七夕2019
七夕の話:サッチ
「サッチサッチサーーーッチ!」
「はいはい、聞こえてるってんだ!」
今日は七夕。だから宴。いや、理由がなくても宴はしょっちゅう開かれてるんだけど。
まあとにかく今日は宴なわけで、つまり酒も料理も用意されるわけで、だから四番隊は忙しいわけで。
「ね、ね、ね!終わった?終わった?」
「あのなァ、野郎ばっか乗ってる船の腹を満たすのめちゃくちゃ大変だって知ってんだろ!?」
早く早くと急かしていれば、大きなフライパンをふるっていたサッチがそれを大皿に盛りつけて、隊員に運べと押し付けた。ついでに大きな鍋もほかの隊員に運ばせてやっとでサッチは腰を下ろす。
「お疲れ様!」
「全くだってんだ」
お前がうるさくするから余計疲れたわ、と溢されたから、「うるさくしてないもん!」と言えば軽く額を小突かれた。サッチのくせに生意気だ。むすっとしたのが可笑しかったのかにやにやしているのも気に食わない。モテないサッチに構ってあげるのは私だけなのに!
いつもならここで文句の一つや二つや三つ言うところだけど、今日はぐっと我慢する。だって今日は七夕だから。
「今日は特別にサッチの願いを聞いてあげるよ!」
「おー、そうかそうか」
ばばーん!と飛び切りのプレゼントを見せるかのように宣言したと言うのに、薄い反応。私は再びむすっとする。もうちょっと喜ぶなり、驚くなりしてもいいじゃんか!と文句を垂れれば「顔に出てるんだよ」と鼻をつつかれた。なんだなんだ、サッチのくせにそういう女の子が喜ぶようなスキンシップだけうまいなんて生意気だ!ちょこっと拗ねたまま、「早く願い事!!」と急かせばサッチは笑って冷蔵庫から何かを取り出して私の前に出した。
「んじゃ、これ食って?」
青いゼリー。グラデーションになっていて、底に行くほど深い青になっていくそれは細かく入った気泡が星のように見えてまさしく七夕をモチーフに作ったデザートだと分かった。飾りに付きの形に切られたパイナップルが容器の淵に引っかかっていてかわいい。
目を輝かせていれば横からくつくつと笑い声が聞こえる。でも、そんなことはどうでもいい。促されるまま飛びつくようにそれを口にすれば。
「おいしい!!」
「そりゃよかった」
四番隊はみんな料理ができるけれど、やっぱりその中でもサッチの料理は絶品なのだ。おいしいおいしいと食べていれば、小さなデザートなんてあっという間。名残惜しくもちょうどいい量に満足して……って違う!!
「サッチ!違う!願い事!」
「うん?だから言っただろ?」
焦って今度はサッチに飛びつくように尋ねれば何言ってるんだと言わんばかりの顔をされて。え、もう、言った?何を?
「……食べろ、としか言われてないよ?」
「うん、だからそれ」
困惑していれば空になった容器が下げられて、「余ったやつ~」とパイナップルを間抜けに開けていた口に突っこまれた。驚きながらも咀嚼すればじゅわっと広がる果汁に頬が緩む。おいしくておいしくて思わずへへっと笑っていれば唐突に言葉は落とされた。
「俺っち、お前のその顔大好きなのよ?」
目を見開き、サッチの方を見れば、ふっと幸せそうに笑っていて。
私は自分の頬がぼっと色づくのが分かった。
「サッチサッチサーーーッチ!」
「はいはい、聞こえてるってんだ!」
今日は七夕。だから宴。いや、理由がなくても宴はしょっちゅう開かれてるんだけど。
まあとにかく今日は宴なわけで、つまり酒も料理も用意されるわけで、だから四番隊は忙しいわけで。
「ね、ね、ね!終わった?終わった?」
「あのなァ、野郎ばっか乗ってる船の腹を満たすのめちゃくちゃ大変だって知ってんだろ!?」
早く早くと急かしていれば、大きなフライパンをふるっていたサッチがそれを大皿に盛りつけて、隊員に運べと押し付けた。ついでに大きな鍋もほかの隊員に運ばせてやっとでサッチは腰を下ろす。
「お疲れ様!」
「全くだってんだ」
お前がうるさくするから余計疲れたわ、と溢されたから、「うるさくしてないもん!」と言えば軽く額を小突かれた。サッチのくせに生意気だ。むすっとしたのが可笑しかったのかにやにやしているのも気に食わない。モテないサッチに構ってあげるのは私だけなのに!
いつもならここで文句の一つや二つや三つ言うところだけど、今日はぐっと我慢する。だって今日は七夕だから。
「今日は特別にサッチの願いを聞いてあげるよ!」
「おー、そうかそうか」
ばばーん!と飛び切りのプレゼントを見せるかのように宣言したと言うのに、薄い反応。私は再びむすっとする。もうちょっと喜ぶなり、驚くなりしてもいいじゃんか!と文句を垂れれば「顔に出てるんだよ」と鼻をつつかれた。なんだなんだ、サッチのくせにそういう女の子が喜ぶようなスキンシップだけうまいなんて生意気だ!ちょこっと拗ねたまま、「早く願い事!!」と急かせばサッチは笑って冷蔵庫から何かを取り出して私の前に出した。
「んじゃ、これ食って?」
青いゼリー。グラデーションになっていて、底に行くほど深い青になっていくそれは細かく入った気泡が星のように見えてまさしく七夕をモチーフに作ったデザートだと分かった。飾りに付きの形に切られたパイナップルが容器の淵に引っかかっていてかわいい。
目を輝かせていれば横からくつくつと笑い声が聞こえる。でも、そんなことはどうでもいい。促されるまま飛びつくようにそれを口にすれば。
「おいしい!!」
「そりゃよかった」
四番隊はみんな料理ができるけれど、やっぱりその中でもサッチの料理は絶品なのだ。おいしいおいしいと食べていれば、小さなデザートなんてあっという間。名残惜しくもちょうどいい量に満足して……って違う!!
「サッチ!違う!願い事!」
「うん?だから言っただろ?」
焦って今度はサッチに飛びつくように尋ねれば何言ってるんだと言わんばかりの顔をされて。え、もう、言った?何を?
「……食べろ、としか言われてないよ?」
「うん、だからそれ」
困惑していれば空になった容器が下げられて、「余ったやつ~」とパイナップルを間抜けに開けていた口に突っこまれた。驚きながらも咀嚼すればじゅわっと広がる果汁に頬が緩む。おいしくておいしくて思わずへへっと笑っていれば唐突に言葉は落とされた。
「俺っち、お前のその顔大好きなのよ?」
目を見開き、サッチの方を見れば、ふっと幸せそうに笑っていて。
私は自分の頬がぼっと色づくのが分かった。