鳥籠の中夢視る
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学校が終わり、住む様にと言われた寮へ行き、部屋に入った。当然だけれども、何もない。とりあえず床に座り、一息吐く。
『ここの部屋は好きに使ってくれて構わないサ。出かける際は必ず寮の管理人に言って2人以上のヒーローに同行してもらうように!』
という説明を校長からされたのは昨日のこと。辺りを見渡してみる。そこまで広いわけでも極端に狭いわけでもない部屋。私があの人に用意された部屋よりは広い。窓もあって日の光が入って来てなんだか落ち着かない。…まぁどうせこの部屋で暮らすことなんてないのだしどうでもいいか。
そろそろ行こう。常にではないが定期的に監視役の人が私には付くと言っていた。監視役の人が来てしまったら厄介だ。急いで行かないと。そう思い鞄からノートとペンを取り出し、『誰にも悟られず気付かれず寮から抜け出して、あの場所まで辿り着く』と書き、部屋を出た。
◇
抜け出しておいて言うのもって話かもしれないけれども、雄英はもう少しセキュリティをなんとかした方が良いと思う。まさかここまであっさりと寮を抜け出すことが出来るなんて驚いた。まぁその甘さのお陰で出歩くことが出来たのだから文句言うつもりはないけれども。
何年ぶりだろう、1人で外を出歩くなんて。最後に出かけたのがいつだったのか全く思い出せない。そもそも外に出ること自体が何年振りなのかわからないレベルだ。いつも黒霧の個性で移動していたし。なんだか変な感じ。人生最後の散歩を楽しめってことかしら。
そんなことを考えながら歩いていたら、いつの間にか目的地へ着いていた。
立ち止まり、目的地であった廃屋を見つめる。ここに来るのは何年振りだろうか。初めてここへ来たのはいくつの頃だっただろう。
…まぁ、そんなことはどうでもいいか。早く中に入ろう。そう思い、立ち入り禁止と書かれたロープを潜り抜けて廃屋の中へと入る。
◇
「雄英生…それもヒーロー科の生徒が随分堂々とルール破るんだな」
廃屋へ足を踏み入れてしばらく歩くと、聞きなれた声のそんな言葉に迎えられた。声の方へ顔を向けると
「立ち入り禁止って文字見えなかったのか?そんな訳ねぇよな、ここにはガキの頃からよく来てんだから。そんなルールも守れねぇお前がまさか雄英のヒーロー科に通うことになるなんてな。世も末ってやつだな。すげぇ笑えるよ」
思った通り。死柄木が瓦礫を椅子代わりにして座っていた。面白がるようなセリフと、楽しそうな声音とは裏腹に無表情で私のことを見つめている。
「なんでここに来た」
「ここへ来たら貴方が来ているんじゃないかと思ったから」
「何。俺に会いたくなったのか?」
嬉しいねぇと、心にも思っていないであろうことを言う。その会話を最後に、お互い無表情で見つめ合う。
「……あの人は」
「先生はいねぇ。俺だけだ」
その答えに「てっきり来ているものかと思った」というと「あの人がこんなとこ来るかよ」と吐き捨てられた。確かにあの人が迂闊に雄英の近くへ来るわけないか。
「じゃあ私は貴方に殺されるのね」
そう問いかけてみると、死柄木はじっと無表情で見つめてきた。無言は肯定だろうと勝手に解釈し、「なるべく楽に殺して欲しい」そう呟く。死柄木は相変わらず私のことを無言で見つめている。少し間を置くと無言のまま近づいてきた。
目の前まで来ると、彼の細い指が私の首へと置かれた。…楽に殺してくれ、というささやかな願いは聞いてもらえないらしい。この人が聞いてくれるとは思っていなかったけれどもと思いつつ、そっと目を閉じる。
いつまでたっても首を絞められる様子がない。不思議に思い目を開き死柄木を見ると
「今すぐ殺してやるよ…って言ってやりたいとこだが悪いな、まだ殺してやれねぇ」
そう首に手を掛けられたまま、耳元で囁かれた。まだ殺さない…?どういう意味だろうと思っていると彼は少々不機嫌そうな顔で私のことを見やった。どうして殺さないのかと問いかけると溜息交じりに首から手を離し
「先生がお前を殺すなっつってた」
と答えられた。オール・フォー・ワンが…?
「なんで…」
「お前にはそのまま雄英に居座ってA組の生徒として過ごせだってよ。潜入しておけだとよ」
不機嫌な顔のまま吐き捨てられた。
「潜入?なんで…」
疑問を投げかけると「知らねぇよ」と更に不機嫌そうに返された。
「それからこれ。着けとけっつってた」
そう言いながら、今までつけられていた首輪を外し、同じデザインのものを改めて着けられた。
「それ、お前が自分で外そうとしたり、逆らおうとしたりしたら絞め上げる様に出来てるらしい。それが嫌なら外したり逆らったりするなってよ」
あと、なんか用がある時は軽く電流が流れる様になってるから流れたら必ずここへ来いだってよ、と付け足す。…離れていても僕はお前を見ているよ、と。まるでそう言われているような気分だ。
「じゃ、知らせたからな。精々しっかり働けよ、綴」
そう言いながら私の頭を軽く撫で、死柄木は廃屋から出て行った。
ヒーロー科に潜入…?なんで…。誰かは教えられていないけれども、あのクラスには確か内通者がいると聞かされている。それなのに私を送り込む意味なんてあるの…?何もないように思うのだけど…。
あの人のことだ。きっと何か、私にとって不利益になる様な企みがあるに違いない。何が目的なのかは検討もつかない。無駄だし考えるのはやめよう。
それにしても、まだあの人達と一緒に過ごさなくてはいけないなんて憂鬱だ。
溜息を吐きつつ、服に忍ばせていたノートとペンを取り出して『誰にも気が付かれることなく、そっと寮へと戻る』と書き、廃屋から出て元来た道を引き返す。
『ここの部屋は好きに使ってくれて構わないサ。出かける際は必ず寮の管理人に言って2人以上のヒーローに同行してもらうように!』
という説明を校長からされたのは昨日のこと。辺りを見渡してみる。そこまで広いわけでも極端に狭いわけでもない部屋。私があの人に用意された部屋よりは広い。窓もあって日の光が入って来てなんだか落ち着かない。…まぁどうせこの部屋で暮らすことなんてないのだしどうでもいいか。
そろそろ行こう。常にではないが定期的に監視役の人が私には付くと言っていた。監視役の人が来てしまったら厄介だ。急いで行かないと。そう思い鞄からノートとペンを取り出し、『誰にも悟られず気付かれず寮から抜け出して、あの場所まで辿り着く』と書き、部屋を出た。
◇
抜け出しておいて言うのもって話かもしれないけれども、雄英はもう少しセキュリティをなんとかした方が良いと思う。まさかここまであっさりと寮を抜け出すことが出来るなんて驚いた。まぁその甘さのお陰で出歩くことが出来たのだから文句言うつもりはないけれども。
何年ぶりだろう、1人で外を出歩くなんて。最後に出かけたのがいつだったのか全く思い出せない。そもそも外に出ること自体が何年振りなのかわからないレベルだ。いつも黒霧の個性で移動していたし。なんだか変な感じ。人生最後の散歩を楽しめってことかしら。
そんなことを考えながら歩いていたら、いつの間にか目的地へ着いていた。
立ち止まり、目的地であった廃屋を見つめる。ここに来るのは何年振りだろうか。初めてここへ来たのはいくつの頃だっただろう。
…まぁ、そんなことはどうでもいいか。早く中に入ろう。そう思い、立ち入り禁止と書かれたロープを潜り抜けて廃屋の中へと入る。
◇
「雄英生…それもヒーロー科の生徒が随分堂々とルール破るんだな」
廃屋へ足を踏み入れてしばらく歩くと、聞きなれた声のそんな言葉に迎えられた。声の方へ顔を向けると
「立ち入り禁止って文字見えなかったのか?そんな訳ねぇよな、ここにはガキの頃からよく来てんだから。そんなルールも守れねぇお前がまさか雄英のヒーロー科に通うことになるなんてな。世も末ってやつだな。すげぇ笑えるよ」
思った通り。死柄木が瓦礫を椅子代わりにして座っていた。面白がるようなセリフと、楽しそうな声音とは裏腹に無表情で私のことを見つめている。
「なんでここに来た」
「ここへ来たら貴方が来ているんじゃないかと思ったから」
「何。俺に会いたくなったのか?」
嬉しいねぇと、心にも思っていないであろうことを言う。その会話を最後に、お互い無表情で見つめ合う。
「……あの人は」
「先生はいねぇ。俺だけだ」
その答えに「てっきり来ているものかと思った」というと「あの人がこんなとこ来るかよ」と吐き捨てられた。確かにあの人が迂闊に雄英の近くへ来るわけないか。
「じゃあ私は貴方に殺されるのね」
そう問いかけてみると、死柄木はじっと無表情で見つめてきた。無言は肯定だろうと勝手に解釈し、「なるべく楽に殺して欲しい」そう呟く。死柄木は相変わらず私のことを無言で見つめている。少し間を置くと無言のまま近づいてきた。
目の前まで来ると、彼の細い指が私の首へと置かれた。…楽に殺してくれ、というささやかな願いは聞いてもらえないらしい。この人が聞いてくれるとは思っていなかったけれどもと思いつつ、そっと目を閉じる。
いつまでたっても首を絞められる様子がない。不思議に思い目を開き死柄木を見ると
「今すぐ殺してやるよ…って言ってやりたいとこだが悪いな、まだ殺してやれねぇ」
そう首に手を掛けられたまま、耳元で囁かれた。まだ殺さない…?どういう意味だろうと思っていると彼は少々不機嫌そうな顔で私のことを見やった。どうして殺さないのかと問いかけると溜息交じりに首から手を離し
「先生がお前を殺すなっつってた」
と答えられた。オール・フォー・ワンが…?
「なんで…」
「お前にはそのまま雄英に居座ってA組の生徒として過ごせだってよ。潜入しておけだとよ」
不機嫌な顔のまま吐き捨てられた。
「潜入?なんで…」
疑問を投げかけると「知らねぇよ」と更に不機嫌そうに返された。
「それからこれ。着けとけっつってた」
そう言いながら、今までつけられていた首輪を外し、同じデザインのものを改めて着けられた。
「それ、お前が自分で外そうとしたり、逆らおうとしたりしたら絞め上げる様に出来てるらしい。それが嫌なら外したり逆らったりするなってよ」
あと、なんか用がある時は軽く電流が流れる様になってるから流れたら必ずここへ来いだってよ、と付け足す。…離れていても僕はお前を見ているよ、と。まるでそう言われているような気分だ。
「じゃ、知らせたからな。精々しっかり働けよ、綴」
そう言いながら私の頭を軽く撫で、死柄木は廃屋から出て行った。
ヒーロー科に潜入…?なんで…。誰かは教えられていないけれども、あのクラスには確か内通者がいると聞かされている。それなのに私を送り込む意味なんてあるの…?何もないように思うのだけど…。
あの人のことだ。きっと何か、私にとって不利益になる様な企みがあるに違いない。何が目的なのかは検討もつかない。無駄だし考えるのはやめよう。
それにしても、まだあの人達と一緒に過ごさなくてはいけないなんて憂鬱だ。
溜息を吐きつつ、服に忍ばせていたノートとペンを取り出して『誰にも気が付かれることなく、そっと寮へと戻る』と書き、廃屋から出て元来た道を引き返す。