~東の神子姫~

 フォンダンシティを目指し、元来た道を戻る事になった一行。
 ただし今度は新たな仲間が増えている。

「お姉ちゃんが出来たみたいじゃの~」
「あらミレニアちゃん、あたしは?」
「ルナ姐はお姉様なのじゃ☆」

 女子は早くも打ち解けて、仲良く談笑している。
 楽しそうな声を背後に聞きながら、シュクルは眉間に皺を寄せた。

「これから危険な所に行こうとしているとは到底思えぬな……」
「危険といえば、フィノはここまで一人で旅をしてきたんだよな?」
「え?」

 先を歩くデューがフィノを振り返る。

「未来を予知出来るとか何とか言うが、魔物も避けて来たのか?」
「いえ、そんな事は……、っ!!」

 と、そこに一行の背後から魔物が現れた。
 位置的にフィノが一番近く、それぞれ彼女を守ろうとするが、

「行って、光の弾丸!」

―バシュッ!!―

 真っ直ぐ魔物に向けて掲げた杖の先から光が飛び出し、撃ち抜いた。
 魔物を倒した事を確認すると、杖をおろす。

「ふぅ……」

 シャン、と鳴子の音が響いた。

「……なるほど、よくわかった」
「杖も殴ると痛そうだし、ね」

 神子姫を護衛するつもりだったが、これは心強い仲間が増えたと言えるかもしれない。

 などと考えていたデューだったが、フィノの視線が一ヶ所を見つめている事に気付く。
 デューの足元を歩く、小さな生き物に。

「あの、さっきから気になっていたのですが……その子は?」
「気安い口をきくな小娘、余は誇り高き聖依……」
「もふもふウサギちゃんが喋った!」

 ひとの話を聞け、と言うより早くフィノの突撃を食らうシュクル。

「ぐはっ……は、放せ小娘!」
「ふさふさのもふもふ☆ 可愛いです♪」

 美少女に抱き締められすりすりされるという傍から見れば羨ましい光景かもしれないが、ぎゅうぎゅうと締めつけられてシュクルは窒息寸前だ。

「も……もうそのぐらいで……」
「あ、ご……ごめんなさい」

 フィノから解放されぐったりしたシュクルを抱き上げると、オグマは苦笑いをする。

「あと、この子の名前はシュクルだ。ウサギじゃなくて聖依獣らしい」
「シュクル君……もふもふ……」

 シュクルを見るフィノの目は、まだまだ触り足りないと訴えていた。

「シュクルには苦労の種が増えたか……」
「むふふ、モテる男は辛いのぅ☆」

 面白がるミレニアをじろりと睨むデュー。

 何はともあれ、また一段と賑やかな旅路となったようだ。
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