~渦中の王都~

 薄暗い靄の中を歩き続けたデュー達は、そびえ立つ城とそれを囲むようにしてある城下町を見つけた。

「ようやく辿り着いた、か?」
「こんな障気の中じゃ随分印象が違って見えるのぅ」

 城の天辺から結界が街ごと包み込んでいるらしく、ドーム状に張られた半透明の壁の内側には、障気の侵入はなかった。

「これでリュナンさんも休めますね」
「あたし達も少し休憩しないとね。まずは宿屋に行きましょ」

 ここまでの道のりは格段に強く好戦的な魔物との戦闘ばかりで、決して楽なものではなかった。
 イシェルナの言葉にリュナンは目を輝かせ、両手を顔の前で組む。

「姐さん達、もしかして一緒に泊まってくれるんですか?」

 治療したとはいえ一度障気にやられた身体とは思えない元気さにデューは呆れて期待と下心丸出しの男を睨んだ。

「だとしてもお前はオレ達と一緒の部屋だからな。人数的にもちょうどいいだろ」
「そ、そんなぁ~!」

 一転、がっくりとうなだれるリュナンに、

「だ、大丈夫か? やはりまだ具合が……」

 と何か勘違いしたオグマが心配そうな顔をするが、

「問題ないぞオグマ。アレは障気とは関係ない、別の病気だ」

 シュクルはさらりとそんな事を言う。

「病気って……」
「うむ、たぶん一生治らぬであろうな」
「ウサこうひどいっ!」

 辛辣な物言いに涙するリュナンは、やはり元気そうだった。

―王都マーブラム―

 結界の内側に足を踏み入れれば、城下町の古びた風情が一行を受け入れた。
 だが今は障気のせいで空は暗く澱み、通りを歩く者も少ない。

「こんな形で、こんな状態のここに戻って来るとはの……」

 ミレニアが彼女にしては珍しく、哀しげに呟いた。

「ミレニアは王都にいた事があるのか?」
「昔の話じゃがのぅ……」

 そう答える表情も浮かなくて、デューは首を傾げた。

「早く宿へ行こう。リュナンを休ませなくては」
「……ああ」

 少々引っ掛かりながらも、デューは一際目立つ建物へ向かう。
 そんな彼等の姿を見掛け、立ち止まる影がひとつ。

「今のは……」

 影はそのまま、デュー達を追って宿屋に入っていった。

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