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Smoker

<頑張っている貴方に>
※ほんのり現パロ

やる事があるのにできなくて、やらないからしんどいんだって分かってるけど、分かってるのにできないから余計にしんどくて。

そんな日がずっと続くものだからなんと耐えている心はもうボロボロで、そんな心は壊れないようにか動きを止めて、ついでに逃げてしまえと体を睡眠へと誘い込む。夜は眠れず朝は起きられずの悪循環。今日もそれかとソファーでうつらうつらとしていれば鼻をかすめたのは苦い葉巻とコーヒーの匂い。

「すもーかー……」
「寝るな。飲め」

半ば強制的に握らされたマグカップの中身はブラック。私が飲めないの知ってるはずだけどわざとかな。今日はそれでもいい気がして一口。

「……苦い」
「だろうな」

目の冷めた私の手から大きな手がカップを抜き取って、用意していたらしいミルクと砂糖を入れてくれた。スプーンで一混ぜされてカップが返ってくる。もう一回口に含めばいつもの、私が好きな味だった。

ほうっと無意識に吐いた息。じっと横から視線が飛んでくるが気にせずにコーヒーをすする。一度彼は立ち上がって、戻ってきたその手にはパソコンと資料がいくつか。彼のものではない。

ふいっと下げた視線に入り込むように置かれたローテーブルが憎たらしい。ゆっくりとでも確実に並べられる「やる事」にぎゅっとカップを握った。

「やりたくねェ事だっつーのは分かるが、やらねェと全部後から返ってくるぞ」
「……知ってるもん。でも、できないんだもん」
「完璧にやろうとするからいけねェんだ。間違っても失敗してもいい。とにかく『やった』という事実を作れ。そうすりゃマシになる」

並べられた資料に目を落とせば簡単なものから並んでいる。よく見ればはじめの書類は名前を書くだけだ。差し出されたペンをゆっくり握って名前を書いた。そしたら彼がよし、というように頭を撫ででくれて、完成した書類を脇によけた。

一つ一つ書いていく。途中で些細なことに詰まってペンを投げようとすれば、横から不器用なアドバイスが落とされてまたゆっくりとペンが動く。

いつのまにかぼろっと涙が溢れた。そしたら手からペンが抜かれて、涙を拭う手も取られて軽くティッシュを当てられた。ぽんぽんと彼にしては繊細に拭ってくれるけど全然涙が止まらない。彼はため息ひとつ。それからティッシュを放って代わりに私を抱き寄せた。

「泣き終わったらもう少しやるぞ」
「うん……」

今の私への精一杯の甘やかし。不器用な彼の正しい優しさに私はちゃんと頷いた。

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