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Izo

 <コーヒーの話>


イゾウ隊長は珈琲を飲む、ただし私が入れたものに限るが。

初めはそう、確かマルコ隊長に頼まれて珈琲を淹れていた時だ。「俺にも淹れてくれ」と聞いた時幻聴かと思ったのを覚えている。だって私の知る限りイゾウ隊長は珈琲を好まない。のんでも紅茶、好むのは酒と緑茶だったはずで、珈琲を口にしたところは見たことない。私はじっと隊長の目を見た。これでも船に乗ってそれなりで、圧倒的な強さは持っていないが、冷静さと物事を読む能力は買われていた。だからこれも試されているのだと思った...まあそういうわけではなかったのだけれど。

 思わず思い出し笑いをしながらコポコポと珈琲を抽出をし、三つのカップに珈琲を淹れていく。一つは自隊のマルコ隊長に。一つは自分に。そしてもう一つはイゾウ隊長に。はじめの二つにはなみなみと黒いそれを注ぐが三つには半分だけ。そこにはたっぷりのミルクとスプーン一杯の砂糖を入れるのだ。

「はい、お待たせしました」
「あァ、ありがとな」

 ミルクと珈琲が混ざったほんのり甘いそれこそイゾウ隊長が好む「珈琲」だ。満足げに飲むイゾウ隊長を見てクスクスと笑い声を漏らす。

 風の噂で聞いた話を辿ればきっかけはエース隊長が「珈琲?好きじゃないけど飲めるぞ」とあの黒い目をパチパチさせながら言ったことかららしい。それで珈琲を頼んだということはそういうことで、結果がこの通りだ。

「いかがです、珈琲は?」
「おめェさんが淹れるのは美味いさ」

 他はまずい、と言う隊長に堪えきれず笑いが溢れる。

イゾウ隊長は珈琲を飲む、砂糖一杯とたっぷりのミルクを入れて。
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