~渦中の王都~

 部屋に着くなり、リュナンはベッドに倒れこんだ。
 消耗した身体にはふかふかの布団に沈む感覚が心地良い。

「はぁ……癒されるぅ♪」
「動けただけでも大したものだが……やっぱりなんだかんだでダメージがあったみたいだな」

 オグマの言葉にリュナンは枕に埋めていた顔を上げる。

「旦那の迅速な処置がなかったらこの程度じゃ済みませんでしたよ。本当にありがとうございました」
「私は……そ、その……無我夢中だった、から……助かったなら、良かった」

 感謝されるのが気恥ずかしいのか、目が合うと逃げるようにオグマは顔をそらした。

「あらあら、こういうの慣れてないのかしら?……可愛い♪」

 クスクスと小悪魔的(なんて可愛らしいものじゃないが)な笑みを浮かべるイシェルナを睨み、デューはベッドに寝そべる青年に視線を戻した。

「……それより、リュナンはどうしてあんな所にいたんだ?」
「あ、そうでした!」

 はたと目的を思い出したリュナンが起き上がろうとするが、シュクルが飛び掛かって阻止する。

「ぶぇっ!?」
「病人は寝ていろ。話ぐらいそのままで聞ける」

 シュクルなりの気遣いなのだろうが、小さな体でも力一杯の体当たりはそれなりに痛い。

「ウサこう……俺になんか恨みとかある?」
「特にない」

 その場で悶絶するリュナンにオグマは治癒術をかけた方が良いのか迷うが、デューは気にせず進み出た。

「蛍煌石があると言っても障気の中で魔物も強い。一人で行くには危険だろ」
「それに……リュナンさんは王都から来たんですか? だとしたら、尚更どうして安全な結界の外に出ようと……?」

 フィノも続いて疑問を口にする。
 するとリュナンからおちゃらけた雰囲気が消える。

「……安全だなんて言い切れます?」
「え?」
「確かに王都の結界は強力です……けど絶対なんて保証はどこにもない。城下町の人達も、閉じこもって怯える毎日だ……」

 鬱々とした声で、リュナンは言葉を続ける。

「王都騎士団が原因を調べているって話ですけど、それももう随分経つ。このままじゃあ本当に……」

 と、そこに。

「必ず我々が解決する、そう言っても信じては貰えないようだな」

 部屋の出入り口から乱入してきた声に、デュー達の視線が集まった。
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