~交わりの街で~

 街をぐるりと一周し、買い物をしつつ情報収集。
 だがデューの事を知っている者もいなければ、何か思い出す切っ掛けも見つからない。

……その上、困った事があった。

「王都へ向かう街道の途中にある橋が破壊されてしまった……か」
「一番の近道なんじゃがのう……全く、迷惑な話じゃ」

 二人と一匹は顔を見合わせて肩を落とした。

「他に王都へ行く方法はないのか?」
「あるにはあるが……遠回りじゃぞ。アトミゼ山脈を越えなきゃいかんし……」
「橋を渡ればすぐだというに、歯がゆいな」

 シュクルは尻尾をぱたぱたさせながら天を仰いだ。

「橋が直るのを待つのが早いか、遠回りに進むのが早いか……うーむ」
「じっと考えるのは性に合わん。とりあえず橋の様子を見に行ってみたらどうじゃ?」

 ほれ、と彼女が指差したのは、街の出入り口。
 先程入って来た方とは違うその先には、件の橋があるのだろう。

「……そうだな。もしかしたら強引に渡れるかもしれない」
「おーおー、強気だなー」
「何を言うかシュクル、弱気逃げ腰は運を逃すぞ?」

 何事もポジティブシンキングじゃ、とミレニアは胸を張る。

 そうして一行は一旦アセンブルを出て橋を目指した。
 街からそれほど離れていない橋に辿り着くと、情報の確かさを思い知る事になる。

「うっわ、こりゃひどいのぅ。どうやったらここまでなるんじゃ?」

 アセンブル近くに流れる川はかなり幅が広く、巨大でしっかりした造りの橋がかけられていたらしい。
 が、それも見るも無残に破壊されていた。

「強引に渡るのは難しそうだな」
「残念無念また来てねん、って感じね」

 と、彼等の会話に割り込んできたのは聞き覚えのある声。
 振り向くと、先刻街で出会ったばかりの美女がそこにいた。

「はぁい、また会ったわねん♪」
「おぬしはさっきのぼいんぼいん!」

 なんだそれは、とデューが顔をしかめるがどこを見てそう言っているのかは一目瞭然。

「ぷりんぷりんの方が良かったかの?」
「「セクハラ親父か」」

 デューとシュクル、男子二人の声が見事にハモった。

「んで、おぬしも王都に行こうとしたのかの?」

 そう尋ねれば美女は、ええ、と頷く。

「橋が破壊されたって話は聞いたんだけど、強引に渡れたりしないかなって思って来たのよ」

 美女は笑って、どこかで聞いたような話をする。
 ミレニアとシュクルの視線が一斉にデューに集まった。

「デュー、おぬしと同じ思考回路がおるぞ」
「む……」

 一緒にしないでくれ、と言いたいところだがついさっき同様の台詞を口にしてしまったため、デューはおとなしく口を噤む。

「あれじゃあしばらく渡れそうにないわね。ま、あたしはそんなに急ぐ旅路でもないし……」
「それじゃわしらと同じじゃな」
「お嬢ちゃん達も?」

 きょとんとする美女にミレニアはデューをぐいっと引き寄せて、

「このデューは記憶喪失でのぅ、手掛かりを探して旅をしているのじゃ」
「あら、だからさっきあんな事聞いたのね?」

 デューはただ黙って美女を見上げている。
 沈黙を肯定と受け取った彼女は合点がいったとばかりに手を打った。

「それならおねーさんと一緒に行く? お子様達だけじゃ危ないわよん☆」
「お子様じゃない。オレは……」

 と、それを遮って、

「ぎゃあぁぁぁぁ!?」

 そんな悲鳴が響き渡った。
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