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200スキ記念リク

幸せ:Ace

今日のエースは変だ。

「な、うまいか?」
「……おいしいよ」
「へへ!だよな!もっと一杯食えよ!」

ほら、とフォークに肉やら野菜やらを突き刺しては差し出される。私はまるで子どものように口を開いてはそれらを放り込まれ咀嚼するのみ。若干遠い目になっているのは許して欲しい。周りにいる家族同様、困惑しているのだ。
目の前に座るエースはにこにこといつもと変わらないまぶしい笑顔。その笑顔は大好きだし、もちろん付き合っているのだからそれだけでなく彼のことは大好きだ。でも今日の彼は変。
思えば朝起きた時から若干変だった。いつも私より遅く起きるはずの彼が起きていて、あろうことか起こしに来たのだ。しかも、布団をはぎ取るとか大声で揺すり起こされるとかそう言うのではなくて「はよ、よく眠れたか?」なんて私の髪を梳いて、寝ぼけている私に幸せそうな笑みとキスを落として起こされた。思わず「ひぇ……」なんて情けない声を出すほどにはびっくりした。朝から心臓に悪い……いや、好きだけど。
甘い空気はそれでは終わらず、とにかく支度をして廊下に出ればエースがいて目を瞬かせているうちに手をつながれて食堂に移動。そして今は手ずからご飯を食べさせられている。あの大食いで満腹を知らないのではないかと思うほどの食欲を持つエースがだ。

「……エース」
「ん?腹いっぱいか?」
「いや、それもだけどなんかあった?」
「何がだ?」

何がって、いや全部だ。
やっぱり変。あ、でも残したものをぺろりと平らげるところは普段のエースだ。

ううん……でもなんかやっぱり違う。だって雑に口を拭ったかと思うとすいっと私に手を伸ばしてきてパンくずでもついていたのかあったかい指がそっと口元を撫でたエースの目は、なんというかキャンドルの優しい火のようで。いつもはもっとこう、子どもっぽと言うか遊んで欲しい犬のように目がキラキラしているのだけれど……ううん、いや今の目も好きだけど。

なんだかよくわからないが、今日はこの調子らしいなと察した私は非番なのをいいことに早々に部屋に引っ込んで変なエースと二人っきりに。

ベットに座って意味もなくつないでいる手はいたずらに指が絡められては解かれる。高めの体温がじわじわと指先から伝わって、不意に視線をあげれば柔らかく唇が奪われた。

「ほんとに今日はどうしたのエース?」
「んー?」

鼻を擦り合わせるように寄せられて、至近距離で目と目が合う。会話という会話はない。こうやって黙ってるとなんだか別人みたい。いや、ほんと。なんでもどんなエースでも好きなんだけどね。こういうエースは初めて見たからちょっとドキドキ。
背中に回された腕に応えて私もエースの背に腕を回せば柔らかく抱きしめられて心臓の音が伝わってしまいそうだ。いつもならもっと潰されるんじゃないかってほどぎゅっと抱きしめてくれるから私も勢いで思いっきり抱きつけるのに、こうもガラスに触れるかのようにされてはちょっと困ってしまう。
名前を呼んでもやっぱり返事はなくて、相変わらずただ体温を分けるように優しく抱きしめてくるだけだから私の方が我慢できなくてぎゅうっと腕に力を込めた。そのうちに徐々に体重をかけられてぼふりとベッドに倒れ込む。仰向けの上に重なるように乗られて重たいけれどこれは幸せの重さ。

「あーだめだ……」

 やっとエースがまともにしゃべったと思えばこぼした言葉はそんなこと。何がだめなのかと瞬きをして首を傾げれば、やっとでぎゅうっと抱きしめられた。

「いつも甘えてるのは俺の方だから、今日はお前を甘やかそうと思ったんだけどよ。やっぱだめだ」

俺ばっか幸せだ、と眉を下げるエースに目を瞬かせる。それからなんだそうだったのかと思わず笑ってしまえばエースはちょっと唇を尖らせた。

「私も死にそうなほど幸せだよ」

 私から唇を寄せれば、火傷しそうなほど熱い温度が唇に伝わってくる。吐息のかかる距離でもう一度はっきり「幸せだ」と伝えれば、黒い瞳にすうっと静かで強い炎が灯った。ああ、やっぱりどんなエースも好きだけど、この方がエースらしい。
さっきより荒っぽく唇が重なった。一回では足らず何度も何度も。そうして最後に一度だけそっと唇を重ねてごろりと寝返りを打つと、笑い合う。

「幸せだね」
「ああ、幸せだ」

たまにはこんな時間もいいな、なんて私はそのまま目を閉じた。



リクエスト
「エースの短編」
テーマはこちらで決めさせていただきました。思えばあんまり書いていないキャラで新鮮でした。
タイトル通りですが幸せな雰囲気が伝われば嬉しいです。

リクエストありがとうございました!

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