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Marco

「っはー!快適!もふもふ!安眠できそう!」
『…そうかよい』

 ぼっすんと結構な勢いをつけてお前は俺に倒れ込んできた。普段なら嬉しいはずの触れ合いだが、俺は今不死鳥状態で、その細い腰を抱き寄せることもできなければ、緩いカーブを描く口に食いつくこともできない。つまり生殺し、据え膳食えぬ、俺はつまらない。

 「最近よく眠れないんだけど絶対寝具が合わないせいだと思うから後で昼寝する時に不死鳥貸してね」なんて、すれ違いざまに言われて条件反射で「よい」と返事してしまったが最後。仕事が一段落したところで思いっきり腰布を引かれ、あっという間に船尾の影、程よく日が入るお前のお気に入りの場所に連れて来られたのだ。

 正直強引に連れて来られるまでそんな事言われた事すら意識していなかったし、不死鳥になれと迫られてもなるかどうかは俺の自由だが、「不死鳥貸して」と、そう言ったお前の顔に疲れを認めてしまえば断る気も失せてしまって。

「すーはー…」
『…深呼吸すんない』
「お日様の匂いがする」
『変態』
「んー…そうかもねー」

 返事の声はのんびりで瞼はうつらうつらと閉じて開いてを繰り返す。これは完全に寝るな、と思った直後には目が完全に閉じられて、お前は収まりの良いところを探してか羽毛の上でぞもぞと身じろぎした。そしてまもなく静かな寝息が聞こえてきて俺はため息ひとつ。

『…今日だけだよい』

 不死鳥の状態で座り込んでいる俺の背と右翼に顔を埋めるように眠るお前がずり落ちないようにその細い腰へ首を回した。支える様に体を冷やさない様にとそうしたが意図せずお前の体温をうんと近くに感じて。

 すーと穏やかな寝息にたまにはこういうのも悪くないかと俺も目を閉じた。


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