Crocodile
「ハグみーです!クロコダイルさん!」
「くだらねェ」
速攻一刀両断。聞く耳持たずとはこのことか。諦めず、なんで逃げるんですか!!砂になるのは卑怯です!!と言葉を重ねて噛み付くも全て無言で切り捨てられ、私が小走りにならないとついていけない歩調も変わらない。思わず顔を歪めれば、はっ!と思いっきり馬鹿にした笑い声。私はますます頬を膨らます。
彼は私をそばに置いてはくれているがそれだけで。私のことなどペットかなにかのように見ているのか本気で言っても猫がじゃれているかそれ以下にしか思ってくれない。それが悔しくて、腹たって、少しでも構ってくれないかと「ハグしましょう!」と唐突に強請ったのはもういつだったか。自分のことながら命知らずだとは思う。彼が機嫌が悪かったならば問答無用でミイラにされていただろうから。
ミイラにされることはなかったが、やっぱり彼が優しいなんてことはなくて「したきゃやってみろ」と一言、あの馬鹿にした笑みを浮かべて私に言ったのだ。だから、そこまで言うのならやってやろうと思ったのに、私は重大なことを忘れていて。
「だから、砂になるのは卑怯ですって!!」
それは彼が能力者だと言うこと。しかも厄介なことに自然系。勢いよく飛びついても、毎度毎度サラサラと流れていく砂に向かって叫ぶ私のなんて滑稽なことか。
彼を捕まえようとするならば、覇気を身につけるか水をかけるしかなくて。どちらも実現が難しいが、手取り早くやるなら後者と意気込んだけれど作戦は全部失敗した。
事故を装い花瓶の水をかけても量が少なすぎてダメ。雨の日は姿をくらませる。やけになって水撒き用のホースで頑張ってもあの馬鹿にしたような笑いのもと、さらりと逃げられた。
「減るもんじゃないのに!!」
今日も今日とて逃げられた私は廊下のど真ん中で叫んだ。本人がいれば「うるせェ」ぐらい言ってくれそうなものだが、生憎「ガキに付き合ってる暇はねェ」とついさっきサラリとどこかの会議か何かに消えたところで。騒いでも虚しいが、どれだけ頑張っても捕まらないのは悔しいものは悔しくて。
「こうなったら風呂場にでも押しかけてやる!!」
「ほう...お嬢さんはそう言うのがお好みだったか」
ヒヤリと一気に廊下の空気が下がり、しまった、と思った時にはもう遅くて。後ろから顎を救われるように顔を上に向けさせられ、視界に入ったのは彼のここ最近で一番楽しそうで意地の悪い笑み。言い逃れる前に腹に回った腕に強引に持ち上げられて。
「で?」
私を片腕に乗せ、真正面から目を合わせながら答えを促してきたが、否定の選択肢は既にない。ヤケクソだったとはいえ、身から出た錆。最高に機嫌良さげな笑みは腹が立つが、珍しく構ってくれるというのだから、素直にならない手はないだろう。
「...ハグみーです」
今までよりも幾分、機嫌悪くそう言えば、くつっと喉の鳴る音がして。
かつかつと靴の音。向かう方向はどこであれ貴重な構ってくれる時間には変わりなくて。私はぎゅうっと彼の首に抱きついた。
「くだらねェ」
速攻一刀両断。聞く耳持たずとはこのことか。諦めず、なんで逃げるんですか!!砂になるのは卑怯です!!と言葉を重ねて噛み付くも全て無言で切り捨てられ、私が小走りにならないとついていけない歩調も変わらない。思わず顔を歪めれば、はっ!と思いっきり馬鹿にした笑い声。私はますます頬を膨らます。
彼は私をそばに置いてはくれているがそれだけで。私のことなどペットかなにかのように見ているのか本気で言っても猫がじゃれているかそれ以下にしか思ってくれない。それが悔しくて、腹たって、少しでも構ってくれないかと「ハグしましょう!」と唐突に強請ったのはもういつだったか。自分のことながら命知らずだとは思う。彼が機嫌が悪かったならば問答無用でミイラにされていただろうから。
ミイラにされることはなかったが、やっぱり彼が優しいなんてことはなくて「したきゃやってみろ」と一言、あの馬鹿にした笑みを浮かべて私に言ったのだ。だから、そこまで言うのならやってやろうと思ったのに、私は重大なことを忘れていて。
「だから、砂になるのは卑怯ですって!!」
それは彼が能力者だと言うこと。しかも厄介なことに自然系。勢いよく飛びついても、毎度毎度サラサラと流れていく砂に向かって叫ぶ私のなんて滑稽なことか。
彼を捕まえようとするならば、覇気を身につけるか水をかけるしかなくて。どちらも実現が難しいが、手取り早くやるなら後者と意気込んだけれど作戦は全部失敗した。
事故を装い花瓶の水をかけても量が少なすぎてダメ。雨の日は姿をくらませる。やけになって水撒き用のホースで頑張ってもあの馬鹿にしたような笑いのもと、さらりと逃げられた。
「減るもんじゃないのに!!」
今日も今日とて逃げられた私は廊下のど真ん中で叫んだ。本人がいれば「うるせェ」ぐらい言ってくれそうなものだが、生憎「ガキに付き合ってる暇はねェ」とついさっきサラリとどこかの会議か何かに消えたところで。騒いでも虚しいが、どれだけ頑張っても捕まらないのは悔しいものは悔しくて。
「こうなったら風呂場にでも押しかけてやる!!」
「ほう...お嬢さんはそう言うのがお好みだったか」
ヒヤリと一気に廊下の空気が下がり、しまった、と思った時にはもう遅くて。後ろから顎を救われるように顔を上に向けさせられ、視界に入ったのは彼のここ最近で一番楽しそうで意地の悪い笑み。言い逃れる前に腹に回った腕に強引に持ち上げられて。
「で?」
私を片腕に乗せ、真正面から目を合わせながら答えを促してきたが、否定の選択肢は既にない。ヤケクソだったとはいえ、身から出た錆。最高に機嫌良さげな笑みは腹が立つが、珍しく構ってくれるというのだから、素直にならない手はないだろう。
「...ハグみーです」
今までよりも幾分、機嫌悪くそう言えば、くつっと喉の鳴る音がして。
かつかつと靴の音。向かう方向はどこであれ貴重な構ってくれる時間には変わりなくて。私はぎゅうっと彼の首に抱きついた。
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