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その後はアヴドゥルによる生命の樹の講義が行われた。
旧約聖書との直接的な関係は無く、19世紀に黄金の夜明け団によってより深く研究され、タロットとの関係や占星術と結びついていったものである事、円を繋ぐ線にタロットの大アルカナがそれぞれ当てはめられている事……などなど知識としては十分過ぎる量の情報が七聖に詰め込まれた。
『なるほど……ざっくり言えば、下に行けば行くほど私の幽波紋の力は強くなるって事ですよね』
「えぇ、おそらく。実際の生命の樹と七聖さんの幽波紋の生命の樹がどう共通しているかはわかりませんが、魔術師の赤が出たという事は22種の多種多様な幽波紋が扱えるという事」
『……何だか恐ろしくなってきました。自我を持って喋るあたりもとても気になります……』
「うむ……しかし、あの幽波紋の行動原理は七聖さんの為にある様に感じます。行動範囲も広い。攻撃型の幽波紋ではないのかもしれない。あまり不安がらず、普段どおり過ごしていればよいかと」
アヴドゥルは行動範囲と攻撃の威力についても丁寧に教えてくれた。力の強い幽波紋ほど本体は近くにいて、威力を発揮できる範囲というのが大体決まっているらしい。なるほど、確かにセフィーはかなり遠くまで行かせられる。現状、攻撃らしい能力もない事を考えれば戦闘向きではないのだろう。
現状できる事以外にどんな事ができるんだろうかとセフィーを見れば、セフィーの口元が弧を描いた。
『その男が言うように攻撃型でないのは確かだな。現状伝えられる事はそれくらいだろうか。主の問いである、他に何ができるかについては時が来ればいずれ分かる。案ずるな』
それでも尚、心配そうな表情のままの七聖に、アヴドゥルは口を開いた。
「今までもそうだったのではありませんか?何かあれば幽波紋が導いてくれたとか」
『……えーと、あぁ…確かに、そうだったような気がします。そんな崇高な感じじゃなくて誘導に近かった気もしますけど』
「導き方にもいろいろあるのでしょう。であれば、尚のこと心配はいりません。貴女は今まで通り過ごしていれば良い」
アヴドゥルの言葉に同調するようにセフィーが頷く。
「そろそろ夜も明けてしまいます。七聖さんは学校があるのだから、少しでも休まないと。今日のところはお開きにしましょう」
『…そうですね、お付き合いいただいてありがとうございました!』
「いえ、私も楽しかったです。ミントティーご馳走様でした。おやすみなさい」
おやすみなさいとアヴドゥルさんを見送って、楽しい時間はあっという間だなぁとひとりごちる。
こんな時間がこれからたくさん出来ればいいなぁと思いながら床に就くための準備を始めたのだった。
翌日
ほぼ眠れてはいないが、体育がある訳でもないのでさほど問題はないだろう。朝はあまり食べない派なので家事をしている母に合図をして玄関へ向かう。
「今日は早いのね?気をつけて行ってくるのよ!」
いってらっしゃいと頬にキスを貰って家を出た。
兄の4日ぶりの登校は群がる女子生徒でさぞ喧しいだろうと思ったので、今日はほんの少しだけ先に行くことにしたのだ。
兄が家を出る頃には、
「承太郎、待って待って〜♪忘れ物よ、忘れ物!」
忘れ物?と疑問符を浮かべ立ち止まる兄。
「 はい、いってらっしゃいのキスよ、ちゅっ!」
やめろと言わんばかりに母を押し退け、
「このアマ、いい加減に子離れしろ!」
とか言うに違いない。
おそらく母はニコニコしながら、
「はーい、いってらっしゃ〜い」
と兄の背中に手を振るのだろう。
そして、兄は少し離れたところで、
「やれやれだぜ……」
と呟くのだ。
おそらくこんなやり取りが行われるのだろうと想像しながら道を歩く。
4日ぶりの我が家の日常。実に微笑ましい。
母にとっても安心と嬉しさがひとしおの1日なのかもなぁとふと思った。
鳥居を潜り抜けた辺りで
「やかましいッ!鬱陶しいぞォ!!」
という兄の声と数名の黄色い声が辿ってきた道の方から聞こえてくる。やはり私の読みは正しかったらしい。
しかし、もうそんな距離まで追いつかれたのか……
行きたくない場所へ赴く人間の歩はここまで遅いものかと自嘲していれば、後ろの方から複数の女子生徒の悲鳴が聞こえた。
後ろを振り返れば、階段を踏み外し落下してくる兄の姿が目に入る。
「七聖、危ねぇ!」
セフィーを出し問題ないと合図を送れば、舌打ちと共に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた兄が幽波紋を出し近くの木を掴み、落下速度を落としたところをセフィーで受け止めた。
『足、切れてる』
「問題ない。かすり傷だ」
生憎、七聖の手持ちには手当が出来そうな物が何も無かった。盗られたり、隠されたり面倒事が多いため、授業に必要な物しか持ち歩かないのが仇になったようだ。
『ちゃんと医務室、行ってね』
医務室に行くよう進める他に術がない。
兄の手を取り、DIOの手下の幽波紋使いの仕業だったりして?と書けば、
「さぁな。その可能性も無いとは言いきれんが」
『気をつけて』
女子生徒の気配を察知し、学校に向かうべく兄に背を向け歩き出せば、
「お前もな」
珍しく優しさが表面に出た言葉に口元が緩んだ。
『はーい』と手を振って応えその場を後にした。
「びっくりしたわ〜」
「ジョジョ、大丈夫?」
「ジョジョ大丈夫?」
「運がいいわ!あと15センチズレていたら石畳に激突だったわ」
などと声を掛ける女子生徒たちがあっという間に兄の周りに群がっていた。
その後ろから、
「君、左足を切ったようだが…このハンカチで応急手当をするといい。大丈夫かい?」
という男子生徒の声が聞こえてくる。
七聖はその声に思わずドキリとした。
夢で何度も聞いたその声に間違いはなく、
彼が幽波紋使いであることは明白であった。
も、もしかしてDIOの手下……?
だとしたら兄に伝えなければ。
しかし、どう伝える?下手にセフィーを使えばおそらく私が狙われるだろう。攻撃型でない以上避けねばならない。しかし、私が動けば違うところで兄に迷惑がかかる。はて、どう動いたものか……
あ、そうか医務室!!
あの傷ならさすがの兄も医務室くらい行ってくれるのではないか。
医務室なら接触したとしても迷惑はかからないだろう。
あとは、医務室に行く理由が出来れば申し分はない。
まぁ、医務室に行く理由など毎日どこにでもあるものだ。トイレでの水掛け、机の中のカッターの刃、靴の中に画鋲なんてのもざらにある。
さほど困ることもないだろう。
よし、と気持ちを切り替え学校に向かう足は先程までとは比べるまでもなく軽やかだった。
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