焦凍と緑谷の勝負のせいで大破されたステージの修繕が終わり、再開された。飯田とB組の塩崎さん、常闇と三奈の試合はそれぞれ勝負がついていき、あっという間に次の試合…

「切島ー！夏菜芽！切島だよ切島！！」

そう、切島と爆豪の試合が始まろうとしているのだった。さっきから友達のテンションが大変なことになっている。肩をバシバシと叩いて来てめちゃくちゃ痛い。なんなのこの子。周りにいるクラスメイト達も引いてるよ。

「ちょっと…うるさいし痛いんだけど…やめてよ…」

げっそりとしつつ文句を言うと「だって切島だよ？！」とのこと。切島がなんだっていうの。この子めちゃくちゃ良い子だし優しいんだけどたまにこういうとこがあるからそこがな…。そこさえなければいいのに。

「あんた切島のこと好きなの？」
「えっ？いや別に？」

何言ってんの、話したこともないような子のこと好きになる訳ないじゃん、ときょとんとされながら返された。

「じゃなんでさっきから切島が出て来る度にそんな可笑しいテンションになってんの…」
「…いつか教えてあげる」

質問するとそうニコッと笑って誤魔化された。なんか子ども扱いされてるみたいで少し腹が立つ。この子私のことちょいちょい子ども扱いするよな…。ていうか、可笑しいテンションになってることは否定しないし文句言わないんだ…。
……切島と爆豪だと、圧倒的に切島の方が不利そうかなってそんな気がしてたけど、そんなこともないみたい。
爆豪の爆破に「効かねぇってのこの爆発三太郎！」と言いながら突っ込んで行ってる。
意外にも爆豪のことを圧倒してる…？凄い！それにしても、爆発三太郎…？爆豪のネーミングセンスもあれだなって思ったけど切島も切島で大分あれっぽいな…。もしかしてあの2人、感性とか近い、のかな…？髪型もなんか似てるし。

「切島強いね、夏菜芽！！」

相変わらず可笑しいテンションの友達に若干引きつつも「そうだね」と相槌を打つ。そして切島と爆豪の試合を見つめる。
切島には悪いけど、正直爆豪の圧勝だろうなって思ってた。個性を考えるとどうしても、切島のが不利そうだなって思ってたから。けどそんなこともなさそう。爆豪と互角…と言ってもいいんじゃないかなってくらい普通にやりあってる。失礼なこと考えちゃって申し訳ないな。心の中でごめんねって謝っておこう。…ヒーローを目指してるんだもんね。そりゃ個性がこれだから不利…とかそんな甘えたこという訳ないか。
ヒーロー科の子達もみんな、焦凍と同じように必死に努力してるんだ。そりゃ当然だよね。私、そんな当たり前のことに今日まで気付かなかったんだ。バカみたい。どんだけ周りのこと見てなかったんだろ。