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Shanks

「おっかしら〜!!」

 全速力で走ってその勢いのままお頭に飛びついた。文字通り飛びついたのにさすがお頭。その体がぐらつくこともなく、器用に片腕で持ち上げるように受け止めてくれた。それがいつものこととはいえ嬉しくて頬が緩む。

「おはよう!」
「ああ、おはよう」

朝から元気だなあ、と笑うお頭の顔色が若干悪いのは横にいる副船長のせいだろう。副船長が無言でお頭を睨みつけているところを見るに、確実にまた仕事をサボっていたと見た。副船長が手に持っている書類の束がたぶん頭が今日やらなければいけないやつで、その量と言ったら...目測だけでも一週間分以上ある。

「やりたくねェよ〜ベック〜!!」
「しらん」

 嘆くお頭を置いて副船長は船内へ。大量の書類の束はおそらくお頭の机の上へ。あの量を1日でやるのはきついだろうなと思いつつ溜めたのはお頭自身だから同情もできないな、なんて。
 でも、副船長が何も言わずに行ってしまったということは、今回不貞腐れているお頭をやる気にさせる役は私に任されたということで、仕方ないな、と頬をかく。

「お頭」

 呼べば、きょとりとした目がこちらを向く。抱き上げられていることで見上げるように向けられた目とぶつかった。これは図らずもいい体制だな、と笑みを一つ。

 悟られる前に素早く唇を寄せて。

ちう。

 間抜けな音は子供っぽいけど私らしい。
 惚けた顔をするお頭に笑って「シャンクス」と滅多に呼ばない名前を呼んで。

「仕事終わったら、もう一回ね?」

 ただの1人の男となった貴方に少し大人な口づけを返されて、「逃げるなよ?」と、不敵な笑みを向けられて「貴方こそ」と返せば、彼が今までにないほど早く仕事を終わらせたのはいうまでもない。
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