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Izo

 <白檀の彼>

モビーではたまに白檀の匂いが鼻をかすめる。その度に緩む口元。この匂いを纏っているのはあの人しかいないからこれを辿ればあの人はいる。隊は違うが覚えてしまった。だからマルコ隊長から書類をもらってくるようにと頼まれた私は得意げにその匂いを辿っていたのだけれど。

「え...?」
 
 たどり着いたのは私の部屋で、まさか間違ったのかと思ったが匂いはそこで途切れていて。

「イゾウ隊長...?」
 
 恐る恐る一歩部屋に入れば、にゅっと横から出てきた腕に腰を絡め取られた。情けない声を出し驚けば、クツクツと頭上から笑い声。強くなった白檀の香りにめまいがする。

「全く、優秀なワンコがいてサボれねえじゃねェか」
 
  なあ?と同意を求められながら鼻をちょんと触られて一気に顔が熱くなった。楽しげな笑い声を上げつつ渡される書類。受け取れば端っこに小さな付箋が付いていて。

《恋ひ恋ひて 逢へる時だに 愛しき 言尽くしてよ 長くと思はば》

思わずがばっと顔を上げれば、にいっと妖しく、けれど美しく笑ったイゾウ隊長。

「その気があるなら今夜おいでな」
 
 辿ってこいよ?という言葉に私は顔を真っ赤にして必死に頷くのだった。

-恋しいと思いようやく逢えたのだから愛の言葉をください、長く続くようにと思うなら-
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