Shanks
美しい海賊
美しい海賊は好きだ。
「変な嬢ちゃんだなあ」
「よく言われます」
真っ赤な髪。風が乗せるのはお酒と微かな男性の香水の匂い。もしかしたら香水じゃなく、彼自身の匂いかもしれないけれどいずれにしても落ち着いた匂いだ。
海兵よりも海賊の方が美しく見える時がある。彼らの方が生き生きとしているからだろうか。お世辞にも礼儀正しいとは言えないけれど彼らは素直で欲に忠実で自分に正直。それはどれだけ時を経ようともだ。
海軍に夢をみて、表情を忘れたような海兵になって戻ってきた知り合いが何人もいる。彼、彼女らを見るたびに、どうにもこうにも正義の白がこれ以上なく汚れているように見えるのは私がおかしいのだろうか。
「海が、呼んでいますよ」
「あァ、もう出るさ」
「ベックもうるせえしなァ」と笑う貴方も海賊だ。美しく気高く海の似合う海賊。海軍が白ならば、海賊は青だ。海を背負う貴方は赤も持つ。この広い海でもさぞ目立つことだろう。
美しい海賊は陸に留まることはない。いや、美しい海賊を陸に留めたくはない。
自船へと歩いて行く遠のく赤に、決意とも宣言とも宣戦布告とも言える言葉を叫んだ。振り返った赤は傷のある目を大きく見開き、それから可笑しそうに笑った。
「……海を渡ってまで会いに来る女か、いい女だなァ!」
いつか来てみせてくれ、と彼は言った。待っているとは言われなかった。無理だとは思っていなかっただろうが、一時的な気の高ぶりだとは思われていたかもしれない。
美しい海賊が美しいのは海にいるからだ。私は美しい海賊が好きだ。だから海で捕まえなければいけない。気まぐれに荒れる海も、無意味に戦いを挑んで来る同業者も好きなものを手に入れるためなら喜んで受け入れることができた。思えば、とてもとても私は海賊向きだったのだろう。
少しばかり時間がかかった。けれどやはり赤は目立つ。美しさも変わっていない。私は赤い竜の船を見上げた。
「会いに来ました」
笑顔の私と対象に、美しい赤は目を見開いた。
美しい海賊は好きだ。
「変な嬢ちゃんだなあ」
「よく言われます」
真っ赤な髪。風が乗せるのはお酒と微かな男性の香水の匂い。もしかしたら香水じゃなく、彼自身の匂いかもしれないけれどいずれにしても落ち着いた匂いだ。
海兵よりも海賊の方が美しく見える時がある。彼らの方が生き生きとしているからだろうか。お世辞にも礼儀正しいとは言えないけれど彼らは素直で欲に忠実で自分に正直。それはどれだけ時を経ようともだ。
海軍に夢をみて、表情を忘れたような海兵になって戻ってきた知り合いが何人もいる。彼、彼女らを見るたびに、どうにもこうにも正義の白がこれ以上なく汚れているように見えるのは私がおかしいのだろうか。
「海が、呼んでいますよ」
「あァ、もう出るさ」
「ベックもうるせえしなァ」と笑う貴方も海賊だ。美しく気高く海の似合う海賊。海軍が白ならば、海賊は青だ。海を背負う貴方は赤も持つ。この広い海でもさぞ目立つことだろう。
美しい海賊は陸に留まることはない。いや、美しい海賊を陸に留めたくはない。
自船へと歩いて行く遠のく赤に、決意とも宣言とも宣戦布告とも言える言葉を叫んだ。振り返った赤は傷のある目を大きく見開き、それから可笑しそうに笑った。
「……海を渡ってまで会いに来る女か、いい女だなァ!」
いつか来てみせてくれ、と彼は言った。待っているとは言われなかった。無理だとは思っていなかっただろうが、一時的な気の高ぶりだとは思われていたかもしれない。
美しい海賊が美しいのは海にいるからだ。私は美しい海賊が好きだ。だから海で捕まえなければいけない。気まぐれに荒れる海も、無意味に戦いを挑んで来る同業者も好きなものを手に入れるためなら喜んで受け入れることができた。思えば、とてもとても私は海賊向きだったのだろう。
少しばかり時間がかかった。けれどやはり赤は目立つ。美しさも変わっていない。私は赤い竜の船を見上げた。
「会いに来ました」
笑顔の私と対象に、美しい赤は目を見開いた。
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