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Beckman

副船長は体格がいい。

いや、船の仲間はみんな体格がいいのだけれど。女でしかも小柄な私はどうにもこうにもみんな壁で、いつも潰されないように廊下でも食堂でも、戦闘時でも気をつけていたのだけれど。

「せーーーーの!!」

掛け声と同時に「避けろ!」と言うヤソップさんの声が響いた時には遅かった。

宴が盛り上がり、そろそろ引き上げたほうが安全だな、と腰を上げたところに突っ込んでくる大きな塊。驚いて、しかも突っ込んでくるそれが副船長だということに二度と驚いて。驚いていたから避けられるわけもなく、ふぎゃ、とかふぎゅ、とか可愛くない声を上げて私は文字通り潰された。

お、重い...。割と本気で息ができないのだけれど、「ベックが押し倒したー!!」とかなんとか囃し立てる声に私の声は届かず。仰向けになっているちょうど私の首の上にあった逞しい腕を必死に避けて呼吸を確保し、もぞもぞと脱出を試みるも覆いかぶさるように乗られていてなかなか抜け出せず。
というか副船長が先程から動かない。え、まさか気絶してるのでは、と慌てて首元に手をやろうとしてくつくつ肩が揺れているのに気がついた。

「......副船長、意識があるなら早急に避けてほしいのですが」
「いや、悪いな。もともと小柄だとは思っていたがこうしてみると小動物みてェだなと」

悪いと言いつつ避けてくれないので文句を言えば、意地悪い笑みを浮かべられて背に汗が伝った。

まずい、珍しく副船長は酔っている。

「副せ......」

ちうっと唇の端ギリギリに温かく柔らかい感触。周りの冷やかしが大きくなる。
私は驚いて身を引こうとしたのだけれど、副船長は私の上にのしかかったまま逃す気など無くて。

「小動物は食われねェようにな」

獲物を見つけた獣のような目に射抜かれて、私は小動物のように体を震わせた。


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