このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

all

 その瞬間、16番隊以外の動きが止まったという。

 白ひげ海賊団は16の隊に分かれていることは有名である。大きな海賊団であるから、統率を執るための仕組みで、各隊は隊長によりまとめられている。隊は適当に分けられているわけではなく、個人の特性や、武器、性格の相性など海賊にしては丁寧すぎるほどに考えられており、その中でも16番隊は中距離から遠距離の攻撃を得意とする隊として構成されていた。ただ、得意なのがそうなのであって、決して接近戦が苦手であるとか弱いだとかそういうことではない。しかし、その日は敵船に能力者がいた。
イレギュラーが起きることは海にいればよくある。不意を突くことができたことは敵船にとっては幸運だっただろう。しかし、不意を突いた相手が悪かった。

「隊長!!」

 マルコが船員の悲鳴に振り返った時には、トップの上で黒髪が舞うところだった。血の色は見えないが、あれはイゾウである。シュラウドの船員が発砲し、イゾウはそこまで下がって笑っている。よく見るといつも上げている髪がほどけていて、船員はそれに何か言っている様だった。

――ああこれは……。

 マルコはため息をついた。白ひげ海賊団が強いのは、絶対的な信頼関係があるからだ。ただその信頼関係は、時に爆発的な力にもなり得る。白ひげ海賊団の逆鱗は家族であることは有名だが、その厳密なラインはよく知られていない。
 髪を若干切られたというのに、イゾウは機嫌良く笑っていた。マストの上には敵が同じように笑っている。動物系の能力者なのか、かぎ爪をマストに引っかけ、羽で口元を隠した敵は静かな船上は決して怯んだわけではなく、嵐の前の静けさだと言うことを理解していない。

「今甲板に出てる野郎ども、絶対動くなよい!!」

 マルコが甲板に向けんだその瞬間一斉に発砲音が響き渡った。慣れた隊長達や、古株達はしらっとした顔でその場から一歩も動かなかった。新人達はその容赦のなさに体を凍りつかせ、目線だけでトップとマストの上に視線をやっていた。

「逃がすなよ」
「もちろんです」

 愉快そうなイゾウとは真逆の目つきで、16番隊が銃を構えている。動けば撃たれる。そんなことは明確で、マルコは「ご愁傷様だよい」と腕を組んだ。

1/4ページ
スキ