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七夕2019

七夕の話:マルコ


「七夕?」
「そう、今日は七夕だよ」
「そういや、珍しく宴がしたいと言い出したのはイゾウだったねい……」

 顎に手を当てているマルコに、理由も知らずに宴に参加してたの?と笑いながら言えば、「宴なんか何もなくても開かれるんだから仕方ねえだろい」と唇を尖らされた。海賊の中では賢く、博識な彼だけれどたまに知らなこともあるからそれを見つけた時が私は少し楽しい。

 七夕と言うのはなんだ、と尋ねられたので簡単に説明をした。一年に一度だけ会える織姫と彦星の話。晴れていれば会えるけれど、雨だと二人を別つ川が増水して橋が渡れずまた一年会えないのだと言えば、マルコはふーんと興味なさそうに相槌を打った。私はちょっと不満だ。

「もうちょっと興味示してもよくない?」
「いや、面白ェ話だとは思うがよい、その彦星とやらはずいぶん情けねェと思ってな」

 どういうことだと首を傾げれば、マルコは「川が増水したぐらいでなんだい。泳いで行けばいいだろい」と顔色一つ変えずに言った。私は目を瞬かせ、それから笑ってしまった。

「なんだい」
「いや、そこまでして会いに来てくれるなんて織姫様は愛されてるなって」
「当たり前だろい。好いた女に会いてェと思わねえ方がおかしいよい。そもそも一年に一度しか会わないっつーのを律儀に守ってる方がバカだい」
「あはははは!確かに」

 そのあとも、「増水して沈むぐれェの橋なら建て替えろ」とか「二人しか働き手がいねェのが問題だろ」とか、言い伝えに本気でだめだしを出すのが可笑しくて、声をあげればマルコもお酒を飲みながらその厚い唇の端を少しだけ上げていた。もしかしたら二人とも少し酔っているのかもしれないが、それが宴というものだ。楽しく騒がしく時を過ごす。

「もし私が織姫だったら……」
「毎日飛んで会いに行くねい」

 酔っ払いの戯言だと許される間に、毎日会いに来てくれる?と尋ねようと思ったのに、先に言葉を言われてしまった。驚いてマルコを見れば、してやったり、と笑っていて。

「……連れ去ってはくれないの?」

 ちょっと悔しかったからほんの少しだけ煽ってやれば「任せておけよい」と唇が奪われた。
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