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Izo

勝負の行方
※一番隊隊長視点

「海賊船に花を添えるにしても椿の花は縁起が悪くないですか?」
「桜の花は見苦しいだろう?」
「あら、今更見てくれなどお気になさるので?」
「バラの棘をたまには取っちゃくれねェのかい」

 早朝、食堂に入った瞬間聞こえた、新人航海士と16番隊隊長のイゾウの会話。

 朝からこの会話は勘弁して欲しいと思えれば賢い人間だ。褒美に俺 の書類を手伝え。俺は分かってしまう賢い人間なので思わず痛んだこめかみを押さえた。
 
 分からない人間にきっと有難くないであろうが会話を訳してやるならば、「美しいのは結構ですが椿の花のように首がぼとっと落ちるのでは?」「桜の花のように諦めが悪い海賊がお好みか?」「海賊はそれが普通では?」「たまには素直になったらどうだい?」となる。……なんとも無駄に凝った会話というか賢いというか、いやむしろ一周回ってバカだと思う。

 側から見ると仲が悪いのかと思うが、この二人はむしろ逆で、そうであるから俺は頭が痛いのだ。

「棘を取る手間が惜しいのなら目を止めないで下さいよ」
「棘があると知っても目が離せないほど焦がれているとでも言えばいいか?」

 棘の痛みすら愛おしい、なんて聞いてしまった俺は、顔をしかめて何も食わずコーヒーだけ手に入れると食堂を出た。
他所でやれと言えぬのは、会話の内容が分かる人数の方が少ないからだ。イゾウの言葉遊びは今に始まったことではないが、あれは半分冗談で半分本気の言葉遊びだと言うことに女は気づいているのだろうか。

「……今のところは引き分けのようだがねい」

『面倒くさい女だと思っているならいちいち声をかけないで』
『そんなところも好きだから声をかけているんだが?』

 さて、いつ決着がつくのやら。なるべく早くについて欲しいものだとため息をついて、俺は自室へ戻った。



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