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Nami

 オランジェットは好きじゃない。

「あらそうなの?私もよ」

 そう、笑いながらお金を数えるナミは控えめに言っても女神だ。誰もが羨むスタイルに猫のようにくるりとした目。そして蜜柑色の髪の毛はこれ以上ないほど彼女を綺麗に仕立て上げている。

「果物はそのままで美味しいんだから」
「そうね、ナミもそのままが一番綺麗だよ」

 そう、そのままが綺麗だ。だから。

「女性に手をかけるって頭イってんの?」

 ナミに襲いかかろうとした男を吹っ飛ばし、派手な音を立てて船外へ飛んだ男にさようなら。振り返って血一つ付いていないオレンジの君ににっこり笑えば呆れた顔が目に映る。

「ありがたいけど、あれぐらい平気よ?」

 アンタが血まみれじゃない、と私の顔についた血を拭おうとしたナミの手をそっと避けた。それに怪訝な顔をするナミに笑って、「オランジェットはすきじゃないの」と言えばパチリと瞬く猫のような目。そしてやっとで理解したようで、大きくため息をついたあと「どっかのコックよりは粋な例えね」なんて呆れ笑いをこぼすから「ありがとう」と答えれば。

「おバカね、貶してるのよ。と言うかそれならサングリアの方が合っているんじゃない?」
「嫌だよ、サングリアは好きだもん」
「現金ね」
「大事でしょ」

 笑いあって背を預ける。お互いオランジェットは嫌いだから。

「怪我するんじゃないわよ」

 掛けられた声に笑って私たちは地を蹴った。

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