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Crocodile

「社長砂遊びがしたいです」
「勝手にやってろ」

 書類からあげられることのない視線。彼はもう社長ではないから戯れに呼んだそれにも反応なし。今夜は雲が月を隠し暗い夜だ。趣味のいい小さなランプが彫りの深い彼の顔をよく際立たせている。
砂漠の夜は寒い。

「社長砂遊びがしたいです」
「テメェが砂になるか?」
「それじゃあ遊べないじゃないですか」
「黙れと言ってるんだが?」

 ほんの少しだけ苛立ちの含んだ声は私の口の中に消えた。声を発するために薄く空いた口に舌を素早く滑りこませ根元からくるりと絡める。逃げることもないが答えることもない舌に少しムッとして、上顎を悪戯に掠めれば、ぐいっと腰を引かれた。座っている彼のおかげで珍しく私の方が上から唇を合わせることができ、その太い首筋から顎までを撫で上げながらキスができる優越に笑みをこぼしす。濃厚なキスの余韻に浸りながら唇を離せば同じように彼も笑っていた。

「で?」

 テラテラと唾液に濡れた唇でその先を尋ねられ、するりと羽織っていたショールを落とせば手を出すことなくこちらを見る楽しげな目。

 どうやら今日は私に乗ってくれるらしいと、薄い寝間着のまま彼の太腿にのし上がりできるだけ誘うように頬をなぞって。

「一緒に砂遊び、しませんか」

 微笑んだ私は気がつけばベッドの上で。クッと笑って「下手な誘い文句だな」と言う彼からの口づけは深くて甘かった。

砂漠の夜でも暑い日はある。

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