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夕飯の後片付けをすべく母と共に台所に立っていた。母が洗ったものを拭いて棚に戻すのが私の役目だ。
「七聖さーん、今日は何を作るのかしら?」
と楽しみだと言わんばかりのテンションで話を振ってくるので
「桜餅と大福の中の餡を今日は作ります!」
と用意してある紙とペンに書く。
「きゃ〜!七聖ったらいつの間にそんな素敵なものが作れるようになっていたの!?せっかくだからおじいちゃんやアヴドゥルさんにも食べてもらったら??」
「いや…そんな、せっかく日本に来たんだから素人の作ったものじゃない方がいいよ」
ただ、友達に献げるだけのお菓子なんだから。
明日は事故で亡くした3人の月命日なのだ。
「えぇ~七聖の作ったお菓子もお店のと同じくらい美味しいのに」
と残念がる母にタイミングが合えば出してもいいよと告げれば嬉しそうに必要な物は?と手伝ってくれるものだから、
「いつも朝早いんだから、片付けが早く終わった日くらい早く休む!」
と書いた紙を母に突き付けて、ほらほらと台所から追い出した。
は〜い、気をつけて作るのよと言う母に、はいはいとグッドサインを出して作業に取り掛かった。
こしあんが完成した頃には台所以外の灯りは消えていて、静寂に包まれていた。
廊下をそっと歩き月の見える縁側に座る。そして月を眺め祈った。どうか彼女らが安らかであれと。いつになっても拭い去れない何故自分だけがという後悔にも似た気を紛らわすためにはこの行為は必要不可欠だった。
ふと誰かの気配を感じて振り返れば、お客様のアヴドゥルさんがそこにいた。
お会いした時の服装じゃなかったから少し驚いたけれど、寝る前だものそりゃそうだと1人納得する。
軽く会釈をしてセフィーを通して声を発した。
『眠れないのですか?』
「えぇ、お恥ずかしながら。お隣失礼してもよろしいですか?」
『…もちろんです!』
私の隣にゆっくりと腰を下ろしたアヴドゥルさん。兄ほど背は高くないけれど、腕や掌の大きさからがっしりとした体格がうかがえる。
兄や父以外の男性とこんな近くにいたためしがない事に気が付き、こんな距離にいていいものかとあくせくする。
「七聖さんも眠れないのですか?」
『ま、まぁ、そんなところです。なのでこうして月を眺めながら祈ってました』
明日が友人たちの月命日なのだと告げればアヴドゥルさんは、なるほどと優しい顔でそれ以上は何も聞いては来なかった。
その距離感がなんだか心地よくて、新たに友人を作るのならこんな人がいいなと思う。
『そういえば、アヴドゥルさん普段は何をしてるんです?おじいちゃんと常に一緒なわけないですもんね?』
「私ですか?普段はエジプトで占い師をしています」
『エジプト……そんな遠くからわざわざ御足労いただいたのですか……しかも占い師さんだったなんて』
「いつか日本に来たいと思っていたので好都合でしたよ」
そう言って和やかに紳士的な態度を崩さないアヴドゥルに七聖はどこか惹かれていた。
ふと、占い師の類に会ったらいつか聞こうと思ってた事を思い出す。
生命の樹と呼ばれる物とタロットの関係。
何故、自分自身の幽波紋以外を召喚できるのかを。
『占い師だというアヴドゥルさんにどうしても見てもらいたい物があるんです』
そう真剣な表情で話す七聖をアヴドゥルは何も言わず静かに見守る。何故か夕刻に見た七聖の悲しげな顔をふと思い出し、己にできることなら手伝ってやろうと思った。
七聖は月の光の元に自身の幽波紋を移動させ、天使を取り囲む木に刻まれた10個の円と線で形成された模様をアヴドゥルに見せた。
『この模様をある日、本の中で見つけて生命の樹というものだという事はわかったんです。本題はここからなんですけど……これは見てもらった方が早いかもしれません』
そう言って七聖は幽波紋に刻まれた模様を頂点の円から左斜め下の円に向かってなぞった。すると、アヴドゥルの幽波紋であるはずの魔術師の赤が七聖の背後に現れたのだ。
「!?」
その光景にアヴドゥルは目を見張る。思わず自分が出すとどうなるのかという好奇心から魔術師の赤を出そうとすれば、七聖の背後からは消え自身の背後に存在を感じた。
七聖から拍手が起きる。
『本家本元が同じタイミングで出すとどうなるか知りたかったので助かりました!まだまだ研究が足りないなぁ……で、そう本題!』
欲しかった実験結果が得られるとつい話が逸れちゃうなぁとボヤく七聖に、
「そういうものなのではありませんか?私もつい、自分が出すとどうなるのか気になってしまいましたし」
と穏やかな微笑を七聖に向けた。
『……あのっ、じゃあ…本題なんですけど、タロットと生命の樹の関係についてご存知ないですか?夢に出てきた幽波紋が魔術師、法皇、戦車とタロットにあるものばかりで気になってたのですが、中々情報が得られなくて』
「なるほど……少し説明に時間が掛かりますが、七聖さんの知りたい事はお伝えできるかもしれません。しかし、明日も学校があるのでは?」
『……ありますけど、良いんです。自身の幽波紋に関しての知識を深める事の方がこの先にとっても大事ですもん。教科書さえあれば学校じゃなくても勉強は出来ますから』
と真面目な顔で言う七聖にアヴドゥルは、そんな面もあるとは意外だと思いつつも幽波紋使いにとって大事な事なのは確かなので、わかりましたと返事をした。
『そろそろ冷えませんか?』
そう言って着いてきてくださいと向かうは自室。
「ここは……」
『私の部屋です。茶室に行くより近いですから』
部屋の前に着いて、中に入るのを躊躇うアヴドゥルの手を引いて半ば強引に入ってもらった
『あ、どこでも好きなところにお掛けくださいね』
茶箪笥とライティングビューローがある場所以外の壁面は全部本棚で埋められている。本棚の中も医学書から英語で書かれた聖書だったり、クルアーンだったりいろんな宗教の経典やら各地のその地ごとの風土記だったりで埋まっているその部屋は年頃の女の子が住むにはあまりにも殺風景なのかもしれない。
茶箪笥からカセットコンロを出してビューローの上に置き、別の扉からケトルとミネラルウォーターを出してお湯を沸かし始める。
「ここにある本は全部読んだのですか?」
不意にアヴドゥルが口を開いた。
『はい。一通りは』
「じゃあ、なぜ私をこの部屋に連れてきたんです?」
その声は少し驚きと怒気がこもっているようにも聞こえた。
『……それは、おじいちゃんがこの家に連れてきた人だからです。子煩悩な人ですから、母さんに危険が及んだりするような人を連れてはきません。それに常に紳士的な態度を崩さないし、占い師さんともなれば男だの女だのという目ではなく1人の人として見てるはずですし、国家的宗教から鑑みても教えによって万が一は起きない。そう判断致しました』
それにとつけ加え
『理由をつけてこの部屋に入らない選択もできたはず。でもそうしなかったのは、少なからずコイツなら大丈夫だろうって思ってくれたからではないですか?』
やれやれというような表情でアヴドゥルさんから盛大なため息が漏れる。
「……まったく、貴女には参りましたよ。ですが、年頃の女性が不用意に男を部屋に入れるのはいただけませんね」
そう言っていつもの軟らかな表情のアヴドゥルに戻り、七聖は内心ほっとした。
生命の樹を見つけた本を本棚から出し、これが例の本である事をアヴドゥルに告げる。
「拝見しても?」
『もちろんです!』
真剣に本に目を通し始めるアヴドゥルを背に茶箪笥から茶器や茶葉、砂糖などを戸棚から出してビューローの棚の上に並べて、足元に折りたたみのテーブルを広げた。
出来上がった紅茶を砂糖と共に足元のテーブルに置いて、よろしければどうぞと一声かける。
アヴドゥルさんの方も一段落ついたようで、ありがとうございますとカップを手に取った。
「……!? まさか日本に来てこれが飲めるとは」
『……無礼のお詫びと眠れないと仰っていたので、せめてものおもてなしに』
エジプトではミントティーがメジャーな飲み物と本で読んだ事を記憶しており、以前仕事でエジプトに行くという父にお土産としてせがんだ現地産の茶葉とドライミントがあったのでそれを容れたのだった。
『それと……アヴドゥルさんと…お友達に……なれたらなって……』
「……私と、ですか?」
こくこくと頷く一回り以上下であろう彼女。その年頃の娘と比べると大人びて見えるのに、ふとした所では幼くも見える不思議な人だ。そんな七聖からの申し出に戸惑いを覚えつつも、日本文化を教えて貰うには丁度いい距離にも思えた。
『……ご迷惑でなければ』
「そんな、迷惑だなんて。むしろ光栄な事です。大好きな日本文化を教えてくれる友人ができるんですから」
僅かに影の差していた七聖の顔が明るくなる。
『本当ですか……?やった……!!嬉しくて涙出てきました…小学生以来初めてのお友達です』
七聖は涙を拭いながら、よろしくお願いしますと笑顔をアヴドゥルに向けた。
『…その、さっそくなんですけど明日、茶室でお茶を点てるんですけど……良ければ一緒にいかがですか?』
「茶道というやつですね?とても興味深いです。是非ご一緒させてください」
アヴドゥルがそう言って微笑んでくれる。嬉しいの連続で表情はゆるゆる間違いなし。友達とはこんな感じだっただろうかと思い起こすが、どの記憶も大体こんな感じだ。友達の存在というのは自分の笑顔の源みたいなものだったのだなとふと思った。
「七聖さーん、今日は何を作るのかしら?」
と楽しみだと言わんばかりのテンションで話を振ってくるので
「桜餅と大福の中の餡を今日は作ります!」
と用意してある紙とペンに書く。
「きゃ〜!七聖ったらいつの間にそんな素敵なものが作れるようになっていたの!?せっかくだからおじいちゃんやアヴドゥルさんにも食べてもらったら??」
「いや…そんな、せっかく日本に来たんだから素人の作ったものじゃない方がいいよ」
ただ、友達に献げるだけのお菓子なんだから。
明日は事故で亡くした3人の月命日なのだ。
「えぇ~七聖の作ったお菓子もお店のと同じくらい美味しいのに」
と残念がる母にタイミングが合えば出してもいいよと告げれば嬉しそうに必要な物は?と手伝ってくれるものだから、
「いつも朝早いんだから、片付けが早く終わった日くらい早く休む!」
と書いた紙を母に突き付けて、ほらほらと台所から追い出した。
は〜い、気をつけて作るのよと言う母に、はいはいとグッドサインを出して作業に取り掛かった。
こしあんが完成した頃には台所以外の灯りは消えていて、静寂に包まれていた。
廊下をそっと歩き月の見える縁側に座る。そして月を眺め祈った。どうか彼女らが安らかであれと。いつになっても拭い去れない何故自分だけがという後悔にも似た気を紛らわすためにはこの行為は必要不可欠だった。
ふと誰かの気配を感じて振り返れば、お客様のアヴドゥルさんがそこにいた。
お会いした時の服装じゃなかったから少し驚いたけれど、寝る前だものそりゃそうだと1人納得する。
軽く会釈をしてセフィーを通して声を発した。
『眠れないのですか?』
「えぇ、お恥ずかしながら。お隣失礼してもよろしいですか?」
『…もちろんです!』
私の隣にゆっくりと腰を下ろしたアヴドゥルさん。兄ほど背は高くないけれど、腕や掌の大きさからがっしりとした体格がうかがえる。
兄や父以外の男性とこんな近くにいたためしがない事に気が付き、こんな距離にいていいものかとあくせくする。
「七聖さんも眠れないのですか?」
『ま、まぁ、そんなところです。なのでこうして月を眺めながら祈ってました』
明日が友人たちの月命日なのだと告げればアヴドゥルさんは、なるほどと優しい顔でそれ以上は何も聞いては来なかった。
その距離感がなんだか心地よくて、新たに友人を作るのならこんな人がいいなと思う。
『そういえば、アヴドゥルさん普段は何をしてるんです?おじいちゃんと常に一緒なわけないですもんね?』
「私ですか?普段はエジプトで占い師をしています」
『エジプト……そんな遠くからわざわざ御足労いただいたのですか……しかも占い師さんだったなんて』
「いつか日本に来たいと思っていたので好都合でしたよ」
そう言って和やかに紳士的な態度を崩さないアヴドゥルに七聖はどこか惹かれていた。
ふと、占い師の類に会ったらいつか聞こうと思ってた事を思い出す。
生命の樹と呼ばれる物とタロットの関係。
何故、自分自身の幽波紋以外を召喚できるのかを。
『占い師だというアヴドゥルさんにどうしても見てもらいたい物があるんです』
そう真剣な表情で話す七聖をアヴドゥルは何も言わず静かに見守る。何故か夕刻に見た七聖の悲しげな顔をふと思い出し、己にできることなら手伝ってやろうと思った。
七聖は月の光の元に自身の幽波紋を移動させ、天使を取り囲む木に刻まれた10個の円と線で形成された模様をアヴドゥルに見せた。
『この模様をある日、本の中で見つけて生命の樹というものだという事はわかったんです。本題はここからなんですけど……これは見てもらった方が早いかもしれません』
そう言って七聖は幽波紋に刻まれた模様を頂点の円から左斜め下の円に向かってなぞった。すると、アヴドゥルの幽波紋であるはずの魔術師の赤が七聖の背後に現れたのだ。
「!?」
その光景にアヴドゥルは目を見張る。思わず自分が出すとどうなるのかという好奇心から魔術師の赤を出そうとすれば、七聖の背後からは消え自身の背後に存在を感じた。
七聖から拍手が起きる。
『本家本元が同じタイミングで出すとどうなるか知りたかったので助かりました!まだまだ研究が足りないなぁ……で、そう本題!』
欲しかった実験結果が得られるとつい話が逸れちゃうなぁとボヤく七聖に、
「そういうものなのではありませんか?私もつい、自分が出すとどうなるのか気になってしまいましたし」
と穏やかな微笑を七聖に向けた。
『……あのっ、じゃあ…本題なんですけど、タロットと生命の樹の関係についてご存知ないですか?夢に出てきた幽波紋が魔術師、法皇、戦車とタロットにあるものばかりで気になってたのですが、中々情報が得られなくて』
「なるほど……少し説明に時間が掛かりますが、七聖さんの知りたい事はお伝えできるかもしれません。しかし、明日も学校があるのでは?」
『……ありますけど、良いんです。自身の幽波紋に関しての知識を深める事の方がこの先にとっても大事ですもん。教科書さえあれば学校じゃなくても勉強は出来ますから』
と真面目な顔で言う七聖にアヴドゥルは、そんな面もあるとは意外だと思いつつも幽波紋使いにとって大事な事なのは確かなので、わかりましたと返事をした。
『そろそろ冷えませんか?』
そう言って着いてきてくださいと向かうは自室。
「ここは……」
『私の部屋です。茶室に行くより近いですから』
部屋の前に着いて、中に入るのを躊躇うアヴドゥルの手を引いて半ば強引に入ってもらった
『あ、どこでも好きなところにお掛けくださいね』
茶箪笥とライティングビューローがある場所以外の壁面は全部本棚で埋められている。本棚の中も医学書から英語で書かれた聖書だったり、クルアーンだったりいろんな宗教の経典やら各地のその地ごとの風土記だったりで埋まっているその部屋は年頃の女の子が住むにはあまりにも殺風景なのかもしれない。
茶箪笥からカセットコンロを出してビューローの上に置き、別の扉からケトルとミネラルウォーターを出してお湯を沸かし始める。
「ここにある本は全部読んだのですか?」
不意にアヴドゥルが口を開いた。
『はい。一通りは』
「じゃあ、なぜ私をこの部屋に連れてきたんです?」
その声は少し驚きと怒気がこもっているようにも聞こえた。
『……それは、おじいちゃんがこの家に連れてきた人だからです。子煩悩な人ですから、母さんに危険が及んだりするような人を連れてはきません。それに常に紳士的な態度を崩さないし、占い師さんともなれば男だの女だのという目ではなく1人の人として見てるはずですし、国家的宗教から鑑みても教えによって万が一は起きない。そう判断致しました』
それにとつけ加え
『理由をつけてこの部屋に入らない選択もできたはず。でもそうしなかったのは、少なからずコイツなら大丈夫だろうって思ってくれたからではないですか?』
やれやれというような表情でアヴドゥルさんから盛大なため息が漏れる。
「……まったく、貴女には参りましたよ。ですが、年頃の女性が不用意に男を部屋に入れるのはいただけませんね」
そう言っていつもの軟らかな表情のアヴドゥルに戻り、七聖は内心ほっとした。
生命の樹を見つけた本を本棚から出し、これが例の本である事をアヴドゥルに告げる。
「拝見しても?」
『もちろんです!』
真剣に本に目を通し始めるアヴドゥルを背に茶箪笥から茶器や茶葉、砂糖などを戸棚から出してビューローの棚の上に並べて、足元に折りたたみのテーブルを広げた。
出来上がった紅茶を砂糖と共に足元のテーブルに置いて、よろしければどうぞと一声かける。
アヴドゥルさんの方も一段落ついたようで、ありがとうございますとカップを手に取った。
「……!? まさか日本に来てこれが飲めるとは」
『……無礼のお詫びと眠れないと仰っていたので、せめてものおもてなしに』
エジプトではミントティーがメジャーな飲み物と本で読んだ事を記憶しており、以前仕事でエジプトに行くという父にお土産としてせがんだ現地産の茶葉とドライミントがあったのでそれを容れたのだった。
『それと……アヴドゥルさんと…お友達に……なれたらなって……』
「……私と、ですか?」
こくこくと頷く一回り以上下であろう彼女。その年頃の娘と比べると大人びて見えるのに、ふとした所では幼くも見える不思議な人だ。そんな七聖からの申し出に戸惑いを覚えつつも、日本文化を教えて貰うには丁度いい距離にも思えた。
『……ご迷惑でなければ』
「そんな、迷惑だなんて。むしろ光栄な事です。大好きな日本文化を教えてくれる友人ができるんですから」
僅かに影の差していた七聖の顔が明るくなる。
『本当ですか……?やった……!!嬉しくて涙出てきました…小学生以来初めてのお友達です』
七聖は涙を拭いながら、よろしくお願いしますと笑顔をアヴドゥルに向けた。
『…その、さっそくなんですけど明日、茶室でお茶を点てるんですけど……良ければ一緒にいかがですか?』
「茶道というやつですね?とても興味深いです。是非ご一緒させてください」
アヴドゥルがそう言って微笑んでくれる。嬉しいの連続で表情はゆるゆる間違いなし。友達とはこんな感じだっただろうかと思い起こすが、どの記憶も大体こんな感じだ。友達の存在というのは自分の笑顔の源みたいなものだったのだなとふと思った。