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Marco

「じゃあ行ってくるよ、い”っ!?」

 飛び立とうとした隊長はベシャッと落ちる...ことなくちゃんと降り立ち、振り返りって私を呆れた目で見た。それにヘラっと笑えば隊長のため息一つ。

「尻尾を掴むなって言ってるだろい」
「すみません、つい」

 やれやれというように首を振る隊長は呆れてはいるものの怒ってはいない。それに甘んじて今日も私は尻尾を掴む。

 始まりは確か乗ったばかりの頃、初めてマルコ隊長の不死鳥の姿を見た時だ。美しい青い鳥を見て、あ、と思ってしまった私が手を伸ばし、掴んだのが隊長の尻尾だったのだ。偵察に飛び立つはずだったマルコ隊長は不意打ちだったのか空から落ち、サッチ隊長やエース隊長達はそれを見て大笑いしたせいで蹴り飛ばされていた。悪いのは私だからと慌てて謝れば腕組みをした隊長になぜ掴んだと聞かれて。

「その、綺麗だと思って...掴んだら一緒に行けるかなあと...」

 今思えばバカな返答で、怒られてもおかしくなかったと思うのだけれどその時隊長は怒らず「そうかよい」と頭をポンと叩いて飛び立ったのだった。

 それからというもの飛び立つところに居合わせると尻尾を掴むのが癖になっていた。ゆらゆら揺れる尻尾が魅力的なのが悪いと零せば「猫かよい...」と呆れられたこともあったが怒られたことはない。

 尻尾は見た目よりも短い毛がふわふわしており触り心地が最高だ。今日も掴んだついでに少しだけ触らせてもらってから手を離す。

「すみませんでしたありがとうございます」

 行ってらっしゃい、と軽く頭を下げたが一向に隊長が動かない。どうしたのだろうと首を傾げれば、隊長は腕組みをしながらこう言った。

「...今回の用事は赤髪ンとこに行くだけで危険はねェんだい。んで、俺は赤髪を相手にするのが面倒くせェ」

一緒に来るかい?

 ぶわっと頬が紅潮したのが自分でも分かった。

 手を伸ばし続けていたのは空に焦がれていたからだ。海も好きだけれど、海と同じ色を持つ空も同じぐらい好きで。

 来いよい、と言う隊長に私は「はい!」と大きく返事をした。



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