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ss 好意

「ありがとよい」

そう言ってマルコさんはよく私の髪をぐしゃりと撫でる。書類を渡した時、伝言を伝えた時、些細なことでマルコさんはお礼と一撫でを絶対くれる。私はそれが嬉しくて心地よくて、よく手伝いをしてはそのご褒美としてそれを受け取っていた。

ただ妹にするようなスキンシップの1つだと思っていたのだ。それは大きな間違いだったと気付いたのはもう遅くて。

いつからだろう、髪を梳かれるように撫でられるようになったのは。いつからだろう、指を通される瞬間わざとらしく耳を掠められるようになったのは。いつからだろう、こちらを見るその目が獲物を逃すまいとする動物のような強い目になっていたのは。

さらりと髪が掬われる。その大きくて意外にも高い体温を持つ手はそのまま顎へと滑らされこっちを向けと促してくる。向いては負けだ。でも、もう向くしかない。恐る恐る顔を上げればにいっと弧を描いている厚い唇。

「いい子だねい」

ご褒美はキスに変わった。
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