーっとだからうーんと……」
挙動不審になった。目がすごく泳いでいる。
「何」
ともう1度問い掛けてみると
「あ、あの…クラスメイトとして知り合ったばっかりなのに、こんな踏み込んだこと聞いたら嫌な思いさせちゃうかもしれないからちょっと申し訳ないんだけども、どうしても気になるから、聞くね」
緑谷君が覚悟を決めた、とでも言うような表情で真っ直ぐと私のことを見つめながら
「御伽さんて、お兄さんいる?」
そう尋ねてきた緑谷君の目は、先ほどまでの迷っていた様子が嘘みたいにしっかりとした、強い目をしていた。じっと、まるで私の心を全て見据えようとしているみたいだ。
「……なんで……」
知っているの……?思わず消え入りそうな声で聞き返してしまった。
「あっ!ご、ごごご、ごめんねこんなこと聞いちゃって!!ど、どうしても気になってて、それで……。気分悪くさせちゃったらほんっとうにごめん!!!」
焦ったように身振り手振りを交えて何度も謝って来る。……そんなに謝って来るくらいなら、聞かなければいいのに。
「あの…!」
「あーっ!緑谷、御伽と一緒にご飯食べてる!!」
緑谷君がまた何か言おうとしたのを、大きな明るい声が遮った。びくっとしつつも声の方へ視線を向けてみると、芦戸さんと葉隠さんがいた。
「何々、2人っきりでご飯?!」
「えっ!ち、ちが、違うってそんなんじゃなくって…!というかあの、ふ、2人っきりじゃなくて…!」
なぜか楽しそうな様子の2人の乱入により、緑谷君との会話は強制終了となってしまった。
どうして私に兄がいたということを知っているのか……その理由は気になったけれども、答えを聞かずに済んで少しほっとした。これ以上なにか聞かれるのは嫌だったので、3人が騒いでいる隙にそっと席を立って1人で食堂を後にした。
