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Robin

 濡れ羽色の髪が風に遊ばれている。豊満な胸にキュッと細いくびれ。埋め込まれたアーモンドを縁取るのは長い睫毛で。

「ふふっ。そんなに見られたら照れてしまうわ」
「ありゃ、ごめんねロビン」

 今日も綺麗だなあと思って、と言えば瞬く双眼。それから「どこかのコックさんみたいよ」と笑う彼女はやっぱり綺麗で、私もつられて笑った。

 風が吹き、彼女の開いていた本のページが悪戯にめくられる。難しい言葉が並ぶそれに眉を寄せればクスリと小さな笑い声。

「読んでみる?」
「意地悪ね」

 私が読まないの知ってるくせに、と続ければくすくすくす。ロビンの読む本はいつも難しくて私には子守唄。けれど。

「ロビンが読んでくれる?」
「あら、退屈じゃない?」

 ふるりと首を横に振って、そっとロビンの横に腰を下ろせば「本当にいいのかしら」なんて言いながら、優しく語り出されるどこかの歴史。と言っても、これは本の話ではなくロビンの見て感じてきた歴史の話であり、本よりほんの少し簡単で、温かい。まあ全て理解するのはどっちにしろ難しいのだけれど。

 ゆっくり静かに語る横顔を見て笑みをこぼす。いつも綺麗で大人っぽい彼女だけれど、この時ばかりは子供のように目を輝かせていて、私はそれを見るのが大好きだ。心地よい声にしばらくじっと耳を傾けていればふと話の切れ目で声が途切れて。

「ロビン?」

 呼びかけた私の髪が風に遊ばれる。その髪をそっと押えてくれたのはロビンで。

「今度は貴方のお話が聞きたいわ」

 屈託なく、花のように笑う彼女に私も笑って答えたのだった。
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