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Crocodile

 澄んだ夜空に高い月が静かに浮かんでいる。そっと踏み入った部屋の主人はいないけれど、残り香がそこに居たと主張していた。
品のいい香水の香りと葉巻の匂い。

 許可も何も取っていないけれどふらふらと引き寄せられるままに、この部屋の主人のベッドに倒れこんで、すうっと深く息を吸えば、荒んだ思考が少し落ち着いた。けれど、やっぱり少しだけ足りなくて。

「くろこだいる...」

 恋うようにポツリと小さく呟けば、サラサラと砂時計の砂が落ちるような音がして。ぎしっとベッドが音を立てた。
強くなって香りに確信を持って擦り寄れば鼻で笑われる。

「ガキが」

 ガキでもいいから今日だけは。

 言葉にする代わりに少しだけ彼の服を引けば、その手をベッドに縫い付けるように取られて。
 もう一度スプリングが音を立てる。思わず身体を強張らせれば、はっと笑い声。それと同時にバサリと毛布が掛けられて。
一瞬戯れるように指を絡まらせてから離れた。寂しいと思う間も無く、低い体温に背中を包み込まれて。

「さっさと寝ろ」

 落とされた低音にほっと力が抜ける。私はゆるりと目を閉じた。

 朝起きたら珍しくまだ彼がいて、夢だろうかとぼうっとしていれば、荒っぽく口付けられて。一気に覚醒した私に彼は。

「俺がガキを側に置くほど暇に見えるか?」

 するりと腰に腕が絡む。
 どうやら今夜は見逃してはくれないようだ。

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