Shanks
※現パロ・学パロ
「そんなところでサボりか?」
学校の屋上でぶらりと足を揺らしていれば、落ち着いた男の声。普通に廊下で会ったかのような声色に振り返れば、真っ赤な髪。秋らしい霞んだ雲の浮かぶ空の青とのコントラストが綺麗で、いい歳だろうに少年のような笑顔が眩しい。
「こんにちは、シャンクス先生」
「フェンス越しに挨拶か?」
「ごめんなさい、ちょっと用事がありまして」
にこりと笑えば「そうか」とシャンクス先生も笑ってそのままその場で胡座をかいた。
「ベン先生にまた怒られますよ?」
「なんでいつも怒られてるって知ってんだ?」
「ベン先生からもほかの先生からもよく聞きますよ」
「アイツら……ったく、仕事しろ。仕事」
「それブーメランですって、せんせ」
くすくすくす。
笑っていれば秋の風が制服のスカートを揺らす。衣替えの移行期間。夏服のスカーフは紺だけれど、冬服は赤。私のスカーフはまだ紺色。
「今日はマルコの机の上にな、パイナップルを丸ごと置いてやったぞ」
シャンクス先生は学校でも人気のある先生。快活で明るくて、授業も楽しい。基本的にゆるいけど、厳しいときは厳しくて。怒るとどの先生より怖いという噂もある。
ふと、先生を怒らせるようなことって何だろうかと思った。にこにこと笑いながら今日あった面白い話を次々に話してくれている先生が、怒るようなこと。すこしだけ考えて、思い当たって、私は薄く口を開いた。
「先生」
呼びかければピタリと声が止まる。それににこりと笑って、私は言った。
「私、赤が大好きなんです」
先生は好きですか?
すうっと傷のある目がこちらを向いて、その目を見た瞬間ぐっと息を飲んだ。
強い感情がこもった目。怒り、とはまた違う。でも、真意を問うような強い目。正直ちょっと怖かった。でも、同じように強い目で見返せばふっとそれは空気に溶けた。
「……お前の言う赤が、俺の髪のような赤なら俺も好きだぞ」
悲しみと先生の精一杯が滲んだ言葉。思わずフェンスを痛いほど握った。迷って、迷って、迷って。何か言おうとして開いた唇は何も言えずに閉じた。
ゆっくりと立ち上がるシャンクス先生。サンダルを引きずる音と、風に袖がはためく音がだんだん近づいてきて、後ろに下がるか迷っていれば、ついにぽすんと優しい温度が頭に落とされた。
「そこじゃお前の涙を拭ってやれねェんだ。こっちにきてくれないか」
紺色のスカーフが夜の色に染まった。差し出される片手を縋るように強く握ればぐっと体が持ち上がって、フェンスは背もたれに。ぼやけた視界に映る赤が綺麗で、ごめんなさいと零せばなだめるようにまた頭を撫でられた。
「そんなところでサボりか?」
学校の屋上でぶらりと足を揺らしていれば、落ち着いた男の声。普通に廊下で会ったかのような声色に振り返れば、真っ赤な髪。秋らしい霞んだ雲の浮かぶ空の青とのコントラストが綺麗で、いい歳だろうに少年のような笑顔が眩しい。
「こんにちは、シャンクス先生」
「フェンス越しに挨拶か?」
「ごめんなさい、ちょっと用事がありまして」
にこりと笑えば「そうか」とシャンクス先生も笑ってそのままその場で胡座をかいた。
「ベン先生にまた怒られますよ?」
「なんでいつも怒られてるって知ってんだ?」
「ベン先生からもほかの先生からもよく聞きますよ」
「アイツら……ったく、仕事しろ。仕事」
「それブーメランですって、せんせ」
くすくすくす。
笑っていれば秋の風が制服のスカートを揺らす。衣替えの移行期間。夏服のスカーフは紺だけれど、冬服は赤。私のスカーフはまだ紺色。
「今日はマルコの机の上にな、パイナップルを丸ごと置いてやったぞ」
シャンクス先生は学校でも人気のある先生。快活で明るくて、授業も楽しい。基本的にゆるいけど、厳しいときは厳しくて。怒るとどの先生より怖いという噂もある。
ふと、先生を怒らせるようなことって何だろうかと思った。にこにこと笑いながら今日あった面白い話を次々に話してくれている先生が、怒るようなこと。すこしだけ考えて、思い当たって、私は薄く口を開いた。
「先生」
呼びかければピタリと声が止まる。それににこりと笑って、私は言った。
「私、赤が大好きなんです」
先生は好きですか?
すうっと傷のある目がこちらを向いて、その目を見た瞬間ぐっと息を飲んだ。
強い感情がこもった目。怒り、とはまた違う。でも、真意を問うような強い目。正直ちょっと怖かった。でも、同じように強い目で見返せばふっとそれは空気に溶けた。
「……お前の言う赤が、俺の髪のような赤なら俺も好きだぞ」
悲しみと先生の精一杯が滲んだ言葉。思わずフェンスを痛いほど握った。迷って、迷って、迷って。何か言おうとして開いた唇は何も言えずに閉じた。
ゆっくりと立ち上がるシャンクス先生。サンダルを引きずる音と、風に袖がはためく音がだんだん近づいてきて、後ろに下がるか迷っていれば、ついにぽすんと優しい温度が頭に落とされた。
「そこじゃお前の涙を拭ってやれねェんだ。こっちにきてくれないか」
紺色のスカーフが夜の色に染まった。差し出される片手を縋るように強く握ればぐっと体が持ち上がって、フェンスは背もたれに。ぼやけた視界に映る赤が綺麗で、ごめんなさいと零せばなだめるようにまた頭を撫でられた。