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旅路

 彼にとって大学生活の始まりは、第二の人生の始まりと定義して良いものだった。というのも、彼のそれまでの人生は壮絶過ぎた――少なくとも彼自身にはそう感じられたし、一般的に見ても10代で体験すべきでないことを多く経験していた――ので、大学への入学が新たな人生の幕開けと同義であったわけである。
 彼は映画を撮りたかった。高校生の時、テニス部を辞め転部した先の映画制作部で、彼は初めてカメラを触り、編集ソフトを扱った。自分の思うままに一つの動画という形が生まれるのが面白かった。人からの評価も得やすかった。作った動画を友達に見せると歓声が上がった。映画制作は彼にとって生きがいだった。
 大学でも映画を撮ろうと映画制作関連のサークルを探したが、そもそも映画関連のサークルが二つしかなく、うち一つは活動していない状態だった。彼はもう一つの、活動しているサークルに入った。これが、全ての始まりであり、終わりでもあった。
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